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進む「SPA(製造小売)第2ステージ」を制する条件と課題

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消費者ニーズに最も近い商品設計をベースに、原材料の調達から製造・物流・販売、そして在庫管理、店舗設計など究極の効率性を追求する「SPA(製造小売)」方式が、小売業者に使われはじめてからすでに30年の歳月が経過した。屈指の高収益体制を実現した先駆企業にも、ようやく疲れが見えはじめてきた。

SPAの第2ステージはコンビニをはじめ、業態を超えた広範囲にわたる多様な展開でスタートしている。拡大する一途の通販ビジネスなどECサイトにどのように対処するかも最大のテーマとなりそうだ。SPA導入の実態と今後のテーマを追ってみた。

新鮮味を欠き減速モードに入ったSPA先行組

「SPA(製造小売)」手法で1990年代後半以降めきめきと成長を遂げ、市場を席巻した代表的な企業として「ユニクロ」(運営:ファーストリテイリング)が挙げられる。他、先駆したのはいま家具では業界首位の「ニトリ」、また西友が食品・衣料品・家具用品のPB(プライベートブランド)として発足した「無印良品」であろう。

ただ、現状のようにSPA手法が一般化してくると、さすがに相対的にこれらの代表企業たちにもマンネリ化、陳腐化傾向が見え、業績も減速が目立ちはじめてきた。
現にユニクロ。直近の第1四半期(18年9~11月)業績は、暖冬の影響で国内のユニクロ事業は前年同期比-4.3%、営業利益も同-29.9%の落ち込みとなった。

ニトリはどうか。この上半期(3~8月)は増収増益だったが、下半期(9~19年2月)業績は新規出店による人件費増、既存店の改装費用などが圧迫要因となり、売上げは前年同期比8.4%増予定も、営業利益は-4.7%、経常利益も-6.4%と後退する予想である。このため通期見通しも期初予想数字を据え置いている。

値頃感もいつのまにか高めに移行

無印食品を展開する良品計画は15期連続増収、7期連続営業増益という、いわゆる「優等生」の評価を続けている成長企業だが、通期(19年2月期)見通しの下方修正を発表、世間を驚かせた。売上高は期初予定より3.5%ダウンの4093億円、営業利益は6.0%少ない470億円との内容だ。それでも増収増益を確保したものの、減速は明らかである。

もっともユニクロ、良品計画、同業のしまむらなどに共通しているのは、10月、11月に冬物衣料の売れ行きが不振だったことだ。ユニクロの衣料品は10月に前年同期比10.0%減、11月は同4.3%減。良品計画は上半期(3~8月)が同9.9%増だったのに比べ10月は0.4%増、11月5.9%増と後退している。しまむらも10月-7.1%、11月-12.3%だ。

たしかに50年ぶりの厳寒だった前年(2017年)からのリバウンドが大きかったため、という説明は一応つくが、原因はそれだけではない。ユニクロ、無印良品などのSPA先行企業が防寒アイテムに過度に固執している間に、消費者に“陳腐化”の印象を与えてしまっている現実がある。値頃感もいつのまにかジワッと高めにシフトしているのだ。

それぞれの段階を一貫してマネージする強み

SPAは小売業者が、それぞれの段階を一貫してマネージするので、リードタイム(発注から納品まで)の短縮、物流コストの削減などメリットは多彩だ。現在では素材の調達にまで遡る一方、下流の在庫管理、店舗計画までも全て包含し、物流・情報システムなども含めたサプライチェーンの最適な効率化をめざす動きが活発化する方向にある。

ユニクロのケースは、そのうち部品原料は東レや大手の化学繊維メーカーに一任、出荷物流も専門業者に任せ、自分たちは生産現場の管理とマーケティング・製品企画に専任、卸機能と販売に集中化するというビジネスモデルで成功した例だが、数年前からはすでにこれらの全プロセスを管理し、全体のムダ、ロスを極小化するモデル構築が進んでいる。

だが問題は、一般庶民の衣料品に対する価格感覚が、じりじりと下がり続けている現実だ。理由は過剰供給による値崩れにあるが、メルカリなどによる中古衣料市場の拡大も大きな要素となっている。すでにユニクロ価格は“お手頃感”を急速に失いつつあるのだ。

店頭に3ケタ商品が山積みされる現実に対抗できるのか

それに期末ともなるとホームセンターやディスカウントストア、ドンキホーテなどの店頭も、3ケタ商品(1000円以下)が溢れかえる実態がある。もうユニクロには、かつての価格競争力はあまり求められない。残されているのは高い品質と高機能への信頼である。やはりSPAをベースに真摯に求めてきた本来の姿が最後に生き残っているといえる。

ユニクロは現状を打開するために、世界的に著名な一流クリエィターを招請してトレンド追求に懸命だが、その方向は、はたして日本の平均的な人たちのライフスタイルにフィットした“ローカルで、日常的な”トレンドに沿うものかどうか。

スマホでちょっと検索すれば、ZOZOもメルカリも豊富な「お手頃価格」衣類がいやというほど提供してくる。温もり感があってイージーケアに着られる安い衣料品で十分、と納得する層も増えてきているのだ。今風のカジュアルとは、その類いのものではないのか。

野菜専用工場を設置したセブン・イレブン、ファミマ

ここにきて台頭してきたのは、食品など日常品小売業態のSPA化である。とくに大手コンビニエンスストアの動向が目立ってきた。

まずセブン・イレブン・ジャパン。今年から神奈川県相模原市にある専用の野菜工場(7870㎡、投資額は60億円)を稼働させ、当面はリーフレタスを日産3~400kgを生産するが、他にホウレン草やパクチー、イチゴの生産も手掛け、軌道乗せ後は日産3㌧をめざす。安川電機の協力で工程の自動化も推進中だ。

フル生産に入った段階で神奈川、都内の一部店舗の約2000店舗に商品を供給していく方針である。鮮度が向上すれば廃棄ロスも削減できるし、弁当の消費期限も延長できるというメリットもある。長い目でみれば、これらのコスト削減効果は少なくない。

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一方、ファミリーマートでは、すでに2015年4月から国内の工場で栽培されたフリルレタス入りのサンドイッチを販売しており、その意味ではセブン・イレブンより先行している。現在、関東・関西地域の約9000店舗で販売する「ミックスサンドBOX」に使用しているという。全国に5ヵ所(秋田県2工場、石川県2工場、鹿児島県2工場)の規模を誇る。

SPA第2幕の主役はコンビニ業界か

ローソンはどうか。
2014年秋、都内などで高級スーパーを運営していた成城石井を買収した背景には、成城石井が長年培ってきたSPAのノウハウも入手できる、との思惑からとの指摘がある。成城石井は自前の工場で惣菜やパンなどを作り、各店舗に配送している実績があったからだ。

ローソンが数年前から強力に打ち出しているのが「健康志向のコンビニ」である。「ローソンファーム」と呼ぶ自社管轄の農場で農作物の生産に着手、リコピンを多く含んだニンジンなど栄養価の高い野菜を生産しているのも、その一環だ。2012年には原材料調達から製造まで一貫して関わる子会社も設立、国外からの直接買い付けにも注力しはじめた。

SPAはユニクロを突破口に、かつてはアパレル業界が主導したが、現在は全ての業態に拡散する手法となっている。コンビニ業界でもまだ完全な形ではないが、今後の大きな流れになる気配が強い。わが国の消費総額300兆円の半分、140~150兆円が小売市場に投下されるという歴然とした現実があるだけに、とくにコンビニの動きからは目を離せない。

望ましい時流に沿った独自なビジネスモデルづくり

来たるべき「SPA第2幕」で重視すべきは、やはりECサイト(通信販売)の動きだろう。すでに市場全体のざっと10%(約15兆円)に達した。米国でのEC化率は30%になっていることをみれば、早晩わが国もまずその段階に到達しよう。ポイントはリアル店舗とネットの住み分けに、究極の効率性を求めるSPAがどう絡んでくるかだ。

いずれにしても、競合企業に打ち勝つためには、究極の「良質にして低コスト」の差別化商品をいかに市場に投下して、なお付加価値を上げていくかをめざさなくてはならないが、そのために柱とするには、SPA手法のほかには見当たらない。

工程も多様多彩で国際分業体制も必至の構築が前提となるだけに、SPA第2ステージでの展開は当然、決して生易しいものではない。その中からどのようなオリジナルな効率化手法で、自社のコア(中核)との関連部分を、どのように新しい時流にマッチしたビジネスモデルに整理しまとめ上げていくか、が問われることになろう。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。