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トランプ政権の新経済政策実施で為替動向はどうなる?

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米国景気が好調を保っている。9年目に入った米国の景気拡大等を受け、NYダウは連日市場最高値を更新中だ。
株高の背景には、長期間の金融緩和による資金余剰や米国企業の好況に加え、トランプ政権の新経済政策がようやく実現に向けて進みだし、その経済効果への期待もありそうだ。
では、議会との調整を経て新経済政策が実施された場合、為替相場はどうなるのだろう。
好調な世界経済との関連も含めた今後の推移を考えてみたい。

米国の新経済政策実施への展望

10月19日(金)、米上院では 4 兆ドルの予算措置が51対49の僅差ながら可決された。これを好感し、金曜日のNYダウは急騰した。
これは米政権・議会が抜本的な税制改革に動く可能性を示したと思われ、株式相場でもかつてトランプ・ラリーを期待した筋は「ようやく政策具体化」と観測している。

もっとも、差し迫った懸案に対する米議会の動きは必ずしも一定とは言えず、今後のスムーズな税制改正に繋がるかどうかは不明だ。
最近のトランプ政権の姿勢は、例えば6ケ月間受け入れを停止していた海外からの難民受け入れ停止措置を審査厳格化等と併せて再開するなど、 ようやく米国の経済政策も軌道に乗るのではなかという期待が高まりつつある。

次期FRB議長の金融政策スタンス

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次期FRB議長の候補から、現FRB理事であるジェローム・パウエルが次期議長として指名された。
2018年以降、米国の金融政策はパウエル次期FRB議長を中心として決定されていくことになるが、理事会は議長を含む7名の理事の合議が原則であり、議長の意向がそのまま政策に反映されるわけではない。

一部で、強硬なタカ派と目されるテイラーの副議長就任説もあるが、基本的にイエレン路線を踏襲するとみられるパウエル議長によって現行政策が維持されると言う見方が強い。
背景には、直近の米雇用統計が26万1千人の雇用増、失業率も4.1%という低水準であり、賃金上昇は2.4%にとどまっているが、ハリケーン被害を受けた国内自動車販売も好調で、7-9月の実質GDP3.0%に続く成長が期待されていることもある。
そのため、12月の利上げ確実との見方が有力で、ハト派色が強いパウエル新議長誕生も受けて人事発表後のNYダウは連日の高値更新を続け、ドルも強含みだ。
現行の緩やかな利上げという金融政策を踏襲することから、中長期なドル高の流れは不変という見方が有力だ。

米国景気に対する不安要素があるとすれば、高い能力と経験を有するパウエル次期議長の経済観が、経済成長理論に忠実と言えることだ。
具体的な言及は少ないが、潜在成長率が低下している米国の現状には警戒感を持っている様だ。

イエレン現議長も「不可解」と、懸念を持つインフレ率の低下と景気過熱と言えそうな現状に対応するため、新議長就任後は資産圧縮や利上げのペース変更など、金融政策の転換が起こる可能性は残っているだろう。

米国株高と世界経済

金融引き締め(金利上昇)の背景となる、米国景気および世界景気の拡大傾向は最近一層顕著になってきた。
まず株高については、NYダウが2016年比でも2割近い上昇となって、連日の史上最高値更新が続く様相で資金余剰による要素が大きく、買われ過ぎとの見方も強いが、企業業績が好調であることも事実で、後述する新経済政策への期待もあり当面大きく下落することは無さそうだ。(先行き不安を示すVIX指数は概ね10前後で右肩下がり傾向となっており、経済外リスク要因であるトランプ大統領の発言や北朝鮮情勢等による一時的な上昇も16程度までだ)

漸く長期低迷のレンジを超えつつある日経平均の上昇は、米国同様高値圏にある欧州市場(FTSB指数、DAX指数等)や中国上海株の好調と相まって、世界経済の先行き好調を占うものとみる向きも多い。

また、四半期ごとに発表されるIMF世界経済見通しによれば、10月現在で世界全体の経済は上向きと見ており、特に日本のGDP伸び率は低いながらも6回【1年半】連続上方修正中で、2018年も上方修正の可能性が高いと思われる。(但し、ECBの金融緩和決定後のユーロ安は材料出尽くしでのユーロ売りが理由であれば、やがてユーロ高傾向に戻るはずだが、まだ先行き不透明であり、最近のユーロの動きや米国金利高を受けた新興国株の軟調傾向は要注意だ)

下表は各国のGDP伸び率(実績・予測)の一覧だが、全体として2017年~2018年と緩やかながら成長を続け、経済成長率はリーマンショック後緩やかに上昇中だ。(最近は特に新興国の伸びが堅調で、安定的な伸びを示している)

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また、今年1月に急落した米国のEconomic Surprise Index(週次)は、夏以降急上昇を続け、10月にはプラス圏に浮上している。(ブルームバーグ調べ)

リーマンショック以降上向きだった消費者信頼感指数は、米大統領選挙以降明らかに上昇ピッチを速め、消費者マインドはリーマンショック以降13年ぶりに100を越え、さらに米国内新車販売数も非常に好調で、9月の販売台数が急上昇し、年換算では2005年7月以来の高水準である1800万台越を達成している。
基本的に米国の景気は力強い状況と見て良さそうだ。

www.nikkei.com

米国の税制改革とその影響

1月のトランプ政権発足以降今秋までは期待先行だった税制改革だが、議会との調整が進み、年内の決定が期待されている状況だ。
税制改革の内容は、法人減税20%、個人所得税も同程度と見られ、レパトリ減税も計画中だ。法人減税の効果が出る課税対象は米国内の利益に限られるため、米国内の利益割合に注目すると、大和証券の試算では、下表のように国内利益比率によって各企業の減税効果は大きく異なる。

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(適用される減税後税率のアナリスト予想中央値は20%台半ば)
このため、海外売り上げ比率の高い企業、例えばアルファベット(グーグル親会社)、アップル等は受益が少ないが、同時に検討が進んでいるレパトリ減税が実施となれば、これらの企業も大幅なプラス要因となる。

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なお、レパトリ減税法案の提出と採決見通しは他の経済政策との関連もあり、年内にどこまで進むかが当面の米国株相場には大きく影響されそうだが、実施の方向が色濃くなれば中期的に米国経済にはプラス要素であり、波及効果による経済好調は続きそうで、株高ドル高要因となるだろう。

当面の米国景気について、欧米アナリストのS&P増益率に関するコンセンサス予想は、2017年第2四半期+12.3%(実績値)に対し、第3四半期はハリケーン等の影響もあり4.4%と控えめだが、以降の4四半期(一年間)は、連続で10%以上の増益率予想となっている。(今後の予想上振れ企業の有無や幅には注目したい)

ただし、ここまでのS&P上昇額の約30%がFANNG(Facebook、Amazon、Netflix、Nvidia、Google)の値上がりによるもので、米国全体の景気動向については懸念視する見方もある。特に、バブル入りとも言われる不動産・住宅業界は好調な各種指数がどこまで続くか、そろそろ下降期に入るのではないかとの心配もある。

株価水準も割高な領域入りしており、こちらもバブル入りとの声がある。
好調な株価推移の中、例えば10月に入ってからの小型株指数低下や最近の運輸株の下落など不安要素が無いわけではない。7-9月期の米GDPが年率3%という予想外の好調さにも、内訳に在庫の0.7%増が含まれている事から先行き不透明とみる向きもある。
しかしながら、株価はITバブル以来のバリエーションに向かってはいるが、後述する経済政策を期待する買いも根強く、経済政策発表までに大崩れすることはないとの見方が多い。

www.bbc.com

米国の新経済政策とその影響

トランプ政権における経済政策としては、法人税・個人所得税の減税・レパトリ減税に加えて、インフラ投資に伴う大型公共事業実施等も発表されている。
ただし、財源とされた「オバマケア」の見直しや国境税課税が進まない中で、経済政策実現に向けた予算措置については、議会との妥協点は見つかっていない。本年前半に比べると、債務上限問題や予算の承認等で一定の進展がみられ、大型経済政策についても何らかの妥協が期待されている。

米国のトランプ政権による経済政策の行方は、上院のオバマケア廃止法案(医療保険制度改革法)の採決、可決が焦点となる。
法案内容は、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)などが削減され、企業の義務や罰金制度が撤廃されるが、議会承認の遅れ等からトランプ大統領は、関係省庁に医療制度見直し指示の大統領令に署名した。

議会を通さない政策実行で法案の骨抜きを狙う動きだが、野党を始め議会の反発が出ており、関連して税制改革法案等の議会承認も流動的となった。
だが、米政権は税制改革法案の年末までの成立を目指しており、ビッグ6と言われる財務長官、NEC委員長、共和党院内総務、下院議長、下院歳入委員長、上院財政委員長で構成される委員会が税制改革計画の詳細案を近く発表予定だ。(個人・企業税率の引き下げを原資に、税控除を廃止する計画と見られている)

当初、トランプ大統領は、個人税率を20%へ引き下げ、法人税は15%までの引き下げと言っていたが、議会の意向等から最終的には20%前後で落ち着くとみられる。
仮に、レパトリ減税を含む税制改革法案が年内に決定する可能性が高まれば、2018年の米国景気には大きな追い風となり、当面のドル高・株高の確率が高まりそうだ。
背景には前述の世界景気の好調があり、地政学リスク等の予想外の高まりなどがない限りEU情勢に不安要素があることもあり、ユーロ高一服と米国景気上昇・ドル高傾向は当面続くと見られている。
しかし、北朝鮮情勢の緊迫化やイランとの緊張、税制改革法案等の議会通過困難など、まだ多くの不確定要素は残っており、注意が必要な状況であることは言うまでもないだろう。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。