Money Clip

お金に関するニュースをクリップ!

レンジ内のドル/円相場は、いつ変動するか?

f:id:Money_Clip:20171219171237j:plain

2017年の値動きが少なく、レンジ内で変動するドル/円相場は、いつまでレンジ内に留まり続けるのか?どんなきっかけがあればレンジを越えた変動が開始するのだろうか?
様々な要因で動く為替市場の現状と今後の展開を考えてみたい。

ドル/円のレンジ相場

2017年初めから最近までドル/円相場は、概ね110円~115円(あるいは111~114円)のレンジ内にとどまっている。
2015年末の利上げ開始と今年になって開始された保有資産圧縮の動きという「出口戦略」を勧める米FRB米金融政策から考えれば、将来的なドル高が想定できるにも関わらず円相場がレンジ内に膠着している原因として以下の要因があげられるだろう。

【要因1】ドル/円レートに関して、ドル高方向への動きには日銀の超低金利政策維持が前提だが、欧米の出口戦略開始との関連で早晩金融政策の限界が到来し、出口戦略を迫られる可能性が高い。(金利上げの前)
しかし、短期的には金利安が維持されたまま円高になると日本国内の資金が大量に海外流出する傾向があり、一方向にドル安・円高の動きとならない可能性もあるため様子見をしている。

【要因2】トランプ米大統領の「低金利支持・ドル安志向」は、多分に選挙民相手のポーズであると言う見方も強いが、指標上は強いドルでもドル高には不快感を表明される警戒感があり、急激で大幅なドル高へ向かい難い要素だ。

【要因3】為替相場に大きな相関を持つ米長期金利(10年債利回り)は、地政学リスクも含めあらゆる要因を織り込んでおり、12月の米利上げ後2.4%を越えていた金利が低下した様に上昇は続かず、レンジ内の動きを示している。日米金利差からドル売要素は少ないが、予想以上に慎重なFRBの利上げ姿勢から、過去3回の様な米金利上昇にはならないかも知れない等の市場の強弱感対立局面とも見られる。

【要因4】年間チャートでも、10年を越える長期間チャートと比較すると、最近1年間のドル/円相場がレンジ内の動きであることははっきりしており、こうした長期間のレンジを越えるには大きな材料等の為替を動かすエネルギーが必要と思われる。

結果として、ドル/円相場は短期では大きく変動し、急激な円高局面も一時あり膠着という印象は強くないが、結局はレンジ内の上下波動の繰り返しで明確な方向性は今の所見られない。

相場変動要因

ドル/円相場の主な変動要因は以下の通りだ。

米国長期金利

米国の長期債(10年物)の金利変動は、雇用統計や物価等の経済的な要因だけでなく、各国通貨の変動や米政権の人事、海外の地政学リスクも含めた非常に多くの要素を反映し、複雑な相関関係の結果として示されている。
従って、長期金利の変動そのものは為替を動かす理由と言えないかも知れないが、その影響力から、金利変動が為替レート、特にドル/円レートのストレートに反映するので、実質的な為替相場の変動要因と考えた方が相場を考える上では有効だ。

下図の通り、ドル/円レートとの相関はかなり強く、2017年に入ってからレンジ内の動きを続けていることが分かる。

f:id:Money_Clip:20171219172018p:plain
media.rakuten-sec.net

米国インフレ率の推移

米国の経済統計の中で、最近特に注目されるのがインフレ率の推移だ。米国景気が長期的な拡大を続け株式も上昇を続ける中、2017年はインフレ率が低下し、一向に上昇しない。
FRBイエレン議長も「不可解」と述べたインフレ率の低下は、携帯通信料金やハリケーン襲来などいろいろの理由があげられているが、どうやら主犯はAmazonの様だ。
「アマゾンエフェクト」と名付けられた、小売業の値引きと物価下落は、マクロ統計にも影響を与えている。

米国の10月消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%上昇と市場予想と一致していたが、衣料品物価は2カ月連続で低下し、物価上昇率の伸び悩みが鮮明になってきた。(FRBの目標2%と乖離)これらの要因がアマゾンエフェクト(物価抑制圧力)と言われる。
米小売り大手ウォルマートのネット販売進出を受け、アマゾンは外部出品者の値下げ分を負担するなど年末商戦前の値引き合戦が一層激しくなっている。
アマゾンの小売り・流通に与える影響が米国景気にデフレ圧力をかけ続けており、株高を受けた年末商戦好調にも関わらず物価は上がらない。

単純に考えれば、インフレ率低下は金利上昇を抑制し、結果としてドル安につながるが、物価上昇のテンポは景気全体の動きとも関連するので予測は難しく、低位安定のインフレ率も為替相場膠着の原因の一つと言われている。   

www.sbbit.jp

地政学リスク

レンジ内の為替相場の前提の一つが、日米の政治的安定だ。
米国では、ロシアゲートに関するモラー特別検察官の捜査進行で、フリン元大統領補佐官(司法取引の成立で有罪を認めた)から次第にトランプ政権の中枢に捜査が及ぶ気配がある。

既にロシアゲートは「最終段階の手前」と見られ、税制改革法案の年内議会承認が濃厚になっても米政権の安定性には不安材料が残りそうだ。但し、今後の疑惑解明の推移次第ではあるが、仮に大統領弾劾や辞任で一時的なドル/円相場の乱高下となっても大幅な政策変更がない限り、経済的にはむしろ中立に近い要素で中長期の為替トレンドは変わらないかも知れない。

また、北朝鮮情勢や中東情勢もかなり煮詰まっており、トランプ大統領の発言に一時の様な意外性はなく、イスラエルの首都に関する一連の発言等にも今の所大きな政治的混乱はない。
また「米朝の軍事的対立」が、大規模な交戦状態や日韓等が北朝鮮から直接攻撃に発展しない限り、織込み済の材料となりつつある。(勿論有事には、内容次第で為替相場を大きく変動させる材料だ)

株式市場との関連

日米とも概ね高値圏で推移している株式相場だが、上昇を続ける米国株も半導体関連株の動きには注目したい。長期間の景気拡大局面は、いつ景気反転してもおかしくないと言う見方もあり、税制改革法案に続いて大規模なインフラ投資に関する計画が(承認に時間がかかっても)発表された段階で、一段高の可能性はある。(内容次第で「材料出尽くし」の売りとなる懸念もある)

また、日本でも来年度の企業業績は引き続き上向きで、株価下支えになると見られている。ただし、日本株には米国の景気動向次第の部分も多く、さらに為替水準次第で業績が大きく変化する日本経済の体質は円高と株安の相関関係で方向を左右する可能性も高く、高値圏にある株価が大きく変動すれば為替も大きく反応することになりそうだ。

レンジを変える要素(具体的な反転要因とは)

では、こうした膠着相場を変える要因は何か、どんなきっかけで大きな変化が起きるのだろう。

長期債の水準と長短金利差

ドル/円の為替相場に大きな影響がある米国長期債の金利水準だが、インフレ水準の推移等から為替相場は株式市場とは違って景気の先行きに不安感を持ち、長期債と2年物の債券との金利差(長短金利差)が縮小傾向にある。
来年度も金利引き上げが予定されているが、仮に景気動向・経済情勢・賃金下落等何らかの原因で米国の利上げペースがさらに鈍化すれば、10年債金利が低下し、ドル安の流れに向かうことになるだろう。

米国政策の行方

税制改革法案についての上下両院協議はまとまり、法人税21%への引き下げ法案は年内にも決まりそうだ。市場の注目は、インフラ投資政策の内容と実施見込みに移り始めている。
経済政策の内容と議会審議の進展により、ドル相場の行方は対円に限らず大きく変動するだろう。

先物取引のポジション

ドル/円相場の特に影響力が大きいシカゴ通貨先物取引所(シカゴマーカンタイル取引所:CME)の通貨先物ポジション(売りと買いの差)が公表されている。正確には「IMM通貨先物ポジション」というCMEで取引されている通貨先物のポジションで、ヘッジファンドなどによる投機的なポジションを示し、買いポジション増加は相場下落、売りポジション増加は相場上昇の可能性が高い。

金曜日の取引終了後に火曜日の数値が発表される為、短期的な相場予想の参考にならないことも多いが、数値が急激に動いた時に為替相場変動も大きくなりやすく、長期的なトレンド変化を知る上で重要な参考指標だ。
これまでも買いポジションと売りポジションの差が反転した時は、大きなトレンド変更となる場合が多かった。(直近では、2015年末と2016年秋の米大統領選挙後など)
最近は、ドル買いポジションがかなり増加しており、徐々に解消の動きが出ていると言う観測もある。

今後、これがどのように解消されるか、あるいは税制改革法案に続くインフラ投資政策の具体化で再び、ドル買いの動きが出るかどうかが注目されている。

f:id:Money_Clip:20171219172222p:plain
fx-game.com

米国の雇用統計と賃金、インフレ率

これまで、大きな予想との乖離はなかった2017年の経済指数が大きく変動すれば、一時的な変動でない限り為替を動かすだろう。
特に、先物市場のポジションが偏っており、いずれかの指標で景気にマイナスの数値が示されれば一気にドル安が進む可能性はある。
その他の要因と重複する部分も多いが方向感が掴みにくく、その動きと変化の理由に注視が必要だ。

ユーロとの関係

ユーロ/円相場が上げ基調にある。
これは、EU全体の経済が上向きにあることと、ドイツ等の政治不安も経済への悪影響は少ないとの見ている様だ。
ECBの金融政策は金利こそ低水準にあるが、すでに出口戦略に向かっており、政治と経済のリスク不安から長期間売られ続けていたユーロ買い戻しの動きとの見方が多い。
だが、直近では騰勢一服となっており、ドイツの大連立や再選挙・ブレクジット等、織り込み済みとされた材料に想定外のリスクを見出せば、ユーロは大きく変動する可能性もあり、日米通貨との関係が激変すれば、内容次第でドル/円も動く可能性がある。

FRB理事の動き

パウエル新議長は決まったが、金融政策を担当する副議長は決まっておらず、タカ派と目されたM・グッドフレンド新理事のハト派的言動など、2018年度のFRB金融政策の方向性は不透明だ。
今後、2018年中に退任予定のダドリー理事(NY連銀総裁)の後任人事も含め、FRB理事会の方向性が注目だ。こうした情勢でこれまでの金融政策が変更する気配を市場が感じ取った場合には、大きく為替相場が動くかもしれない。

日銀人事

国内事情は当面の政治情勢に大きな変化はなさそうだが、黒田総裁の任期満了が近く、再任も含めた総裁人事とその他の人事の行方によっては、「出口戦略」議論も改めて注目される。仮に、何らかの形で出口戦略が議論されるようになれば、ドル/円相場にも心理的な影響を与えるだろう。

レンジ突破の時期は

シカゴ取引所のポジションやインフレ率等、関連指標や変動要素には、2018年内に起こる変動かどうかも定かではないのだが、2017年の様に長期にわたって為替変動が少なかった例は少ない。相場参加者に、そろそろ相場を動かしたいと言う意識も早晩出てくるだろう。
レンジ突破の場合、少なくとも2018年中、恐らくは2018年前半にもレンジ越えを試す動きが出てくるだろうと考えている。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。