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防災ビジネス最前線

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東南海地震や異常気象が当たり前になってきたこの頃、様々な原因による火事や大規模地震等、環境問題を含め将来に起こりうるリスクは、インターネット利用とIOT機器の増加もあり、さらに増大する可能性もある。
こうした災害対策に、既に様々な防災ビジネス企業が取り組みを進めている。関連事業の新展開や異業種からの参入等、日ごろ接することの少ない防災ビジネスの一端を紹介する。

防災事業に関する国の取り組み

従来の消防組織法は主に火災対策だったが、2001年の法改正により災害の多発・多様化傾向を念頭に、国土交通省所管だった災害予防や災害復旧等も含め、災害に関連する業務が内閣府に移管され、防災担当大臣も任命された。
同時期、中央防災会議は、防災に関する業務や権限を調整し一元化して計画運営するために機能強化されるなど、防災事業について政府は取り組みの強化をすすめている。

内閣府は「わが国を襲う様々な災害から市民の生命と財産を守り、発生する被害の最小化に貢献する新しい魅力ある防災ビジネスの創造と育成である」とし、この目的で「防災ビジネスの創造と育成のための研究委員会」を設立し、新しい防災ビジネスを展開する上での技術的・制度的課題の抽出と分析と、その結果に基づいた解決策を検討・提案し、解決策を産学協働の新しい防災ビジネスモデルで連携・育成する戦略を進めている。(内閣府「民間と市場の力を活かした防災戦略の基本的提言」 民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会)

www.jstage.jst.go.jp

新たな防災事業展開の必要性

高度化・効率化が進んだ日本の産業構造によって、国内の災害危険の内容・規模等が大きく様変わりしている。
特に目立つのは、ゲリラ豪雨から記録的短時間豪雨にスケールアップした最近の集中豪雨による、かつてない壊滅的被害の発生だ。過去の統計数値から算定された設計容量をはるかに越えた雨量による河川の氾濫等により、家屋・田畑だけではなく、橋梁・道路等の被害が増加傾向にあり、大規模土砂崩れも頻発している。

また、産業分野では新たな要因による災害増加が懸念されている。
例えば、ガスタンクや化学プラント等の危険物施設は全国に60万か所以上あり、大半は比較的安全な地下貯蔵所だが、ガソリンスタンドを含む市街地にある危険物処理施設数も6万か所以上あり、こうした施設での危険物事故数は施設数の減少傾向にも関わらず高止まりしており、人的要因(操作ミスや知識不足等)が原因の事故が増加傾向にあるのではないかと言われている。(機械化・集約化により施設数は減少したが、逆にこれまではなかった操作要員減による極端な繁忙化や操作担当者等の経験不足による事故が相当数あると言われている)

さらに、一部に無許可施設や許可範囲を越えた危険物施設もあり、巨大な事故発生が懸念される。こうした自然・経済環境の変化や製造業の変革に併せ、効率的な防災の仕組みを新たに作り、変化に対応できる事が必要だろう。

防災ビジネスの拡がり

各種メディアの調査では、東京直下型地震や南海地震等への不安を感じながらも対策しない人、防災・減災に関して必要な情報を知らない人(必要情報を希望する)の割合が7割を越えている。

調査結果から、防災ビジネスの市場規模は8兆円以上と予想され、また電通総研はそれ以外にも潜在的市場が6兆円以上あると試算している。
さらに、地滑り対策機器や災害用ヘリなどについては、アジアを中心に海外にもビジネスチャンスが広がる様相を示している。(日経新聞報道による)
東京五輪後の新ビジネスとして防災関連ビジネスは、耐震補強、防災対応インフラ、災害時の物資補給・通信等を含む企業の事業継続計画等の多分野で注目され、多方面で研究・開発が進められているので、その一部を紹介したい。

防災事業に取り組む企業

震災対策として、設定値以上の揺れを感知すると自動的に電気供給を遮断し、火災(二次災害)の防御を目的とする耐震ブレーカーが注目されている。震災後の火災原因の過半数が電気火災であった事実から、首都圏を中心に多くの自治体が設置の取り組みを行っている。

政府の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」でも、出火防止対策として感震ブレーカー等の普及促進が位置づけられ、特に地震時等に著しく危険な密集市街地への感震ブレーカー等の普及推進が求められている。

川崎市と住友商事(8053)は、感震ブレーカーの普及啓発等を目的として市内の密集市街地を対象に、無償で感震ブレーカーを配布する「感震ブレーカー設置モデル事業」の実施をスタートした。同様の取り組みは全国の自治体で検討・開始されている。
震災対策先進地域の東北各県では、耐震ブレーカー普及に加え、津波対策も進んでいる。
復興工事が多数同時並行で進む中で、東北は慢性的な資材・人員不足だが、岩手県は短期間で施工可能な「ハイブリッド防潮堤」を設置した。

JFEHD(5411)傘下のJFEエンジニアリングが作成するハイブリッド防潮堤は、現地の基礎鋼管杭を施工中に、工場で堤体ブロックを製作(プレキャスト)し、鋼管杭の打設後数日間で連結一体化して完成出来るため、従来工法で約2年の工期が約半分になった。
さらに、被災地への建設資機材搬入や人手の調達が少なくなり、他の復旧工事の進捗を妨げないメリットもある。

JFEグループでは、はこのほかにもJFE建材による自然調和型落石防止事業として、自然景観を損ねない「ワイヤネット・KSネット」や、災害時だけスリット部を閉塞できる透過型土砂災害防止堰堤の「J-スリット堰堤」、護岸用に透水性が高く耐用年数が長いKSパッケージ等の開発推進も行っている。

震災に備えた地盤改良関連では、液状化対策として竹中組のTOFT工法は、液状化対象地盤を格子状に囲み、地震時の砂地盤のせん断破壊防止する工法で構造物を保護し大規模な変形を防ぐ技術として、東海地震対策等に関連し注目されている。

土砂災害防護では、NEC(6702)が独自センサー技術により土砂斜面の危険度を事故が起きる前に算出するデータ解析技術を開発し、2015年から実証実験を開始し2016年から販売開始している。
斜面に埋め込んだ水分計・振動センサーで、土砂重量や水圧・摩擦等から危険度を判定するもので、土砂災害の発生数時間前の危険通知が期待されている。
土砂災害を感知するワイヤーセンサーは従来からあったが、今後こうした各種センサーを駆使したネットワーク製品が主流になりそうだ。(雨量計や地盤傾斜計等で計測したデータを無線伝送し、分析結果によりリアルタイムで危険を察知することも目標とされており、監視体制の効率化にもなると期待される)

また、災害時用のドローン導入等の新しい形の災害・減災対策も進み始めている。
災害状況調査などで既に活用されているドローンを火山活動等危険場所での調査用に使おうと、正確な航行データ蓄積と高度な技術的基盤を持つ機材改良等が進められている。
火山災害では御嶽山噴火以降、登山者を火山から守るシェルター開発も進んでいる。

フジワラ産業は、9mm厚の強固な外壁の火山避難登山者用鋼鉄シェルターを製造している。官公庁向け実績も多い防災機器メーカーで、他にも津波避難用の鉄骨やぐら「タスカルタワー」を沿岸自治体に40基以上納品している。

ユニークな防災事業

防災専門企業以外でも、企業独自のノウハウ等を利用した、多様な防災事業が展開している。

セブンイレブンの自治体連携防災

2017年7月に政府は、スーパーやコンビニなど小売業等の七法人を新たに指定公共機関とした。災害発生時に、自治体や政府の要請で、あらかじめ策定された物資支援協定に基づき、店舗ネットワークを活用し、支援物資の調達・配送・供給等を担い、災害応急対策に貢献することを見込んでいる。

その中でも、セブンイレブン・ジャパン(3382)は、さらに「気象災害イノベーションセンター」と連携し、首都圏の大雪による経済的損失解消のため各店舗に積雪と気象のセンサーを設置し、正確な多数の情報取得による高精細な予報に向けて実証実験中だ。(政府の「第4次産業革命イノベーション」会合の取り組み)

災害発生時の社会インフラの一翼としてコンビニエンスストア営業の営業継続が、気象災害に強い地域社会の実現に貢献できると言う考えは、雪氷災害を克服した冬期交通確保にまでその対象範囲が広がっている。
「第1回 国と地方・民間の「災害情報ハブ」推進チーム事例発表」

同社はさらに徳島県との共同事業として、南海トラフ地震を想定した災害地域への情報提供を店舗掲示物で行う実証実験など、多角的な取り組みが進んでいる。

新たな防災ニーズの発掘(電通)

電通(4324)は「+ソナエ・プロジェクト」という普段使いの飲料・食品等日用品の防災機能を選択・強調して、既存の防災機器とは別の形で、新たな市場とする取り組みを進めている。
これは、日常生活に「備え」という意識をプラスしようというコンセプト(+ソナエ)から、自然災害対策の普及・浸透促進や防災ビジネスの拡大等も含め、社会全体の防災・減災力を高めようと言うものだ。

また防災ビジネス企業に対し、生活者視点に立ったコンサルティングや商品開発等について、同社の持つ知見・ノウハウとネットワークを活用して、自治体や企業・団体が抱えるさまざまな防災関連の課題解決に資するソリューションを提案するとしている。

www.dentsu.co.jp

これからの防災ビジネス

既にネットワークを利用した防災情報活用・周知やドローンAI等の利用は始まっているが、これから社会全体への普及が進むIOT機器を活用した防災・減災ビジネスがさらに発展するだろう。

大規模災害発生後に最も重要なのが、正確な情報の周知と徹底で、震災時には手書きの掲示板等も有効に利用されたが、今後は震災に耐えるインターネットインフラ(緊急用移動基地局を含む)の整備とスマホ等の携帯機器を通じた、官公庁・自治体からの情報通知システムが重要になりそうだ。
関連して、物資の配送・配置情報や交通インフラの状況などを広報する様々な仕組みが早急に取り組まれるのではないだろうか。

日本経済の今後と防災ビジネス

最近の景気、特に好調な欧米経済に支えられて株式相場は堅調な動きを続けている。
経済アナリストの予測の多くは、2018年中、引き続き株高傾向が継続し消費税引き上げ予定の2019年以降、オリンピック需要の押し上げ効果縮小と相まって株価調整局面に入るという見方が多い。
だが、こうした見方を踏まえて意外に早い段階の株価調整があるかも知れない。仮に、本格的な調整局面で米国景気上昇ストップ等があれば心理的な影響も大きく、日欧米の株式市場はかなり長期間の調整と深押しする可能性があるだろう。

こうした局面で、日本の株式市場を浮揚させるテーマは、一つにはAIの高度化とロボット導入による人手不足解消と思われるが、もう一つは防災を含めたインフラ再整備ではないだろうか。
高速道路のトンネル崩壊や記録的短時間豪雨による堤防の決壊、新幹線の台車亀裂等、日本を支えてきたインフラへの懸念は増大しつつあり、根本的な対策として「防災」をキーワードとした集中的な資金投入事業は、たとえ不景気局面にあっても受け入れやすい施策となりそうだ。

特に、人命の危険を伴うインフラ改修や関連設備等の更新要請は、かなり緊急性の高いものが多く、発生危険が高まりつつある大規模地震対策も含め、防災事業は新たな需要創出に関する大きなテーマかも知れない。
こうした大きな流れがどこに向かうかの具体的な予測は難しいが、どのような防災ビジネスが伸びるのか、その兆しに注目してゆきたい。

参考情報

防災に関する情報は、日々増大し続けているが、これらを網羅的に収集整理する専門図書館がある。
「防災専門図書館」は、防災に関する専門図書館で、蔵書に10数万点の災害関係図書等を有し、だれでも無料で利用できるユニークな図書館だ。閲覧室では、適宜、テーマを設定した災害関連資料等の展示も行っているので、災害防止や事業等に興味をお持ちの方には、是非、来館を薦めしたい。

www.city-net.or.jp

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。