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銀行株は下がる?上がる?明日の銀行業界への課題と期待

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最近、株式相場が急回復する中、大手銀行や地方銀行株も買戻しによって上昇しているが、なお比較的低位に位置し、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銘柄が多い。
海外の金融株も米FRBの12月の利上げ観測を追い風に回復基調とはなったが、ダウ平均の最高値更新が続く状況と比して本調子とは言えない状況だ。
低金利下の収益低迷等を理由として銀行株は、こうした傾向を続けるのか、それとも上昇基調となるかを占う、銀行業界の課題と将来について考えてみたい。

銀行株の価格水準

日経平均は2万円を回復し、東証一部全体を表すTOPIXは高値圏にある中、銀行株・金融株は北朝鮮核実験による急落後の反騰局面にあるが、相変わらず市場平均以下の低PERが続く人気薄業種であり、なお出遅れ感が強い。
確かに、2017年度末の予想利益は他の業種に比べて収益の伸び率は低く、減益予想企業もある。

長引く低金利による貸出金利低迷と企業等の資金需要不足で貸し出し増が見込めない銀行業全体の構造的問題は変わっていない。
しかし、日本経済の各指標は好調で来年度以降も企業業績の好調が続き、金利上昇や貸し出し増となる可能性を考えると、メガバンクでもPBRが1倍を大きく下回る状況に疑問を感じる意見もある。
ひょっとして銀行業がはらむ中長期の課題を株式市場が予測しているのでは、という見方もある様だ。

銀行業の役割

銀行は企業・個人から預金を集め、預託された資金(預金勘定)を融資する金融機関だ。
銀行の預金勘定は、銀行業の主要な役割と言われる①決済業務 ②金融仲介 ③信用創造を支えている。

決済機能とは、銀行預金口座の利用で現金不要の口座振替・送金や公共料金等の支払いが可能になることを言い、この中でも外国送金は送金額に対する手数料割合が高い。

金融仲介機能とは、借り手と貸し手の仲介を行う業務で、資金運用先を求める預金者と資金調達が必要な企業等との間で、両者のニーズ調整や業務で得られた顧客情報等で良質な取引先を抽出することで取引に伴うリスクやコストを軽減する機能だ。
企業向け貸付業務は銀行収益の柱であったので、最近の低金利による利ざや縮小と資金需要そのものの減衰が銀行収益を押し下げる大きな要因となっている。

信用創造機能とは、銀行が預金の一部を手元に残し、残余を企業等に貸し出すことによって貸し出し資金が企業から取引先等に支払われ、その資金が銀行に預金として還流するサイクルにより預金通貨すなわち銀行全体の預金量が増大し、結果として預金通貨全体の信用力を増大させることを言う。
銀行保証という信用力が基礎となるため、信用力の高い銀行に預金が集まり、資金量が確保できる。

また、取引過程の情報を使って取引先の信用度を見極める能力は銀行業が持つ大きな強みだが、この面でもゼロ金利下の預金残高の伸び低下や金融仲介取引量の減少が、ボディーブローのように銀行業の基礎体力を奪いかねない状況だ。

これからの銀行業が直面する課題

これらの銀行業務に新たな参加者が増えている。
決済サービスでは、GMO(3769)のペイメントゲートウェイやソフトバンクペイメント(9984)などが、EC事業者をターゲットに決済サービス提供を行っている。
GMOは総合的な決済関連及び金融関連サービスを展開して、大手通販事業者等9万店舗近くをGMO-PGグループ加盟店として決済サービスを提供し、併せて利用者に加盟店向け広告サービスや資金サポート等の金融関連サービスを行い、海外決済サービスも提供している。

海外送金分野では上記企業に加え、米国の国際送金サービス大手マネーグラムと提携したSBIレミットの国際送金は、コンビニチェーンのファミリーマート(8028)のFamiポートが低料金で利用できるシステムがある。

他にもこの分野に多くの企業が参入している。
外国送金については、複数の取引先の外国送金を国内送金とマッチングさせて手数料を大幅引き下げした「トランスファーワイズ(TansferWise)」等のシステムも注目されている。
送金希望者が、当該システムを通じ各国の通貨、金額と適合させ、海外送金なしで決済(国内取引のみ)できる仕組みで、外国為替手数料がないサービスとして、今後の普及が期待されている。

transferwise.com


海外送金は、都市銀行間や楽天銀行等ネット銀行、ペイパル、外貨両替専門業社等にも手数料が低い選択肢があり、厳しい競争が行われている。
金融仲介機能に関しても、金融商品取引法改正によりネットを介したクラウドファンディング(ソーシャルファンディング)普及が可能になり、銀行以外の企業が仲介する事例が出ている。
長期間の低金利による体力低下が目立つ地方金融機関に代わり、フィンテックやAI与信判断機能も活用したノンバンク等の進出も散見される。

ノンバンクは個人決済や顧客管理等での与信スキルを利用出来る上に、既存システムへの投資が少なく、新分野への集中的なフィンテック投資が進めやすい。
フィンテック技術では、都市銀行のような巨大な決済システムや店舗等を必要としない新しい金融サービスの提供も容易になる。
金融とITが融合したフィンテックシステムの将来には、市場拡大の担い手として金融業活性化となる予想と「もう銀行は不要になる」という見方が出ており、今後の進展は注目される。

japan.zdnet.com


フィンテック普及で先行する米国では、ベンチャー企業が個人や海外送金において決済手数料等を格安あるいは無料にして、既存金融機関から顧客を奪う動きが広がっている。
国内でも、例えばオンライン将棋対戦等のAI活用を運営するベンチャー企業「HEROZ」は、従来の頭脳ゲーム領域に加え、金融関連フィンテック分野に本格参入を発表している。

heroz.co.jp


信用創造機能についても、スマホ利用の商取引の活発化によって商取引そのもの形態が変わりつつあり、今後ビットコイン等の仮想通貨利用が拡大すれば、預金を基礎とする通貨流通の仕組みそのものが根本から変わってゆく可能性すら噂されている。
こうした最近の状況が複合的に絡み合った結果、銀行株の不人気を招いているという見方も少なくない様だ。

これからの銀行業の可能性

現在の銀行業界には超低金利と融資伸び悩みの他に、フィンテック・ブロックチェーン・仮想通貨等に代表される新たな技術や価値、事業コストダウン等に既成のテリトリーを侵食される傾向があると言われる。
このような状況については各銀行も企業の存続をかけ、下記のような様々な対応策を進めている。

フィンテックの導入

フィンテック利用では、ソニー銀行やジャパネット銀行に続き、大手都市銀行の三菱UFJフィナンシャルグループ(以下「MUFG」と略称)がクラウド利用に関し、市場調査やフィンテック対応システムをアマゾンのAWS(Amazon Web Service)と呼ばれるクラウドサービスで構築する見込みだ。

aws.amazon.com


同グループには、周辺系システムや社内OAシステムのクラウド移行を含めて、巨大な情報保護システムや事務管理のクラウド化や基幹系システムの移行には当面多くの障壁があると見られていた。
だが、同グループは9月にフィンテック等の利用で人員の3割程度を削減し、クリエイティブ業務担当への転換を目指すと表明している。

zuuonline.com

クラウドファンディング

「READY FOR」は、北海道銀行等の地銀などの融資等を検討中の企業に、クラウドファンディング活用、事業成長や販路拡大の支援等に加え、地方自治体等の非営利活動に対する支援業務も含むクラウドファンディングサービス提供の業務提携を行っている。

また、みずほFG(8411)は、昨年末にサイバーエージェント(4751)傘下企業とクラウドファンディングサービス「MAKUAKE」に関する連携を発表している。

www.makuake.com

海外展開

三井住友FG(8316)は「アジア・セントリック」として、アジアにおけるビジネス強化を最重要の経営課題とし、国際関連業務が長い国際派の銀行頭取を就任させ海外重視の成長戦略を描いている。
収益比率が50%近くと、国内より利ザヤが大きい海外へのシフトを進め、欧米に加えてアジア強化を目指す。

MUFGは、以前より海外企業買収など海外への投資を積極的に行っているが、マレーシアでの700億円の海外事業売却報道にもみられるように、事業効率を念頭に置いた柔軟な海外戦略を展開中だ。

internet.watch.impress.co.jp

独自仮想通貨の発行

同じくMUFGは、独自開発の利用者同士でやりとり可能なブロックチェーン技術を利用した仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験を始めた。
スマホ専用アプリによる送金などの限定的な機能から徐々に規模・機能を拡大して、国内全行員約3万人の利用可能とし、実証実験結果による改良後、2018年度中の一般向け発行を目指すという。
他陣営参加も可能な仕組みに設計しており、同様な構想を持つみずほFG等の合流などが実現すれば、普及にむけての弾みがつきそうだ。

ただ、これらのような取り組みがどこまで銀行の収益に結びつくかは未知数の部分も多いうえに、企業体力によってはこうした対応が難しい銀行もあるだろう。

今後、相場の流れの中で個別株式は上下の変動を繰り返すことになるが、結局は企業体力に応じた再編等によって中長期的に業績を伸ばすことのできる銀行は、さらに絞られてゆくこととなる可能性が高いのではないだろうか。

一方で、地方の融資業務については地元に根差した地方銀行に優位性が残り、景気回復拡大と金利上昇で地方銀行等は業績回復出来るという観測もある。
銀行業には様々な課題と期待が交錯しているが、新技術やネット利用の拡大等が業種全体の将来を脅かす状況は既に小売業等の売り上げ低迷にも表れているが、銀行業に上記の変化が与える経済への影響はさらに大きい。

多くの企業株式を保有し、子会社や人材派遣を含め様々な企業等の経営に大きな影響力を持つ銀行業の構造的な収益変化は、多くの経済波及効果を生む筈だ。
今後の銀行業界については、各種金融技術の進化と利用も含めてその業態の変化にも注目が必要であり、また株式市場等における銀行を含む金融関連の各企業についても価格や評価の内容について、同様に十分な吟味が必要となってくるだろう。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。