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アパレル通販「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」スタートトゥデイ急成長の背景

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スタートトゥデイ(前澤友作社長)が運営するファッション特化型のネット通販、ゾゾタウン(ZOZOTOWN)は拡大する一途にある。
その圧倒的な集客力の活用を狙って、有力ブランドが続々と参加する構図だ。アパレル市場の提供にとどまらず、今年に入ってからはプライベートブランド(PB)、ZOZOをスタートさせた。

ネットでアパレル商売は無理、といわれたファッション業界だったが、今や主役がリアル店舗から急速にECサイト(ネット通販)にシフトしつつある。
ここでは市場変革をリードするゾゾタウン急成長の背景、今後の課題など追跡する。

“サイズ合わせ”ストレスを解放したゾゾスーツ(ZOZOSUIT)

ファッションEC(ネット通販)、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」の利用者が急増しているのは、店舗から足が遠のきがちのユーザーの心理をつかんでいることが理由だ。デパートをはじめ、既存の大手小売店が軒並みアパレルで苦戦しているのとは対照的で、流通業界は新旧交代のテンポが、ネット通販に向け急ピッチに進んでいるのが実態である。

あなたの身体を瞬時に採寸することができるボディスーツです、という触れ込みで無料配布されてくるゾゾスーツ(ZOZOSUIT)…。この上下セットを着用してスマホアプリを使用すると、内蔵センサーで、あっという間に採寸完了となる。

これでTシャツなりジーンズをオーダーすると3週間で届く仕組みだが着用してみると、身体への“フィット感”で満足するケースがほとんどという。スタートトゥデイ側で強調する「驚くほどの快適さ」かどうかはユーザーの主観にもよるが、ともかく服選びの際の“サイズ合わせ”という最大のストレスから解放されることだけは確かのようだ。

採寸→発注→納品までの手続きは全てスマホ1本で

とりわけ女性にとって、自分に合うサイズを見つけるために何度、試着室に通い溜息をつくことか。時間もかかる。それがゾゾスーツによって最短時間で最適な答えが瞬時に導き出せる、としたことが、ゾゾタウン愛好者を一段と増やす要因になった。しかも採寸→発注→納品されるまでの手続きは全てスマホ1本で済む。

アメリカのデパートなど、ファッション関連のショップでは、通常0から16までのサイズを優に揃え、ダイバシティ(多様性)を持たせているのに対し、日本でのサイズ展開はせいぜいS、M、Lの3サイズ。そして大半はM。店によっては“フリーサイズ”といった意味の分からない用語だったりする。ゾゾタウンではこの点をスマホ採寸で解決したわけだ。

ネット通販の拡大を牽引しているゾゾタウンに著名ブランドが集中化し殺到しているので、品揃えは圧倒的に豊富だ。「ゾゾを覗けばどんなブランドでも揃っている」というのが今では若い人たちの合言葉になっている。しかも全てはスマホ画面で簡単に処理できるのだ。

3割超の手数料払ってもゾゾタウンに出店する事情

ゾゾタウンに出店すると、アパレルメーカーは売上げの平均30%前半の手数料を払うことになるのだが、一般的にメーカーが運営するECサイトの認知度は低く販売数量も少ないので、集客力がケタ違いに高いゾゾタウン出店の方が一定の売上げが見込めるし、手元に残る利益も多いという結果になる。

したがってゾゾタウン比率は一般的に高い。20~30代中心の「チャオパニック」など50以上のブランドを展開するパルグループのEC売上げ(16年度)は70億円だが、そのうち過半がゾゾタウン経由だ。また、大手セレクトショップのベイクルーズの17年8月期のEC売上げは275億円だが、そのうちゾゾタウンが4割を占めるという。

むろんアパレルメーカー各社はそれぞれに自社ECの強化に注力しており、自社ブランドの存在感を高めるのに懸命だ。一方で、ゾゾタウンを中心にした他社ECを利用することで、双方の兼ね合いや相乗効果による一層の知名度浸透が図れるケースも多い。

たとえば、スタートトゥデイが知名度の低いブランドをゾゾタウン市場で強調することで人気化するようになれば、リアル店舗のテナントとして誘致されるケースも出てくる。現にウィン・ウィンの関係になっている事例も多く、ますますスタートトゥデイの発展・拡大に拍車がかかる要因にもなっている。

ゾゾタウンはEC化の先端を走る一大集客市場に成長

㈱スタートトゥデイ[3092]は、株式市場でも脚光を浴びる存在だ。同社の時価総額(株価×発行済株式総数)は約1.2兆円(7月末現在)に達しており、すでに首位の三越伊勢丹HDの5650億円の2倍以上の差を付けている。1兆円以上の時価総額の企業は、国内のアパレル関連でもユニクロ、小売業界でもセブン&アイHD、イオンなど数社を数えるにすぎない。

2017年度のスタートトゥデイの業績は前年度比で、売上げが28.8%増の984億円強、経常利益は24.3%増の326億円強。ゾゾタウンへの出店ブランドは6000、年間利用者はすでに700万人に達し、ユーザーの低価格志向も呑み込んだ形で、ゾゾタウンはEC化の先端を走る一大集客市場となっている。

“新生ZOZOビジョン”の中身はまだ「戦略上の秘密」(前澤社長)

スタートトゥデイは、長年温めていたプライベートブランド(PB)構想を、ついに本格展開させることを決定、7月初に開いた記者会見(東京・六本木)で表明した。当面、世界72ヵ国・地域の10万人に向け採寸用ボディスーツ「ZOZOSUIT」と、プライベートブランド(PB)「ZOZO」のTシャツとデニムを無料で配布するという内容である。

この無償プレゼント以降の海外展開については、会見の中でも「現時点では戦略上の秘密」(前澤社長)としているが、PB戦略のベースは、ゾゾタウンが主流にしているシンプルなデサインの実需向けの商品展開に置く一方で、PB“ZOZO”で彼が狙うのはIT技術をネット通販のシステム構築にどのように組み合わせていくか、にあると推察される。

製造拠点は中国としているが、島精機製作所との協業で3Dプリンター技術の活用も視野に入れ、体型データとオンデマンドの生産機器を掛け合わせる構想も進めているようだ。「スマホから工場直結」といった、最も先進的な形のスタートトゥデイPB(ZOZO)が出現してくる公算もある。

予断許さぬアマゾン、クルーズ、ユニクロなどアパレルECの追撃

ゾゾタウンは年間商品扱い高2000億円超と、国内ファッションECの中でも一頭地を抜く存在だが、海外に目を向けると競合するECは多く、決して予断を許す状況にないことも事実だ。
外資勢ではまず脅威はアマゾンである。すべてに貪欲であるアマゾンジャパンは、ファッション特化型の物流拠点を埼玉県に続き、昨年は大阪に設置した。

ほかにもアパレルECでは「ショップリスト」(クルーズが2012年に設立)、「d ファッション」(ドコモ運営)、「BUYMA(バイマ)」(エニグモ運営)などが群雄割拠しており、各社とも戦略に一層磨きをかける一方、あの手この手の「差別化」を推進しているのが実態。

ユニクロはどうか。最近はデザイナー、クリストフ・ルメールを自社に呼び込んだり、元「POPEYE」編集長を招聘したりして、 “ファッション”性の強化など、従来と違った味付けに専念する姿が印象的だ。それに対してスタートトゥデイはファッションにITを持ち込み“サイズの最適化”、“機械化”を推進する。もちろん雌雄の決着は先になる。

“PB事業”への初期投資が嵩み第1四半期は減益計上

気になるのは、スタートトゥデイの直近業績である。7/31に公表されたスタートトゥデイの第1四半期(18年4/1~6/30)は、前年同期比で商品扱い高は18.2%増、売上げは23.8%増となり、粗利益は22.2%増となったものの、営業利益は26.4%の減少、純利益も24.7%の減益という決算となった。

スタートトゥデイ側では、「PB事業における広告宣伝費や人件費、生産コストなどの初期投資で約30億円の営業損失が出たため」としていたが、これによって年初来高値の4875円を付けていた株価も一気に急落、8/10現在の終値も3600円台と下落トレンドは当分、収まりそうにない。

現代アートの巨匠、バスキアの作品を123億円で購入したり、球団買い上げを希望表明する一方で、前澤社長みずから女優、剛力彩芽さんとの交際をツイートでほのめかしたり、何かとお騒がせな話題も提供しているが、これもスタートトゥデイの宣伝の1つとの見方もある。ともあれ、当面はPB「ZOZO」の経過がどうなるか、が注目される。

withnews.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。