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【センサ新時代】iPhone X、3Dだけではないセンサ技術革新

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引用元:apple.com

iPhone Xに搭載された高度な顔認証3Dセンサが話題になっている。
従来不可能だった様々な情報のデータ化が、センサ技術の高度化・高速化等で可能になったことが先端技術の背景にある様だ。アップル社iPhoneの3Dセンサ分析に加え、進化中のセンサ技術とその未来について紹介したい。

iPhone Xの新センサ

従来のiPhoneは指紋認証でロックを解除していたが、今回の最上位機種であるiPhone Xではホームボタンがなく、Touch ID(指紋)の代わりにFace IDという「顔認証システム」を使っている。

www.apple.com


同時発売のiPhone 8シリーズでは従来の指紋認証ロック解除方式だが、iPhone Xの顔認証システムは複数のカメラ画像と深度センサによる「Truedepth」という3Dセンサシステムが凹み部分に組み込まれ、他のスマホ等で採用済の顔認証システムを越える高セキュリティーが保証されるという。

数年前にアップルが各種の3Dセンサ技術を主に開発していたイスラエルのこの新センサシステムには、ベンチャー企業買収で入手した3Dセンシング技術を基礎に大幅ダウンサイズし、今回のiPhone Xに詰め込んだ様だ。
従来のハード機能に頼った指紋識別技術とは異なり、このシステムには複雑なソフトウェアが必要だった。そのため、3D深度センサカメラと関連のソフトウェア技術、AR(仮想現実)関連企業等の企業や顔構成データ処理・分析専門企業、そしてAI特化企業等、実に多くの企業が今回の3Dセンシング開発に向け買収された。

こうして実現した高度ニューラルネットワークエンジン(脳神経系をシミュレートしたネットワーク利用のAIソフト)で、高い品質の3Dセンサが実用化されたと言われている。(他社買収も含む先進技術の開発コストは、iPhone Xの高価格設定にも影響している様だ)

センサとは

センサとは、人間の感覚に代わって、温度・圧力・磁気・光(電磁波)・ガス・超音波など様々な情報を検知・検出する素子・器具や装置をいう。
検知データを電気信号に変換するセンサが代表的で、位置決め用赤外線センサや超音波センサ、接触検出用の感圧センサ、熱センサ、角度検知ジャイロセンサなど、数多くの種類が開発されている。
センサ技術には、ミサイル照準など軍事目的開発からの高度技術がスピンオフ(民間転用)されている。ミサイル誘導用の高度軍事技術であったセンサ利用の赤外線感知式自動ドアが、従来の足踏みマット式よりも誤作動や故障が少ない新商品として、オフィスビル等で採用され、世界中に広まったのは有名な話だ。

最近は、軍用ロボットを中心に自律性と強靭性を持つ技術開発のウェィトが大きくなり、無人飛行機等の周辺環境センサは、周囲認識した行動が可能な自律型ロボティクス技術の成果だ。
最近、話題の「自動運転」技術も軍用車両の技術開発が実用化のきっかけで、軍事技術のスピンオフはセンサ技術の高度化と進歩に大きく寄与している。
潜水艦の探知技術が乱気流監視警報装置として民間航空機に利用され、ソナー技術は民間船舶の航行に有害物や沈没船探知等に利用された。

さらに、三菱重工業(7011)の迎撃ミサイルセンサシステムの民生利用や軍事衛星技術由来のGPS(全地球測位システム)技術等、多方面のセンサ関連技術が軍事技術の恩恵を受け、逆にハイブリッド車用センサ技術が誘導弾技術に利用された等のスピンオン事例もある。

センサ技術の進歩

顔認証システムの進化は、セキュリティー上の要請から急速に進化が進んでおり、センサ技術の高度化が加速している。
センサの高度で複合的な応用は、もはやIOTやAI機器を始め最先端の商品開発に欠かせない要素だ。

ジャガイモ生産への利用

センサ利用のユニークな例として、ジャガイモ生産・加工を紹介したい。
内部空洞のあるジャガイモ選別のために、三井金属(5706)の関連会社は、鉱山の資源探査技術から開発された非破壊内部評価技術・解析ソフトで、「フルーツ光センサシリーズ」というジャガイモ内部の空洞程度を最小の0~5までの大きさで数値化して表示するセンサを開発した。
果実等の選別・評価に加え、生産指導データベースの構築と高商品価値の生産提案まで行う。
道立総合研究機構(独法)では、強い光をジャガイモにあて、光センサで計測した透過光の波長・強度で、でんぷん価を推定し仕分けする方法を開発した。

www.mitsui-kinzoku.co.jp


さらに、進んだセンサ応用技術として、同機構が民間企業と共同で開発したジャガイモ1個当たり約4秒で処理出来る「芽取りロボット」がある。
顔認証システムの原理で、回転させたジャガイモの芽の位置を画像センサで確認し、ロボットアーム装着のドリルで表面積全体の約8割の芽を削り取るものだ。
こうした選別・芽取り作業は、従来、多大な手間がかかる重労働で人手不足が課題だったが、これを一気に解消できる新技術として注目されている。

医療等への利用

医療分野でも、潜水艦探知ソナー技術が、乳がん等のX線検査での分析(異変探知)用に実用化されている。また、大便介助よりも小便介助の方が労働力を必要とするという介護現場の声から、実用性の高い尿漏れ検知可能なセンサ開発が進んでいる。

スマホで尿のタイミングが分かるという「Dfree」は、超音波センサで腹部の尿残量アプリ上で示す。超音波センサは膀胱の大きさで尿量を計測し、測定を重ねると装着者別の最適なタイミングで予想ができるという。

CARIN」は、通信対応のウエアラブルセンサ(加速度センサと恥骨にセットしたセンサの抵抗値で計測)と専用下着、尿漏れ改善に効果のある骨盤底筋トレーニング動画を含むスマホアプリから構成された複合商品だ。
小型センサに、通信機能回路に加え、加速度センサや超小型リチウムイオン電池を搭載している。(提案したトレーニングでは改善が得られない場合、病院受診用データとして摂取飲料も含んで記録可能なアプリデータが問診票として利用できる)

また、こうした直接的な尿意測定センサとは別に、リアルタイムに解析できる脳波センサデータで尿意や便意を含めた人体が発するサインを総合的に解析し、重度介護者や疾病を持つ患者のケアに最適な処置が出来るシステムが複数開発中で、後述するセンサ技術の高度化によって実現が近づいている様だ。

新しいセンサ利用の進展

これからのセンサには「見える化」も重要な機能かも知れない。
6月に開催された「センサ/IoT技術展2017」では、出展企業の3割以上が展示内容等に「見える化」という語句を使っていた。
各種センサデータを可視化したり、機能的・複合的に利用するネットワークシステム、クラウドにアップしてフィードバックしたりする等、多機能を付加した多くの製品が実用化に向けて進んでいる。(巻末資料参照)

ローム(6963)が行った「センサや無線通信モジュールを活用したアイデアコンテスト」の受賞作品のモーションセンシング利用で卓球やけん玉の動作の発生音を再現や加速度センサによる乾杯動作収集で、全国の「ハレ」スポットを表示する等のアイデアが話題を集めた。

また軍事技術開発のスピンオフでも、軍服等の装着センサ類(赤外線・微光暗視、レーザ測距、音響センサ等)が、夜間警備や暗視作業用の民生品への供用が検討・開発せれている。
無人車両の遠隔操縦・自律機能のセンサ技術(障害回避、自動制御、小型化等)のスピンオフも自動運転への利用が進んでいる。
こうした軍民相互利用の進展から、センサ技術には間もなく飛躍的な進歩があるかも知れない。

センサ新時代が開く未来

富士通(6702)は、従来の材料や構造を大きく変更したセンサ「QWIP(クウィップ)」を開発中だ。アルミ二ウムガリウムヒ素を使った新技術で、従来の熱センサにはできなかった高精細な画像を、低コストで作成できると言う。センサデータの可視化への大きな一歩になる技術として期待されている。

NTTデータ(9613)は各種センサの開発に積極的で、センサ稼動音解析システムに加え、特別養護老人ホームと提携し、コミュニケーションロボットによる高齢者支援サービスの実証実験中だ。
入居高齢者(利用者)を対象にしたコミュニケーションロボット活用の介護支援サービスでは、利用者と直接対話した音声データは生活環境に設置した離床センサ、人感センサ等のデータを加えロボティクス基盤からネットワーク伝送したデータ解析結果を利用者の生活にフィードバックする。
前述の介護支援技術等も含め、この様な介護関連システムは高齢化社会対応技術として大きな話題になりそうだ。

ここまでは進行中のセンサ技術開発の一例にすぎず、既に各方面で様々なセンサ技術開発が加速中だ。この様なセンサ技術の高度化と関連ソフトウェアの進化によって、従来の主流だったセンサ個別利用から他のハード等とのネットワーク利用が増大している。

センサデータをクラウド化し、相互利用やセンサデータ集積のビッグデータの利用、さらにこうしたデータのデータマイニング等を有効利用するサービス等は、前述した様にIOTやAI利用の必須技術であり、センサの高度化(ダウンサイズ・高速化・コストダウン等)から、実用化・製品化が加速するだろう。

将来的には、センサ技術とAI・ロボット技術等がさらに有機的に融合し、センサからアップされた可視化情報を瞬時に分析し、各種サービスにフィードバックして行動可能な革新的なセンサの利用方法もあらわれると予測されている。

参考:センサ/IoT技術展の出展企業・展示内容の一部抜粋【50音順】
  • アサヒ電子研究所(多孔質ガラス高度認証システム)
  • 旭プレシジョン(光センサの散乱光等の吸収表面処理「黒色無電解Ni鍍金」)
  • アルプス電気(各種MEMS型センサと通信モジュールの複合化小型センサモジュール)
  • アルペジオ(高感度・低消費電力の電気化学式ガスセンサ)
  • イナバゴム(触覚再現・測定用感圧導電性ゴム弾性材。圧力分布測定や自律型ロボット、ペンタブレット等への応用)
  • ヴァイタル・インフォメーション(加速度・温度等のデータを無線ネットワークで収集・処理して提供するIoTセンサ)
  • エニイワイヤ(省スペース・省工数センサで見える化を実現)
  • 岡野製作所(高感度・高速度応答で、従来実測できなかった真空環境等の「見える化」を実現する圧力センサ)
  • ケイツー電子工業(超小型無線モジュール、ジャイロセンサのリアルタイムデータ転送)
  • コーデンシ(高速フレームレートC-MOSカメラ、非接触温度検知サーモパイル等)
  • SURE SYSTEM(ドップラーセンサ【呼吸・心拍・体動の見守り用検出装置、自販機用】等)
  • デュース・テクノロジーズ(操作パネルやリモコンボタンに触れずに手のジェスチャで操作可能な「タッチレスジェスチャセンサ」)
  • フィガロ技研(MEMS空気質センサやNDIR式小型CO2センサ等)
  • 深瀬商事(荷重センサ等)
  • 北陽電機(屋内外環境認識3Dレーザーセンサ【長距離・高速応答、小型・軽量】、多様なロボット、マッピング、自動制御に活用)
  • ホルトプラン(小型風速等センサ、環境制御【風速・微風速3D風向・輻射熱等モジュール】センサ等)
  • 村田機械(金型挙動の見える化【埋め込み型変位センサ、分析・予知保全モニタシステム】)
  • 山本金属製作所(切削等の温度測定、各種内部残留応力測定【加工中の切削工具の温度計測、素材の内部残留応力】)
  • ユアサ化成(イニシャルコスト不要なセンサシート、3Dタッチセンサ等)
  • ラトックシステム(最大250mの通信が可能な温度センサ、食品用温度センサ、空気の状態が見えるBLEほこりセンサ)

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。