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米(コメ)価格の4年連続上昇と減反廃止の先に見えてくるもの

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コメ消費量が毎年じりじりと減少してきているのに価格が上昇するのは、需要・供給の関係からいって奇妙なことだが、実は国の「減反政策」による特異な現象だった。
また、今年で減反政策は廃止されたのに依然として、飼料用米の生産には補助金が支給されるという矛盾を孕んだままの農業行政が進行中だ。農家にも戸惑いがみられる。

そして、ついに今年で4年連騰となったコメ価格。家庭用米は減る一途だが、外食・小売業界向けの業務用米の需要は高まるばかりという状況が実態だ。
日本農家の実態を浮き彫りにしながら、今後の課題を追ってみた。

コメ価格の4年連騰の主因は主食用米→飼料用米への転作に

コメ価格は値上がりする一途である。卸売価格(全農→卸売業者の引渡し価格)でみると、2015年10.0%、16年8.6%、17年8.2%と毎年着実に上昇、今年18年産の価格にしても、国による減反(生産調整)廃止にもかかわらず増産の動きは一部地域に限定されているため、値上がりが確実となった。4年連続の上昇である。

値上がりしている主な原因は、稲作農家が“主食用米”(家庭用や業務用)ではなく、家畜のエサに使う“飼料用米”に作付を転換してしまったからだ。この振り替わりが生じたのは、飼料用米に転作すると国から手厚い補助金(転作助成金)が支給されることにあった。

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出典:農林水産(米政策)

コメの生産調整(減反)は、1971年以来、国がずっと継続実施してきた政策である。人口減少と洋食化によるコメ離れが進み、コメの供給過剰が一般化したことから、農家の生活保護のためにもコメの価格の下がりすぎを阻止しなくてはならなかった。国策として生産量を抑制するものだった。

国民1人あたりのコメ消費量はピーク時の半分以下に減少

つまり減反政策とは、農家にコメ生産を減少させる代償として転作助成金を与えるという制度だった。減産ならコメの価格は上昇する。何とか農家の販売収入や農協の販売手数料は、これまで以上、悪くても従来どおりの水準を確保させるという苦肉の策でもあった。農家にしてみれば、助成金を受けた上で米価も上がるのだから目先、支障はない。

一方で、国内のコメ離れが進んでいるので、ますます農家は主食用米づくりに消極的になる。事実、国民1人あたりのコメ消費量は、農林水産省の公表数字によると1962年度の118kgをピークに減少し、昨17年度には54kgと半分以下となった。それに輪をかけているのが平均年齢66.7歳という高齢化の影響だ。

家畜のエサとなる飼料用米への生産転換は、助成金付きという“お墨付き”があって激増の一途をたどった。主食用米が不足するのは当たり前の話でもある。だが問題なのは、主食用米のうち外食や小売業界の弁当向けなどの業務用米が不足する事態である。

主食用米中の業務用米の需要比率は約4割、拍車かかる不足

単身・共働き世帯の増加による需要の高まりから、主食用米に占める業務用米の需要比率は約4割と高い割合になっているのだが、業務用米は家庭用に比べ、出荷価格が安いことから、農家はなかなか生産に手を出そうとしない。ますます不足に拍車がかかる原因となる。

東北や北陸などのコメどころでは、高く売れるブランド米をつくる動きが目立っているが、一方で、増産による値崩れを恐れ、生産を抑える農家も少なくない。現に農林水産省が9月に公表した18年度産の主食用米の作付面積にしても、前年比1%増の138.6㌶にすぎなかった。

今年の主食用米の予想収穫量732万㌧中、業務用米は100万㌧近く不足するといわれており当然、業務用米の値上がりも顕著だ。最近では大手外食チェーンや小売業界で、やむをえず業務用米の代わりに割高な家庭用の主食用米を使うケースも増えてきた。今後は輸入米に切り替えが進む可能性も出てきている。

外食用や中食向けに業務用米の需要の高まり映し価格上昇へ

ちなみに業務用米に使われるコメの価格は、2014年に60kgあたり1万0448円だったのが、昨17年には1万5104円と45%上昇した(22銘柄平均、日本炊飯協会調べ)。「魚沼産コシヒカリ」など家庭向けブランド米を含めた全銘柄の平均と比較すると、14年は1519円の価格差があったが、昨年には486円にまで縮小している。

外食用や中食向けを中心に業務用米の需要は高まる一途にあり、それに呼応して価格も値上がり傾向が強く、18年産はさらに価格差が縮まったと業界ではみている。それに伴い米国産など低価格の輸入米に頼る動きも広がりつつあり、吉野家(牛丼チェーン)ではすでに昨春から輸入米に切り替えた。

メニューや商品の値上げに踏み切る動きも広がる。牛丼チェーンでは「すき家」に続き「松屋」がこの4月、並盛を税込み290円から320円に。「てんや」では税込みで“ワンコイン(500円)天丼”定食がウリだったが、年初から540円に改定した。パックご飯大手の佐藤食品工業もメイン商品「サトウのごはん」を30年ぶりの値上げに踏み切った。

飼料用米の転作拡大にこだわる本当の理由

さて、現在のわが国の農業政策にはさまざまな点で問題点が指摘される。
まず家畜エサ米となる飼料用米の大幅増産への分別なき拡大だ。転作奨励の結果として、飼料用米の作付面積は今年度ついに8万㌶と、大幅に拡大したのが確認できる。そこまでして飼料用米が必要なわけがない。

もし国内で畜産用に飼料が必要なら、コメにこだわることはない。トウモロコシや小麦でもよいわけだ。しかも飼料用米の10㌃あたり0.9万円に対し、トウモロコシの場合は3万円強、小麦は4.3万円と主食用米とほとんど変わらない所得が確保できる。費やす労働時間もはるかに少なくて済む。財政面からみても転作助成金は飼料用米よりずっと少なくて済む。

何のことはない。国が飼料用米への転換に過度の補助金を出しているから、こういったいびつな現象が生じているのである。減反制度は今年から廃止したものの、実際には飼料用米を生産している農家には、いまも最大10.5万円が支払われている。農家を保護している点では、従来の減反制度と少しも変化していないとの批判も多い。

主食用米の生産抑制のための転作奨励策でよいのか

主食用米の国内需要は中長期的な減少傾向が続いていることから、主食用米の生産を抑制しなくてはならない状況にあるのは理解できるものの、飼料用米への転作が、見てきたように手厚い補助金(転作助成金)によって誘導されている事実は、やはり首をかしげざるをえない。

第一、 国からの助成金を主な収入源にしているようでは、今後の農家の経営発展は期待で
きるものではあるまい。その意味でまず着手しなければならないのは、飼料用米向け助成金の減額や廃止をベースに、将来に向けての農家の生産体制の整合性ある合理化の道を検討すべきではないかと思われる。

そのためには政府や自治体としては、単位面積当たりの収穫量が多く、低価格でも利益を出せる業務用米の品種開発などに、積極的な注力をする必要があろう。また外食・小売企業と農家の間に介在して、農家に安定収入を得るための契約にまでこぎ着ける仲介役を買って出る方法も有効ではないだろうか。

看過できぬ転作助成金(税金支出)、米価値上がりという二重負担

率直にいって、農水省はとにかくコメの生産を減少させればよいと、飼料用米への膨大な転作シフトを見て見ぬふりをしてきたきらいがある。そのために年間3000億円を上回る巨額の税金が減反・転作に投入されてきたが、強いて目をつぶってきたと思えてならない。

だが、米価は確実に上昇しているのだ。一般国民はそのための税金が助成金という形で農家に流れていっているのに加え、米価値上がりという負担増加という二重の負担を余儀なくされている理屈になる。やはりこれは看過できない性質のものだ。

ともかく避けることのできない主食用米の需要減については効果的な転作を進めていく必要があるが、もう飼料用米への過剰な転作誘導はやめるべきだろう。これから先は、行政目線ではなく、農家が本来の農業的な切り口で「適地適作」を見極めながら、わが国の誇るべき技術を駆使した生産性の高い農業を目指すべき、とみたい。

www3.nhk.or.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。