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<2019年景気・株式展望> 米中摩擦、世界的後退の中の日本経済予測

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2019年の日本経済は正念場を迎える。鍵は、足踏み状態にある景気を再加速させ、どのようにして安定軌道に乗せることができるかだ。

10月に迎える消費増税への対応、デフレからの完全脱却は今年の課題だが、不穏な海外要因も目白押しだ。焦点はまず米中対決の行方にある。そしてトランプ大統領が掲げる「アメリカ第1主義」、陰影を増す中国の経済動向、欧米の利上げスケジュールなど多彩なマイナス材料の続出が懸念される。

不透明感を増し、減速傾向を強める海外経済の流れの中、日本の2019年の景気・株式はどう展開していくのか、予測してみた。

景気拡大は進行中も、実感なき“好況”

気懸りなのは、高度成長期には4%超を誇っていた日本の経済成長率が、ここ5年以上1%前後の低空飛行を余儀なくされているという現実にある。この物足りない推進力をどう加速させていけるかが、まず今年のテーマとなる。

内閣府の発表によると、第2次安倍内閣がスタートした2012年12月に始まった現在の景気拡大(いわゆるアベノミクス景気)は、昨年9月時点で58ヵ月に及び、「いざなぎ景気(57ヵ月)」を抜いて戦後2番目の長さになったという。なお拡大は続いており、「いざなみ景気(73ヵ月)」に次ぐ戦後最長の更新も視野に入ってきた。

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出典元:景気、「いざなぎ」超え=4年10カ月、戦後最長視野-内閣府:時事ドットコム

政府サイドでは「緩やかに回復している」と景気全体の基調判断を指し示すが、成長率が低いため一般国民レベルにはほとんど“好況”の実感が沸かないのが実態だ。ましてや直近7~9月期のGDPは、それまで好調だった設備投資、輸出が減少し、前期比で2四半期ぶりのマイナスとなっただけに、その感がひとしおである。

2019年度の企業業績は減速気味も増収増益予測

アベノミクスでの景気拡大は、日銀による大規模な金融緩和によって触発された株高、円安が進行したのに加え、好調な海外経済(米国をはじめ中国、インドなど)も追い風となり、企業業績の改善が著しく進んだことなどが背景にある。

現に、対象3280社の企業の前期(18年3月期、金融を除く)の売上高は前年度比7.0%増、経常利益は同10.1%増と好調に推移した(東洋経済新報社・四季報)。今期(19年3月期)は若干の後退はあるものの、依然として前年度比3.0%の増収、9.7%の経常利益増と野村證券では予測する(市場戦略リサーチ部、18年12月予測)。

雇用環境も改善した。有効求人倍率(求職者1人に求人が何件かを示す倍率)は昨年10月現在、1.62倍と44年ぶりの高水準となった。日経平均株価も一時2万4270円(10/2)と、約27年ぶりの高値まで上昇した。企業の内部留保も過去最高の450兆円に上っている。

だが、経済成長率というとここ数年、1%程度と低迷しているのはなぜか。GDPの5割以上を占める「個人消費」が伸び悩んでいるからだ。消費を押し上げるには、継続的な賃上げが欠かせない。企業に積極的な自覚をもたせ、従業員への利益還元をどのように円滑に進ませるか、日本の大きな課題となってきた。

出口戦略を描けぬ日銀の金融政策

国内要因の懸念材料の1つは、10月に迎える消費税率のアップ(8%→10%)だが、安倍政権は実施には慎重な姿勢を取っている。国民の痛税感を和らげるために、社会保障と子育て支援に2兆円、またキャッシュレス決済でのポイント還元に数千億円、さらに補正予算として3兆円超の支出など万全の配慮をしているのも特徴だ。

ここで気になるのは、消費者物価が伸び悩み、デフレからの完全脱却の見通しも立っていないことである。量的金融緩和から抜け出した欧米とは対照的に、日銀は出口戦略を描けず中途半端な場所に立っている印象も強い。今年はますます打つ手は限られてこよう。

総括すると、2019年の日本経済は前年度比1%弱(0.9~1.0%)の成長率がベースとなる展開となるとみたい。外需が昨年より低迷する懸念が強まる中、相対的に内需の重要性が増してくるのだが、秋に消費増税が予定されるのが悪材料である。ただ原油価格の下落はプラス材料といえよう。

当面、最大の株価刺激要因は米中貿易摩擦の帰趨に

今年の株価については、ひと言でいえば、株式市場はリスクで満ち溢れているということだ。不安要因は米中摩擦だけにとどまらず、米連邦準備委員会(FRB)が利上げ加速を示唆しているのも大きなファクターの1つとなる。さらに、トランプ大統領の“ドル高牽制”発言もあって、そのつど日本株が振り回される不安定な値動きが続く見通しにある。

やはり今年の株価を読むとき、最もポイントとなるのは、世界経済の先行きがどうなるかである。とくに最大のファクターは、米中貿易摩擦だ。対米輸出品目に対する関税引き上げは90日間の延期となったが、問題は3月から元通りになるかどうか。ここまでの両国の駆け引きからみても、とても収束は考えられないだけに、乱高下リスクをいっぱいに孕んでいる。

むしろリスクの焦点は、中国経済である。中国企業の設備投資もここにきて大幅に落ち込み、昨年は企業への融資額が2017年と比べて半減した。消費の指標となる自動車販売も、昨年10月期は前年同期比で約12%も減少、09年以来の下落といわれている。経済成長率も昨年の6.6%→6.3%に、落ち込むと予想される。

懸念は中国の“不良債権”著増、欧州内需の縮小傾向

中国での不安材料の筆頭に位置すべきは、シャドーバンキング*1の著増にある。銀行以外の金融機関からの借り入れがここ数年、うなぎ上りに増え、総額で400兆円にも達するといわれている。いわば米国のサブプライムローンと構造が酷似しており、今後の不良債権化が懸念される。

欧州各国の経済動向も無視できない。とくに懸念されるのは欧州各国の内需の縮小幅が大きいことだ。EU圏を代表するドイツにしても、景況感の指標となる購買担当者景気指数(PMI*2)がここにきて大幅に下落、4年ぶりの低水準となった。企業業績も悪化、今年のGDP成長率も1.5%と下方修正された。

フランスも反政府デモの拡大で、最低賃金の引上げや減税要求などでマクロン政権が揺すぶられているが、経済問題で火の手が上がったという点は等閑視できない。また、3月の
イギリスのEU離脱の帰趨もからみ、今年の欧州が世界経済混乱の発火点となる懸念もあり、予断は許さない。

「頭の中は壊れた家具が詰まった屋根裏部屋だ」とのトランプ評

欧州中央銀行(ECB)は金融調整のため今年の年末の利上げをめざし、今夏に判断をするが、EU代表格の独・仏・伊などの実態が“雨降り状態”なのに、利上げなど実施したら間違いなくリセッション(景気低迷)に陥ることになろう。

とどのつまり米国が“アメリカ・ファースト”の政治に徹し、米中間の覇権争いによる混乱が1つの混乱ファクターとなって、大きくクローズアップされてきた流れの中、欧州も独仏英などの政治・経済両面での混迷で求心力の低迷が現実化してくる状況にあって、これまで世界の安定を支えてきた軸が急速に消失しつつあるのも2019年の特徴である。

ともあれトランプ台風はまだ衰えることもなく、彼の動きによって依然として世界が引きずり回される日が続くことになろう。ノーベル経済学賞を受賞したP・クルーガマンはトランプを評して「彼の頭の中は、壊れた家具がごちゃまぜに詰まった屋根裏部屋だ」(文芸春秋2月号より)という。それだけに世界の景況は波乱含みを免れない。

中長期的には上昇トレンドにあるが目先は3~4月が底か

結論から言うと、米中対決の落ち着き先、2019年3月期業績の決算内容が定まる3~4月頃が、日経平均が底を打つ時期ではないかと推断される。それまでは様子見に徹した方がよい。ここにきて日本の株のPER(株価収益率*3)は一貫して下げ12~20倍に分布、国際比較でも割安となっているが、目先再度の底打ち(2万円割れ周辺)までの我慢だ。

今年は国内要因というより、海外からのファクター(さしあたりは米中摩擦、米朝会談の動きなど)によって激しく上下振動する趨勢とみる。PER低下をみて、周りの状況を見極めながら、外国人投資家も戻ってくる。だが、それもやはり3月以降ということになろう。

だが、短期的には乱高下が激しくとも、中長期的には上昇トレンドが続くと予想される。底打ちは2万円割れで、早ければ2021年に、遅くとも2023年には3万円に達する相場の展開が予測される。つまり中長期的に日本株は「買い」である。自信をもってお勧めしたい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。

*1:通常の銀行と違い、投資(証券)会社や証券化のための特殊な運用会社などの金融業態の総称。厳しく監督される通常の銀行と比べて規制が緩く実態も把握しにくい面がある。

*2:製造業やサービス業の購買担当者を調査対象にした、企業の景況感を示す景気指標の1つ。他のマクロ経済指標より早いため速報性が高く、景気動向を占う「先行指標」とされている。

*3:株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標