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「コカ・コーラ vs サントリー」自販機コーヒー決戦を制覇するのはどちらか?

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清涼飲料の国内市場ではトップシェアを誇っているコカ・コーラだが、サントリーの次から次へと繰り出す大型商品の市場投入、多彩なM&Aなどによって、その差もじりじりと縮小する一途。

サントリーが昨春発売したペットボトルコーヒー「クラフトボス」の大ヒットで、いよいよ頂上決戦は現実のものとなってきた。コカvsサントリーの軍配はどちらに上がるのか。
両グループの実勢を踏まえ、その行方を追ってみる。

「クラフトボス」発売後1年間で1500万ケースを記録

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これまで自販機のコーヒーというと“缶コーヒー”が一般的だったが、最近ではペットボトルコーヒーに人気が移行してきている。火付け役はサントリー(サントリー食品インターナショナル)だ。昨年4月に発売した「クラフトボス」が大当たり、この1年間で1500万ケースの売り上げを記録する大ヒット製品となった。

このペットボトルタイプのコーヒーは、何もサントリーの専売特許ではなく、各メーカーもチャレンジしていたのだが、定着しなかったジャンルでもあった。もちろんコカ・コーラも挑戦していたものの、“コク”にこだわった点が製品開発に後れを取った原因とも指摘されている。「ペットボトルではコクが表現できない」との思い込みがあった。

その点「クラフトボス」は苦みや刺激を落としスッキリ感を強調、「“自販機コーヒー”は缶」という固定観念を崩している。また、既存のコーヒー商品とは一線を画す斬新なデザインも大きな魅力となり、これまで缶になじみの薄かった若者や女性を獲得した。他メーカーはやはり“缶コーヒー”の延長線上に固執していた点、出遅れたといえよう。

「クラフトボス」を購入する層は、実はコーヒー味にこだわる本格派というより、デスクワークの合間に、気分転換や水分補給のために飲む「ちびだら飲み」を求める人たちだった。つまり普段はお茶や水を求めるペットボトル派だったのが、そのままペットボトルコーヒーにごく自然の形でシフトしてきたというべきだろう。

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キャップ閉めで“利便性”に優れるペットボトル缶が急浮上

コーヒー飲料市場の規模(国内)は8800億円。このうちコカ・コーラの「ジョージア」ブランドのシェア20%とトップ(ユーロモニター調べ)に君臨、自販機も全体の約3分の1、70万台はコカ・コーラに帰属し、これまで圧倒的な強さを誇ってきている。

一方、サントリーは、「BOSS」発売については当初から“働く人の相棒”というコンセプトを全面展開、CMでも一貫して日本で働く“宇宙人”という奇抜な触れ込みで、俳優のトミー・リー・ジョーンズを起用し続けてきた。この伏線の蓄積が大型商品「クラフトボス」に飛び火したものだ。

業界側の観測ではサントリー「クラフトボス」の大ヒットの影響で、タブ付きの缶コーヒー全体の昨年売上げは前年比15%前後の減少となったという。つまり長年、謳歌していたショート缶の王座は、キャップ閉めが可能という“利便性”で優れるペットボトル缶の猛追で揺らぎ掛けているのだ。

自販機コーヒーのターゲット人口も減少

国内の自動販売機数は213万台、飲料売上げは実に1.7兆円(自動販売機工業会、2016年)に達する。飲料市場の年商は5兆円超といわれているから、ざっと計算してもほぼ3割は自販機を通じての販売だ。それだけに自販機の売れ行きは、各社のバロメーターといえる。

これまで主流だった缶コーヒーは顧客の中心は中年男性、とくに建設現場、製造工場の従業員やトラック運転手などがもっぱらの対象としてきた歴史がある。事実、建築現場は飲料メーカーのドル箱でもあり、ターゲットは、体を使うブルーカラー層(注)とのイメージだが、人口の減少やライフスタイルの多様化で、市場環境もめっきり変貌しつつある。
(注)現業系・技能系現場で働く人を青い作業服からの連想で呼ぶ。対義語:ホワイトカラー

まず言えるのは、建築業や製造業の現場で働くブルーカラー層も大幅に減少しつつある点だ。国土交通省統計によると、この25年間に建設業界の就業者数も492万人(平成27年現在)と2割強、120万人が減少した。ピークだった平成9年比では約27%の大幅減となっている。

“ちびだら飲み”要求にマッチした「クラフトボス」

2013年にセブン-イレブンが“セブンカフェ”という名称で、店内での焙煎による販売を開始したのが大ヒットすると、「今後はコンビニコーヒーに、缶コーヒーが駆逐される」との予想がさかんになされたものだったが、実際は違った。コンビニコーヒーが缶コーヒーに取って代わったのではなく、“飲み分け”の1つとして入り込んだとの見方が正しいようだ。

つまりコーヒー市場がコンビニコーヒーに誘発されて拡大、全体的な市場活性化に寄与したことになるわけだ。現に消費量は16年まで4年連続で過去最高を更新、消費額も2兆9000億円台にまで拡大している(日本全コーヒー協会)。コンビニコーヒーはつまり多様化するライフスタイルの1つとして、消費者に受け入れられたとみるべきだろう。

実はサントリーが昨年発売した「クラフトボス」が大ヒットしたのも、生活シーンの1つ、オフィスの机の上に置く“ちびだら飲み”にマッチしたからともいえる。コカ・コーラもこの5月からペットボトルの「ジョージア ジャパン クラフトマン」の発売に踏み切ったほか、ダイドードリンコ、味の素AGF、UCC上島珈琲などが続々、新商品を投入してきている。

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「最後に総取りしていくのはサントリーだ」の見方

清涼飲料市場での焦点は、コカ・コーラとサントリーとの頂上決戦にある。というのも、かつて高シェアで君臨していたコカ・コーラも、サントリーのここ数年の猛追でその差1億ケースほどに縮小、昨2017年のシェアもコカ・コーラ26.7%に対して、サントリーは21.5%。10年前12ポイントあった差も、ほぼ半分は埋められた形の一騎打ちの様相を呈してきた。

新商品を展開し、CMに力を入れれば入れても結局「最後に総取りしていくのはサントリー」という見方も業界関係者にある。最近でも「オランジーナ」(12年発売)、「伊右衛門 特茶」(同13年)などの大型商品を生み出し、その抜群の製品開発・企画力、それに宣伝力で“店頭ジャック”し続けている。その点、明らかにコカ・コーラはヒット商品に欠けるのだ。

それに、コカ・コーラが追い詰められていく理由の1つは、自販機の衰退にある。コンビニの出店攻勢、量販店での安売り競争の影響から一時は83万台を擁していた高収益源の自販機も、じりじりと販売数量が低下していることだ。2005年に1台当たり295ケースが、14年には242ケースと下落は歴然としている。

日本コカの減速の根本原因はFCシステムに

それに衝撃だったのは、サントリーが2015年、26万台の自販機をもつジャパン・ビバレッジHD(JT{日本たばこ産業}の子会社)を吸収した結果、サントリーは総計75万台となり、コカ・コーラの優位性がかなり後退したことだ。

もう1つ決定的な要因として指摘されるのが、コカ・コーラのフランチャイズ(FC)システムである。「このシステムがある限り、サントリーには勝てない」との見方は、むしろコカ側の関係者に多い。商品の原液を販売する日本コカ・コーラとFC契約を結んで原液を購入、担当エリアで製造・販売するのがボトラーだが、利害が一致しないという点である。

日本コカ側は原液の販売量が出るほど、もちろん収益に結び付くのだが、ボトラー側は「量を追求すると値下げが余儀なくされ、その費用が嵩んでとどのつまり赤字になる」と口を揃える。その値下げ分をカバーするため、日本コカ側は販売奨励金を出すのだが、過当競争が熾烈になるほど値下げ圧力が激化するので、ボトラーが結局、音を上げてしまうことなる。

サントリーによる制覇は、もはや時間の問題

このジレンマから抜け出すため、日本コカはまず東西ボトラーの統合(昨年4月)という大ナタを振るった。すでに2015年に米国で断行、大幅なコスト削減には成功した実績を踏襲した形だが、再度FC化を実施して再編を期すという小手先の戦略にすぎず、少なくとも抜本策ではない。値下げ圧力回避のための対応でも、事実上の値上げ戦略を打ち出している。

その点、サントリーは日本コカのような2本建てというシステム上の障害はない。組織的に一枚岩で、値下げ原資は販売促進費を投下し、ここぞという場合の価格競争は全力で仕掛けられる強みがある。値下げ費用を自らで賄わなければならないコカ・コーラのボトラーたちが対抗できるはずがない。

コカ・コーラは地球横断的な構想をもつエンタープライズ(世界企業)。同社戦略からいうと、日本は“刈り取り市場”に位置付けされるようだ。ボトラーを統合し徹底してコスト削減し利益を創出する対象マーケットであり、昨春に断行した日本の東西ボトラーの統合は、“刈り取り”戦略の総仕上げ作業だったとの見方がもっぱらである。

コカ・コーラの直近の動きには、日本市場をすでに諦めた様子が見える。サントリーが清涼飲料業界でトップに躍り出るのも時間の問題、と断言できる。

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コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。