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太陽光関連企業が軒並み倒産、損失計上、事業撤収に陥った背景

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太陽光関連企業の倒産、事業からの撤退が依然として増え続けている。
空前の「太陽光バブル」は2012~14年に生じた。育成したい思惑で始めた政府側の優遇措置と、急激に値下がりするソーラーパネル価格との間に生じた莫大な差益を求め、数多くの企業が殺到したためだ。だが15年頃を境に、制度の改定が一気に進み差益が急減した上に、増設した設備負担などで、軒並み関連企業が追い込まれる羽目に陥ったという構図である。
とはいっても太陽光発電の未来は明るい。直近の業界の実態と今後を予測する。

「太陽光バブル」を引き起こした“40円設定(1kW時)”

政府は次世代のエネルギーとして太陽光や風力などによる発電を重視、2012年7月にこれら再生エネルギーについては全量買い取りを電力会社に義務付けた「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入した。当初は、東日本大震災による電力不足を補い、再生可能エネルギー普及を促進する目的で、買い取り価格は1kW時40円と高めに設定していた。

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このFIT制度スタートで、太陽光発電設備を導入する動きは一気にブームを呼び、“太陽光バブル”と称されるほどに過熱化したのも、この“40円設定”にあった。買い取り価格をいったん経産省に認定さえしてもらえれば、その後も最初の買い取り価格が適用されるというウマみがある。参入、事業拡大に拍車が掛かる原因になった。

当然その権利を抱えたまま、発電設備の着工を先送りする戦略に切り替える業者も増えてきた。建設を延引すればするほど、その間に中国製を中心とした廉価製品が市場に押し出され、太陽光パネルの価格が下落するからだ。日照と土地代の安い地域に時ならぬ太陽光発電設備の建設ラッシュが発生、認可された案件を小分けにして売り出す業者まで登場した。

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出典元:太陽光関連業者の倒産、過去最多を更新 : 太陽光バブルは終わり、採算悪化か | nippon.com

京セラ、シャープなど巨額の減損処理へ

このため太陽光発電の導入量が急増、FITによる買い取り額も膨張したため、慌てた経産省は入札制度を導入する一方、買い取り額を毎年引き下げ、電気料金への影響を最小限に止める方向に進んだ。2019年度の買い取り額は14円、さらに22年度には8.5円にする予定だが、この急激な引き下げ措置が、関連企業に大きなダメージを呼び込むこととなった。

民間信用調査の帝国データバンクによると、太陽光関連企業(発電システム販売、設置工事業者など)の2018年の倒産件数は95件、過去最多を記録した前年(17年)よりさらに7件増となり、5年連続で前年を上回ることになった。

関連大手でも軒並み火の手が上がっている。
京セラは昨秋、19年3月期業績見通しを下方修正すると発表した。太陽電池パネルに使用するポリシリコン原材料の調達で511億円の損失を被り、営業減益が避けられなくなったためである。

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出典元:太陽光関連業者の倒産、過去最多を更新 : 太陽光バブルは終わり、採算悪化か | nippon.com

10年前、世界的な再生可能エネルギー期待が拡大する風潮が進み、ポリシリコン原材料の需給の逼迫が懸念されたことから必要量の確保のため、京セラは米シリコンメーカーと長期購入契約を結んだのだが、その後の中国企業の参入による“価格破壊”で市況が一気に暴落、巨額の損失を抱え込む結果となった。

シャープも同じようにポリシリコン原材料の長期購入契約で、2015年に546億円を買い付け評価引当金(契約上の購入価格と時価との差額)として計上、事実上の損失として処理した。今期の第3四半期(10~12月)実績は前年同期比-3.2%、経常利益同-12.8%。通期(19年3月期)予想では従来の経常利益を5.0%下方修正している。

老舗の化学メーカー、トクヤマも16年に2000億円を投じてマレーシアに完成した多結晶シリコンの工場をわずか100億円で売却、減損処理をした。また太陽電池パネルのシリコンウェハを切り出すダイヤモンドワイヤを製造販売する中村超硬も、上半期(19年4~9月期)決算で83億円の赤字を計上した。

18年5月、大規模な導入抑制策を打ち出した中国

海外に目を向けてみよう。まず中国はどうか。
すでに全体の発電量で2011年に米国を上回って世界一になり、16年には米国の1.4倍、日本の6倍の規模となっている。大気汚染対策から中国政府は原子力、水力、風力、太陽光発電設備の建設に力を入れる方針をいち早く掲げ、補助金も付けて奨励・推進した。

当初の太陽光発電の買い取り価格を1kW時につき1~1.15元(16~18.4円)に設定したが、2013年には全国を3ブロックに分け、0.9~1.0元の適用に変更。さらに2017年の導入量が5300万kWに達した上に、買い取り総額1000億元(1.6兆円)超に加え、送電線不足問題も浮上したことから、昨年5月、大規模な導入抑制に乗り出している。

この抑制策が効いて、昨年の導入量は3000万kW前後に陥ったとされる。ちなみに2020年までの第13次5ヵ年計画の残りの期間は、年間2000~2500万kWとほぼ2017年導入量の3~4割程度と変更する政府方針だが、「中国経済の減速状況からみても導入はもっと激減する」(専門筋)との見方が支配的である。

wedge.ismedia.jp

“取らぬ狸の皮算用”に終わった関連企業

この抑制策は、中国企業がすでに世界のソーラーパネルの70%以上を生産していたこともあって業界に大きな衝撃となった。トリナ、ジンコソーラ、CSIなど中国の太陽光発電関連企業53社が連名で「突然すぎる。制度改定の猶予期間を設けてほしい」との要望書を提出したが、政府は譲歩しなかった。
もちろん中国だけの問題では済まない。世界各国の導入抑制も相次ぎ、3000万kW以上の供給過剰とみられるソーラーパネル価格の一段の値下がりが予測されることだ。放置しておけば、関連業者が過剰な差益を得ることになるので、各国政府はFITの買い取り価格を追い掛けるように見直すという状況が、いつまでも果てしなく続くという実態にある。

ただ計算上は、FIT設定価格と値下がり続けるソーラーパネル価格の差益で、儲かるはずだった関連業者にしてみれば、まさに取らぬ“狸の皮算用”でもあった。突然のFIT改定で事業縮小や撤収を図る企業も出てきた。ただ太陽光発電関連の雇用の大半は、パネル販売と設置の仕事であることから、導入量の減少は多くの失業を生み出すことになる。

太陽光発電市場を支え続ける「パリ協定」

欧州各国の政府対応をみると、電気料金上昇にはとくにナーバスなこともあって、かなりドラスチックな抑制策(FIT改定)を実施しているのも特徴だ。ドイツでは導入量が800万kWに達したため、2010年に政府は買い取り額の減額とFITを撤廃に踏み切ったため、導入量は一気に数分の1に下降した。

スペインでも2008年に約300万kWと導入量が急増したため、2013年に制度変更して以来、導入量はほぼゼロになった。イタリアでも2011年約1000万kWになったのを、買い取り価格の減額、新制度と新税の採用した結果、翌年の導入量は3分の1になり、それ以降は年数十万kWに減少推移している。

ただ言えるのは、太陽光発電システムの市場は今後とも決して消滅することはない、と見通せることだ。先進国や途上国を問わず、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化を防ぐ「パリ協定」が厳然と存在するからである。

末広がりの太陽光発電システムの将来性

もう1つの根拠は、エネルギー政策「ZEH(ゼッチ)」である。ZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の意。家庭内で使う電力は、すべて家庭内で作り出す住宅のことを指すが、このZEHを、日本政府では2020年までに標準的な新築住宅仕様にすることが、政府目標になっている点である。ZEH住宅の建築には、政府は補助金を交付している。

現に、すでに約8500組の人が補助金を受け取って、ZEH仕様の住宅を建てるという実績を残している。現時点ではFIT制度を絡んで、政府側にも業者サイドにも混乱がみられるが、沈静化すれば補助金によって確実にZEH住宅は増加してくることとなろう。しかもこのZEHを支えるのが太陽光発電システムなのである。

ZEH施策の主役が間違いなく太陽光発電になることを考えると、当システムの重要度はますます増大するばかりだ。逆に言うと、これまでこの発電システムを重視するあまり、将来性について各政府とも「忖度」しすぎ、政策が先行しすぎた面があったようだ。太陽光発電システムの将来性は明るく、末広がりの市場活性化が期待できることは間違いない。

toyokeizai.net

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。