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キャリアのために有給休暇を使う海外

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日本では有給休暇の消化率という言葉があるように、十分に休みが取れていない現状があります。しかし、有給休暇が当たり前に取れるようになることで新しい仕事の可能性が生まれるとしたら、どう思うでしょうか。海外での個人のキャリアの話も絡めてお話したいと思います。

有給休暇の間に外国語を学びにくる人たち

ドイツの場合は、多くの国から外国人労働者を受け入れているために、外国人向けにドイツ語を教える「語学学校」が ドイツ各地に点在しています。国籍も多種多様で都市部であれば日本人の姿もよく見かけます。それでもやはり、ドイツに近いEU 圏内の人たちが比率としては多いのです。
中には、有給休暇の間にドイツに来てドイツ語を学びに来る人すら見かけるのです。とは言っても「語学学校」の場合、授業時間は平日の半日程度。そのため、観光旅行を兼ねている面も否定しません。

それでも、ここまでする理由としてはいくつかあります。ドイツ自体がヨーロッパの中で一番経済力が高いことから、ドイツ企業に就職あるいは、ドイツへの移住を考えている人が一定いるという事情があります。
また、ドイツがヨーロッパ内での生産拠点を東欧に展開していたこともあって、東欧圏の人たちを中心にドイツ語を学びに来る姿もよく見られました。

そもそも、ドイツ語を母語とする話者の数が、ドイツ・オーストリア・スイスを中心に約1億人います。ヨーロッパで限定すれば、英語の母語話者数(約7000万人)よりも多いくらいなのです。
それではドイツ人はどうかというと、同じように有給休暇の間に自分の研鑽のために外国に行くこと自体は決して珍しくありません。
日本の感覚としては、「有給を取ってまでなぜ?」と思うかもしれません。これは日本と「キャリア観」と「有給に対する考え方」が根本的に違うから可能なことなのです。

www.newsdigest.de

ヨーロッパでは「キャリアは自分で築いていく」

有給休暇の間に旅行に行く人も、もちろん多くいます。しかし同時に、語学学校に行く以外にも、例えばボランティアに参加する人など、自分の成長のためになるような過ごし方をする人は少なくありません。
それは、有給休暇が十分に担保されていることが大前提としてあります。ドイツの例ですが、法律上で最低30日の有給休暇が認められており、かつ100%消化することが義務となっているのです。ヨーロッパの周辺諸国にしても、1か月近い有給休暇が取れること法律上決められています。

その上で、自分の研鑽のために有給休暇を取る人がいるのは、「キャリアは自分で築いていく」ことが前提として社会が成り立っているからです。ドイツにやってくる外国人を例にしましたが、ドイツ人も同様な考えで動いています。
ドイツでも他のヨーロッパ諸国でも、自分にとって良い会社に入ることが大事だという考えは、もちろんあります。

しかし、日本のような終身雇用がない以上、少しでも稼ぎが良くなるように自分の能力を高めて売り込んでいるという面があります。会社に十分に能力が認められれば給料は上がります。
しかし、逆に言えば、契約で自分の給料を決めている以上、十分に能力を発揮できなかった場合は、契約を打ち切られる場合もありえるのです。そして、自分の要望と会社が合わないとなったら、 転職することも至って普通のことなのです。というのも、よりよい環境で働くことで、自分の生活の質を上げることが当たり前になっているからです。

これは「いい会社」に入ることだけが目的となりがちだった日本とは、大きく違う点だと言えます。少し前まであれば、「会社が一生面倒見てくれる」という前提が日本ではある程度成り立っていました。そして、それを信じて疑わない人も未だ多数派なのではないでしょうか。しかし、働く上での知識が高度化しているのと同時に、この先AIなどによる自動化などが進んでいくことで、この前提が大きく崩れてしまう可能性が無視できません。そのため、「キャリアを自分で築いていく」在り方は、日本でも今後決して無視できない話なのです。

社会として「遊び・余裕」がある意味

企業によっては、「サバティカル」といって、半年から1年近い有給休暇を認めるところもあります。もちろん、完全なリフレッシュに使う人もいます。しかし、半年以上の「休み」となると、よほど疲弊していない限りは能動的に何かやりたいことをしようとしやすいものです。趣味に没頭する人もいますし、中には他の仕事をやってみたくて、他の企業で働く人までいるくらいです。

また、家庭の状況によっては介護などで一時的に仕事との両立が難しい場面を抱えている人もいるでしょう。そのような人たちが会社に戻りやすいようにしているという面も見逃せないでしょう。
企業側も何か成果を持ち帰ることを強要はしないものの、新しい発想が生まれるための充電期間として認めている部分があります。
日本に限った話ですが、「コスト」だとか、「戻ってきた時のポストはどうなるの?」というデメリットを論じる人たちがいますが、それは海外の事情を全く見ていない議論です。

ドイツを含めてヨーロッパの場合は、「職務内容」によって仕事が与えられます。そのため帰ってきた後のポストが違うというのは考えにくい状況です。休みなどで欠員が出ても仕事が回るように人員配置をしています。そもそも、有給休暇がまともに取れない状況から議論をしているから、おかしな議論になるのです。
そして、デメリットがあったとしても、それ以上に価値があるから、ヨーロッパでは制度として受け入れられつつあるのです。というのも、社会的な「遊び・余裕」の部分が新しい価値を生み出しえることを、そして社会として再生産していく上で欠かせないことを、社会として十分に共有できているからなのです。

www.nikkei.com

キャリアを高める環境が整っていない日本

日本でこの話をすると、都合の良い部分だけを切り取って、休みでも自己研鑽するように仕向けるような施策を必死に考える経営者が出てきます。例えば、長期の休暇を認めるにしても、何か成果を持ち帰ってくるように言い出しかねないでしょう。
しかし、それでは効果が薄いどころか、意味がないのです。というのも、それでは休みと言いながら、結局「仕事」をしている感じが残ってしまうのです。だから、長期休暇を認めるにしても、成果を求めることをしないのです。先ほどもお話した通り、新しい価値を生み出すには、「余裕」が欠かせないのです。

日本でもそれを可能にするためには、先に労働環境を整える必要性があります。
ドイツであれば、 残業が規制されているため自己研鑽のための時間が十分に取れます。自己研鑽をするにもお金が必要ですが、それが可能となるだけの給料をやはり支払っているのです。
もし仮に、自己研鑽する環境が整っていないような企業がもし仮にドイツにあったとしたら、労働力が定着せずに遅かれ早かれ立ち行かなくなるでしょう。もちろん、労働時間や給与に関する規制もあるため、それを万が一破るようなことがあれば企業の運営自体ができなくなってしまうのです。

自律的に育っていく人材を喉から手が出るほど欲しい企業は多いかと思います。そのことを可能にするには、学ぶために必要な環境がやはり必要なのです。
それと同時に、優秀な人材が出ていくことはある程度覚悟しないといけません。ただ、同時に自社の労働環境を整えれば、優秀な人がやってきて定着する可能性が高くなります。
そのような人材の好循環があるからこそ、 ドイツに限らず他の先進国は、生産性を保ちつつ経済成長をし続けることができたのです。

片やこの30年間に、人材の競争だけ煽ってデフレを徹底的にしてきた日本を見れば、他の先進国と差がついてしまって当然の話なのです。だからこそ、「労働環境を整えるのが先だ」と口を酸っぱくして言っているのです。
そもそも有給休暇が取れるだけ仕組みが社内で整っていないと、「体を休める」ことすらできないのです。

president.jp

個人としての解決策

日本企業が大きく変わってくれることを全く期待していないわけではありません。労働制度を見直すことができれば、まだ今であれば日本の企業はまだ潜在能力があると思っています。実際に雇用関係が変わりつつある兆しは感じられます。
しかし、同時に個人の視点からすれば、 仕事も含めて自分はどのように生きたいのかを、根本的に見つめ直す必要もあるように思います。

今までであれば、会社の中のポジションだけで語られがちでいた。そして、キャリアと言ったときに、収入や 地位も確かに非常に大事です。
しかし、仕事に限らず、「自分が社会の中で何をしたい」という部分の方がより大事ですし、ドイツに限らずことのことは社会的にすでに共有されてきていることなのです。まして、世の中の自動化が進むと言われている中では、定型的な仕事が小さくなり、新しい価値を産み出すことがより重視されてきています。

個人として一番新しい価値を生みやすいとすれば、「自分がやりたいことをしていること」が一番大切だと思うのです。いきなり大きいことはできないかも知れませんが、仕事以外の時間で、1日10分程度でもいいですから、ちょっとずつでも自分の伸ばしたいことを伸ばす、そのことが大事だと思います。
私自身も文章を仕事にできるようになったのも、その10分文章を書くところから始まったのですから。

www.itmedia.co.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180227160154j:plain山内 一輝/ライター・講演家
1979年生まれ京都市伏見区在住。2002年京都大学文学部(社会学専修)卒業後、塾講師を経て、ドイツへ渡航。帰国後は長年大学生協で下宿斡旋部門・旅行部門で勤務。当時より、ドイツ渡航の経験を生かした『Kazuのかんたんドイツ語』で、外国語や外国事情の記事を更新。現在は主に、フェイスブックやブログ『ライター・講演家 山内一輝の雑記帳』で情報発信中。