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誇りと自信をもって「日本型資本主義」を世界に発信していこう

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すぐれた品質と創意工夫で世界をリードする“モノづくり”国家、日本──。そしてかち得た「日本型資本主義」の根底には、「利益追求」と「社会貢献」というビジネスをする上での基本的な要素(価値観)が、すでに固有の理念として古くから定着していた。

いま世界は自分の国だけを重視するナショナリズムと、極端な拝金主義が横行する一途だ。こんな混沌とした時代だけに、強烈に求められるのは、経済と道徳をベースとした日本流のバランス感覚であろう。今こそ日本人は祖国の育んできたこの輝かしい価値観を再認識し、世界に向け誇りをもって発信すべきではないだろうか。

新しい文明を独創力で一段上の高みに変えていく能力

世界のあらゆる文化や技術を吸収し、修正し、複製を超えて再創造し、一段と高められたものに変換していく能力にかけては、日本人の右に出る民族はいない。終戦の廃墟から立ち上がって奇跡の復興をなし遂げ、わずか30年で経済大国となったのも、その能力だった。

日本人には、新しい文明に触れると、繊細な民族だけにすぐに劣等感を持ち、それを採り入れていく特質がある。その上に勤勉、誠実、忍耐、責任感、忠誠心などという特性がプラスされ、それら新文明に劣らず独創を加え、自分たち独自のものに変えていった。漢字も仏教も西欧技術もすべてそうだった。

漢字がやってくれば、自分たちに都合のよいように工夫して万葉仮名(注)、片仮名、平仮名を発明した。仏教が伝来すると、日本の民俗信仰だった神道と合体させる一方、平安末期にはわが国独自の仏教をつくり上げていった。
(注:漢字の表す意味に関係なく“国”を久尓、“心”を許己呂というように、漢字の音だけ借りて日本語を表記したもの)

鉄砲が種子島に伝来すると、わずか30年後には、織田信長が3000丁も量産、長篠の戦いで武田勝頼の騎馬隊に勝利を収めている。当時としては世界で最も優れた鉄砲改造に成功したのが原因、というのが定説である。伝統的な刀鍛冶技術が威力を発揮したのだ。

小国に生まれ育った独自の日本文明

ハーバート大学の国際政治学者サミュエル・ハンチントン教授は、1990年代のベストセラー「文明の衝突」の中で、世界の文明を7つに分けた。中華文明、ヒンドュー文明、イスラム文明、日本文明、東方正教会文明(ロシアなど)、西欧文明、ラテンアメリカ文明である。

その中で彼は、日本文明以外の6つの文明はすべて複数の国にまたがっているのに対し、日本文明だけは独立していることを強調している。いやハンチントン教授だけではなく、どの学者も日本文明を中華文明にも入れず、独立させるのに意見が一致しているのだ。

1万年も前の縄文時代から長く住みつき発展してきた文明に、西暦2世紀ごろから中華文明が混じり、16世紀以降は西欧文明の影響を受けたが、やはり日本は独自の発達を遂げた文明と認めざるを得なかったのである。ちなみに朝鮮半島は分類では中華文明に含まれる。

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ベストの文化や体制に工夫を加えて導入する知恵

他民族に支配されなかったことも独自性を保持できた原因だが、強調できるのは、当時、先進国だった中国の文化や体制であっても、君主専制(独裁王者による統治体制)や科挙(官僚の登用試験)、宦官(注)などの制度の設置は採り入れなかった(注;後宮に仕えた去勢男子。君主に重用され弊害も出ていた)。日本の実情を考慮に入れながら、自国に適したものを取捨選択し、換骨奪胎を繰り返しながら、創意工夫して導入する知恵を最大限に発揮したのである。

日米修好通商条約締結のために訪れたタウンゼント・ハリスの日記には「日本には富者も貧者もいない。正直と質素の黄金時代を他のどの国よりも多くここに見出す」(注)と記し、日本の人たちはみな健康そうで礼儀正しく正直だと述べている。(注;「日本滞在記」<全3巻、岩波文庫>より)

封建主義体制(注)の下、苛斂誅求にあえいでいたはずの当時の農村では、子供から人足、車夫に至るまで冗談を言い合って、笑い転げている風景を目の当たりにして、ハリスは驚きを隠せなかったようである。(注;多くの諸侯が土地を領有し自領内の全権を握る体制)

しかも、徳川家定に謁見した印象では「将軍の服装は質素で、殿中のどこにも金メッキの装飾はなく、柱は白木のまま。火鉢と私のために用意された椅子とテーブルの他には、どの部屋にも調度の類が見当たらなかった」と記している。

利益追求(儲け)と社会貢献(人のため)は融合されたもの

日本型経営、資本主義の原点には、もちろんこの日本流の質素さと考え方が踏襲されていた。とくに爛熟した江戸時代に求められるのだが、勃興し発展していった商業主義のつねに根底にあったのは、“目に見えぬ価値”を重視するスピリットであった。

渋沢栄一(注1)の「右手に算盤、左手に論語」、住友家訓の「浮利を追わず」、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)──は、商いをする上でのモットーに象徴されていた思想である。また「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」とは、二宮尊徳(注2)の残した言葉だ。
(注1;1840~1931年、財界の大御所として活躍、引退後も社会事業・教育に貢献)
(注2;1787~1856年、世界初の農民の協同組合を設立。600余の農村再建に成功した思想家)

これら先賢の人たちの言葉に共通しているのは、商い(ビジネス)をする上で決して忘れてはいけないのはモラル(道徳)だと強調している点である。渋沢は「算盤(商才)に長けていればお金は儲けることができるが、それだけでは富は長続きしない」との意、住友家訓は「社会的価値のない利益(浮利)は追わず、本業で汗を流して稼ぐ」ことを諭している。

わが国にはもともと社会的責任や社会貢献を重視する思想が、確固として存在していたのだ。商いの基本という考えでは、儲け(利益追求)と人のため(社会貢献)の融合という流れになる。欧米ビジネスでは二項対立的(注)に捉えられてきたものが、日本流経営ではすでに統合されたものとして捉えられていた企業観であった。(注;2つの事柄が対立と矛盾の関係にあること)

「目に見えない価値」を重視する日本型経営

日本型経営では、“目に見えない価値”を重視する風潮があった。優れた経営者は社員の目の輝き、働き甲斐、職場の空気、社員の和、企業文化、顧客との共感、社会からの信頼などといったものに価値を見出していた。財務諸表には載らない価値である。

一般的にも働くということは「傍(はた)」を「楽(らく)」にするものだと語られてきていた。欧米流の合理的な個人主義を先頭にした労働観と異なり、日本企業のきわめて人間主体のこの労働理念は、やはり今後の世界の企業の進む指針として軽視されてはならないもののはずである。

効率性、便利、快楽、なかでも富裕(カネを豊かに保有すること)こそが幸福であると勘違いし、その目的のために一途に走る欧米のグローバリズムとは、根本的に異なる思想だが、今後は日本経済のベースにあるこのバランス感覚こそが、世界をリードする規範となろう。

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今こそ祖国への誇りを取り戻すとき

個より公、カネより徳、競争より和、主張するより相手を察する、に重きを置く日本文明は、「貧しくとも幸せそう」という古今未曽有の社会をつくった文明である。戦後になってさえ、「国民総中流」(注)という、どの国も達成できなかった社会を実現させたお国柄である。
(注:'2016世論調査でも国民の92%が中流意識をもつことが明らかになっている)

世界も日本を見直しはじめている。キリスト教、イスラム教をはじめ、その他の宗教が行き渡った国より、日本の治安は図抜けてよく、人々の心も最も穏やかで倫理モラル感覚も高いからだ。持てるバランス感覚は普遍的価値として、混迷する世界を救う基本となるに違いない。

終戦後、自信を粉砕された日本人に、GHQが徹底して行った“洗脳”は、大東亜戦争が一方的に日本の責任であること、戦争中の全ての行為は恥ずべきものであること、などの内容だった。贖罪意識を植え付け、二度と戦争行為に走らないよう無力化させるため、教育・宗教政策を重点として徹底した。これが奏功し、長年にわたって浸透したことから、現在の日本人は祖国に対する誇りを喪失していった感がある。

それだけに日本人は誇りと自信をもって輝かしい価値観を再認識し、今こそ祖国への誇りを取り戻す必要がある。今後、ナショナリズムを強調する一方の、この混沌たる世界をリードしていくベースに、日本の役割があるとも確信する。政治も経済も宗教も、底流には日本的な思想がなくてはならない。誇りと自信をもって世界への説得に取り掛かるべきだ。

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コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180209143106j:plain藤沢 佑吉
1948年生まれ。昭和45年に㈱野田経済研究所 編集部に入社、平成4年に経済誌『野田経済』 編集長、同8年に編集主幹、同12年に退任・退職。平成15年㈱インタープレス編集長(常務待遇)に就任、同26年に退任・退社。『建設オピニオン』(建設公論社)、『サイクルプレスジャパン』(インタープレス)にて連載執筆経験がある。