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<化粧品業界の実態検証> 日本メーカーのグローバル展開と将来性

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日本の化粧品業界の業績は総括して「ほぼ横ばい、微増程度の推移」
国内で人口減少が進むなか、今後は海外市場開拓に向け強力なエネルギーを発揮していく必要があるのだが、大手メーカーの動きは依然として鈍い。
資生堂をトップに、売上げランキング上位5社で国内市場の9割近くを占めるという“寡占”の上に安住しているのが原因なのかも知れない。共通する弱点は、世界市場に向けたグローバル化への踏み込みが浅いことだ。日系メーカーの実態、将来像を追ってみた。

根強いインバウンド需要が市場鈍化をカバー

化粧品市場の歩みをざっと追ってみよう。
90年代のバブル崩壊、リーマンショックを経過する中で、じりじりと縮小する傾向にあった市場規模が、2012年以降のインバウンド(訪日外国人)需要の急増、化粧品の免税対象入りなどを契機に、いわゆる「爆買い」現象が発生し、市場が活性化した点が挙げられる。

とくに中国観光客によるすさまじいほどの「爆買い」は流行語にもなり、化粧品市場に与えたインパクトも大きかったが、2015年にはその勢いも鈍化しはじめてきている。
とはいえ、長期的に停滞傾向にあった日系メーカーの業績が、この根強いインバウンド需要によってカバーされているという構図が現状といえる。

時代とともに変化する消費者の化粧品に対する意識

消費者の化粧品に対する意識は、時代とともに変化する。
高度成長期~バブル経済下では10~40代の女性中心に、高品質・高価格の商品に人気が集中する傾向があり、化粧品といえば「百貨店で著名ブランドの高級品を買う」というのが典型的な購入ルートだった。だから購入先は専売の化粧品メーカーで占められていた。

だが、バブルが崩壊し不況感覚が蔓延してくると、化粧品へのユーザー意識も高級品志向から節約志向に、しかも“安くても化粧効果の優れている”製品が人気を博すように変化していった。
市場スケールは横ばいの状態、低価格品から中・高級路線まで入り乱れての混沌とした状況で推移中だ。

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出典元:化粧品市場に関する調査を実施(2018年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

消費構造の変化を促す1つは、急拡大しつつあるECサイト(ネット通販)による参入、また他国の化粧品メーカーの攻勢(とくに新興勢力による低価格攻勢)などだが、これらのファクターは、幸い化粧品という製品がもつ“特殊性”がハードルとして立ちはだかって、既存勢力の安易な侵入を許していない面も、業界の特徴として挙げられる。

せめて化粧品は店頭で確認・納得して買いたい

日本の化粧品業界は結局、資生堂をトップとする5社で市場全体の88.5%を占有するという寡占状態のまま、長年大きな変更もなく推移しているのが実態だ。
ちなみに年商順にシェアを列挙すると、資生堂35.5%、花王28.2%、コーセー11.3%、ポーラ・オルビスホールディングス10.0%、マンダム3.5%である(数値は2017年時点)

いま総じてどの業界でも店舗を構える販売業者が最も神経を尖らせているのは、対“ネット通販”である。ユーザーは、リアル店舗に出向いて自分の好みの商品を探さなくても、手元のスマホを覗けばいくらでも瞬間に一覧できる。購入する手続きも決済もきわめて簡単だ。EC化にどう対処するかが、一般的に販売業者の大きなテーマとなっている。

だが、化粧品業界の場合どうだろうか。
微妙な肌への適性にはことのほかナーバスになる。せめて化粧品ぐらいは、というブランド志向のユーザーは結構多い。それに価格が張る化粧品を購入するとなれば、店頭でスタッフのアドバイスを受けながら実際に自分で納得し確認し、納得した上で買いたいというニーズがある。そんなことから化粧品ではECサイトの利用率がなかなか高まらないのだ。

圧倒的に低い化粧品業界のEC化率(5.27%)

「低価格も、まずまずの品質」市場も広がりをみせている。
品質がある程度のものであればロープライスでよい、とするユーザー層の存在だ。利便性の高いドラッグストアなどにいけば、数百円で買える点で一定の満足感が得られる。すでに全国にドラッグストアは1万8900店舗、利便性も高い。わざわざECサイトを利用することもないという気持ちもある。

化粧品そのものがやはり“説明商品”であることも、EC化が進まない原因といえる。販売チャネルが多いのだ。デパートやドラッグストアなどの店頭販売から訪問販売、カタログ通販、テレビ通販など、販売チャネルが多数存在するのもEC化の進まない原因として指摘できよう。

現に、17年度の全産業のEC化率調査(経済産業省)でも、化粧品・医薬品のEC化率は5.27%と、生活家電・PC・周辺機器の30.18%、雑貨・家具・インテリアの20.40%をはるかに下回っている。

日本市場に拘泥していては国際競争で脱落する

国内需要は横ばい基調でも、資生堂、花王など国産メーカー2社で6割強の高シェアを占め、絶対の存在感を示しているのは、これまで長い間にわたって培ってきた伝統的な技術、製品への信頼感に根差すものだ。海外メーカーが日本にくさびを打ち込むとすれば、驚天動地の新製品か、桁外れのセールス手法が求められよう。

まず寄ってたかっても、他国メーカーが日本市場を席巻することはまず無理といえる。第一、人口減少という将来的な問題も含め、遅かれ早かれ縮小の一途をたどる日本市場に、他国メーカーが魅力を感ずるわけがない。

逆に言うと、日本の化粧品メーカーはすでに満杯で成長余力のない日本市場に拘泥していては、国際競争に負けることを意味する。各社が海外市場での展開を目指し躍起となっているのは、それが理由である。

国内首位の資生堂でさえ海外比率は47%

ともかく指摘したいのは、日本業界の将来性は一に「グローバル展開」にかかっているということだ。化粧品というのは、一種のイメージ商品という性格を持つので、やはりブランド力がモノをいう。ブランディングの決め手はマーケティング手法の巧拙とその集積に負うところが多いのだが、その点、日系メーカーがとくに得手である評価も実績もない。

資生堂は、前期(17年12月期)の売上げが、中期計画の3年前倒しで念願の1兆円の大台に乗せた余勢を駆って、今期の第3四半期(1~9月期)の営業利益も前年同期比44%増、通期(18年12月期)も売上げ前年比8.5%増、営業利益も同37%増に達する予測だ。

ただ、海外市場での展開となると世界トップのロレアル、4位のエスティローダーに比較して、やはり遅れが目立つ。海外市場が占める売上高比率はロレアルが60%近くに達している一方、エスティローダーも53%強と、売上高の過半を海外で占めるのに対して、資生堂は46.5%(17年度実績)と低く、今後の課題となっている。

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出典元:化粧品メーカーの世界ランキング|ビジネス+IT

決定的なのは業界全体に希薄なグローバル展開策

花王の前期(17年12月期)のビューティケア部門(化粧品、スキンケア製品、ヘアケア製品など)売上げは前年比2.1%増の5859億円とまずは堅調だったが、海外分(アジア、米国、欧州)は1920億円で、売上高比率は32.8%と低い。洗剤、石鹸、柔軟剤なども広範囲に事業展開を行う企業だが、これまでの国内メイン政策が影響しているようだ。

2社に次ぐコーセー、ポーラ、マンダム等々を追ってみても、とりわけて突出して特性を正面に押し出しているメーカーもなく、まずは資生堂、花王を上回るグローバル展開策はないとみたい。既存の日系メーカーに海外市場での飛躍が期待できないならば、新規に異業種から参入してきた富士フイルム、味の素がどうかという話もあるが、さてどうか。

富士フイルムはスキンケア化粧品「アスタリフト」の新シリーズを出したのを機に、これまでの通販やドラッグストア、GMSでの店舗販売だけでなく、六本木や銀座の社直売店や百貨店の対面販売を強力に推進、20年度のライフ・サイエンス事業(化粧品、健康食品など)で500億円をめざす方針だ。ただ、まだ製品の売れ行きの実態や全体像が見えない

味の素は肌の保湿性があるアミノ酸を活用したスキンケア「JINO(ジーノ)」を展開しており、2018年度の売上げ目標は10億円としている。業界参入は1997年とすでに20年余が経過したが、本業で培った技術の応用という強みを活用させているとはいえ、まだその程度の売上げであり、コスメブランドとしての飛躍は期待薄といえよう。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。