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100年後の日本人口は5500万人になる──超高齢化社会の進行の中の「人口減少」を直視しよう

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「人口減少」は、わが国の「超高齢化」の進行とともに深刻化する一途にある。このまま無為無策で進めば、100年後の人口は5050万人と現在の約4割にまで減少する推測だ。
年金・医療・介護保険など社会保障の給付は膨らむ一途なのに、支え手である生産年齢人口(15~64歳)は激減、現役サラリーマンの負担は増えるばかりだ。といって賃金は、企業業績が好調であるのに依然アップされる明確な兆しは見えない。

まず、人口減少を阻止するためには、行政側が働く者の視点に立った真摯な取り組み、企業、メディアを巻き込んだ全体的な対策づくりがベースなのだが、その第一歩も踏み出してないのが現状である。
「人口減少」の実態・歯止め策など、ここで追ってみよう。

2000万人減少は2045年、1億人を割り込むのは2053年

「2025年問題」──。目先に迎える危機として、このフレーズが日本の“人口減少”とともに語られることが多くなった。2025年が到来すると、団塊世代が75歳を超え、一気に後期高齢者が増加する節目を迎えるからである。

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引用:総務省|平成28年版 情報通信白書|人口減少社会の到来

15歳~64歳の生産年齢人口が7000万人まで減少する一方で、65歳以上の人口は3500万人を突破する。今と変わらぬ人口を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、せいぜい愛知・沖縄・滋賀の各県ぐらい。残りの各県は2025年までの7年間で、軒並み1割前後の人口が減少するとの推定である。

大都市はやはり何といっても働く場や商業施設が多いことが、地方の若者を吸引する原因となっている。過疎化の進む地方では人材も集めにくく、競争力のある企業は育ちにくい。このギャップは今後も人口減少化に伴う大きな問題としてクローズアップされてこよう。

さらに先を見てみよう。この3月、国立社会保障・人口問題研究所の発表したデータによると、2045年までに日本の総人口は1億0642万人になるとの予測である。2015年には1億2709万人だったから、30年間で2000万人以上が減少する計算だ。

100年後の人口は1918(大正7)年時点の5500万人に回帰する

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resemom.jp

1人の女性が生涯に産む子どもの数(注)が現在と変わらなければ、2065年には8808万人となり、その時点での老年人口(65歳以上)比率は38.4%となる見通し。ほぼ4割が高齢者ということだ。一方、生産年齢人口比率は現在より8ポイント強減って51.4%。働ける人が2人に1人の時代となる。そして2115年には5056万人まで減少する。
(注)2005年に過去最低の1.26を記録、その後やや持ち直し昨2017年は1.43に。

この数字から考えられるのは、今から1世紀前の1918年(大正7年)の人口が、ほぼ同程度の5500万人だったことだ。日本は100年かけて人口を7000万人増やし、これから100年懸けて7000万人減らして100年前の状態に戻るということになる。

直面するのは社会保障費増による恒常的な税収不足

まず、生産年齢人口の減少、超高齢化社会の進行によって、日本の状況がどのように変貌していくか。主として経済的なファクターを切り口に、みていこう。

最大にして、かつ避けて通れないのは税収の減少と社会保障費の増加である。ともかく年金・医療・介護保険など社会保障の給付は膨らむ一途であるのに、支え手である生産年齢人口の減少から、社会保障のファイナンスが難しくなっていくのは当然の話であろう。

1990年度の決算数字では11兆5000億円だった社会保障関係費が、2018年度では33兆円、と30年足らずの間にざっと3倍に膨れ上がった。この加速ぶりからみると20年後の2038年には50兆円に達することが予測される。当然、直面するのは税収不足だ。

すべて今後の国民負担は右肩上がり、という恐怖

そのツケは当然、個人負担の増加となって跳ね返ってくる。事実、この4月から65歳以上の人が支払う介護保険料は6%(全国平均)引き上げられ5800円、18年前の制度発足当時に比べ2倍となった。

年金関連でいえば、国民年金は月額1万6900円の負担となる一方、サラリーマンが給料スライドで支払う厚生年金保険料率も年々右肩上がりで上昇、やっと18.3%上限でストップしたものの、これも一応の“上限”にすぎず、もちろんこれで済む保証はない。

今後は、年金給付額を物価や賃金の変動に合わせて減らす「マクロ経済スライド」方式(注)も、もっと精緻な組み立てを考え工夫を凝らしてきそうだ。並行して“70歳への支給開始年齢引き上げ”実施は必至となろう。政府は「所得代替率(現役時代の給料と年金支給額の比率)50%の死守」としているが、国民はあまり信用していない。
(注)2004年改正で導入された給付水準の抑制策。具体的には賃金・物価の伸びからスライド調整率(被保険者の減少率0.6%、平均余命の増加0.3%)を差し引くもの。

大胆な措置で少子化を乗り越えたスウェーデン、フランスのケース

では、人口減少を食い止める方策としてどんなことが考えられるだろうか。まず、スウェーデンのケースだ。1980年代に1.6人台まで少子化が進行したため、慌てた政府は思い切った諸制度の見直し、各種手当の導入に踏み切った結果、90年代には2.0人台を超えたことから、その後多くの先進国のモデルケースとなっている。

内容は育児休暇制度や児童手当の充実だ。出産に関わる費用は全額無料化をはじめ、休業以前の8割の所得に対する390日間の保障、また2年半以内に次の子を産むと、先の子の場合と同じ保障が再び適用される等々。児童手当は1.1万円を16歳まで給付、子どもの医療費は無料、高校・大学の授業料はすべて無料…といった内容である。

フランスの場合も、妊婦・出産に関わる全ての費用の保険適用をはじめ、乳幼児手当(妊娠5ヵ月~成語3歳)として1人当たり月額2.3万円支給、また他に家族手当も子どもが増えたり成長するにつれ加算していく方式を採用した。むろん義務教育は幼稚園からだが、大学に至るまで、教育費は教科書を含め全額無料である。

このように欧州先進国をみていくと、行政のバックアップと子育てをサポートする企業との見事なコラボがきわめて合理的に機能しているのが確認できる。その仕組みが、わが国の政府当事者や企業経営者につくれるかどうか。いや、その前に改善への心構えが持てるのかどうか。そんな基本的な疑問が先立つ。

まず賃金アップ、格差是正(同一賃金)が前提に

それにしても、まず先決すべきは賃金の上昇だろう。わが国の場合、ここから議論を始めなくてはならないところに悲哀を感ぜざるを得ないのだが、まずは賃金上の格差是正が求められる。結婚願望は強いのだが、給料が安い上に非正規社員という不安定な資格のために、結果として結婚までたどり着かないケースが多いのだ。

今年の春闘についても、賀詞交歓会で安倍首相は「3%賃上げを…」と、出席の大企業トップと新年の挨拶の際、決まり文句のように口にしていたが、結果としては大企業平均では昨年の2.02%アップに対して、今年は2.10%アップ、中小企業では昨年の1.89%に対して1.99%(毎日新聞調べ)とわずかに上積みしたにとどまった。スズメの涙の成果だった。

安倍首相が声を枯らして懇願しても、企業が賃上げには消極的なのは当然の話である。たとえ儲かっても、利益を賃上げに回す法的な強制力もなければ、義務もない。となれば、企業は体質強化のために、内部留保の蓄積に回すことになろう。ここまでくれば、企業に一定の強制力をもった賃上げへの法案設定まで踏み込む必要性が出てきたようである。

行政側に体系化し実践していく強力な中心組織の編成が第一歩

解決策の1つとして、大幅に移民を受け入れようという主張がある。島国という地性学上の制約があるにしても、英国も854万人の移民を受け入れているのに対し、日本はわずか204万人。米国は断トツの4662万人に対してドイツは1200万人、ロシア1164万人(世界銀行調べ)。いずれにしても日本の受け入れ数は圧倒的に少ない。

治安悪化、賃金の下降、日本文化との衝突など、何かと煩雑さも多く出てくるし、デメリットもあるが、明確に言えるのは、IT(情報技術)やAI(人工知能)などの高度のスキルを持つ人材の獲得競争の流れに乗り遅れた事実は否めない。

それにしても、まずは行政サイドに「人口減少」への歯止め策を講じようとする意志が求められよう。子ども手当にしてもやっと2012年から支給されるようになったが、中学生以下、額も1~1.5万円。それも嫌々ながら仕方なく、といった素振りが見え隠れする。

少なくとも厚生労働省は、人口問題について体系的に実行する中心組織をつくるべきだろう。そこが第一歩だ。一方、企業、各シンクタンク、メディア等の協力を呼び掛けて、大規模なキャンペーンを張るなど、一般世論を盛り上げながら、国民全体を巻き込むテーマに喚起していく必要がある。日本の場合、残念ながらそこから始めなくてはならない。

toyokeizai.net

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。その後、執筆・講演活動に入る。なお、経済評論、ブログなどのペンネームは“宇佐美太郎”。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。