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年金世帯の高齢化で伸びる企業はどこか?

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団塊の世代の多くが年金受給者になり、これからの年金世帯の消費動向は無視できない比重を持ち始めている。
今後、間違いなく進行する年金受給世帯の高齢化でその消費動向はどのように変わるのか。また、その変化で伸びる業態・企業はどこなのか?
既に顕在化しつつある新たな消費傾向とその変化予想から、近未来の変化などを予想したい。

高齢化年金世帯の動向予測

老齢年金の受給可能な65才以上の人口は大幅に増大している。
総務省の統計では、日本の高齢者人口は約35百万人(総人口の約28%)で、世界でも最高レベルとなった。

高齢者の就業者数も増加中で約800万人(就業者総数の12%程度)と、同じく世界一だ。(高齢者世帯の貯蓄高は世帯当たりで約2400万円)
高齢者世帯のネットショッピングの利用は10年間で約3倍に増加し、医薬品・健康食品の支出割合が高く、庭いじり等の趣味・娯楽支出も目立つ。

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www.stat.go.jp

高齢者の支出実態

総務省の「家計調査」や、内閣府の「国民経済計算」等の統計によると、高齢者世帯の消費規模は消費全体の5割程度まで増加した。
この消費規模拡大は、高齢化進展が原因で世帯割合も5割を越え、今後も高齢者世帯の増加は続く。

高齢者世帯では可処分所得が減少しても貯蓄を取り崩し、概ね消費水準を維持している。
ただし、最近のシニア世代とりわけ団塊世代では、余暇等の消費増期待を裏切り、消費支出は小幅増程度だ。

旅行等の支出が減少傾向なのは、金銭的余裕が少ないからとも言われる。この世代では、貯蓄を取り崩して生活する無職世帯の割合が、70代になると約8割まで上昇する。
金融資産保有額は、10年前の約7割の約650万円まで減少し、現在の60代は過去と比べ経済面での将来不安が増大し、金融資産の保有目的には老後の生活資金が多いと分析されている。

60代世帯の多くに金銭的余裕が少ないため、現役世代と同様な消費への慎重姿勢があり、期待された団塊世代の消費拡大は無く、将来の消費水準は一段と落ち込むという予想がある。
ただし、旅行等の余暇支出は再雇用増加で、時間的理由から過去の世代より抑制されているからだという見方もある。

近年の60代の旅行支出には就業率と逆相関の傾向もあり、これは「半年金・半就業」のワークライフバランススタイルの表れかも知れない。
高齢者世帯の消費は、金額ベースで保健医療やサプリメント等の健康保持用摂取品支出が多いが、交際費等の消費支出や食費などの比率も高い。(住居等は大幅に低下)
全体としては、高齢世帯の可処分所得は緩やかに減少し、消費水準はほぼ維持される。そのため、高齢化によるの消費の下押しはある程度あるが、団塊世代が70代に移行すると、世代全体の大きなボリュームから、高齢消費の下支えと全体としての消費増も期待できるだろう。

過去の例では、高齢者世帯のうち70歳以上の割合が5%上昇した場合、1世帯当たりの消費支出は1%程度の下押しにとどまっている。
60代無職世帯(恐らく大半が年金受給世帯)は、40代勤労世帯とほとんど同水準の消費支出で、その支出内容からは特に生活を切り詰めているようにはみえない。
公的年金を中心とした実収入の減額も、年金受給の高齢無職世帯は生活水準が維持できている様だ。

当然のことながら保健医療支出は増加しているが、食料支出についても40代未満の勤労世帯の大幅抑制姿勢に比べて高齢無職世帯では微減にとどまり、可処分所得が四分の一近くに落ち込んだ60代無職世帯でも、その消費支出総額の変化は5%の微減にとどまっている。
住宅関連負債が大幅に減少し、60歳以上無職世帯の金融資産は、一人当たりで1400万円程度あり、60歳未満勤労世帯の3倍近い。

貯蓄取り崩しの可能な世帯が高齢者の消費を支えている様だ。(高齢無職世帯の金融資産は最近の株高で一層拡大している可能性も高い)
すなわち、同じ高齢者世帯であっても、金融資産を拡大させた高貯蓄世帯と金融資産をほとんど保有しない低貯蓄世帯(勤労高齢者世帯も多い)との二極化が進み、消費傾向にも表れている可能性がある。

勤労世帯の実収入は無職世帯よりも4割以上多いが、実支出も2割程度多く(被服及び履物等が増加)、消費水準は維持しているが、無職高齢者世帯(年金世帯)とは消費が異なる傾向が見える。
では、今後これらの世代には、どんな消費が想定されるだろうか。

www.asahi.com

高齢者向けに登場している様々な生活支援ハード

高齢世帯に顕在化しつつある電動カーや運動サポートグッズなどのニーズに対応したハード機器が最近各種販売され始めている。下記はその一例である。

シニアカー

電動カートはシニアカーとも呼ばれており、主に高齢者向けの一人乗り四輪電動車両で、三輪タイプもある。ハンドルやミラーもあるので車両の一種と誤解されるが、道路交通法上は歩行者扱いで、車両ではない。
ゲートボールコートまでの移動用に、スズキ(7269)が最初に発売した。
運転免許不要で高齢者でも楽に扱えるため歩行に支障のある高齢者に広まり、現在は福祉用具とされており、消費税は非課税だ。
現在はスズキやホンダ(7267)に加え、カワムラ等の電動バイク専業メーカーなどからも発売されている。

装着型歩行支援ロボット

脳卒中患者の歩行リハビリなどの用途で市販されていた「アクシブ」という歩行支援器具をベースに、名古屋工業大学と独立系自動車部品メーカー今仙電機製作所(7266)で共同開発した健常者向け歩行支援機「aLQ by ACSIVE(アルク・バイ・アクシブ)」は、電気やモーターを使わず、バネや振り子の動きで脚の振り出しを助ける。
健常者が日常生活で使える歩行支援機として、2017年6月から発売された。
健常者向けとしては世界初の製品で、足腰に不安を持つシニア世代やその家族などの注目を集めている。
階段や坂道の行き来が多い生活環境や、ハイキングウオーキングなどの利用も含めて手軽な歩行支援機として活用が期待されている。
今後、こうした生活・行動補助製品が増加すると考えられる。

健康食品、アンチエイジング商品の進化

また、高齢者向けにサプリメントやアンチエイジング商品が、高齢者の消費性向の変化に対応しつつ、多数の企業から製品が販売されている。
最近注目されているのが、平均寿命に対する健康寿命だ。
70代とされる高齢者の健康寿命をさらに延長する製品群には、高齢化がさらに進むにつれ、一層ニーズが増加すると考えられる。高齢世帯の支出項目の中でも保険医療支出は減額されず、品目によっては増加傾向にある。

健康食品等

2015年から始まった機能性表示食品制度により、健康食品・飲料市場は拡大しているが、高齢者のニーズも旺盛だ。
アイケア製品・機能性ヨーグルト・トクホの健康飲料等が好調で、従来は機能性表示製品が少なかった菓子、果実・野菜飲料にも新商品が発売され、機能性と新たな食品カテゴリーとの組み合わせが需要獲得に繋がっていると言われる。

特定保健用食品では、ファンケル(4921)の「えんきん」や江崎グリコ(2206)のヨーグルト、機能性チョコレート、雪印メグミルク(2270)のガセリ菌ヨーグルト」、カゴメ(2811)の「カゴメ トマトジュース」等のドリンク類が市場をけん引している。
トクホは保健機能食品の中で最も市場規模が大きい。
その中でも無糖茶等のドリンク類が市場の6割以上を占め、サントリー食品インターナショナル(2587)の「伊右衛門 特茶」、アサヒ飲料(2502)の「アサヒ 食事と一緒に十六茶W」、コカ・コーラ(2579)の「からだすこやか茶W」が伸長しており、今後もドリンク類を中心に市場は拡大していくとみられている。

n-seikei.jp


これらの食品・飲料等は、現在の60代勤労者が引退する5~10年後にむけて、若い世代の健康ブームと合わさって、ニーズ・販売量はさらに上向きになって行くと考えられる。

アンチエイジング関連商品

次に注目したいのが、抗加齢医学(アンチエイジング医学)だ。
これは、加齢という生物学的プロセスに抗する医療行為を総称し、動脈硬化やがんのような加齢関連疾患の発症確率を下げて、健康寿命の延伸を目的とする医学分野だ。

老齢科学の進展により、老化(エイジング)・加齢は、細胞の生物学的なプロセスの一つであり、加齢メカニズムに関与する細胞内分子機構が徐々に解明されている。
このことを応用して科学的なアンチエイジング製品の実用化が始まっている。

アンチエイジング製品としては抗酸化作用の補助を行うものが代表的だが、今後関連カテゴリー・製品はかなり増大するだろう。
アインチエイジングのために、体内の活性酸素を除去するためには「ビタミン」「酵素」「植物栄養素」の3種類の相互作用で、活性酸素を除去するのが理想的と言われる。
だが、これらをバランスよく食品から摂取するのは困難で、ビタミンやミネラルが多種類、同時に体内に必要なため、サプリメントでビタミンとミネラルが配合された「マルチビタミン・ミネラル」の摂取が人気になっている。

マルチビタミン関連のサプリメントは、さらに抗酸化栄養素をプラスした製品等も含め、多数が販売されており、全身的な老化防止に関心を持つ層から支持されている。
代表的な製品としては、サントリー食品インターナショナルの「マルチビタミン」があるが、他社からも関連製品が幅広く発売されている。
前述したように、今後かなりの高齢者がこうしたアンチエイジング作用製品を摂取し、効果があれば健康寿命の延伸という形であらわれるため、効果的な製品が話題になれば、若者世代にもフィードバックされ、製品実績も増加するだろう。

年金世帯の高齢化で伸びる支出と関連企業

こうしたシニア層の消費傾向は、団塊世代の二極化とも関連し、将来的な消費傾向を正確に占うのは困難だが、世代としてのボリュームが維持される限り、その消費も注目され続けるだろう。

過去のシニア層の消費性向と現段階の消費動向の推移から、レジャー支出の増大や介護需要の増加以上に、年金世帯消費の中心になるのは健康志向の消費、健康維持・健康寿命の延伸、アンチエイジング関連の支出ではないかと考えている。

健康志向の製品群は、若い世代にとっても関心が高く、技術革新のペースも上がっているので、今後は食料・飲料を含む関連製品の需要がさらに高まる可能性があるだろう。
関連企業としては、上述した企業に加えバイオ製薬関連のベンチャー企業等の中からもヒット商品が出てくるかもしれない。

高齢化と関連企業の売上

ここでは日本の高齢化世帯を中心に取り上げたが、高齢化問題は世界中で進展しており、特に隣国中国では日本よりも後ではあるが、一層深刻な問題になると考えられている。
シニア層の消費動向によって業績が上がる企業は、日本での関連売り上げ増加が一服した後も引き続き、海外特に中国での消費拡大が業績に寄与する可能性も高いのではないだろうか。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。