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サウジアラビアの「女性の解禁」がもたらす日本経済の行方

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アラビア半島の大部分を占め、紅海とペルシア湾(アラビア湾)に海岸線を有する砂漠国にサウジアラビアという国がある。この国は、独自の信教や女性の人権など異なる文化を持つ。
世界で唯一禁止されている女性の自動車の運転は、この2018年6月には解禁予定。同年1月には、黒い伝統衣装「アバヤ」を全身に覆った女性が、競技場でサッカーを観戦する姿が見られ、「女性の競技場観戦解禁」の記事が躍った。
石油依存の国から脱却し、女性の社会進出などによる財政再建を試みるサウジアラビアから、日本経済の行方を検証してみることにする。

サウジアラビアってどんな国

面積は215万㎢。日本の約5.7倍で、首都はリヤド。人口約3200万人。アラビア語を公用語とし、イスラム教が国教で、サウド家が統治する絶対君主制の王国の国である。
莫大な埋蔵量を誇り、世界最大の原油国でもある。生産量もさることながら、輸出量も最大級で石油大国。ほぼ財政収入の8割を石油に頼り、日本はこの国から約33%の原油を輸入し、またこの国は日本が最大の原油を売りたい供給国でもある。その石油依存から脱却し、「女性の社会進出」や「サウジ・ビジョン2030」で、財政を立て直し、新しい国づくりを模索したい。

サウジアラビア王国 | 外務省

サウジアラビアの女性の人権

人権

サウジアラビアの女性は、2017年世界経済フォーラムのジェンダー・エンパワーメント指数、女性の政治参加や経済界における活躍・意思決定に参加できるかどうかを表す指数が144カ国中138位である。この数値を見ても、他国に比べて女性の地位が低いことがわかる。ちなみに1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、日本は114位であった。最下位はイエメンで、その上もシリア、イランが続き、中東諸国の男女格差は大変低い。

国教のイスラム教の中でも、厳格なハンバル派に属し近親者の付き添いがなければ、女性は外出ができない。外出する際は、必ず髪の毛を覆うための「ビジャーブ」を身につける必要がある。女性が全身を黒い布で覆っている「アバヤ」は、伝統衣装である。

一夫多妻制が認められている国で、遺産相続は男性の半分で、公的な権限を用いるためには、父親、夫、兄弟などの男性の代理人を介す必要がある。
子どもを産み育てることが女性の義務として考えられ、結婚し子供を生まなければ、この社会では社会人として認められていない。そのために無理をして子供を生む女性もおり、危険を伴うことがある。

交際

女性は異性との交際は制限され、仮に婚姻関係を結んでいない女性が、異性と性交渉を結び発覚した際は罰せられ、何らかの方法で死刑になる場合が多い。
男性は刑が軽く、むち打ちですまされることが多い。女性との差が大きく、男女差別であると世界からの批判の声も多い。

就労

現在は、女性の家事労働やサービス業の就労も法的に認められているが、以前は女性の就労を厳しく制限していた。約30%の女性は、外国人労働者である。その点が問題視され、自国民の女性の解放につながっている。
油田開発が活発化する1950年以前は、女性の就労も認められており、教員などの社会的地位の高い女性も多くいた。

戸籍・パスポート

男性の戸籍はあったが、女性の戸籍はつくられていなかった。そのため、身分を証明するものが無いのでパスポートや免許の発行ができなかった。自動車にも乗れなければ、女性が外国に行く際は、親族男性のパスポートへの併記しか認めていなかったので、外国にすら行けかった。
1992年以降、女性にも戸籍がつくられるようになり、パスポートや免許書の取得が可能になった。

教育

この国は外国人労働者が多く、1994年から自国民化の労働力を進めている。
女性の教育に力を入れ、就学環境や雇用制度を整えて国内経済の活性化で国内の女性の大学進学率は上がり、専門教育を受けた女性が色々な分野で活躍している。女性の教員も多くいるが、以前の伝統を重んじる動きもあり未だ制限は厳しい。
政府が2011年、首都リヤドに創設した女性専門の国営大学「プリンセス女子大学」で働いている女性は、雇用創出のために、ほとんどがサウジアラビアの女性である。

海外留学・夫婦別姓

女性には戸籍がなく、パスポートの取得も最近になり可能になった。単身で海外留学すること有り得ない。夫婦別姓を認めていない国なので、女性が海外留学する際は男性に同伴するかたちだ。(そのため、女性は既婚者で子持ちである)
両親が海外赴任している場合は、未婚者でも海外の学校に通学している。

女性の解禁・解放

自動車の運転

女性の自動車運転が禁じられている世界で唯一の国でもある。冒頭でも述べたように、サルマーン国王は、2017年9月に女性の自動車の運転を認める法案を改正する国王令、翌2018年6月には法律を施行する予定。
国内の女性への前向きな政策に、喜びに沸き、明るい兆しに、国内は、エネルギーと活気に満ちている。

www.afpbb.com

娯楽

男性の許可がなければ外出できないので、女性が長らくサッカースタジアムで観戦することはなかった。しかし、この2018年1月にスタジアムで黒い伝統衣装「アバヤ」を覆った女性がスポーツ観戦する姿が見られた。
今後は、首都のリヤド以外にも主要都市のスタジアムで、女性が家族と一緒にスポーツを観戦できるように準備を進める。当然、スタジアム内のレストランやカフェも使えるようになる。
2017年9月の建国記念日、実験的な試みとしてスタジアムに女性が入ることを許可していた。

www.cnn.co.jp

サウジ・ビジョン2030

サウジ・ビジョン2030とは、石油依存から脱却するために様々な投資に基づいた国づくりを進めている。「活気ある社会」、「盛況な経済」、「野心的な国家」という3つの柱の「サウジ・ビジョン2030」計画である。
投資や観光、製造業、物流など経済の多様化を目指し、国営企業から民間企業の役割を拡大させ、雇用を新たに生みだし、国民の生活水準を向上させたい。
2030年という具体的な数値目標が設けられたことは、今後本気で石油国家から脱却したいという意図が読み取れる。 

markethack.net
「ビジョン2030」による2030年までの目標 
活気ある社会 確立された価値 ウムラ(小巡礼)の受入許容者数を年間800万人から3000万人に増やす
UNESCOの世界遺産登録数を2倍以上にする ※2018年現在4件
生活の充足 国内における文化・娯楽活動への個人消費を2.9%から6%に上げる
少なくとも週に1回運動する人の割合を13%から40%に上げる
3都市を世界の都市トップ100にランクインさせる
強固な基盤 社会関係資本指数(SCI)で26位から10位になる
平均寿命を74歳から80歳にのばす
盛況な経済 地理的位置の利用 物流効率指数(LPI)で49位から25位になる
石油を除いたGDPにおける非石油製品の輸出の割合を16%から50%に上げる
効果的な投資 世界第19位から世界第15位の経済規模の国家になる
石油・ガス部門におけるサウジ人率を40%から75%に上げる
公的投資基金(PIF)の資産を6000億リヤールから7兆リヤール(約1.9兆ドル)に増やす
オープンなビジネス 国際競争力指数(GCI)において25位から10位になる
GDPに占める海外直接投資の割合を3.8%から5.7%に上げる
GDPに占める民間部門の貢献の割合を40%から65%に上げる
豊富な機会 失業率を11.6%から7%に下げる
GDPに占める中小企業の貢献の割合を20%から35%に上げる
労働力に占める女性の割合を22%から30%に上げる
野心的な国家 効果的な統治 非石油政府収入を1630億リヤールから1兆リヤール(約2700億ドル)に増やす
世界ガバナンス指標(WGI)で80位から20位になる
電子政府開発指数(EGDI)でからトップ5に入る
責任ある国民 世帯収入に占める貯蓄率を6%から10%に上げる
GDPに占める非営利部門の貢献の割合を1%未満から5%に上げる
年間100万人のボランティアが非営利部門で従事する(現状1.1万人)
参考元:「ビジョン2030」公式ホームページ

女性解禁で期待される日本の経済

2017年3月「脱・石油依存」の模索のために、サウジ国王がエスカレーター式のタラップで羽田空港に来日したのは有名である。インフラ、医療、再生可能エネルギーなど幅広い分野で、投資収益に基づいた国家づくりを進めたい考えだ。

唯一世界で自動車に乗ることが禁止されていた女性も、2018年6月には法律を施行予定で、自動車に乗ることが可能になる。また、男性の許可がなければも許されなかったスポーツ観戦もできるようになる。これらの政策を見ても、国内の女性への将来の明るい兆しと明るい経済の活性化がみられる。

中国を抜いて2020年代半ばには人口が世界1位になる見込みのインドも、自動車市場の参入が予想される。実際に女性のドライバーが増え、購入者も倍増している。
すでに日本の自動車メーカー、スズキとインド政府との合併会社「マルチ・スズキ」も参入済みである。
自動車・娯楽の解禁以外にも、「サウジ・ビジョン2030」を見る限り、優れたモノを製造する「モノづくり日本」は、大いにこの国にお金を落とすことができる。
当然モノを動かす商社、モノを消費者に売る小売業、お金を売る金融業、観光のサービス業などの業界は活性化し、経済効果を生むことで通貨が変動する。

このサウジ国の変貌ぶりに、日本の投資家も黙ってはいないだろう。当然、投資家の懐も温かくなるはずだ。「活気ある社会」、「盛況な経済」、「野心的な国家」の国づくりに、日本は今後多いに貢献できそうだ。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20180117131706j:plainS.大森/ニュース・ビジネスライター
大学英文科を卒業後、国際関係の仕事に長く携わる。執筆生活に入り、著書『小さな島国のおはなし』(文芸社刊)を刊行。時事問題を得意としニュース記事を依頼されたことを機に、ニュースライターに転身。経済に興味をもち始め、ニュース・ビジネスライターとして活躍中。将来は世界の金融都市から世界経済を配信するのが夢。