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「ホワイト企業」にするには、「おもてなし」を捨てた方がいい

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日本はおもてなしの国と言われていますが、果たしてこれが日本の社会に豊かさをもたらしているのでしょうか。対照的に、ドイツは顧客サービスという意味ではあまり良い評価を聞きませんが、見るべき所があると思っています。両方の国を見ながら日本のこれからの在り方について考えてみたいと思います。

評判が「よくない」ドイツの顧客サービス

ドイツについては先にも話した通り、日本での感覚で行くと顧客サービスがあまり良いとは言えません。
例えば、レストランに行っても 日本であるようなサービスは期待できません。長年日本のサービスに慣れた人にとっては、態度が悪く見えるでしょうし、恐ろしく不機嫌に感じるでしょう。運が悪いと、ウェイターを呼んでもちっとも来ないということもあるかも知れません。こういったことが、ガイドブックに載っているような有名店でもある話なのです。

ドイツの場合、サービス向上のためにチップを渡す習慣もありますが、それでもサービスが良くなっているとは言い難いかも知れません。鉄道についても“正確”だとは言われますが、それは他の国との比較でいえば“まだ正確”なだけであって、遅延はよくある話です。おそらく、日本の鉄道の感覚で言えば、発狂する人が出てきても不思議ではありません。

www.huffingtonpost.jp

営業時間が規制されているドイツの小売店

日本の駐在員がもっとも不満をこぼしていることの1つに、ドイツのお店の営業時間もよく槍玉にあがります。というのも、「閉店法」と呼ばれる法律があって、州によって営業時間が細かく決められているのです。
このような法律ができたのも、長時間労働から労働者を守ることを理由としていました。

ドイツの小売店は夜の決められた時間になると閉められてしまいますし、日曜日・祝日はスーパーすら営業していません。駅や空港の中にある限られたお店のみが営業が許されています。
お隣の国フランスでも、必要な休業日を取らなかったために処罰を受けたパン屋が日本でも話題になりましたが、ドイツの場合はもっと厳密なのです。もちろん閉店法の定めた時間から逸脱して営業することはできません。

日本からドイツへ旅行した人の中にも、日曜日に到着したためにお店が開いていなくて非常に不便な思いをした人もいるでしょう。日本のように24時間営業しているお店があって、年中無休でやっているのが当たり前の環境からすれば、ドイツは非常に不便に映ることでしょう。

www.newsdigest.de

ドイツでは理不尽なクレームには一切応じない

ドイツでも当然クレームが出ます。ただ、日本のように店員の態度が気に食わないといった理由だけでクレームをつける人はあまりいないでしょう。
支払った対価で得られるべきものを得られなかったことに対するクレームについては、態度はどうであれ、対応してくれます。

例えば、デパートで不良品を買ってしまった場合、レシートと現物を持っていかなければ相手もしてくれません。そのためドイツの場合、支払いの前に品物よくチェックするのです。
あくまでも物の売買は、お互いが確認することだという前提に立っています。そのため、クレームをつけるにしても、その現場でやるか証拠となるものを持っていて、正当性を証明する必要があるのです。

少なくとも、日本で日常的にある“知らなかった”と言ってごねるやり方は通じません。ましては、感情的に徹底的に指弾したり店側に忖度するように迫って金品を要求したりするような、日本で聞くような「クレーム」は、一切成り立ちません。

「ブラックな客」が「ブラック企業」を育てる

一般的な日本の感覚からすれば、ドイツのサービスのあり方について色々異論が出ることでしょう。おそらくクレーム処理の現場をくぐってきた人たちからは多くのダメ出しを食らうことになるかとは思います。

サービスに対する考え方は、日本とドイツとでは180度対照的だと言えると思います。
ただ、ドイツのサービスのことを言うと、日本のおもてなしを批判なしに賞賛する人たちも出てきます。そして、ドイツ在住の方のブログや記事などを読んでも、ドイツでうんざりしていることは理解できるのです。しかし、日本の「おもてなし万歳」と言ってしまうのもどうかと思うのです。
なぜかと言うと、理念のない「おもてなし」の結果、現場が疲弊しているという現状があるからです。

日本のサービスは特にそうなのですが、値段が安いのにもかかわらずサービスの要求レベルが高いことについて問題視するべきではないのでしょうか。
特に日本のサービス業は、非正規労働者が中心となっている職場が多く、賃金が安く抑えられています。その結果、安い料金が成り立っているのです。そこで、完璧な「おもてなし」を要求するクレームも、正直どうかと思うのです。
日本の社会を見ていると、消費者として過大な要求することで自分たちの労働環境を悪化させていることに気付いていないかのように見えるのです。目の前の売上が欲しいからと言って、客の無理難題をそのまま聞くことを「おもてなし」と混同しているように思えるのです。

企業-個人間でも、閉店時間が過ぎて店を閉めているのに店を開けるようごねたり、本来のサービスから外れたことを要求したりといったことは、日常的に起こってしまっているのではないのでしょうか。
また、企業同士の間でも、間に合わないような納期を要求する、納期直前になって大幅な仕様変更を追加料金なしで要求する、といったケースを少なからず存在しています。そして、その要求をこなして当然だと現場の状況を省みず、上司が仕事を受けてしまう状況になっている職場も少なくないのではないのでしょうか。

これを全て聞いていたら、心身ともに辛いですし、イレギュラーによるタイムロスや無理なスケジューリングも増えて、労働量も増えてしまいます。これでは労働生産性も低くなってしまいます。そして、これが日本に「ブラック企業」が多く存在している根本的な理由なのではないのでしょうか。
ドイツの場合は杓子定規に過ぎるとは言え、“できること” “できないこと”をはっきりさせている点で働きやすい環境を作り出していることについては、評価をしてもいいように思うのです。

news.careerconnection.jp

それは本当に必要な「おもてなし」ですか

冒頭に挙げた、ドイツのサービスの悪さについては、正直閉口するものがあります。しかし日本のように、値段が安いチェーン店で完璧なサービスを要求するのも違うと思うのです。
どんどん安くという値下げを続けているうちは、サービスの向上にはつながりにくいのです。「安さ」で疲れ切ったスタッフからの「おもてなし」を見たとしたら、多くの人は引いてしまうように私は思うのです。
もし完璧なおもてなしを求めるのであれば、本来であれば高級店に行くべきでしょう。そして、それがこなせる環境を整えて売りにするべき話です。その方が、サービスする側も、される側も心地よいと思うのです。

「おもてなし」を売り上げに転化することはいろいろあるはずです。例えば、宅配便にしてもどうしても時間指定をしたいのであれば、その分追加で支払うべきでしょう。少なくとも、目くじらを立てて遅れたことに対して怒るのは、いかがなものかと思うのです。
“お客様のため”と言って、24時間365日営業するというお店もあるのですが、それは本当に必要なのでしょうか。

昨今労働者不足になってきているというのであれば、 サービスの時間や休みの日についても見直しする必要があるのではないでしょうか。少なくとも夜については、採算が合っていないのであれば、積極的に店舗を閉めてしまっても良いかと筆者は思うのです。
また、人員が足りないと言っている日本に関しては、罰則付きの法律で強制的にでも営業時間を制限までしてしまってもいいと、思っているくらいです。
夜や休日にお店が閉まっていて、そこまで不都合があるようには思いません。夜お店が開いていて便利だと言いたい気持ちも分かるのですが、維持するだけのコストに見合っているのでしょうか。

クレームについても現場任せにしていて、理不尽な要求に対しても放置しているだけではないのでしょうか。ドイツの場合であれば、理不尽な要求だと上司が感じたら即断ります。実際、日本のサービス業の多くでは、権限のない現場の人たちに丸投げしている職場も少なくないのではないでしょうか。

際限のない完璧な「おもてなし」を現場に要求するのは、正直無理なところまで来ているように思います。企業の中でも、どんなサービスができて、それが強みになりうるのか、根本的に見直す必要があるように思います。それが本来のおもてなしにつながるのではないのでしょうか。

toyokeizai.net

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180227160154j:plain山内 一輝/ライター・講演家
1979年生まれ京都市伏見区在住。2002年京都大学文学部(社会学専修)卒業後、塾講師を経て、ドイツへ渡航。帰国後は長年大学生協で下宿斡旋部門・旅行部門で勤務。当時より、ドイツ渡航の経験を生かした『Kazuのかんたんドイツ語』で、外国語や外国事情の記事を更新。現在は主に、フェイスブックやブログ『ライター・講演家 山内一輝の雑記帳』で情報発信中。