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岐路に立つコンビニ業界の多店舗政策──その実態と今後の課題

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コンビニは生きていく上で不可欠な “生活インフラ”の位置づけとして全国どこに行っても店舗が存在し、シャッター通りと化した商店街に代わって果たす役割は大きい。
コンビニ店舗の「国内“5万店”限界説」が唱えられてきた中、2018年9月末現在で5万5463店に達した。前年同月比でわずか0.8%増、来客店数は全店ベースでマイナス0.5%(日本フランチャイズチェーン協会 JFA調べ)と、いよいよ飽和点に達した印象がある。

スーパー業界から「失地回復」を狙った攻勢、またドラッグストアやネット通販などの異業種からコンビニ領域への侵入も激しくなってきた。業界の実態と課題を追跡する。

頭打ちとなってきた国内コンビニ事業

出そろったコンビニ業界の大手3社の上半期(2018年3~8月期)業績は、いずれも増収増益。直近9月度のコンビニエンスストア統計調査月報(10/22発表)でも、業界の売上高は全店ベースで前年同月に比べ5.2%増、67ヵ月連続のプラス。既存店ベースでも同3.5%増と4ヵ月連続のプラスと、各社とも全体の業績をみる限り順調の推移である。
だが、悩みの種は主力のコンビニ事業が頭打ちとなっていることだ。

まず業界トップを走るセブン&アイHDのケースからみてみよう。
企業全体の上半期(3~8月期)連結業績は、売上高が前年同期比11.9%の増収、営業利益は同2.6%増益といずれも過去最高を更新したのは、米国でのコンビニ事業が順調に伸びたのに加え、総合スーパー(GMS)事業のイトーヨーカ堂がオリジナル商品の販売や食品売り場の強化策などが奏効したのが要因だった。

www.nikkei.com

各社とも既存店が低迷気味に

だが、国内コンビニ事業、セブン-イレブン・ジャパン(以下セブン)の営業利益に絞れば、1274億円と2.5%の減益だ。既存店売上げは1.4%増と堅調だったが、17年秋に強行した加盟店に対するチャージ料(経営指導料)の引き下げ(1.0%)が響いて減益を招く一因となった。

他のユニー・ファミリーマート(以下ユニー・ファミマ)、ローソンなども似たような事情が続く。ユニー・ファミマHD自体は売上げ1.3%増、営業利益18.9%増と増収増益。だが国内コンビニ事業は、ユニー傘下だったサークルKサンクスからのブランド転換店(7月現在490店舗増)で営業利益増に寄与したものの、ファミマ自体の既存店売上げとなると0.4%減となっている。

ローソンの上半期は、新規出店効果や成城石井事業の伸長などで売上げは前年同期比7%増となったが、純利益は人件費や地代家賃など販売管理費の増加で同24%減。既存店売上げは0.8%減と微減。新型POS導入のコスト負担が響いたものだ。

コンビニ「御三家」で全店舗の9割近くを占める

これまでのコンビニ業界の成長は、新規出店の拡大によってなされてきた。
事実、この9月末現在のコンビニ店舗数5万5463店は、10年前の2008年9月末現在、4万1568店が着実に毎年増加し、この10年間で約1万3900店、33.4%増えたものである(JFA調べ)

セブンは1月末に2万店舗を突破したことで記念商品の発売や従業員の制服の刷新などを打ち出したように、コンビニ業界全店舗の4割近くを占める。次いでユニー・ファミマの1万7000店舗、ローソンの1万4000店舗と続く。この大手3社で業界全体の9割近くを占めていることから、コンビニの「御三家」とも呼ばれている。

だが、旺盛な出店攻勢もここにきて頭打ちの様相が強い。上述の5.5万店余の店舗数も前年9月に比べわずか0.8%増(457店舗増)にすぎず、いよいよ飽和状態に近づいた印象だ。

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出典元:ガベージニュース

顧客のオーバーラップする商圏内での「共食い」競合へ

意欲的な出店経営によって、キャパ拡大とともに調達コストの削減などが期待できる一方で、ますます稠密化するコンビニ店同士の顧客の奪い合いが当然発生、既存店の来客数の減少に歯止めがかからなくなる傾向も出てきている。

とくに最近の特徴として挙げられるのは、ドミナント(集中)出店である。自社店舗が互いに食い合うケースだ。今後、人口減少が進むことを前にすれば、顧客のオーバーラップする商圏内での競合は、まさに「共食い」となる危険性がある。それでなくとも店舗オーナーは、運営コストを度外視し、身を削っての経営を続けている場合が多いからなおさらである。

明確になったのは、従来の多店舗政策というビジネスモデルのままでは限界にきたということだ。すでにフランチャイズのオーナーたちは、既存店や新規店を問わず、来客店数が従来よりジワリと落ち込んできている現実に気が付きはじめている。遅かれ早かれこれまでの店舗拡大路線は修正を余儀なくされることになろう。

激化する一途の異業種からの領域参入

また、これまでどおりの出店攻勢を掛けられない理由として登場するのが、業界の垣根を越えた競争が激化しはじめたことだ。Amazonに象徴されるネット通販の台頭、さらにドラッグストアによる中食、生鮮品などの領域への侵食である。とくに気になるのは来客数の減少だ。全店ベースでもこの9月末の数値はマイナス0.5%(JFA調べ)と減少に転じている。

もっともコンビニ各社は、ユーザー目線でのスイーツやコーヒー、から揚げなどの惣菜商品、弁当や日配食品などもひと工夫して打ち出すなどによって、来店客数を伸ばしてきた経過があるが、雑誌・書籍、医薬品、化粧品などの非食品カテゴリーについては落ち込みが激しい。ドラッグストアの安値による切り込みが特に最近目立つ。

ECサイト活用のネット商法では、幅広い商品ラインナップを画像にそれこそ無制限に紹介する魅力で、コンビニ客を引き寄せる。またイオンが始めたレストランと融合したグローサラント型店舗(注)も、今後“スーパーの逆襲”の布石として不気味な存在となりそうだ。

(注)グローサリー(食料品)とレストランとを掛け合わせた言葉。スーパーで販売する食材でレストランのように調理したメニューが楽しめるコーナーのある業態を指す。

business.nikkeibp.co.jp

商品開発・改良に向け多彩な努力を展開する各社

従来からコンビニ各社の客数増への懸命な努力は、商品開発・改良に向けられており、それなりの実績を挙げてきている。

たとえばセブンが最近取り組み目立つ成果を上げたのは、賞味期限の長期化だ。セブンの専用工場の製造工程をオートメ化して外気に触れる時間を減らすことに成功、賞味期限が長くなった。これまで1日半だったサラダや惣菜の賞味期限は2日半に延び、加盟店の廃棄リスクは劇的に改善されている。

ユニー・ファミマでは焼き鳥など中食の商品強化したほか、コーヒーマシンを改良し、コーヒー売上げを10%強、増加させている。また業態を超え連携を強化したドンキホーテとの共同店舗を6店舗オープン、すでに3~7月実績で売上げ190%、客数170%、粗利益160%の実績を挙げ、業界の話題となった。

ローソンで注目されるのはオフィスコンビニ、「プチローソン」だ。昨年7月より交通系電子マネー専用の設置型オフィスコンビニとして導入をスタート。まだ展開エリアは東京23区内だが、1年経過した18年7月現在、513ヵ所に達している。今後はオフィスにとどまらずホテル、病院などへの拡大が期待される。

山積するコンビニ業界の課題

今後のコンビニ活用としては、宅配便やネット通販の受け取り拠点としての機能が期待されるのだが、どうか。荷物の保管スペースの確保、従業員の手間賃をどうするかなど、考えるべき問題は少なからずあるが、住民と最も近距離にある業態という点でも、コンビニは最適といえよう。

なお、業界のECサイト(ネット通販)へのアプローチは、今のところほぼ絶望といってよい。経済全体がネット社会にシフトしていく中にあって、コンビニ業界のネット対応の遅れは致命的なのだが、その見事なほどの“無関心”を放置したままでよいはずはない。たとえば「無人レジ」にしても、研究テーマに入ったという情報すらどこからも聞こえてこない。

商品にしても、かつての牽引性に欠ける。どこの店舗に行っても同じメーカー品が横並びで、商品にオリジナリティや訴える力に不足する印象が強い。2013年7月の発売以来、累計で40億杯を突破した「セブンカフェ」のような超ヒット商品の出現は絶えて久しい。これまでのビジネスモデルの再検討など、ともかくコンビニの課題は山積している。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。