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シェアビジネスの未来

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シェアハウスやシェアレンタル等のシェアビジネスが国内外で拡大している。さらに国内では、時間貸店舗ビジネスにも一定の需要がある。従来からあった衣服レンタルや相乗りタクシーなども含め、スマホ普及・ネット利用の浸透により新しいシェアビジネスの形が生まれ変わりつつある様だ。
こうした状況の紹介に加え、今後の技術的進歩との関連等も含め、シェアビジネスの可能性を考えてみたい。

シェアビジネスの拡がり

シェアビジネスそのものは、相乗りタクシーのように以前から普通に存在した。だが最近は、中国におけるシェアレンタルの急速な広がりで見られるようなネット利用、特に申し込みから決済返却まですべてスマホで行えるシステムの利便性が向上している。これが、シェアビジネス成長のカギと言われている。

中国のシェアサイクルが急速に拡大し始めたのは、以前から普及が進んでいたコミュニティサイクルとは異なり、専用駐輪スペースを持たずに利用者がスマホで使える自転車を検索し、QRコードで解錠して利用できるシステムが誕生してからだ。
対応する自転車にはGPS機能があり、どこでも乗り捨てが可能というもので先行企業は高い利益率が達成できていた。現在は、既に30社近くが事業展開、総投入台数30万台と言われ競争が激化しているが、需要も好調なので今後も各社は台数を拡大する予定だ。

最初の事業創業者は、学生時代にキャンパス内に多数の自転車が短時間の使用で廃棄自転車も多いうえに盗難多発したことから、ライドシェアの米ウーバーテクノロジーズや民泊サイトのAirbnb等の先行事例を参考にシェアサイクルを起業したと言われる。

中国のシェアサイクル事業は、将来的には30倍以上に拡大するとも言われ、自転車需要の落ち込みと輸出比率が高い日本の自転車産業への影響まで心配されている。さらに、中国企業の「モバイク」は、シェアサイクル事業の日本国内展開のため、札幌で日本法人を設立した。(料金は30分50円)
中国におけるシェアサイクルのライバル「オッフォ」もソフトバンクグループ傘下企業との連携で東京・大阪等でサービス開始を計画中だ。

toyokeizai.net


セブンイレブンは、都内一部店で展開していたシェアサイクル事業をソフトバンクの協力で、関東圏等の約1000店舗・5千台の自転車利用に拡大して来店者増にも繋げると各種メディアで大きく報道されている。

自動車についても、ソフトバンク(9984)は、ライドシェアで世界最大手の米ウーバー社に1兆円規模の出資を検討していると報道された。
ソフトバンクは、2014年のインド「ANIテクノロジーズ」を皮切りに、中国のタクシー配車・ライドシェア最大手「滴滴出行」や東南アジア最大手のシンガポール「グラブ」にも出資しており、世界各社へのライドシェア出資総額は2兆円を越える見込みだ。ソフトバンクを核としたライドシェア世界連合が視野に入るとも言われているが、これらはカーシェア事業展開だけの狙いではなく、同社のロボット「ペッパー」の多方向への展開と同様のライドシェア利用者の移動実態等の情報を有利に取得するための世界的な情報戦略の一環ではないかとも観測されている。

jbpress.ismedia.jp


ファッション系のレンタルウェアを中心としたシェアビジネスについては、大手のオムニスの提供するスマホアプリ利用の総合型サービスなど数多くの企業がスマホ対応サービスの提供を開始しており、若年層を中心に広がりを見せている。
また、その他にもアート作品のレンタル等でのアートシェアリングサービス「ART STAND」や繋船維持費等が高額なヨットやボートを1日単位でシェアするシェアリングサービス企業「ankaa」等がこの1~2年で創業されており、今後も各種分野での創業が見込まれる。

シェアリングのネット利用と仮想通貨

上記のシェアビジネス以外でも、例えば国内でも利用者が急増しているシェアハウスや家事のシェアリングサービス、「notteco」の高速代、ガソリンをシェアする長距離ライドシェアサービス、WiFiシェアサービス等、急速に拡大するシェアビジネスの大半がネット利用を前提としている。

スマホの普及率と通信速度の向上を前提とするビジネスがシェアビジネスに限らず拡大しているが、これに関連してビットコインをはじめとする仮想通貨のシェアビジネスでの利用も拡大しそうだ。既に中国ではビットコイン決済が一部シェアサイクルで利用されている。仮想通貨を利用する利点は、料金収受の決済が簡便で迅速なことに加え、ライドシェア等で必要となる本人確認と個人情報保護がブロックチェーン技術で可能となる点だ。

シェアリングエコノミーを手掛けるガイアックス社は、本人確認情報(パスポートや運転免許証等)を改ざんが事実上不可能なパブリックブロックチェーンに刻み込み、証明書を発行する構想を発表している。
利用するブロックチェーン技術の候補としてビットコインのブロックチェーン技術が有力とみられており、現段階では仮想通貨二位のイーサリアム等も含め最終的にどの技術を活用することになるかどうかは未定だが、仮想通貨の信頼性や価格急変リスク等の問題点も含めて様々な方面で検討されている様だ。

gaiax-blockchain.com

注目のシェアビジネス

軒先株式会社は、予約サイト「軒先ビジネス」で、1日だけでも店舗開設が可能な貸店舗、貸し会議室ビジネス等を運営する会社で、そのビジネスモデルは2009年のベンチャーフェア最優秀賞など多数の受賞歴を持つ。最近では、シェア型パーキングサービス等や地方銀行や不動産業との連携も進み、注目を集めているベンチャー企業だ。

business.nokisaki.com


ロジティクス企業シーオスが展開する「シェアッター」は、従来は地域情報誌や個人のブログ等で発信されていた小規模の情報(発表会・練習会・会員募集などの催事情報)のユーザー作成のイベント情報を集約し、タイムラインのチェックにより最新情報にアクセスできる機能を提供している。
SNSやメッセージ機能でホスト・ゲストのプロフィール、参加者規模や傾向を事前に取得でき、自分向きのイベントを探すことが出来る。(ホスト承認のゲストだけが参加できる募集機能等も持つ)

sharetter.com


シーオスの松島社長は、シェアリングはロジティクス(物流・流通)の一面であるという、ユニークなシェアリングに対する視点を持つ。
「自宅に知らない人間が宿泊したり、マイカーに乗せたりすることへの不安、セキュリティ確保に関する心配はある。だが、シェアリングビジネスは、そもそも個人の信頼関係で成り立っており、シェアリング参加者はコミュニティで評価されるために良識ある行動をとるし、評価が低ければ利用者が減りコミュニティでの活動ができなくなる。反対に評価を上げれば利用者が増え、コミュニティ内での活動が充実する」と述べている。

同社は、シェアリングコミュニティで全参加者の目や声がサービスのクオリティの向上と守備、シェアリングビジネスの展開が産業構造をダイナミックに変革する可能性を持つとの視点からシェアリングビジネスへの参画を進めている様だ。≪参考:『IOTとシェアリングは産業をどう変えるのか』松島聡著 英治出版≫

www.seaos.co.jp


従来の常識では区分不可能だった、様々なモノ・サービスの壁が如何にスムーズにシェアするかという起業者のアイデアや対応技術の進展よって各方面で開かれつつる。
イニシアルコストは比較的少額なシェアビジネスは個人や小資本でも起業しやすく、様々な分野で新たなシェアリングビジネスが誕生可能だ。

シェアビジネスの未来

新しいシェアビジネスの拡がり

インターネットがシェアビジネスを支えている部分が多いが、今後はIOTの浸透がさらに新しいシェアビジネスモデルを作りそうだ。
様々なモノ、例えば配送中の荷物や配送中の車内・機器等のIOT化により、こうしたモノの所在や利用状況がクラウドで管理出来れば、AIが最適な資源の配分を予測・判断して、これまでにない効率の良いシェアリングを提案できる。
また、提供側だけでなくサービスを必要とするユーザーがIOTのデータを取得して利用しやすいモノを使えるサービスを検索し、オーダーすることも可能になるだろう。
ただし、こうしたIOTの高度利用にはネットワーク上の住所に相当するIPアドレスの進化等が必要だろう。
現在のIPV4(世界人口70億人以下の容量)から、IPV6(IPV4の5京倍近い)への拡張と、内蔵AIの能力増強そして関連する電力消費量の削減等が必要で、それぞれに改善の兆しは見えているが、IOTとシェアビジネス連携等の本格的な実用化はもう少し先になりそうだ。

シェアリングに対抗するフリーエコノミーの台頭

一方で、順調に拡大傾向にありそうなシャアビジネスに対抗する動きは、既存ビジネスの逆襲ではなく、無料化の動きかも知れない。
既に多くのサイトで、検索ソフトや無料利用可能なソフト・ニュース等情報提供や無料TVが誕生し、無料サービスは一定の支持を得ている。広告収入や関連製品売り上げを期待した無料化ビジネスが大半だが、中には別の動きもある。
完全無料ではないが、将来的に自然エネルギーの無料化に近い低価格化が、環境保護団体や環境保護意識の高い国等で計画されている。余っている資源を、必要な人や場所へ提供する行為は、人々が受け入れやすい行為だ。

ドイツの文明評論家リフキンは、シェア社会に向けた大胆な未来予測と称した著書「限界費用ゼロ社会」において、資本主義下の競争原理で製造等のコストは下がり続け、特定企業が阻止しようとしてもその流れは阻止できず、製造コストが限界費用に限りなく近づくことは近代経済学者アダム・スミスの予測でもあり、テクノロジー・生産性の向上は最終的に「限界費用がほぼゼロ」になり利益が消えれば資本主義は崩壊する。やがては協働型コモンズで展開される共有型経済に取って代わられるというのがリフキンの主張だ。この結論には異論も多い。しかし、各分野での限界費用がほぼゼロに向かう動きの説明に一定の説得力はあるかも知れない。


無料が一番という響きには魅力も多いが、限界まで削ったビジネスモデルが本当の意味での革新的モデルと言えるのか、持続可能なビジネスシステムなのかには疑問がある。
本来的なイノベーションには無駄や非効率は避けながらも、未来への積極投資も可能な企業やシェアビジネスも含めて、持続的な社会を支えるビジネスモデルが求められのではないかと筆者は考えている。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。