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欧米アパレルブランドの日本1号店が相次ぎ閉店していく事情はどこに?

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「H&M」や「フォーエバー21」というと、欧米発のファストファッション(注)として日本では上陸とともに、ブーム人気をもたらしたものだが、H&Mはこの7月、日本進出1号店だった銀座店を閉鎖、フォーエバー21もやはり原宿店を昨年10月にクローズした。
(注)最新流行を採り入れた衣料品を短サイクル・低価格で大量生産・販売するブランド

米国本土では業績好調のブランド、「オールドネイビー」(GAP傘下)も、日本ではまさに不振続きで、昨年1月についに全店閉店を決定した。1号店(東京・お台場店)が進出してからわずか4年半の全面撤収だった。

1号店の相次ぐ閉店──。それぞれに事情はあろうが、やはりそこに、日本市場での欧米アパレルブランドの陰りが感じられるのだ。決して固有の日本的な背景や特性があるわけではない。ファストファッションブランドが揃って日本で苦戦する真因を洗ってみよう。

「1号“旗艦店”としての使命は終わった」(H&M側)と言うのだが・・・

H&Mは7/16、日本での1号店だった銀座店を閉店した。

思い返せば、銀座中央通り沿いの7丁目に2008年8月にオープンした初日には、徹夜組も含め開店を待って約5,000人の客が行列、盛り上がりを見せ話題を集めたものだったが、ブームに沸いたそんな10年前の光景もすでに色褪せた過去のものとなり、侘しさがひとしおのクローズを迎えたことになる。

閉店の理由を「1号“旗艦店”としての使命は終わった。人の流れも変化したこともあり、10年間のリース契約が切れるのに伴い、閉店を決定した」(Lucas Seifert H&Mジャパン社長)と述べている。渋谷や新宿の旗艦店と比べ店舗が狭隘であったこと、それに高額な家賃なども理由に付け加えた。

www.wwdjapan.com

“進出1号店”閉鎖によるブランドイメージの低下は少なくない

閉鎖の直接原因は、高い家賃に…、という説明にはたしかに一定の説得力はある。H&Mの銀座店の場合も、すでに知名度を上げるという所期の目的は達成しており、「元は取れた」。しかも銀座の地価は依然、高騰し続けており、新たなリース料は10年前より高額になる公算が高かった。フォーエバー21、オールドネイビーの閉鎖も同様に考えてよいだろう。

ただ、進出1号店は、そのファストファッションブランドにとって、その国での業績を表す、1つのシンボリックな道標のような意味を持っている点で、やはりブランドイメージの後退は免れまい。少なくともオープンした当時のような勢いがあれば、1号店は残したに違いないのだ。やはり連合艦隊には「旗艦」が必要とされるからである。

そこは、営利本位にドラスチックに割り切り、有効な店舗拡大に振り向ける。資源集中化は資本主義の基本という見地に立てば確かに反論の余地はないものの、ファストファッション業態であるだけに、ブランドイメージ的な後退のマイナスは少なくないとみたい。やはり忍び寄る「陰り」には勝てなかったと見るのが妥当なところか。

H&Mジャパンに求められる抜本的テコ入れ

もっとも銀座店は閉鎖したものの、H&Mの国内店舗はこの7月現在、83店舗を数える。会社側の計画では、2020年までには100店舗への拡大も目標に持つと意気盛ん。ファッション小売業界の変化に即してポートフォリオ(ニーズに沿った品揃え)も柔軟にきめ細かく対応していく方針、という。

H&Mジャパンの前期(17年11月期)業績は、前年比4.8%増の626億円、とまずまずの善戦中だ。地域のショッピングセンターへの積極的な出店と、EC化(ネット通販への注力)などによる効果が出ているといえる。

ただ既存店はほぼ横ばい、ないし前年割れである。社の方針として既存店の売上げ拡大に力を入れるより、より新しい顧客層の取り込みを図る方向、つまり新規出店やネット通販に注力する方が効果的、と考えているフシがみられる。

事実、進出後の10年間というもの目立った政策展開は見当たらなかった。スウェーデン本店の方針も2018年は世界市場に向け390店舗の新規出店と、150店舗の閉鎖の見通しと荒っぽい。5月期業績は微増収も3割強の減益だった。

今後、日本でも新規出店と既存店の閉鎖を交えた政策を軸にした展開となろう。日本市場での成長を期すためには、まず魅力あるトレンドの発掘や商品づくり、斬新ビジネスアイデアの投入等がテコ入れ策として要請されるはずなのだが、あまり期待できなさそうである。

www2.hm.com

「フォーエバー21」の日本撤収の原因は“激安商法”に

H&Mに先駆け昨年10月に原宿店(1号店)を閉鎖した「フォーエバー21」のケースは、その激安商法が主因で苦戦を強いられている。お台場店(東京プラザ内)、船橋店(ららぽーと内)など不採算店も相次いでクローズ、全店舗数はすでに20店舗を割り込んだ。

“2点目無料”というセールを頻繁に展開してきたが、要するに「この価格で購入してもらえば、もう1枚はタダでよい」ということ。ただ日本のユーザーはこの種の商法には敏感で、かえって「在庫処分ではないか」と逆読みし、購入を控えることにつながるものだ。やはり不採算店の相次ぐ閉鎖は、採算割れで支えきれなかったとみるのが順当であろう。

toyokeizai.net


激安商法にがぶり4つで取り組んだものの、昨年日本からの全面撤収を余儀なくされた米GAP傘下の「オールドネイビー」の場合も、日本での市場戦略失敗の典型的な事例といえよう。このように外資勢が軒並み日本では苦戦を強いられる理由はどこにあるのだろうか。
以下、検討してみよう。

とくに日本女性の品選びで留意する点に配慮が必要に

日本で苦戦を強いられる理由の1つとしてまず挙げられるのは、日本ユーザーの特質にある。とくに女性の品選びの視点であるのは、価格が安く、かつ使用している素材や縫製仕様がある程度、納得できる製品であること。それにプラス、高い品質は低価格だから期待できなくとも、やはり新しいトレンドが認められる製品を、日本ユーザーは要求する。

縫製でいえば、たとえばユニクロほどではないが、品質では中クラスにランク付けされるH&Mやジーユー(GU、ファーストリテイリング社傘下)製品の中でも縫製処理が雑のため、どこかにシワや歪みができている服などがあり、それが日本では気にして購入を避けたりする要因となる。

また素材にしても、薄い生地を使用しているキャミソールなどのインナー系では洗濯するとすぐ縒れたり、毛羽立ったりするのが、日本の消費者はナーバスに反応する。つまり“リーズナブルな低価格”にして“高トレンド”製品であることが、日本市場での受け入れ要因となるわけである。

その点「安かろう悪かろう」の米国系は避けられる結果になったといえる。そして、日本ユーザーが気にする“雑”な縫製処理や、しわ・縒り・毛玉、形状などの原因となる 素材選定に配慮する体制が欠如すると、苦戦を呼び込むことになる。

www.businessinsider.jp

急拡大するEC(ネット通販)の半端ない業界侵略

もう1つの苦戦の理由は、急成長しはじめたファッションEC(ネット通販)の跳梁にある。スタートトゥデイが運営する「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」やフリーマーケットアプリの「メルカリ」によって、2000年代までは予想もしなかったECサイトによるファストファッション業界への侵略が開始されたことだ。スタートトゥデイの今期(19年3月期)業績は49%増収予定、時価総額(注)も三越伊勢丹の2倍強、1兆円を超えている。
(注)株価×発行済み株式総数、上場企業の価値を表す指標の1つ

従来は、パリやミラノで開催される有力ブランドのファッションショーを頂点としたピラミッド構造となっており、コレクションのデザインをいち早く“模倣”し、合理的な価格で世界のユーザーに提供、発信していくのがファストファッションブランドの典型的なビジネスモデルだったが、21世紀入りして以後はすでにその方式は崩れつつある。

事実、アパレル関連市場は、ユーザーの低価格志向が強まり競争は激化する中にあって、EC化率は右肩上がりで伸長する一途にある。すでにネット上で好みの服がいつでも選べる時代になったことから、「ゾゾタウンを使いはじめて以来、リアル店舗に行くことがなくなった」という若い女性も飛躍的に多くなっている。

「高トレンド」「高クォリティ」「リーズナブルな低価格」が基本

何もネット通販への挑戦は、欧米勢だけのテーマではない。名古屋の老舗デパート「丸栄」がこの6/30、操業400年に及ぶ歴史に幕を下ろしたが、役員の1人が「競合相手が増えたというより、ネット業者の台頭が、当社が疲弊した最大のファクターだった」としみじみ語っていたのが今でも目に浮かぶ。

どのファストファッションブランドも今では争うようにECサイトの強化、スマホシフトに力を注ぎはじめており、その結果、H&M、ZARA、GUなどはその分、業績を拡大中だが、率直に言ってZOZOやメルカリなどの先行組が手掛けるアプリに比べると使い勝手に格段の差が認められるのも事実だ。日本で生き残るには、もう一皮剥ける必要がある。

いずれにしても、これからの展開は“激安商法”一辺倒では息切れする。やはりベースは、「トレンド採用」した「高クォリティ」で、かつ商品に見合った「リーズナブル価格」の実現だろう。それには他社には見られない差別化されたアイデア提示や、トレンドの再編成を組織的に組める体制づくりなど、かなり思い切ったビジネス戦略が求められよう。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。