
教育資金の設計をどのように立てるかは、子を持つ親にとって頭の痛い問題だ。日々の生活資金内で、教育資金を計画的に貯蓄するのは容易なことではないが、ライフプランの中で教育費は重要な資金項目である。また、子供には学費の心配はさせたくないだろう。ここでは教育資金の設計について、想定できる様々な方法を検討してみて賢く備えたい。
奨学金の利用
子供1人が大学を卒業するまでに掛かる教育費は、約1,000万円と言われている。特に負担が大きいのが、大学進学時だ。
親の資金が不十分な場合は、奨学金を利用することとなる。奨学金制度として多くの人が利用しているのが日本学生支援機構の奨学金だ。日本の奨学金制度は貸与型で、借主は学生本人であり、大学を卒業した後に返還することになる。
日本学生支援機構の奨学金の返済は、大学を卒業してから半年後から始まる。奨学金を返済する負担が発生すると、自分の老後貯蓄に充てる余裕がなくなる。よって、教育費は計画的に準備しておくべきである。
子どもが返済する場合は、大学卒業と同時に100万円から200万円の借金を背負うことになる。
正社員の場合、初任給は大体20万円前後となるが、所得内で返還していくのは大変だろう。返還期間は、金額に応じて13年~20年程度だが、返済が終わるのが30歳を過ぎて、条件次第では40歳も過ぎてしまうこともあるため、子どもが教育費を返済する場合のリスクは大きい。
第一種奨学金
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第二種奨学金
第一種なら利息は付かないので、断然得といえる。しかし、誰でも受けられるわけではない。本人の成績と家庭の収入状況によって審査されるので、第一種奨学金を受けられる人は限られてくる。そのため大抵の人は第二種奨学金になり、返済の負担が大きくなる。
大学を卒業して直ぐに子供に月々1万弱の返還をさせるよりは、計画的に今から毎月1万円貯金する方が賢い選択だろう。
また、第二種奨学金は卒業してからでないと利息を含めた返済額が分からない。在学時は無利息だが、卒業後は完済まで年3%を上限とした金利がかかるので、利息の負担がわかりにくく返済計画が立てにくいといえる。
学資保険の活用
計画的に教育資金を用意する方法としては、学資保険の活用がある。
学資保険のプランには保障型と貯蓄型があるが、大学進学時などの一番お金がかかる時に、預けたお金がいくらになって戻ってくるかが重要だ。元本割れのリスクを避けたい場合は、保障型より貯蓄型を選ぶのが得策だろう。
返戻率は、満期金の受取年齢や保険料の払込期間(15歳払済・18歳払済・22歳払済など)によって異なる。よりお得に学資保険を利用するのであれば、短期払いや一括払いでまとめて支払うほうが保険料も安くなり、結果返戻率も上がる。
満期保険金の給付パターンは、幼稚園・小学校・中学校・高校の入学時に祝い金として少額を複数回に分けて受け取るか、一番お金のかかる大学入学時にまとまった金額を一度に受け取るかに分かれる。複数回で受け取るパターンでは保険料がアップするため、満期金を一度に受け取るほうがお得である。
教育資金の一括贈与制度
自分や子供の返済負担を減らすには、親の資金を頼るという方法がある。
平成25年4月に始まった教育資金の一括贈与制度。子や孫の教育資金を1,500万円まで非課税で贈与できる制度だ。この制度は、子や孫へ教育資金を贈与する場合、1,500万円までなら非課税となる制度だ。相続税の節税対策に大きな効果が期待できるが、実際は孫への贈与が大半のようだ。
「教育資金の一括贈与制度」のメリットとデメリットを確認してみる。
メリットとしては、1,500万円を暦年贈与した場合、470万円の贈与税がかかるが、教育資金の一括贈与の制度では贈与時に贈与税はかからない点だ。
また、贈与された子や孫が30歳になるまでに教育資金として使い切れば贈与税はかからない。そして贈与された財産は相続の際に財産への持ち戻しがないため、高齢の人や認知症の不安がある人は元気なうちに一括で贈与できるので、スムーズに資金を移動できるといえる。
さらに、教育資金の一括贈与制度は、暦年贈与の併用も可能だ。別に110万円までの贈与があっても贈与税はかからない。
デメリットとしては、制度が期間限定であること、今のところ平成25年4月1日から平成31年3月31日までに限られている。また教育資金の領収書をとっておく必要があり、金融機関への領収書の提出が面倒な点だ。
そして、教育資金に該当するものが不明確なものがある。具体的には、下宿代や海外留学の滞在費などは、この教育資金には該当しない。ただし「通学定期券代」や「留学渡航費」等は教育資金の対象となる。
計画的に貯めるなら、強制的に学資保険を活用すべきだ。しかし、どうしても不足分が出るなら、返済に無理のない範囲で奨学金を活用し、場合によっては親の資金を教育資金の一括贈与制度を利用して贈与してもらうことも検討すべきだ。なお、その場合は条件面などを信託銀行などに相談すべきだろう。
コラム執筆者
藤崎 徹(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所勤務を経て、上場企業にて内部統制コンサルティング業務に携わる。現在は資格学校にて日商簿記試験対策・経理実務講座・税法実務講座と、FP継続研修講座にて財務分析や決算書セミナーを担当。
<保有資格> AFP、CFP科目(タックス)、日商簿記1級、税理士会計科目