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プラットフォーマー“GAFA”による「市場独占」阻止の条件

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プラットフォーマー(巨大IT企業)が、世界で猛威を振るうようになった。その代表格はグーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)だ。それぞれの頭文字をとってGAFA──。

ネット通販、検索・通信などの利用者の激増を背景に、それぞれの中心事業でマンモス化し、いつのまにか各国の経済市場をリード、席巻する存在となりつつある。

既存の業者保護のためEU諸国はじめ各国政府は、その監視・規制強化や適正な課税のあり方などの真剣な討議に入っているが、総じて力不足の感は否めない。
中でも、規制では決定的に出遅れた日本。

騎虎の勢いに乗るIT巨人の実態、対する国際包囲網の現状などを追ってみた。

見せつけたGAFA4社のケタ違いの成長力

巨大IT大手、GAFA4社の業績は驚異的な成長を遂げている。それぞれの2017年売上高は、コアビジネスや元々の規模の違いなどによる格差はあるものの、この10年間でグーグルが5.1倍、アップル6.1倍、フェイスブック149倍、アマゾン9.3倍に拡大した(東洋経済新報社調べ)。

17年末における米国株式市場の時価総額ランキングでもトップ5の中に4社すべて名を連ね、改めて存在感を示した。最近の時価総額でもアップルの1.1兆㌦(約125兆円)に続きアマゾンも9月初旬にニューヨーク市場で1兆㌦(約113兆円)を突破し、アップルに肉薄している。

直近2018年7~9月期の売上高にしても、トップを走るアップルが前年同期比19.6%の増収、31.8%増益に達したのをはじめ、各社とも揃って増収増益を確保した。半年前、大量のユーザー情報が流出で窮地に立たされたフェイスブックにしても対策費用が嵩んだが、それでも7~9月期の最終利益は9%の増益を計上した。

強みはプラットフォームに収集されたビッグデータ

ともかく先行した今やGAFAはグーグルの検索エンジン、アップルのスマホ、フェイスブックのSNS、アマゾンのネット通販など、一般の人たちの生活にすでにすっかりお馴染となった提供サービスで圧倒的な支配力を示すに至っている。

プラットフォーマーというのは、ネットサイトの利用者を対象に販売や広告などのビジネスを展開したり、情報発信したりする際のサービスやシステムといった基盤(プラットフォーム)を提供するIT企業のことを指す。この基盤に集まっている膨大なデータを元にサービスや広告を配信できることこそ、大きな強みとなっているのだ。

逆に言うと、スマホ向けに販売・広告などのコンテンツ提供を行う企業は、たとえばアプリストア収入の30%という高率な「基盤利用」手数料を取られることになる。不満でも利用者側の権利を主張できるきちんとした法制度もない。

なかなか特定できない “独占的状況”や“競争阻害的行為”

GAFAが成長を遂げた理由を追ってみよう。

拡大を継続できる理由の1つは、GAFAの「独占」を見極めがたい点にある。
つまり規制に引っかかる“独占的状況”とは、巨大企業の事業や商品が、そのカテゴリーの市場や市場構造に何らかの弊害(デメリット)を起こす事象があることがまず起点になるのだが、GAFAのビジネスは事業領域が目まぐるしく変化するため、捕捉しにくいというのがいわば盲点になる。
理由の第2は、競合企業を市場から排除したり、取引先に対して優越的地位を濫用したりするといった「競争阻害的行為」がなかなか特定できない点にある。

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方針の修整や撤退などが容易なデジタルサービス

たとえば日本でいえば量販店にも街中の小売店にも共通のNB(ナショナルブランド)製品が置いてあるから、阻害行為があれば捕捉しやすいが、その点GAFAの場合、ネット上で提供商品・サービスは限りなく多様化、細分化、そして個人に合わせてカスタマイズされており、比較しにくく消費者や関係企業からの告発も生じにくい。

理由の第3は、デジタルサービスの変幻めまぐるしい即応体制にある。事業や商品のベースにリアルな設備や生産工場があるわけでないので、方針の修整や撤退はきわめて容易な点だ。当局の調査が入っても、それ以前にサービス修整がされており、処分にまで至らないケースも多い。

その点、サービス構築もスピーデイだから、“独占”に至る時間も限りなく短期間。あっという間に市場がこれら巨大IT企業によって独占されてしまうリスクも、実際に最近われわれも目にしてきた現実である。欧州諸国のいらだちはこの辺にある。

EU中心にGAFA包囲網の強化へ

だが、逆風も吹きはじめた。まず欧州連合(EU)が動いた。
改めてGAFAの軌跡を追跡したとき、市場シェア拡大の手口は過去の独占企業と全く酷似している事実に、EU各国の規制当局は今さらのように愕然とした。

とくにEUが最も神経を尖らせたのは、GAFAによる市場独占がもたらす弊害にある。GAFAの取引先との関係や税負担のあり方などに監視を強める方向に舵を切り、遅ればせながらこれらプラットフォーマーに対する包囲網の強化に向かいはじめた。

もちろん大量のデータを独占し、支配力の拡大をほしいままにしているビジネスモデルへの不信感が背景にある。GAFAに狙いを絞った規制(条件づけ)から手を付けているので、現象としてはEU対GAFA、つまり欧州vs米国という図式である。

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まず課税、規制(市場独占)のスキームづくり着手

きっかけは、16年秋の米大統領選挙でフェイスブックやグーグルが選挙工作に利用されていたという疑惑(いわゆるロシア疑惑)の浮上にあった。次いでアップル、アマゾンの“課税逃れ”容疑が次々と露出されたことだ。さらに最近ではフェイスブックが8700万人の個人情報を流出して世界を揺るがせた。

まずEUは監視の枠組みとして、徴税のスキームづくりに着手している。
もともと国際課税では、海外の企業や工場などの施設に課税するのが原則である。だが、プラットフォーマーには、こういった施設を基本的に持たないのが通例なので、EUはこのほど売上税の性格を持った暫定案を提示した。EU域内の売上げが5000万ユーロ超のデジタル事業者が対象だ。英国でも10月、デジタル課税(売上高×2%)の導入を公表した。

ただ、このスキームも各国バラバラが実態。今のところこれら各国の規制、課税などの基準が集約される見通しは立っていないし、進捗状況の足取りもきわめて鈍い。

欧州委による制裁金、違法脱税への追加徴税を敢行

この動きに対してGAFAを抱える米国は「われわれのIT企業を標的にした一方的で不公平な売上高の課税導入の動きには強い懸念をもっている」(ムニューシン国務長官)と牽制、一筋なわでいかない雲行きである。

EUの執行機関である欧州委員会はこの7月、グーグルがスマホ市場での支配的な地位をタテに、スマホ向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を使う端末メーカーに、他社のアプリを排除するよう迫っていた事実を認定。グーグルに対し43.4億ユーロ(約5600億円)の制裁金を課した。

また、目を光らせているのは、タックス・ヘイブン(税率の低い国や地域)に置く子会社に利益を集中化する“租税回避”だ。欧州委は16年8月、アップルがアイルランドで受けていた税制優遇が、国際的に違法に当たるとしてアイルランド政府に対し、アップルにマクシム130億ユーロ(約1.8兆円)の追加徴税を行うよう命じた。

問題意識も薄く決定的に後れを取る日本

日本は、対応で決定的に後れをとっている。周回遅れといった方がよい。昨年5月にやっと改正個人情報保護法が施行されたものの、欧州の制裁金が2000万ユーロ(約26億円)、もしくは世界売上高の4%を科すのに対し、日本は最もおもくても1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金にすぎない。

独禁法の観点からも、この11月になって公取委が巨大IT企業について「省庁横断で規制を検討する必要がある」(杉本和行委員長)とし、年明けにも大規模な実態調査を実施する方針を示した程度だ。まだ入口でウロウロしている印象がある。今年3月に公取委はアマゾンに協力金に関する立ち入り調査を行ったはずだが、その言及は一切なかった。

いま世界は急速にハードウエアからソフトウエアへと価値のシフトが起き、モノづくりをベースとした「メーカー思考」から「プラットフォーム戦略思考」へとパラダイム転換が求められているのだが、日本には抜本的にその土壌が欠落しているのではないかとさえ、思われてならない。

toyokeizai.net

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。