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物流企業の未来を探る

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物流企業に大きな変革の波が押し寄せている。
ネット通販拡大とドライバー不足に代表等の人件費問題、そして大手物流倉庫火災で改めて注目された集約化・効率化傾向。ドローンの利用や当日宅配等に様々な課題と期待をはらむ物流企業の現状と課題から、その未来を探ってみたい。

物流企業とは

物流は「物的流通」を略した言葉で、商流(商品所有権、現金等の対価の流れ)に対し実際の商品の移動状況を示す概念だ。(物流は生産者から消費者までのモノの流れ)

物流は、工場・小売店等対象の「企業物流」と、郵便・宅配便等の不特定多数対象の「消費者物流」に区分される。
自社倉庫中心の物流企業に対し、宅配等の直接物流企業や中間流通物流企業が増加しているが、流通形式は多様で実際には混在型物流企業もある。(上場物流系企業でも40社以上、他に鉄道等の企業もある)

注目は消費者物流、特にネット通販を支える物流関連企業だ。
米国では、Amazon等のネット販売が拡大し、最近のインフレ率低下の遠因とも言われる小売業の大変革を生んでいる。Amazonは自社物流の急速拡大に、フルフィルメント・センターという巨大物流センター等を整備し低価格販売を可能とした。

物流センターとネット通販拡大

ネット通販には物流が不可欠な要素だ。
倉庫なしで実質大量在庫可能なネット上の「仮想店舗」の背後に、物流企業(倉庫)がある。
商品個数と配送距離が、実店舗より多いネット通販対応の物流は、独自システムを進化させている。(入荷・保管・在庫管理・商品ピッキング・梱包・出荷というセンター内の流れの効率化が必須)

独自物流を持つ企業も含め、物流コストはネット企業の収益構造上の大きな課題だ。(小売り等の物流経費は平均5%以下で重量素材物流でも10%未満だが、ネット販売では配送費用抜きで価格の1割超となる場合が多い)

ネット通販には、自社仕入品を販売する小売型、モール型(仮想モールに複数店が出店)、オークション型、総合通販型(カタログ通販から移行)、ネットスーパー型等がある。
楽天市場のようなモール型等企業は商品直接販売が無いので、従来は物流を意識せずにいられたが、企業間競争のためブランドイメージやサービス均質化等もあり、自社物流の必要性が高まっている。

以前は従来廉価な小型商品中心だったが、最近は家具や家電商品等にも販売商品などに多様化しつつあり、さらにネットスーパーの影響で、米や飲料等の重くて大きい商品群のニーズが拡大中で、大手通販事業者やネット通販企業の効率的物流システム構築と共同配送が課題となっている。

また、当日配送の進展も大きな変化を生みそうだ。
Amazonの当日配送は、大都市圏の巨大物流センター設置(神奈川の20万平米という世界最大級センター等の10か所近い巨大センター)を終え、他社との差別化戦略として当日配送体制を進めている。
さほど希望者が多くない当日配送を進める意図は、サービス差別化戦略とともに物流センターの在庫が一般企業の在庫に相当し、商品回転率向上が収益性につながるからだ。
楽天やYAHOO等のモール型ネット通販企業も、対抗して売上増加策と並行し、物流センター等の回転率向上目的で企業提携や自社物流の見直しが進んでいる。

現在、ネット系に限らず物流企業は在庫コストと納期短縮に加え、品質管理や商品中間加工まで求められる多様な高度化需要への対応が迫られている。
最近の大規模物流センター建設ブームや物流効率化ハブセンターシステムの構築、在庫・出荷情報のリアルタイム処理可能な情報システム構築が求められる。(高度情報システムは、物流企業にとって大きな課題だった「物流クレーム」を起こす連絡遅れ・報告モレ等の改善にも寄与する)

宅配便の価格改定動向を見ると、宅配便事業者間、特に当日配送体制構築の取り組み戦略が企業ごとに異なっている。宅配企業の当日配送戦略は、自社の宅配便のターミナルに物流センターを併設し、その物流センターで在庫管理から配送までを行う。このターミナルのエリアなら当日配送はさほど難しくない。
だが、配送体制の改善を進め同一経済圏以外への当日配送体制について全面配送体制構築の方向を模索する企業、小口貨物ベースに限定する企業、メール便対応に特化する企業など、当日配送についての各社戦略に違いが見え始めている。

物流センターと宅配コスト

参考として、コンビニとネット通販の物流センターを比較して考えてみたい。
コンビニは欠品対策、鮮度維持目的に複数回配送/1日が必要で、物流センターには「米飯」「冷凍」等の温度や種類別に管理法や配送の異なる物流センターがある。
これに対し、通販ではネット受付商品を出来るだけ早く配送することが目標で、外部配送委託のケースも多く、さらに取扱商品の幅が広いこと等から1商品あたりの物流コストが大きい。

物流センターのコストは、土地代(スペース費用)、人件費、設備費、システム経費、維持管理費、配送費等だが、配送費以外をセンター費用とする場合もある。
一般的な物流センター通過商品に対する経費は、5~6%程度で、土地1%程度、人件費1.5%程度、設備等の合計で1%弱、配送費2.5%程度が一般的と言われる。(もっとも比重の高いのが配送費で4割近い。在庫の少ないセンターでは7割近くの場合もある)

配送費削減は、物流企業側の努力だけでは困難なため、経費見直しにはピッキング作業(在庫商品を選択し配送可能な状態にする)合理化による無人化進展と在庫回転率向上による、商品辺り在庫費用の削減が課題で、ロボット化による人件費削減が新規物流センター建設推進の動因ともなっている。

ニーズに先行する当日配送増加の理由は、在庫回転率の向上が一つの狙いだ。都市近郊等の立地の良い物流センターが、高い土地取得費であっても建設が進む理由は、この様な大都市圏での当日配送対応と新規設備による人件費圧縮が狙いだろう。

注目企業の課題と期待

大手物流企業の今後の展開について、直近のトピックスとの関連から考えてみたい。

ドローン配送への期待と課題

2018年から、日本郵便(6178)は人件費抑制を狙い、局間郵便・宅配便等にドローンを導入と自動運転輸送の実証実験開始を発表した。20年代には飛行禁止規制の緩和を前提にドローン宅配の本格運用も目指す。
ドローン活用は、離島や山間部等の配送コストが高い地域が主眼で、拠点基幹局から地域局への配送を想定し、既に福島県内で実証実験を開始している。
政府の未来投資戦略等(千葉特区のドローン実証等)で打ち出されたドローン貨物配送拡大方針を受け、日本郵便は飛行規制が少ない山間地等でのドローン運用法を技術的に確立し、「ゆうパック」等戸別宅配に利用したい意向だ。

event.samurai-incubate.asia


ヤマト運輸、佐川急便等大手宅配企業も、配送人材不足の切り札としてドローン実用化の検討を行っているが、都市部以外の配送により切実感が強い日本郵政の取り組みが一歩先んじている様だ。
ドローン配送には電力会社の高圧配線網を利用するハイウェイ構想も浮上しており、ドローンの法規制が未整備であることで本格的な運用実現時期は流動的だ。

こうした動きの背景には、ペリカン便を廃止して日本郵便との事業統合(個人宅配の事業売却)の道を選択した日本通運(9062)との提携もある。宅配サービスのペリカン便を2010年にゆうパックに引き継いだ後、統合に比べゆうパック荷物取扱数は倍増し、宅配業界第3位となっている。
一方、日本通運は、業界一位の企業向け貨物輸送事業に特化した。両者の提携が、物流事業の収益構造にどのように寄与するかかが注目点だろう。

新鋭倉庫への建て替えメリット

大きな話題になったアスクル(2678)の倉庫火災では、自家物流で「明日来る」実現への体制強化を行い、極限まで効率化を重視していた戦略だったが、最大拠点の被災により一時引き受け停止等の大幅なサービス低下となった。

倉庫被害デメリット自体は多くが保険で対応出来、上述の無人化・省力化投資が、立地が良い既存倉庫の建て替えが結果として低コストで可能になった。長期的には経営プラス要因とも思われている。
但し、資産の減少は保険でリスクヘッジできても、同社の配送に対する信頼性回復は今後の事業展開の課題かもしれない。

itpro.nikkeibp.co.jp

料金見直しの効果

宅配事業で優位に立つヤマトHD(9064)は、9月に発表した中期経営計画(働き方改革対応等により半年遅れ)では、値上げを原資としたネットワーク改善を含む働き方改革に15百億円を投じ、原資は値上げで賄うとした。
さらに物流施設、車両更新等にも2千億円投資し、コンビニ等の自宅外受取比率向上等で大幅な経費等の効率改善を見込んでいる。

注目されたのは、同社取り扱い宅配個数年間約19億個の3割ともいわれるAmazonの価格値上げ交渉で4割以上の価格改定結果を原資とした経営改革が期待されている。
佐川急便の11月値上げや、既に7月に1割近く値上げした日本通運等の企業間物流価格も含め物流企業の価格改定の主眼は人件費対策ではあるようだが、自宅外受け取り以外にも鉄道コンテナ・内航船の活用や物流共同化の動きなど、物流システム全体の変革も進みそうだ。

toyokeizai.net

独自戦略で活路

前述の佐川急便の宅配料金引き上げ対象は「飛脚宅配便」や「飛脚ラージサイズ宅配便」、「飛脚クール便」など、多様化が人手不足や宅配ニーズの高まり等でコスト増となったという。
だが、配送スタッフの女性採用やAmazon取引の早期撤退などで、競争の厳しい大口取引(対応する大型センター業務)縮小等にヤマトの先を行くEC事業推進意図も見えており、前述の日本郵便との提携も含めた独自姿勢が顕著だ。
ヤマトの一人勝ちに近かったネット通販シェアで、今後どのように変化するかが注目点だ。

物流・宅配の未来に対応できる企業

トップ企業として、従来戦略の延長線上で業績向上を目指すヤマトと、企業物流特化で収益性向上を図る日通、独自戦略で機敏な対応を見せる佐川急便という大手3社の戦略の行方は、物流の将来にも大きな影響がありそうだ。

欧米も含め小売業の衰退とネット通販の拡大は、経済にとって物価水準を変えるほどの大きな影響を与えている。
その象徴的存在で小売りの流れを支配する勢いを見せるAmazonは、最近「Amazonフレッシュ」で生鮮食料品の取り扱いも開始しており、今後も物流システムの改善と歩調を合わせ、ネット通販の拡大は続くのではないだろうか。

背景の一つとして、人口減少地域や高齢者に見られる「買い物難民」現象の救済の側面もある。(こうした地域等の物流や宅配の課題解決には、現行の法規制緩和や条件整備が欠かせないだろう)
都市部への人口集中と利便性格差は、日常品の買い物が困難な買い物難民と言われる層のネット通販利用率上昇に拍車をかけている。
こうした趨勢の中で比較物流コストの高いネット通販では、時代の変化にも対応可能な物流企業だけが、人手不足の続く日本において成長が継続できる企業になるのかも知れない。

japan.cnet.com
参考:大手物流企業 <50音順>

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コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。