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癒しと健康はお金で買う時代?

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癒しブームが話題になって20年、最近は若者に広がるリラク志向に加えシニア世代の健康投資に癒しを加味したコト消費なども加わり、癒しビジネスの様相が一変したと言われる。
最近の癒しと健康に関連するビジネスや目新しいサービスの紹介を通じて心身健康ビジネスの現状を紹介したい。

癒しを求める人々

2017年8月に東京ビッグサイトで開催された日本最大の癒しイベント「癒しフェアTOKYO」には3万人を越える来場者があったと言う。大阪でも主催者発表で2万人近い来場者数が報告された。心とカラダそして地球にやさしい、癒し関連の商品・サービスが一度に体感できるヒーリングビジネスショー「癒しフェア」に、1千円の入場料を支払った来場者が多く訪れた。
サービス提供企業からの参加も勿論多かったのだが、参加者の話では一般利用者で新たな「ヒーリング体験」を求めた入場者も目立っていたようだ。
一方で癒しグッズでは、デパートのロボット実演・販売専門コーナーが中高年者の来場で賑わい、ペットに代わる癒しを求める人への新たな形の「癒しグッズ」展開も好調なようだ。

a-advice.com

癒しと健康

癒しブームが話題になってから約20年が経過した。本来は苦痛を和らげる「癒す」という動詞が名詞化のが「癒し」で、「癒す」はあるが「癒し」という語がない辞書もある。
バブル経済崩壊後の「デフレ不況」で、将来不安や暮らしの前途への不透明性から「癒しブーム」が起こったのだが、この癒しブームは「癒す行動」ではなく癒しグッズ=モノ販売の商業ベースだったとも言われる。

その象徴がSONY(6758)発売のペットロボットAIBOだろう。実際にペット同等の機能はなくても、癒しグッズとして一定の支持を受けたAIBOは、癒しグッズブームの象徴だった。
当時の「癒しブーム」は暗い世相を反映した心理的な隙間(将来の不安や生活苦)を狙った癒しグッズ販売だったと言う分析がされている。だが、「癒されるべき人々」を救う「癒し行動」ではなくても、その後「癒しグッズ」は一定の位置を占め、生活の一部に定着した。
(日本商業学会:流通研究 松井剛『癒しブームにおける企業の模倣行動:制度化プロセスとしてのブーム』参照)

なお、2018年に販売開始の新AIBOは、AI搭載で従来品より格段に高機能となり、高額で維持費もかかる商品だが、ペットに代わる癒しを求める人により予約段階で瞬間的に売り切れる人気だ。
そして最近、この癒しグッズによる「癒し」から、コト消費の一部としての「健康・癒し行動」が増加している。

aibo.sony.jp

シニア世代の健康ニーズ

健康志向が特に強いのが、団塊世代をコアとするシニア層だ。
平成27年に経済産業省が行った、全国の現役(次世代高齢者)世代に対する健康に関する意識や健康関連サービス利用意向等への調査「高齢化社会における健康ビジネスポテンシャル調査」によると、人生において何よりも大切なのは健康であると考える人の割合が約98%にものぼり、健康に対する関心は高いと答える割合も、3人に1人以上であった。(高年齢層ほど肯定割合が高い)

そして、健康にかける将来の費用は「医療費」は現状維持にとどめたいが、健康維持・増進商品や関連サービス支出は増加しても良いとの考えが多かった。
内訳も、将来的に支払増加を許容できる平均金額が、医療費13円、市販薬205円程度であったのに対し、健康維持・増進商品、サービス等への支出増許容額は900円を越え、健康維持には費用支出容認額が高いと言う結果が出ていた。

同調査は、今後成長可能性が高いとして下記の分野をあげていた。

  • 人間ドックや健康セミナー、遺伝子診断などの検針・健康指導分野
  • 健康管理アプリや健康コミュニティ等
  • ヨガ・ピラティス等の運動分野 
  • 有機・自然食品、健康配慮外食サービス等の食のサービス分野
  • 温泉や健康ランド、マッサージ、アロマ等のリラクゼーション、レジャー分野 
  • 家庭用フィットネス機器や睡眠計等の健康機器分野


これら「健康維持、増進のための商品・サービス」に関しては、支出抑制意識が低く、潜在的成長可能性が高いとされた。
また1兆円市場の健康診断・人間ドック費用も、現役世代は大半が企業や自治体等の支出だったが、企業を離れ年金生活に移行した高齢層も健康にプラスになる支出として、引き続き所要費用には寛容だ。

健康に良ければ高価なモノ・行動でも購入する志向は、例えば花王(4452)のエコナシリーズ(食料油、マヨネーズ等)などは、類似品の数倍の価格帯でもシェアを伸ばしているように、健康に良い付加価値商品の売れ行きが伸びている。
また、皮下脂肪減少効果成分を織り込んだ健康下着や尿糖値等の検査可能な便器等も出現し、健康志向マンションも登場した。サプリメントやマッサージ、アロマテラピー等の代替医療も伸びており、努力をさして要しない日常品の健康価値が求められている。

一方で、シニア世代には、豪華旅行や高額な高級ホテルでのリラクゼーションなどにも人気が高く、生活の質向上に支出をいとわない傾向が顕著だ。
旅行先のホテル等では、以前からのマッサージサービスに加えアロマセラピーや岩盤浴等のエステサービスを提供するリゾートホテルが当たり前になっており、優良なエステ施設を持つホテル等に需要が集中する傾向がある。
週刊観光経済新聞の調査によれば、2010年頃から全国の宿泊施設・健康ランド等におけるスパ・エステサービス施設の設置割合が5割を越え、リゾート施設でも下記表のとおり、エステサービス施設の比重が増加している。

リゾートホテルの癒し施設内訳
フェイシャルトリートメント 76.5%
アロマテラピー 70.6%
リフレクソロジー 43.1%
その他の指圧 37.3%
タラソテラピー 29.4%
ネイル・スパ 21.6%
ヨガ 15.7%
ダイエットプログラム 13.7%
岩盤浴 11.8%
ストーンセラピー 11.8%
アーユルヴェーダ 11.8%
週刊観光経済新聞調査数値による


一方、都心のホテルでのリラクゼーションでは、豪華さや快適さを売りにする豪華施設の稼働率が高く、繁華街やターミナル駅周辺には高級なエステ等が増加している。
シニア層だけではなく、後述するコト消費に癒しを求める若い世代のニーズも増加しているからだろう。(同調査によれば、温泉やリゾートホテルにおける顧客ターゲットはシニア層が中心だが、シティホテルにおいては30代以上の全世代が対象と考えられており、従来の女性中心から男女を問わない顧客層を狙う施設も増加している)

多様化する健康ニーズと若者の癒し

コト消費が定着しつつある中で、旅行やエステ等に癒しを求め支出を増大させるシニア層とは別に、健康志向とリラクゼーションは若い世代にも人気だ。
Beautey World総研による、東京・名古屋・大阪圏のエステサロンの利用経験調査では、エステサロンを認知している人の約5割にエステサロンの利用経験があり、その中でも30歳以上45歳までの利用経験者が約60%と最も高く、25歳以上29歳までの層でも50%以上となっていた。
利用サービスの主流はフェイシャルサービスで約7割となり、以下脱毛、痩身というサービスが続く。直近でも30歳前後の女性層を中心とした増勢が続いている。(リクルートライフスタイル「美容センサス、エステサロン」による)

また、ターミナル駅等のマッサージサービス等でも、比較的高額な上級施術者による指名サービスの人気が高い傾向があるなど、健康と癒しを求める意識は全世代に渡って強まっている様だ。
さらに、最近急速に展開が進むカーシェアリングにおいても、利用者の5割近くが車内での仮眠を目的としているケースが報告されており、生活の様々なシーンで費用をかけてでも、リラックスや安らぎ・休息を求める傾向が報告されている。

ユニークな新しい健康・癒しビジネスの展開

こうした傾向は、今後も健康志向の高まりと、癒しビジネスの多様化によりさらに加速するだろう。
「癒しビジネス」として、既にかなり普及している猫カフェに加え、うさぎやふくろう等様々な動物と触れ合うスタイルのカフェが増加し、2020年の癒しビジネス産業の市場規模は約12兆円程度と見込まれている。

最近注目されているのは、男性をターゲットにした癒しだ。従来は女性中心だったサービスを男性向けに提供する店が増えている。
例えば、耳かき店は女性の従業員が男性の耳かきをするサービスで、複数のメディア報道程度でまだ認知度は低いが、利用者満足度は高く、次第に広まりそうだ。
また、ネイルケアにも男性専門店が増加している。ビジネスマンとしての身だしなみを整えると言う目的もあるが、「ネイルケア中は癒される時間だ」という感想も多く、気持ち良さに寝てしまうケースも多いという。まさに癒しのスペースとして、男性向けネイル店も好調な売り上げを示している。
男性向け爪切り専門店もある。ネイルケアとは違い、ただ、爪を切るだけのサービスだが、体調や手足の不具合等で爪切りが難しくなった年配者の利用で一定のニーズがあると言う。

女性向けには「添い寝屋」という女性向けのユニークな癒しサービスがある。女性のために自宅やホテル等に男性サービスキャストを派遣し、腕枕で添い寝しながらピロートークなどの癒しを提供するサービスで、2時間2万円程度の料金から利用できる。(ロングコースには、10時間以上のサービスもある)

「Rose Sheep」は、通常10分間で1000円程度のヘッドスパやリフレクソロジーに比べ倍近い料金だが、添い寝だけではなくマッサージも可能なうえに、キャストと料理をつくる、あるいは映画鑑賞や飲食しながら会話する等も希望により可能だが、いわゆるホストクラブとは異なるコンセプトである。

この「女性にとっての癒し」は、30代から40代のいわゆるキャリアウーマンタイプだけでなく既婚女性等にも利用があり、「それだけ癒しを求める女性が多くなっている(経営者談)」ことだと言われている。

biz-journal.jp

癒しと健康ニーズの未来

人手不足が深刻化する日本だが、人とのふれあいや精神の豊かさを求める場合にはサービス費用支出の限界値も高くなると言う報告もあり、今後は次第に増加する可能性が大きい。

林野庁の「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査」で提唱された森林を利用した健康・癒し効果や、癒しの環境研究会による「笑い療法士」認定等、癒しと健康をテーマにした各方面の多様な試みが進んでいる。

また、前述のように世代を問わず意識の高い健康志向から、今後もコストアップとなっても癒しをセットにした新サービスが生まれてくるかもしれない。
人手不足深刻化の半面、ロボット化やAI導入で製造業に限らず事務処理等にも省力化が急速に進みそうな将来の日本において、人間にしか出来ない上質のサービス需要には、コト消費の新しい側面として進展する可能性を感じている。
この健康・癒しビジネスのこれからの動向には、注目していきたい。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。