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ドラッグストア業界、さらなる高成長への「勝利の方程式」

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ドラッグストア各社の業績が好調だ。
着実に右肩上がりの成長を続けており、百貨店、量販スーパー、コンビニ業界に取って代わり、急ピッチに消費市場のリード役に変貌しつつある。

高い収益力をもつ医薬品や化粧品を扱うドラッグストアは、日用品や食料品のように誰でも参入できる業界にはない点が強みだ。また高齢化社会への移行にともなう健康管理、セルフメディケーション(自己治療)意識の高まりにもフィットする業態という背景もある。
現状を踏まえながら、将来性を展望する。

百貨店の市場規模を追い抜き、次の照準はコンビニ業界

昨2017年度のドラッグストア業界・売上げ総計は前年度に比べ5.3%増の6兆0305億円。
百貨店業界の売上げ5.9兆円(0.1%増)をついに上回ったことで、次はコンビニ業界を追撃することとなる。ちなみに百貨店業界は08年に8兆円を割り込んで以来、低迷のままじり貧傾向を継続しており、成長力の比較でもまず今後の失地挽回は無理とみてよい。

ドラッグストア、コンビニエンスストアの売上高推移(過去3年間)
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引用元:SCIENCE SHIFT

コンビニ業界の昨年(2017年度)売上げ総計は11兆円余と、まだドラッグストア業界とは倍近い隔たりがあるが、業界伸び率の比較ではドラッグストア5.3%:コンビニ2.5%と開きがあり、完全に射程距離に入ったと見るべきであろう。

業界の大手としてはウエルシア、ツルハ、マツモトキヨシ、サンドラッグ、コスモス薬品などが挙げられるが、図抜けた存在はなく群雄割拠といった状態である。M&A(企業の買収・合併)や新店舗拡大の成否、ビジネスモデル展開の消長次第で、慌ただしく上位が入れ代わるなど、毎期激しいツバぜり合いが続いているのが実態だ。

業界大手は増収増益ベースで揃い踏み

ウエルシアHD(イオン系)の2018年2月期は、売上げが6953億円と前年比11.6%増、営業利益が同19.7%増、純利益(172億円)は連続最高値更新。店舗数は前期で82店増え1559店舗となった。最近発表された8月中間期も前年同期比13.7%増収と順調、通期では12%増収、10%の営業利益増をめざす。

ツルハHDの18年5月期は、買収した㈱杏林堂グループHDの業績寄与により、売上げ6733億円と前年比16.7%増、営業利益は同8.5%増。店舗は176店増で1931店舗(前期末)。今年度は10%増収、営業利益で3.9%増益を期す。「2024年5月期、3000店舗、売上げ1兆円」が合言葉だ。

マツモトキヨシHD は2016年度にウエルシアに抜かれたが、それ以前は22年間にわたって業界首位にあった。前期の18年3月期は4.4%増収の5088億円、営業利益も6.0%増益と堅調。9月中間期の速報も営業利益は前年同期比で8%増(170億円)に達した模様だ。収益力の高い訪日客相手のインバウンド売上げ増大に注力して首位奪回を窺っている。

価格競争が起きにくい医薬品中心の扱いで消費市場をリード

このようにドラッグストアに勢いがあるのは、自由な競争市場スーパーやコンビニでは扱えない医薬品販売が可能という特殊性にある。医薬品を販売するためには、薬剤師など専門知識をもった人材が必要条件だからである。

その専門性という壁があるために、収益率の高い医薬品という垂涎の対象にも、業者は切歯扼腕、手を出せない。だが、さらなる高みを目指してドラッグストア各社は日用品や食品も扱い、それも消費者の飛び付く安い値段で売りまくり、顧客を誘因するという有利な戦いを展開中だ。

赤字覚悟の値札をつけるのは、もちろんスーパーやコンビニから客を奪うためである。超安値で売る日用品、食品は“客寄せ”の手段だ。まず客を引き寄せておいて、あとは利益を出る医薬品で稼げば十分採算が取れる思惑である。

news.livedoor.com

食品、トイレタリー・日用雑貨の拡大で量販店、コンビニ領域を蚕食

実際に、ドラッグストアでのトイレタリー・日用雑貨の占める割合は、およそ売上げの3分の1というウェイトである(前期の業界売上げ構成比は32%)。しかも毎年、売上げの5~6%の伸びと並行するように拡大を続けていることだ。また食品も全体の3割強を占める上に、ここ数年は年率7~11%の成長を遂げている。

つまり、この事実はコンビニ業界の最も中核をなしているファストフードや食品部分、またトイレタリー・日用雑貨が、ドラッグストア各社の猛攻でかぶり4つの競合に晒されているということを意味する。コンビニだけではない。量販店、食品スーパーとの垣根もお構いなしに飛び越え、蚕食し続けてきているのである。

事実、一部の地域のドラッグストアでは、すでに本格的に生鮮食料品までも扱いはじめており、今後もこの傾向は加速しそうだ。

連携・M&Aなどによる“規模メリット”効果を活かす成長へ

ドラッグストア業界の成長を決定づけるファクターの1つは、M&Aによる成長だ。“規模によるメリット”を働かせるやり方である。売上高規模が大きければ大きいほど、仕入れ先からの購入金額が大きくなるため、相手に対する価格交渉でのプレッシャーが強くなる。その分、仕入れ単価を値切ることが容易となるのだ。

たとえば、ツルハでは前期、130店舗の新規出店と35店舗の閉店を実施したが、昨秋に子会社化した杏林堂グループHD傘下のドラッグストアと調剤薬局78店舗が新たに加わったことによって、最終的には前述したように直営が1931店舗と拡大が加速、18年5月期の16.7%増収の原動力となっている。


ドラッグストア各社が自社店舗の拡大だけでなく、地域の調剤薬局を買収し高成長を続けてきたのも、その規模のメリットを見込んだからである。この点からも今後ともに同じ業態間における買収にとどまらず、他業種との連携やM&Aも一層、激化することになろう。

焦点はやはりビジネスモデルの変容を迫られているコンビニをはじめ、量販店や食品スーパーなどの既存の消費王国を築いてきた勢力が、成熟期を迎えその対応にモタモタしている間に、力をつけ勢いに乗るドラッグストア業界に蚕食されていく構図が予想されることである。

www.ycg-advisory.jp

得手の一般医薬品は17年度売上げ比率14.3%と高水準

だが、究極のドラッグストアの強みは、価格競争が生じにくい医薬品を中心に扱っていることにある。その医薬品も購入には処方箋が必要な調剤医薬品と、処方箋ナシで購入できる市販薬など一般用医薬品(OTC医薬品が正式名称)とに分類されるが、後者の一般用医薬品はドラッグストアが最も得意とするカテゴリーでもある。
2017年度の数字でも、業界の総売上げに占めるOTC医薬品の割合は、実に14.3%と高水準だった(ちなみに調剤医薬品の割合は6.4%)。

一般医薬品のうち胃薬、風邪薬などはコンビニでも扱っているが、ダイエット薬、育毛剤や視力回復薬、筋肉増強薬、精力剤などといった類い(OTC医薬品の第2、第3類)になると、ドラッグストアのまさに独壇場だ。しかも高値でもユーザーはさして抵抗感なく購入していく傾向が強い。

将来への伸びしろ大きい調剤分野

大手ドラッグストアが注力している調剤事業はどうか。
調剤事業はとくにここ数年、着実に年に2~3%ずつ伸長しているのが特徴だ。収益性が高く魅力分野に違いないのだが、まだ全体の売上げの中では6~7%を占めるにすぎず、それだけに今後の伸長する余地は大きく期待できる。

保険薬局とドラッグストアとの間の垣根は低くなっているのに加え、薬局の個人経営者による売り込みが増加しつつある。そんな背景がある上に、8~9兆円規模といわれる調剤市場(16年時点で7.8兆円)であるだけに、ドラッグストア業界による囲い込みは、ますます進むことになりそうだ。

健康増進センター、情報拠点機能のフル活用への期待

調剤薬局や病院薬剤師がすでに医師にかかる患者を対象とするのに対して、ドラッグストアの場合は「予防医学」との観点からも、地域住民の健康や暮らしを支えるといった重要な役割を担うものだ。今後一層の高まりを見せてくる健康志向、未病対策とともに、とくに地域住民のシニア層を中心に期待される存在となるのは確実とみてよいだろう。

高齢化の進行とともに、住民目線によるセルフメディケーション(自己治療)の傾向も今後つのる一途であり、健康増進センターとして、地域住民の最も身近な相談拠点、健康維持や病気の治療についての情報ステーションとしての機能をフル発揮する方向に進むことが望まれる。

コンビニや保険薬局との併設店舗といった異業態とのコラボによる事業拡大を期していく方向も考えられる。業態間の激しい競合が進む中、好調な推移を続けているだけに、時流に則した今後の方向には特別な期待と関心を持って見守っていきたい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。