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「つみたてNISA」選ぶべきファンドはインデックスかアクティブか

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積立NISA投資型商品が新たに誕生し、2018年1月から制度利用がスタートする。
2017年10月から事前の口座開設が可能になったため、取り扱い各社の顧客向け勧誘も拡大している。
金融庁が主導した今回の改正趣旨と従来の制度との比較に加え、新制度利用の場合の投資スタンスの考え方や制度利用拡大の影響について考えたい。

NISAとは

NISAは、英国民の4割が加入する「ISA」制度を参考にされて創設された制度だ。(現在の英国では、NewISAとして「NISA」の呼称に改正されている)

英国ISAは、国民の貯蓄や資産形成促進を目的に1999年4月に導入されたもので、このISAにNIPPONの“N”を加えて平成26年に日本のNISA制度が誕生した。
日本版NISAは「少額投資非課税制度」とも言われ、個人投資家のための税制優遇制度とし、120万円の非課税投資枠内の株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となっている。(非課税期間は最長5年間で、ジュニアNISA制度もある)

www.fsa.go.jp


ただ、この仕組みには英国のISA制度にある「非課税期間の恒久化」や「累積投資額の上限がない」メリットがないこと、対象とする投資信託等の取扱商品の手数料が高いこともあり、長期的な財産形成に結び付かない資産家の税優遇利用が目立つ等の批判から、金融庁は平成18年からの積み立て型NISAの新制度導入を決めた。

「つみたてNISA」とは

平成30年1月から、新たな小額投資非課税制度として「つみたてNISA」の利用が始まる。
積立購入の投資信託等の分配金や売買益が、最長で20年間非課税となる制度だ。
金額は年間40万円迄で、この金額から得た収益が非課税となり、20年間の保有が可能となった。

従来のNISA制度と、この「つみたてNISA」はいずれかを選択することとなる。対象商品は、一定の要件を満たした株式投資信託か上場ETFで、取扱商品は金融機関によって異なる。
2016年12月に発表された平成29年度与党税制大綱の中で、次のようにその趣旨が説明されているので、一部を紹介する。

平成29年度税制改正の基本的考え方」(抄) 「現行のNISAが積立型の投資に利用しにくいことを踏まえ、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAを新たに創設する。創設に当たっては、投資初心者でも理解できるよう、複数の銘柄の有価証券等に対して分散投資を行うなどの要件を満たし、特定の銘柄等によるリスクの集中の回避が図られた投資信託に商品を限定するとともに、実践的な投資教育をあわせて推進することが重要である。(中略) 個人所得課税改革において、老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援する。(中略)複数の制度が並立するNISAの仕組みについて、少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討する。
引用元:税制改正大綱における金融庁関係の主要項目


金融庁が行った現行制度についての利用・効果の検証結果によると、現行制度は資産形成時期である20代~40代の活用が少なく60代~70代の利用が目立ち、既にかなりの資産を持つ世代が税優遇制度の活用でさらに資産を増やしている。
こうしたことから、新制度では長期間積み立ての優遇税制を中心に設計された。

金融庁は8月に、「つみたてNISA」の後述する要件を満たす商品は公募投信114本、ETF6本の合計120本と発表した。このうち国内株式型のインデックス投信での信託報酬率は平均0.27%と、要件(0.5%以下)をクリアしている。

金融庁は、「つみたてNISA」に対する投信業界の対応を評価していると報道されている。
若年層の年金は、将来に実質受け取り額が減少するとの予測が一般的だということも背景にあり、将来の年金補完制度として長期の資産形成を支援しようとして生まれた制度の様だ。

アクティブとインデックス

こうした事情から、「つみたてNISA」に適合する商品には一定の基準が定められている。
既存の投員信託の大半は、長期の積立・分散投員による資産形成に不向きで、信託期間が20年未満のものが約8割であり、手数料が高く(平均販売手数料2.5%)さらに毎月分配型が9割近いこと、またレバレッジをかけた商品性は投機性が高いことから、これらを「つみたてNISA」の対象商品から除外した。

「つみたてNISA」の対象商品は、一般的なインデックス投信(パッシブ運用)を基本として、国内外の株式・債券に分散してインデックス投資をするものや日経225等のインデックス投資を基本とし、アクティブ運用投信については、例外的に継続して投資家に支持・選択され、規模が着実に拡大しているものだけを対象とした。

この他、金融庁への届出制で、販売手数科はO%(ノーロード)、運用管理費用(毎年)にも上限を設けて低コスト商品に限定し、これらの費用や提供商品がどのような顧客に適しているかを公表・説明するなどの条件を設けた。

具体的な「つみたてNISA」選定基準(投信)は、以下の4種類に区分されている。

  1. インデックス型投信(TOPIXなどの国内資産に投資するもので、信託報酬は0.5%以下)
  2. インデックス型投信(MSCI-KOKUSAIなどの海外資産に投資するもので、信託報酬は0.75%以下)
  3. アクティブ型投信(国内資産に投資するもので、信託報酬は1%以下)
  4. アクティブ型投信(海外資産に投資するもので、信託報酬は1.5%以下)

3と4には共通の要件として、純資産額50億円以上で運用開始から5年以上経過していることと、運用中(2/3以上の期間)は資金募集と運用を継続する商品とされた。

ideco-ipo-nisa.com

NISAの利用方針

では、10月から事前申し込みが可能となったこの制度を、どのように利用するべきだろうか。「つみたてNISA」は長期投資、財産形成を主目的とする制度として設計されており、取扱商品の内容についても金融庁の細かい条件設定(指導)がされている。
また、従来のNISAと同様に、収益には非課税だが損失の損益通算はされず、損失が出た場合には非NISAの商品購入より不利となる。
これらを勘案すると、「つみたてNISA」で選択する商品は、長期間の運用に適したものがよさそうだ。

個人の運用スタンスにもよるが、アクティブ型を選択した場合にはインデックス型に比べて高い運用コストと運用成績の振幅が大きい点から、長い期間にわたって成績の良いファンドを選択することは困難と思われる。
また、これまでのNISA制度に対する金融庁の姿勢から、今後も長期間運用ファンドを変更しない投資への優遇措置が、継続するものと思われる。
この背景に「将来的な日銀ETF買いの出口に向けた受け皿狙い」があるという観測も見られるが、筆者はこの見方は穿ち過ぎと考えている。

それよりも、むしろ米国の投資動向を受けたものではないだろうか。
米国の高名な投資家バフェット氏も、2017年の顧客向けの手紙で「2008年以降は、高コストのヘッジファンド運用成績が様々な運用戦略得を駆使したにも関わらず、インデックスファンド(SP500連動型)よりも低い」と伝えている。(2016年の米国の投資信託投資額はアクティブファンドから約40兆円資金が流出し、逆にインデックスファンドは約60兆円の資金増加となっている)

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少なくとも5年以上の積み立て投資を前提にすれば、インデックス型ファンドを選択することが、安定的でリスクの少ない投資方法だろう。この場合、投資するファンドは一つの商品に絞るよりは、下記の様に5カテゴリーに配分する「分散型投資」が長期的なリスク抑制に有効だろう。

日本債権型・海外債権型・日本株式型・海外株式(先進国)・海外株式(新興国)型の5つのファンドを、リスクの大小を加味してバランスよく保有すれば、安定したパフォーマンスが期待できる。
過去のインデックスファンド/アクティブファンドの成績を比較すると、インデックスファンドがアクティブファンドを大きく上回っている。
もちろん個別のファンド成績はまちまちで、インデックスファンドの優位性が明らかとまでは言えないが、アクティブファンドの長期運用で好成績を続けるのは難しそうだ。

長期投資の戦略とNISA利用拡大

では、長期継続運用を推奨する「つみたてNISA」の利用が増加した場合の、株式市場等への影響はどうなるだろうか?

金融庁が発表した2016年末のNISA口座の利用状況は、開設口座数が1069万口座、買い付け額が9兆4756億円だった。これにジュニアNISAの買付額を加えると、制度開始後2年間で約9兆5千億円の投資資金がNISA口座経由で投資された。

2018年以降の「つみたてNISA」制度開始によって、将来の年金受給に不安を持つ若年層を中心に、IDeCo等と併せて推進が進む可能性もある。
金融庁の思惑通り「つみたてNISA」利用で、インデックス型の長期運用ファンドが拡大すれば、相場全体の投資パフフォーマンスにも、インデックス型投資資金の流入増加という形で影響を与える可能性が高いだろう。
2018年の制度開始以降の「つみたてNISA」利用状況にも注目したい。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。