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小売業界の格段に進むPB戦略で忍び寄る「メーカーを支配する日」

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小売業者が自ら企画・開発したプライベートブランド(PB)──。
メーカーが支配する市場に対抗して、狼煙を上げた中内㓛が創業したダイエーによる“小売革命”の後、PB製品は独自な販売商法の1つとして模索・拡大をし続け、今ではメーカー側のナショナルブランド(NB)製品に代わって時代の主役に転じつつある。
一方、eコマースの膨張、「無人コンビニ」が急増していく流れの中、今後のPB展開は未踏の領域に足を踏み入れようとしている。PBはどんな変貌を遂げていくのだろうか。

PBの嚆矢はダイエーが突き付けた挑戦状だった

流通業者による最初のPB商品は、大丸ブランドの紳士服発売(1959年)で、アパレルメーカーでない販売側が製造に乗り出してきた例として話題を呼んだが、60年代に華々しく登場したのがダイエーの創業者・中内 㓛だ。自ら“価格破壊”と豪語、「価格決定権を、メーカーから消費者に取り戻す」と明確な挑戦状を突き付けての登場だった。

「ダイエーみかん」や「ダイエーインスタントコーヒー」などのほか、東洋紡との協業ブランドの「ブルーマウンテン」などを打ち出す一方で、松下電器産業(現パナソニック)による価格締め付けに対抗して、中堅家電メーカーに製造させた13型カラーテレビ「BUBU」を同型商品の4割も格安の5万9800円で売り出し、世間の話題をさらった。

このダイエー(中内㓛)VS松下電産(松下幸之助)のバトルは、いわば小売り側のPBとメーカーのNBとの典型的な対決の始まりということができる。当時は常識的だった小売業界へのメーカー支配に対して、中内ダイエーは一石を投じたのだ。

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量販店中心に「NBとの協調タイプ」のPB製品が一般化

PB製品は大まか2つのタイプに分けられる。
1つは「メーカー製品(NB)対抗」タイプだ。消費者寄りの、良質で適正な価格、魅力ある商品の販売をモットーに自らPB開発に専念する生活協同組合のコープ、またSPA(生産機能をもつ小売業)形態をもつユニクロなどが挙げられる。上述のダイエー「BUBU」もこのタイプに入る。昨秋ZOZOが打ち出したPBもこの部類といえる(後述)。

2つ目は「NB製品との協調」タイプだ。すでに一定の評価・実績を遂げているNB製品の製造能力に依存する形でのPB商品で、ブランド名はもちろん、形状、風袋(量目)、デザインなどNB製品とは違ったものにして差別化しているが、価格はNBよりは低価格なのが通常である。中にはPB自体にメーカーの名前が堂々と表示されているものもある。

最近では、このメーカーとの協調タイプのPB製品が増えている。代表例として挙げられるのは量販店関連だ。「セブンプレミアム」(セブンイレブン)、「トップバリュー」(イオン)、「みなさまのお墨付き」(西友)。ほかにも専門店、ドラッグストアでも続々と当タイプが著増中だ。

ドン・キホーテでは「情熱価格」というPBカテゴリーである。食品から家電製品まで幅広く展開中で、大手メーカーとの共同制作が多い。マツモトキヨシの「MKカスタマー」も医薬品から化粧品、日用品、食品に至る2100品目に上るPBだが、むしろ大手を意識した高額ブランドで対峙しながら、一定の成果(年商400億円)を上げているのが特徴である。

小売サイドがPB製品に熱中する理由

小売サイドがPB商品を企画・開発することに熱を入れるのは、仕入れ価格(原価)が安くできて高い粗利益が期待できるためだ。ユーザーに向けての宣伝コスト(媒体へのCM・広告など)や卸売り業者に対しての営業費用が安く抑えられる。商社、代理店などへの流通経費はほぼ不要だからである。

それに小売り側は店頭販売で年中、しかも直接、消費者に接しているので、客の購買動向や新製品評価はスピーディに確認できる。
逆に言うと顧客の願望に即応したPB商品を企画・販売できることになる。店頭販売という足場をもたないメーカーのNB製品では、とてもできない芸当だ。

とはいえPB製品はいいこと尽くめではない。全量買い取りのため売れ残りが出ても返品できず、転売も不可能だ。それに、追加生産のタイミングを間違えると、長期間品切れになったりするので、在庫管理・調整にも徹底した配慮が求められる。NB商品のように返品がきかないし、全ての責任は当然、小売り側が背負うことになる

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協調するメーカー側の損得勘定は?

ではメーカー側にとってPBはどのような存在として位置付けられるのか。
小売り側と協調して生産を請け負う場合は、メーカー側にとっても利点は多い。一定量のPB製品の生産が約束されることになり、閑散期でも工場を稼働させられる。それに小売業者との協調によって、貴重な末端情報データが入手し易くなるという利点もあり、NB開発上のプラスが期待できる。

だが、被るデメリットとして挙げられるのは、並行して生産しているNB商品の売上げが減少するリスクだ。当然ながら受託生産の依存度が高まってくると、NB製品の営業力は低下してくるし、工場の稼働率も小売店サイドの発注量に左右されるようになる。
それに小売サイドの要請した規格との間に誤差が生じた場合、商品の受け取り拒否をされることがある点だ。とりわけ食品でこの問題が発生したときは、転売はもちろんのこと、中身の詰め替えもできず、そのまま処分せざるを得ない事態も出てくる。

PBへの主役交代も予測付かない今後のeコマース変貌

PB製品を介した協業では、小売り側が利するケースが多いようだ。現にセブンイレブンのPB「セブンプレミアム」は、日清食品や花王といった大手メーカーを巻き込み、NBと遜色ない水準まで品質を高める方向に進化している。このような “逆転”現象は、時間の経過とともに明確化する一途にある。

かつてはメーカーのNB企画・開発力が先駆し、小売店サイドは“販売”を通して消費者とメーカーをつなぐ仲介役として存在していたが、現在では小売り側が主役を演ずるほどに成長を遂げたといえる。
だが、問題はこれから先にある。以上はすべて今現実に私たちが利用するリアル店舗で起生している事柄だが、とめどもなく拡大しているECサイトの実態を重ね合わせたとき、今後どのような方向に変化していくのだろうか。ユーザーの購買の形も、次元を超えた変貌ぶりが目立つのだ。

アパレル業界を襲ったZOZOの衝撃

たとえば国内では、アパレル業界のZOZO(前澤友作社長)。ZOZOへの出店ブランドは6000、年間利用者はすでに700万人に達し、ユーザーの低価格志向も呑み込んだ形で、ZOZOはEC化の先端を走る一大集客市場と化している。

選定→採寸→発注→納品までの手続きは全てスマホ1本でOK。ユーザーはすべてスマホに集結・整理された7000余の製品カタログから自分の好みの商品を選ぶだけでよい。時間と交通費を掛けてまで、わざわざ店舗まで足を運ぶ必要もなくなった。
既存の大手メーカーも、直近では争うようにZOZOが打ち出した手法(ジーンズ、シャツなどを自分の体形にあったサイズにカスタムできるというコンセプト)を自社のPB製品に踏襲しはじめている。こんな慌てぶりを見るにつけ、少なくともアパレル業界についてはZOZOのPBが最先端を走り、既存勢力を圧倒しているといえそうだ。

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急ピッチのPB進化で到来する「メーカー大淘汰」時代

いま海外では米国でレジなしのコンビニ、「アマゾン・ゴー」が話題だ。2021年まで3000軒の出店をめざす。一方、中国ではアリババの展開する未来型店舗、“レジなし、行列なし”の「盒馬(Hema)」がすでに60店舗を展開中だが、今年中に100店舗のオープンを計画している。

つまりスマホさえ携帯していれば、すべて店内で購入したものは、自動的に検知・計算され、店舗を離れたとき会計処理が行われ、メールでレシートが送られてくるという仕組みとなっている。アリババの盒馬では、買い物だけでなく食事や興行(エンターテイメント)、配達デリバリーなどを一体化したサービスも展開中だ。

ECサイト(ネット通販)が驚異的に発達する一方で、無人コンビニ(レジなし・行列なし)という未来型店舗の拡大など、eコマースをベースとした荒波が、小売り業態を巨大な変貌の波でさらおうとしている。製造メーカーというカテゴリーも、急ピッチに進化する販売サイドのPBのために、遠からず大淘汰の時代を迎えることになるに違いない。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。