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「働き方改革」を上手くいかせるためには、「仕事以外の顔」が必要だ

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「働き方改革」が迷走する根本的な原因は?

「働き方改革」や「ワークライフバランス」という言葉だけが、日本では先走りしているように感じます。
目につきやすい所であれば、「残業を減らす」ことがテーマの一つになっているのですが、多くの企業では実際はなかなか進まない状況にあるようです。
今でもなお、納期前に残業・休日出勤は当たり前という風潮が強いのは、変わっていないように思います。
また、多くの場合、「残業をなくす」ことが目的になっていて、仕事のやり方を変えていないことも非常に大きな問題です。「働き方改革」が、かけ声だけで迷走しているのも、残業を減らして「何を目指すのか」そして、「何故それを目指すのか」が明確になっていないことが大きな原因だと思います。

そこで、「ワークライフバランス」がしっかりしていると評価を受けている、ドイツの事例を交えながらお話したいと思います。

news.yahoo.co.jp

ドイツでは残業・休日出勤なんてしない

ドイツのデュッセルドルフの十人程度の小さな会社で仕事をしていた時の話です。
ある週末に仕事も随分残っている状況でした。しかし、定時となると社長自ら帰り支度を始めたのです。
仕事を続けようとしている私に気付いたのか、社長が直に声をかけてくれました。
「今日はもう時間だから仕事は終わりだよ。続きは月曜日で大丈夫だから。」
その案件の締め切りも近かったので、残って仕事できないか話をしてみましたが、頑なに月曜日でいいと言われました。
結局、口だけでなく、本当に帰ろうとしているのですから、私も帰らざるを得ませんでした。
他のドイツ人にも話を聞いてみたのですが、時間になったら帰るというのはドイツでは普通の話です。

それには、法制上の理由も、もちろんあります。ドイツでは長時間の残業を放置していた場合、15,000ユーロ(約200万円)以下の罰金となるなど、厳しい罰則がある面というのも大きな要素です。残業をするのはダメだという共通認識があるため、管理職のポケットマネーから支払わせる企業も少なくありません。
しかし、なぜ残業・休日出勤が「ダメ」だと共通認識が取れているのでしょうか?

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「仕事以外の顔」があるドイツ人

友人たちと食事をしたり、地域の運営するカルチャースクールであるVHS (フォルクスホッホシューレ)で「習い事」をしたり、という光景は日本でもあるにはあります。
日本とドイツとで比較して一番違うのは何かというと、「家族との時間」が非常に多いこと。ドイツ人の個人宅にお邪魔したこともいくらかあるのですが、親子でとにかく会話をしたり遊んだりしています。
少なくとも会社の人間だけで連れ添って、毎日のように飲んで回る光景はドイツにはありません。

というのも、仕事が終わった後は、完全に「別の人間」だという社会の共通認識ができているためです。そのため、企業からの労働時間外・休日の連絡については禁止されていますし、仕事以外の時間を確保するために、前の勤務終了から11時間以上開ける義務も課せられています。
ドイツ人にとっては、仕事は確かに必要なのですが、あくまで人生を楽しく過ごすための手段に過ぎないのです。

高いドイツの労働生産性

これだけ労働時間を制限していても、ドイツはヨーロッパ一の経済大国の立場を保っています。その理由は、労働生産性が非常に高いことにあります。

世界の先進国・新興国の35か国が加盟しているOECD(経済協力開発機構)の統計によれば、2016年の時間当たり労働生産性は、ドイツが68.0ドルに対して、日本が46.0ドルとなっています。単純にみれば、ドイツは日本の1.5倍の生産性があるのです。

その理由のうち、一番大きいのは、徹底的な仕事の標準化にあります。
ドイツの場合、無駄な仕事だと思ったら上司にバッサリとやらなくていいと言われます。例えば資料作成1つ取っても、必要でなかったら管理職からチェックが入ります。
また、管理職は主導して、無駄な書類を増やさないための書式の統一であったり、マニュアル化だったり、といった具合に仕事の「見える化」を徹底的に行っているのです。

特にドイツの場合、各労働者が30日間の有給休暇を持っています。そして、必ず消化する義務があります。先にも話した通り、有給休暇中は、一切連絡が取れません。そのため、有給中の担当者が不在の間でも対処できるようにしようと思えば、徹底的な標準化が必要なのです。
万が一、担当者でないと分からないことについては、ドイツの場合は、休暇後に対処するケースもあります。
日本だと、激怒する人もいるケースかも知れませんが、これが受け入れられているのも自分も「仕事以外の顔」を持っているからだという見方もできるのではないのでしょうか。

note.mu

「仕事以外の顔を安心して持てる世の中」をつくることが目標でいいのでは?

日本の企業の中に、「残業をなくす」ことが目的化していて、今の仕事のやり方のまま機械的に時間を区切るだけで仕事はそのままだ、という企業も世の中にはあるようです。
そのままでは、納期に間に合わないなどのプレッシャーで、結局社員を追いつめる結果になりかねません。結局、このままでは社員が仕事を持ち帰って、リラックスできる時間がないままなのです。

「働き方改革」と言ったところで、上から言われて嫌々やることではありません。自分たちがどういう環境で働くのがいいのか、真剣に考える必要のある取り組みなのです。
重要なのは、「仕事以外の顔」を社員が持てるようになるかどうかなのです。
特に、若い世代は、ブラックな環境には相当敏感で、安心して仕事を続けられる環境を望んでいます。そして、自分の人生を楽しめる時間も必要だと思っているのです。
「仕事以外の顔」を持つ重要性を理解して初めて、やっと環境の整備が進められるのです。

www.mhlw.go.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180227160154j:plain山内 一輝/ライター・講演家
1979年生まれ京都市伏見区在住。2002年京都大学文学部(社会学専修)卒業後、塾講師を経て、ドイツへ渡航。帰国後は長年大学生協で下宿斡旋部門・旅行部門で勤務。当時より、ドイツ渡航の経験を生かした『Kazuのかんたんドイツ語』で、外国語や外国事情の記事を更新。現在は主に、フェイスブックやブログ『ライター・講演家 山内一輝の雑記帳』で情報発信中。