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ビットコイン価格はどこまで上昇するか【仮想通貨の価格変動】

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仮想通貨最大の取引量を続けるビットコイン(BTC)価格が上昇している。
今後の取引市場におけるビットコイン等の仮想通貨の投機的な価格変動は、誕生後の期間が短く、過去の経験が少ない上に理論的な価格形成根拠も不明確なため価格予測が難しいと言われる。こうした状況も踏まえながら、ビットコインの分裂騒動の背景も併せ、ビットコインのリスクと可能性を探ってみたい。

ビットコインとは

ビットコインは「仮想」と名付けられた通貨だが、円やドル等と同様に経済活動で一般通貨並みの機能を持つ。ただ通常の通貨とは異なり、国の中央銀行の統制を受けない「非中央集権的」通貨で、特にビットコインは国家の枠や経済状況・政治的思惑にとらわれない自由流通が可能な通貨を目指して作られた。

ウェブ利用の端末さえあれば、一般通貨と同様の売買や取引等が可能だ。しかし高速の少額決済可能なビットコインは、投機目的外の取引でも値動きが大きく、変動スピードも早い。

clip.money-book.jp
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ビットコイン分裂とブロックチェーン

ビットコインの急上昇の背景に、度重なる分裂の動きもある。
今年8月に誕生したビットコインキャッシュは、オリジナルビットコインと同額が所有者に与えられ、その後価格が上昇した。10月にはビットコインゴールドが誕生し、さらに複数の分裂計画がある。(ビットコインシルバー、スーパービットコイン等)
分裂の主要原因は、後述するブロックチェーン技術を巡る意見の対立で、今後のビットコインの価格推移を占う重要な問題だ。

ビットコインが使うブロックチェーンは、ビットコインの流通等を完全に記録した「ビットコインの取引台帳」で、送金等の情報が全参加者に閲覧可能な「共通規格」を定めている。
二重支払いや不正コピーを防ぐ通貨としての基本規格であり、変更する場合には参加者全員が新規格移行に賛同する必要がある。
規格変更の同意がない場合、ブロックチェーンのネットワークを分離し、旧規格のビットコインと変更後の規格による新仮想通貨(例えばビットコインキャッシュ)に分割する方法がとられる。(仮想通貨ではこれを「ハードフォーク」と呼ぶ)

ビットコインの取引量は価格上昇とともに急拡大しており、総額で10兆円を越えた時価総額に係る全取引記録が取引発生の度に更新される。この全データサイズは現在、15GBを越えたと言われる。(新通貨は過去の取引を引き継がず、ブロックチェーンの維持負担が軽い)

www.nikkei.com

ビットコインの設計思想と分裂の関係

ビットコイン保有者は、結果として分裂後も取引で利益が生じることが多く、価格急上昇の一因となっている。分裂の動きの背景には、ビットコインの設計に関する意見対立がある。
では、意見対立は何故生まれているのか?

ブロックチェーンによる分散管理型のシステムは、ブロック間をつなぐ暗号技術(ハッシュ関数)で正規ブロックへの不正侵入・破壊・改ざん等を防止している。(ビットコインの安全性が高い理由)
ビットコインコインを作成するマイニング作業は、以前は個人でも複数の汎用コンピューターを接続すれば時間はかかるが可能だった。しかし、今ではネットワーク上のハッシュ率急上昇等により個人作成は現実的ではなくなっている。

現在はASICと言われるビットコインマイニング専用に設計・作成されたチップ利用が主流で、マイニング専業会社による高度に専門的な事業となっている。この状態は、ビットコイン初期に設計者たちが目指していた「非中央集権的」な通貨という立場から離れてゆくとして、専用チップのマイニングに汎用CPUを持つ個人が対抗できる仕組みに変えようと言う動きが開発者らや研究者達(米ブリンストン大ナラヤナン准教授ら)にある様だ。

さらに、ビットコイン以外の新たな仮想通貨に本来の意図を代替させようという考えもある。こうしたビットコイン開発者側の考え等に、中国・香港のマイナー(ビットコイン発掘業者、電力等のマイニングコストが安い中国企業が世界のマイナーの過半を占めると言われている)達は反対している。
既に設備投資した多額の投資コストが無駄になる上に、マイニング参加者が増えることは事業に悪影響しかない。また、中国当局の規制の動きもあり問題は一層複雑化している。

取引承認の時間とコストを圧縮するために、ブロックサイズ変更で取引処理を円滑にしたい希望は利用企業側にもある。誕生後10年近くなったビットコインには、ブロックサイズ以外にも元々署名操作や可分性、報酬構造等に問題を抱えており、投機的な取引の観点とは別に実通貨と同様、あるいは上回る利便性を商取引で確保するには当初設計の変更は必要だと言う考えで、これも中国のマイナーに多い様だ。

最近のビットコイン分裂は、ハードフォークによるルール(規格)変更で、旧通貨との互換性は無い。仮想通貨のブロックチェーン(連続した一連のデータ)の仕様を変更し、全データを対応させる方法(ソフトフォーク)は混乱が少なかったが、旧仕様を無視するハードフォークは、仮想通貨分裂を生むわけだ。簡単に言えば、分裂は、仮想通貨の仕様変更を巡る争いだ。

こうした分裂は、仮想通貨の流通総量が増加し、合計した通貨価値は理論的には変わらない(個々の価格は低下する)はずだが、ビットコインキャッシュで逆の動きとなったのは前述の通りだ。
他の仮想通貨では、取引量2位のイーサリアムから、資金調達用に開発した「TheDAO」がシステム脆弱性等により失敗後、開発関係者等の合意でハードフォーク実施に一致し、結果的にイーサリアムが信用され、価格上昇したケースもある。
ブロックチェーンの特徴である「不可逆性」と改ざん難易度保持のためには、開発者とマイナーの協議が必要なため、混乱を生んでいる印象がある。

最近のビットコイン価格が最高値更新を続けた理由には、新通貨「セグウィット2x(仮称)」への分裂中止もある。「セグウィット」には、ビットコインのサイズ圧縮による取引時間短縮機能に加え、開発者が意図したASIC機能制限の修正も含まれていたため、反対意見が多数あった。
当初、日本最大の取引所「bitFlyer」もセグウィット誕生を支持し(恐らく「ビットコインの非中央集権通貨」思想を支持したと思われる)、分裂後のビットコイン価格の急落も懸念されたが、分裂の主導グループである開発者サイドが多数の反対者の存在を理由に分裂をひとまず断念(保留)すると発表した。反対者が残るまま分裂を強行することは難しいと考えたらしい。

こうした分裂を巡る複数の動きと混乱は、仮想通貨の使用価値や流通思想も絡む複雑な問題をはらんでおり、今後も無くならないだろう。この様に分裂の見通しには不透明な要素が多いが、ビットコイン及び分裂後の新ビットコインの合計資産価値は一定で、ビットコイン価格が理論的には下落するのは前述のとおりだ。しかし現実には、分裂以降も仮想通貨自体の投機的な人気は高まり、「ビットコイン価格はすでにバブル状態だ」と多くの関係者が言う。

このバブルが「どこまで膨らむか」「いつ破裂(急落)するか」は、取引には経験則がほとんど無く、将来の仮想通貨の(使用価値も含む)価値についての見解も分かれ、今後の推移の正確な見込みは誰にも分からないだろう。

ビットコイン先物取引開始と価格の関係

一方、米CMEグループは2017年末までにビットコイン先物を上場する計画だと発表するなど新たな動きが続いている。(既に、オプション取引のCBOEグローバル・ホールディングスがビットコイン先物上場を目指し、米商品先物取引委員会の承認待ちであることも背景)

11月29日付けで、米ナスダックでのビットコイン先物市場創設の報道もある。
トレーダーや機関投資家も、マネーロンダリング等のルール違反リスクが少ない取引が可能になり、ビットコイン取引価格の安定とデリバティブ市場での活性化等の取引活発化につながるだろう。

2017年のビットコイン取引価格乱高下は、分裂や中国で当局の規制等の各種ニュースへの反応が原因だった。しかし、先物・デリバティブ取引が、この様な急激な価格変動の抑制につながるとともに全体の取引量が飛躍的に増加しすることで、価格安定が商取引利用拡大の後押しにもなると期待される。

gigazine.net

最近のビットコイン相場

政府発行通貨に匹敵する安全性を持つとも言われるビットコインには、多くの投資マネーが集まって市場を形成している。
昨年までは、中国など自国通貨への信頼度に疑念を持つ富裕層等の参加が多かったが、世界的な利用拡大により、2017年に入ってからは、さらに市場規模が大きくなっている。

独裁的な大統領の長期政権が交代したジンバブエでは、混乱時に一時的にビットコインの取引がNYの取引所価格よりも5割以上高い価格となった。政情不安や内戦の起こる国・地域等には、ウェブ上で取引の完結する仮想通貨の需要は今後も根強いものと思われる。
こうした要素を総合的に考えれば、既存通貨や貴金属に替わる資金の逃避先、保存先として、ビットコイン価格がさらに上値を追う可能性も否定できない。

仮想通貨ビットコインのNYにおける価格は11月29日の取引で、一時11,350ドルに達し、その後2000ドル近く急落する場面もあり荒い値動きが続く。1BTCの円レートも今年初めは10万円前後で推移していが、11月30日現在では125万円を越える最高値水準まで上昇している。

貨幣なら発行国、株式なら企業業績が価値の基礎となるが、仮想通貨であるビットコインには価値の基礎がなく現状では決済機能も不十分で、ビットコインへの投資は投機(ギャンブル)でしかないという見方も多い。
特に中国当局のビットコイン規制や分裂等に関連した大規模な売りが出れば、一気にビットコイン価格が暴落する可能性も残り乱高下が起こりやすい、高いリスクの通貨だろう。

くどいようだが、経験則の通用しないビットコインの価格予測は非常に困難だ。現在以上に大きく上昇する可能性が期待できる半面、同様に下落傾向となった場合の下値のめども予測し難い。

dialog-news.com

将来的な安全性(量子コンピューターによる暗号解読)は?

現在利用可能なコンピューターでハッシュ関数をブロックチェーンのデータから逆算、マイニングすることは、現行のビットコイン規格では時間・コスト面でハードルがかなり高い。だが、ハッシュ関数の計算に、最近話題の量子コンピューターで取り組んだ場合にはどうだろうか?

量子コンピューターは、理論的にはスーパーコンピューターを凌駕する高速演算が可能で、将来的にはあらゆる暗号システムの見直しが必要とも言われる。
ブロックチェーンの暗号システム脆弱性については現段階では許容範囲内だが、現在は想定できない方法でハッシュ関数予測が可能になれば、ビットコインのブロックチェーンシステムは崩壊する可能性もある。

coinpost.jp


現在実用化が進められている量子アニーリング型ではなく、実用化にはまだ多くのハードルがある「量子ゲート型コンピューター」なら、将来必要な量子ビット数を確保して優秀な解読ソフトウェアが開発して、現状のビットコインハッシュ関数を高速解読することは理論的には可能だ。

ビットコインのハッシュ関数も適用する暗号強度の増強が、ビットコイン利便性さえ維持できれば容易であり、ビットコインの技術的な信頼性は量子コンピューターの実用化やAI高度化にも当面は対応できるだろう。但し、ビットコインを含む現行の多くの仮想通貨が暗号強度を上げることになれば、利用速度や既発行仮想通貨との連携等(ソフトフォーク)、規格上の課題等が生まれそうだ。

また最近の一部報道では、米FRBは法定デジタル通貨の発行を検討していると伝えられている。こうした分裂や仮想通貨を巡る動きをみると、将来的には各国中央銀行を含む既存金融機関発行のデジタル通貨やイーサリウムやモナコイン等の他の仮想通貨等の中に、利便性・透明性等で、ビットコインを越える仮想通貨が出る可能性があるのかも知れない。

www.nikkei.com

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。