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医療現場でのAI活用方法と人間の医療における役割

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いまや日常的に耳にするようになったAI(人工知能)の話題。そのAIの応用に関する研究が盛んな分野の一つが医療の現場で、より正確な治療や診断が可能になり、ハードワークの医療従事者の負担を減らすことが期待されています。
この記事では現在の医療現場や医学研究において、AIがどのように活用されているか、さらに将来、AIが医療現場に本格的に応用されるようになった場合に、人間はどのような役割を担うべきか、といったことについて考えていきます。

医療におけるAIの活用例:①診断

まず誰もが想像しそうな活用事例として、AIによる診断があります。
2015年、IBMを開発した人工知能「ワトソン」が、膨大な量の医学論文を学習し、医師でも見抜けなかったガン患者のガンの状態を正しく診断できた、というニュースが出ました。このように、病気を診断するAIの開発は現在ホットな領域です。

画像診断を行う放射線科においては、すでにCAD(Computer aided detection/diagnosis、コンピュータを用いて診断する技術)を導入し、医師の負担の軽減をはかっている病院もあります。レントゲン写真やMRI画像、CT画像を読影するAIの開発の研究は盛んですが、病変のある画像データの数が十分でないなどの理由から、少なくとも放射線診断医の仕事を完全に代替するようなAIはいまだ登場していないようです。とはいえ、今後データの数が増えていけば、爆発的な進化を遂げるかもしれません。

医療におけるAIの活用例:②新薬開発

新薬の開発には、膨大な時間と費用がかかります。具体的には、数十万ある候補物質を動物実験やヒトでの治験を経て薬事承認され製造・販売がなされ、かつ流通後にも有害作用はないかなどが厳しくチェックされます。新薬として世に出すためには、200~300億円の費用と10~17年の時間が必要と言われます。
こうした創薬の過程にAIを用い、開発を飛躍的に加速させる試みがあります。これにはAIのほか、AIとセットで語られることの多い「ビッグデータ」と呼ばれるものも関係します。具体的には、数百万種類ある化合物のビッグデータの中から、目的の薬効をもちうる物質をAIが解析・スクリーニング(選別)することで、新薬開発の手助けをするのです。

医療におけるAIの活用例:③脳とつながるコンピュータ

脳と機械が連動する―そんなSFのような技術が今、現実化に向けて大きく進歩してきています。これはBMI(Brain Machine Interface)という名称で、脳卒中などが原因で体に麻痺の残った患者を対象とし、運動を行おうとする際に発生する脳波を機械が分析・学習し、麻痺のある部位の運動を脳の活動と連動させる技術です。
この、脳波と身体運動の連動の学習のために、k-means法やサポートベクトルマシンなどといったAIのシステムが用いられます。

AIベースの医療における人間の役割とは

以上見てきたように、医学研究や医療現場においてAIは幅広く応用される可能性があり、一部はすでに実用段階に入っています。こうしたAIの発展において常に問題となるのは、人間の仕事が奪われるかもしれないという懸念です。医療現場においてもそれは例外ではないのでしょうか。
これまで見てきたAIは、画像診断などの何か特定のタスクの処理を効率的に行うことのできる「弱いAI」と呼ばれるものです。反対に人間のようにマルチタスクを行い、かつコミュニケーションにも優れるような汎用的なAIは「強いAI」と呼ばれており、これはまだ実例もありません。

発展するのが弱いAIである限り、AIを操作するのは常に人であり続けることでしょう。現在、CTやMRIを人間が操作していることと同じです。人間と同じような認知機能を備えた強いAIが完成しない限りは少なくとも、人間は医療現場に不可欠と言えるでしょう。
では、強いAIが開発された未来の病院には、入院患者以外に人は全くおらず、全ての医療業務を機械が代替するようになるのでしょうか?
おそらくそれでも、人間の医療従事者は必要とされるでしょう。

医療行為とは、ただ病気を診断・治療するだけの行為ではありません。患者とコミュニケーションをとり、精神的に寄り添う「ケア」の精神もまた医療行為として重要です。患者の感情の機微を読み取り、気持ちの面から支える行為は、今後どんなにAIが進歩しようとも、人として生きた経験のないAIには務まらないことでしょう。AI社会における人間の仕事については、医療分野以外でも議論が巻き起こっていますが、人間のメンタルケアはおそらく永遠に人間の仕事であることでしょう。

AIの台頭で問われる「人間にしかできないこと」

医療の場で、AIは臨床および研究の場で発展を遂げ、医療の質の向上や医療従事者の負担軽減を実現させています。今後もこの発展は続き、AIは医療従事者になくてはならないスキルとなるでしょう。
一方で、人間に使われる「弱いAI」だけでなく、人間のような知性を持った「強いAI」が出てくる可能性もないとは言い切れません。現代は、医療現場における人間の役割を問い直す時代だと言えるでしょう。その問いは、医療現場に留まらない、「人間にしかできないこと」を考え直す契機を与えているのかもしれません。

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コラム執筆者

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旧帝大医学部生。医療と人工知能の連携について研究中。医療・健康・美容・人工知能などについての記事作成を展開。趣味は読書で、上記以外の執筆ジャンルに関しての知識も多岐にわたる。