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予想を大きく覆したAppleが過去最高の増収増益、貢献したのは不評といわれたiPhoneX?

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2018年7月31日、カリフォルニア州クバティーノにてAppleは2018年度第3四半期の業績発表を行いました。売上高は533億ドルと前年同期と比べ17%増大、1株当たりの利益は2.34ドルと40%アップをして第3四半期の新記録となりました。
世界的にスマートフォンの出荷台数の減少が課題になっている中で、アナリストたちの予想を大きく上回りAppleが過去最高の業績を次々と達成したのはなぜか?今回は、Appleの業績を過去最高のものにした戦略について、改めて考えていきたいと思います。

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発売前の評価は期待はずれとまで呼ばれた最新iPhone

日本時間の2017年11月3日、iPhoneの最新モデル「iPhoneX(アイフォンテン)」が発売されました。発売当日、国内の各Apple Store店舗ではプレスリリース内にて「ほとんどの店舗で予約注文なしでも購入できるようiPhoneXをご用意しておきます」というアナウンスがあったことから、発売当日は店舗付近に長蛇の列が形成されました。ニュースやインターネットでも、毎年行われる恒例行事として話題になりましたね。噂では、1週間前から並ぶ猛者も現れたというからAppleファンには驚かされるばかりです。

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このiPhoneXですが、今までのiPhoneと大きく変化したのが外見です。まず、以前のiPhoneよりも画面の占有率が増加した新デザインとなっており、このようなデザインのものを「ベゼルレス」と呼びます。文字通りディスプレイを守るためや、支えるために付けられている枠を無くしたデザインのことを指します。身近なものですと、時計の文字盤にあるガラスを囲んでいる縁もベゼルと呼びます。

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ベゼルレスデザインは、最新スマートフォンに多く取り入れられているデザインで、他にもSamsungの「Galaxy」やSONYの「Xperia」にも同じようなデザインのものがあります。このデザインがトレンドな理由として考えられるのが、メーカーの技術力を示すためというのも当然ありますが、1番は一目で従来のスマートフォンよりも差別化がしやすいといったことが考えられます。

一目見て革新的なデザインと分かるベゼルレスデザイン、ユーザーにインパクトを与え興味を持ってもらうには最適なデザインだったのでしょう。しかし、iPhoneXが発売した当初はコンテンツ類が全くベゼルレスのデザインに追いついておらず、動画などは従来のスマートフォンのように上下に縁が出てしまい、肝心のベゼルレスの意味はまったくありませんでした。

また、iPhoneXは強度についても問題があると指摘されていました。iPhoneにさまざまな耐久テストを行い、iPhoneの耐久性をチェックする電子機器の保証会社SquareTradeのテストによると「最も壊れやすく、最も高く、最も修理する金額の高いiPhone」と結論づけられています。理由としては、ベゼルレスデザインにすることでベゼル(縁)が少なくなり衝撃を吸収しなくなったことが大きな原因でしょう。

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以前の記事でもご紹介したように、今やスマートフォン全体で世界的に販売台数が伸び悩んでいます。そういった中で、革新的なスマートフォンを目指したiPhoneXの評価はとても良いといえるものではありませんでした。

最も業績に貢献していたのはiPhoneX

決算期が近付くにつれ、Appleへの不安は高まっていきました。テレビやインターネットでも、連日iPhoneXの販売不振を心配する声が多数寄せられ株価は下落。iPhone向けの部品を製造するサプライヤー(Samsungなどの業績が停滞していた)の決算報告もあり、Appleの業績不振を誰もが予想をしていました。しかし、実際にCEOのティム・クック氏からされた報告は「iPhone Xは週次のiPhone販売で最も売れたモデル」という言葉でした。その証拠に、2018年第1四半期決算に続きiPhoneの販売台数は5220万台と前年比の3%増を達成、これには多くのアナリストの予想を裏切る結果となりました。

当時の世間の風潮としては「iPhoneXは失敗作、これによりAppleは大きな業績不振になるであろう」という意見が多く、Appleはまたどん底に落ちるのかと心配されていました。しかし、発表された業績は全て前年同期を超えて過去最高を記録しています。その中でも、特にiPhoneXが大きく貢献していたというから驚きです。iPhoneXの販売が発表された当初、多くの心配点が挙げられていました。例えば、スマホ業界では壁といわれていた1000ドルを超える高額な価格設定です。

日本円に換算すると11万2,800円~12万9,800円、この価格帯のスマートフォンは他にはなかなかありません。同時期に発売されたiPhone8Plusでさえ7万8,000円~10万6,000円ほどです。これほどまでの高額なスマートフォン、「流石にiPhoneといえど消費者心理的には受け入れてもらえないのでは?」と考える株主も多かったようです。

しかし、この強気な価格設定が消費者にとって特別な価値を生んだのです。その結果、高価格にもかかわらず売上も順調に伸びていき第3四半期の新記録を達成するまでとなりました。

強気な価格設定に期待する品質の保証

従来のiPhoneに比べ、大幅な値上げをしたiPhoneX。格安スマホが望まれるこの時代に、ここまでAppleが思い切った判断をした理由はなぜなのか?それは、大幅な価格上昇をすることで消費者の心理に「iPhoneXはそれだけの価値がある製品」と一瞬で思わせるためです。

実際に、iPhoneXのスペックはかなり向上しており価格設定も性能面で考えると納得ができます。話題にもなったスマートフォンで初搭載された3D顔認証機能「Face ID(顔を認識しロックを解除することが可能)」も、今のところiPhoneの中ではiPhoneXのみにしか搭載されていません。それだけ特別な機能を搭載した製品であり、他社だけでなくApple製品内での差別化を図るのにも十分過ぎるスペックを持っているといえます。

一方で、世界のスマートフォン市場のボリュームゾーンは安い価格帯へと移っています。

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引用:総務省|平成27年版 情報通信白書|グローバル市場の動向

もちろん、Appleはそれにも対応した製品を作ることで市場ニーズに対応することも忘れていません。今回は、初めて市場に「iPhone8」「iPhone8Plus」「iPhoneX」と3モデル同時に投入しています。戦略として上手いと思うところが、高額な商品を同時に出すことでiPhone8が廉価版と同じように感じる心理状況を作ることに成功している点です。

当然iPhone8も性能面で向上しており、iPhone7と比べても価格は高くなっています。ただし、iPhone8は従来のiPhoneと大きな変化はありません。CPUの処理能力など細かいところで見れば大きな変化はありますが、多くの消費者にとっては些細な問題でしかなく価値を見出す人が多いとはいえません。

重要なのは、消費者に「価格が高い」という認識だけで終わらせず、いかにその値段以上の価値があるかを理解させること、自社製品で食い合いをせずにどちらの製品にも価値があると判断させることです。
Appleはこの辺のバランスが上手く、価格が高いというデメリットすらもメリットへと変換しているのです。もちろん、そのためには長年の努力やAppleブランドへの信頼が必要になってきますが、それは既に達成しているためさほど難しいことではないでしょう。

Appleの次なる販売戦略はサービスとウェアラブル

一方で、いつまでもiPhoneに頼り切った戦略だけではいずれ難しくなってきます。新型iPhoneが注目を集めたとしても、既に世界的にスマートフォンは供給過多だからです。そこで次にiPhoneが狙っている市場は、自社サービスとウェアラブル製品によるユーザーとのさらなる深い繋がりです。

Appleの自社サービスには、「iCloud」「Apple Music」「App Store」「Apple Pay」などがあります。こちらの売上も過去最高を記録する95億4,800万円になりました。スマートフォンとしてだけではなく、ユーザーの日常生活に深く関わることで関係性を強化し、収益だけではなくブランド価値も高めていこうという考えです。

現在、Appleのサブスクリプション会員(利用期間に対して対価を支払う方式)は2億人を突破したと発表されています。今後、最新iPhoneが発売されるごとに新しいサービスやウェアラブル製品が続々と登場してくることが期待されます。

近い将来、家電の全てをSiri(iOS・macOS向けAIアシスタント)が管理するApple Houseが作られる日がくるのかもしれません。できることなら、筆者はロボット音声よりも誰かに起こしてもらいたいと願うばかりです。

www.cnn.co.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180208132702j:plain松本 竜二/フリーライター
不動産営業として勤務の傍ら、フリーランスという働き方を知り退職を決意。ライターとして活躍している先人の著書物を読み漁り、独学と実戦によりライティングスキルや知識を身に付け、IT・ビジネス関連をメインとしたフリーライターとして数々のクライアントからの依頼を請け負い、現在に至る。