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再上場、上場廃止、企業統合・・・企業の再編戦略の方向は?

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最近、様々な理由から一度上場廃止となった企業の再上場が目立っている。この10年間で約20社あった企業の再上場のうち、25%が2017年の再上場だった。
一方、ベスト電器など知名度の高い企業が上場廃止するケースも多い。
これらの企業の戦略やその成否と企業再編成、統合の状況を紹介し、今後の再編戦略等も考えてみたい。

最近の最上場企業

スシロー、マクロミルなどの相次ぐ大型再上場と、日本無線、ベスト電器や少し前の藤和不動産、雪印乳業等知名企業の上場廃止、そしてコカコーラの東西統合など上場銘柄再編の動きが活発だ。
まず、最初に本年の再上場企業であるウェーブロックHD、オークネット、スシロー、マクロミル、LIXILビバ<※50音順>の再上場戦略等を順にみてみたい。

ウェーブロックホールディングス(7940)

壁紙等の住宅関連素材を中心とする企業だが、2009年に前年の営業赤字を理由として上場廃止した。その後、傘下の不採算企業の整理・特損処理や生産拠点の統廃合や流通拠点整備等を経て、農業用ネット等の製品普及が遅れている海外拠点を再編成し、その後の積極展開や海外企業M&A等を含めた資金需要のために再上場を行った。

shikiho.jp

オークネット(3964)

オークネットは、中古車のテレビオークション企業だったが、2008年にオークション事業のインターネット対応(事業構造転換)に必要な資金調達が当時のリーマンショック下の金融情勢では株価急落を招くとの判断等から、MBO(経営サイドによる株式買い取り)により上場廃止した。その後、業務のネット移行と課金制導入、中古車以外であるスマホ等の新規事業開始等の業務拡大を受けて再上場となった。
同社のオークションは、中古車販売業者などの会員限定で映像や文字情報のみで可能なネットワーク完結型オークションシステムだ。業容変更とその後の再上場への道は、比較的知名度の高い企業であり経過が注目されたが、ユニークな経営と戦略として一定の評価を得ている様だ。

shikiho.jp

スシロー(3563)

回転すしチェーン大手のスシローは、ゼンショー(7550)が創業家から株式取得したが、経営陣と対立し投資ファンド「ユニゾン・キャピタル」との資本提携により上場廃止した。その後、ユニゾンはペルミラに株式を売却したことで経営体制がようやく落ち着いた。(ペルミラ出資後、スシローの業績は好調)
但し、再上場前公表の財務諸表では、総資産の約7割がのれん資産・無形資産(ブランド)で、自己資本の3倍を越え、将来的な減損処理(リスク)の可能性がある。(理由はペルミラの株式取得時の買収資金捻出のための会計操作)
業界首位の売上ではあるが、財務体質の弱さと商品開発力・成長性がライバル企業に比べ劣ると言う指摘や、海外展開の遅れが同社の再上場後の経営戦略に不安材料だとの見方もあり、初値は公開価格を約5%下回った。その後も株価は低迷していたが、最近ようやく公開価格水準まで上昇している。

toyokeizai.net

マクロミル(3978)

マクロミルはインターネット調査業を主として2004年にマザーズ上場、翌年1部に昇格したが業績不振により2014年にベインキャピタル系ファンドの買収により上場廃止(非公開化)された。
上場廃止の前期は213億円の売り上げに対し20億円の赤字だったが、2017年6月期は売上高が355億円となり、37億円の黒字(純利益)となり、この3年間で売上高が約7割増えたことになる。
翌18年6月期はさらに増収増益の見通しだ。この業績回復は、メトリックラボ(オランダ)の買収により、グローバル展開を果たしグローバルなマーケティング調査会社としての成長基盤が出来たことが大きいと言われる。(1000万人を超えるパネル【固定調査対象者】を抱え、今後もM&Aや企業提携を進める方針だ)

business.nikkeibp.co.jp

LIXILビバ(5938)

LIXILビバは、2001年に建材会社からスタートしたトステム社が次々に関連企業を買収、INAX等との合併・経営統合で生まれた持株会社LIXIL傘下のホームセンターチェーンで「ビバホーム」等を運営している。
同社は1977年にビバホーム株式会社として創業し、東証2部から東証1部に指定替え後に「トステムビバ」へ社名変更し、当時のトステムが吸収合併したために上場廃止となったもので再上場会社として分類されているが、実質的には子会社の新規上場とも解釈できる案件だ。再上場の意図は、リフォーム市場の活性化が目的とされている。

www.toushin-1.jp

再上場銘柄の株価

2017年の再上場企業の上場理由は上述のように様々だが、一般に上場廃止銘柄というイメージから、最上場時の株価は他のIPO銘柄に比べると特に初値の人気が低い場合が多くみられる。

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【上表は、Yahooファイナンス掲載のチャートデータをもとに、再上場銘柄の株価推移を、日経225平均と比率をあわせて11月10日終値で作成したもの。初値を起点とすれば、再上場5銘柄<青線グラフ>は概ね日経225を上回る上昇幅となっている】


上表が示すように、再上場以降の株価パフォーマンスは日経平均を上回るパフォーマンスとなっており、多大なコストと審査期間を経て再上場した企業は何らかの成長戦略、戦略意図を持っているので、一定期間を経た後にはその点が評価されたという可能性もありそうだ。

上場廃止各社の戦略

最近の動きではないが、スシローと同時期の2009年頃に相次いだ上場廃止銘柄は、独自の企業戦略によって上場廃止の道を選んだ。
知名度の高い企業でも、雪印乳業の親会社への統合による廃止や明治製菓・乳業の持株会社への統合のように、企業統合で効率化、機動的な戦略等を目指す動きと、独立系だった藤和不動産の三菱地所による買収の動きの様な、景気・経済動向をにらんだ二方向の戦略がみられた。

2017年に目立ったのは、ミツミ電機のミネベアミツミへの完全子会社化や日本無線、ベスト電器等の上場廃止は、上記の統合と経済状況の複合型に近い動きの様だ。こうした上場廃止銘柄は今後、LIXILビバ社のように、景気動向や海外戦略等の状況変化で再上場となる可能性もある。
以前のように、上場廃止が企業経営の失敗のあらわれ、再上場は立ち直り・復活というような単純な解釈では通用しない時代になってきたのかも知れない。

www.jpx.co.jp

再上場・統合実施企業の狙い

上場廃止(統合)、再上場企業の多くに共通すると思われるのが、海外戦略や事業効率化に加え、IOT、少子化対策など急変する経済環境に積極的に対応しようと言う姿勢だ。
企業の認知度・信用度を下げ、資金調達手段を狭める上場廃止や経営の自由度を狭め、経営の透明化を要求される再上場を選択する企業にはそれぞれ切実な事情があり、それらは個々の企業ですべて異なり、思い切った行動をあえて選択する企業の戦略と意図そして狙いを把握したうえで、関連銘柄を注意することも重要だろう。

これからの企業再編戦略はどこに向かうか

コカ・コーラボトラーズジャパン(CCBJI)は、2018年初めの東西事業会社合併の方針を発表している。東と西に分かれていた二社が経営統合して誕生したCCBJIは、他に飲料子会社などの事業会社も持つ持ち株会社だが、人手不足による物流コスト増等の厳しい経営環境が合併による合理化要請を強めたと報道されている。

また、規模4000億円とも言われ、今年最大の新規IPOではないかと思われる12月の佐川ホールディングス(非上場)の子会社上場についても人手不足の影が見え隠れする。
佐川HD自体の財務体質は良好で、上場は資金調達が目的ではなく資本業務提携を結んだ日立物流(9086)との統合による経営効率化に上場が必要だったという観測が多い。

物流業界の深刻な人手不足は「ラストワンマイル」のコスト増問題等、既に多くの話題になっているが、物流全体の効率化も大きな問題点で、流通企業の戦略として物流の合理化に関連企業間の統合が欠かせないという判断であれば十分理解できる。

この様な、様々な要因による事業統合、上場あるいは戦略的な上場廃止・再上場等は、企業再編や業態改革に関連してこれからも続きそうだ。こうした動きには、その背景も含めて十分注視していきたい。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。