Money Clip

お金に関するニュースをクリップ!

【インバウンド消費動向】外国人観光客のコト消費はどこまで進むか

f:id:Money_Clip:20170920165751j:plain

インバウンド拡大の中、外国人観光客は買い物や単なる名所観光から、神社参拝や参加型田んぼ観光など日本独自の文化を求める「コト消費」観光にも広がり始めている。
インバウンド消費がこれからの日本経済に占める比重は増す一方と思われている。
日本特有のコト消費型観光が、こうしたインバウンド消費にどんな影響があるのかを考えてみたい。

インバウンド消費の現状

日本政府観光局(JNTO)によれば、今年7月の訪日外国人客数(推計値)は前年同月比約17%増の268万1500人だった。過去最高の今年4月を上回る新記録だ。

東アジアを中心に夏休みの旅行需要が高まり、航空路線開設や増便、クルーズ船寄港数の増加も追い風となり、累計訪日客数は約1644万人に達した。(4~6月期の旅行者数は約722万人、前年同期比約21%増加)

国・地域別の訪日客は、中国が最多の約78万人(7%増)、韓国が約44%増の約64万人で、中国、韓国、台湾、香港が単月では過去最高だった。
消費も堅調で、訪日外国人全体の旅行消費額は、今4~6月期の全体旅行消費額で1兆776億円と推計された。これは、前年同期比13.0%増加。上半期累計でも2兆456億円と昨年上半期(1兆8,839億円)に比べ8.6%増加だった。

主に韓国、香港などの訪日外国人旅行消費額が増加し全体を押し上げたが、非アジア系の観光利用も伸びている。下表は、訪日観光客のうちアジアで訪日客が増加している4国と主な欧米の国々の現状だ。

f:id:Money_Clip:20170920165854j:plain


アジア各国の伸びに加え、欧米各国の旅行者数がフランス以外軒並み二桁増加し、さらに支出単価の伸びがあって、英・伊・加3国の旅行支出額は5割近い伸びを示している。
欧米来日客の来日者数を上回る一人当たり旅行支出増が、欧米旅客の高い宿泊単価に加え、新たな観光支出、コト消費の増加を表しているのかも知れない。

vdata.nikkei.com

ユニークな外国人のコト消費型観光

ユニークな体験型観光

外国人の間で田んぼ観光が人気になっている。
農水省と観光庁との「農観連携の推進協定」から、観光事業者と連携したグリーン・ツーリズム、特産品開発、地域食や森林観光等の推進と「2020年訪日外国人旅行者2千万人」政策を踏まえ、農山漁村の魅力発信で訪日旅行者を誘致する、農家民泊や農業体験が全国的に広がっている。

岐阜県飛騨地方の古川市には、「飛騨の人々のありのままの暮らしを旅する」というユニークな里山巡回ツアー(2010年開始)がある。
自転車で移動しながら、農作業中の農家と交流し、専門ガイドが農村の風土・暮らしなどを説明(日・英)する。
通常の観光ツアーにはない体験だとのクチコミにより評判が広がり、当初は年間100人台だった外国人訪日客の参加者が急増し、古川街歩き等の新ツアーなども加わった都合数千人規模の参加者の7割近くが外国人だという。
一部に映画『君の名は。』の聖地巡礼旅行客もあるが、農業との触れ合い経験が人気を生んだ日本固有のコト体験企画と言えそうだ。

同じく飛騨地方の高山市は、高山祭等で全国的にも名高い人気観光地だが、外国人観光客(宿泊)が15%増の約42万人と過去最高となり、杉原千畝(迫害ユダヤ人援助の大使)記念館の八百津町に訪問イスラエル人が急増したのは当地固有のコト観光現象だ。
また、観光施設「飛騨の里」は開設後45年だが、重要文化財等11棟を含む伝統的な茅葺家屋、貴重な民具等の保存展示以外に、市民の希望でイベントやサークル活動が施設内で行われたことからコト体験も充実した。

炭焼き小屋など飛騨の伝統・慣習等に加え、施設内の丸い田んぼ(車田)での田植え・稲刈りの再現等、ユニークな伝統行事を実施している。高山を訪れる外国人観光客は高山祭山車展示館等の観光に加え、ネットで仕入れた情報などから、体験観光施設にも多数が足を延ばす。市では外国人旅行者に電動自転車を貸し出し、田んぼ観光の案内も行っている。
農業体験では、農業参加型ツアーの先駆的者秋田県仙北市で農家民宿への外国人旅行者が年間宿泊客数で1000人を突破し、日本人客も含めた農家民泊数は1万人を突破している。(仙北市は5年前から外国教育旅行誘致を始め、徐々に農家民宿利用者が増加している)

同様の取り組みが最近全国規模で急速に広がっている。
さらに一般企業も、NTTドコモ(9437)から、訪日外国人向けに「WOW!JAPAN」という、自然体験、農業体験、文芸・工芸体験、料理体験、街歩き体験の5分野を提供する日本文化体験プログラムが最近発表され、今後さらに同種取り組みの広がりも予想される。

wow-j.com

マニアックなコト観光

京都の四条河原町にある常設ギア専用劇場に外国人が多く来場しているという。
以前から外国人観光客の多い京都だが、その目的は名所旧跡観光から徐々に変わりつつあるようだ。
ギア‐GEAR‐は、ノンバーバル(言葉のない)パフォーマンスで、光や映像と連動したパントマイムやブレイクダンス、さらにジャグリング・マジックもある一切セリフを使わない演出の公演形態だ。
言葉の壁がなく外国人が受け入れやすいことに加え、日本文化特有の「和の調和」をテーマとしており、日本独自の目新しい体験を目指す外国人観光客に注目された様だ。
昭和3年建設のレトロな旧新聞社ビル内にある劇場というロケーションも含め、刺激的な公演にはユニークなコト消費を求める外国人が急増している。

maison-kyoto.com


また、単独民間団体主催で日本最大の屋内イベント、最新の「コミックマーケット92」にも、正式な統計はないが、海外参加者が急増している。主催者の分析では“オタク”の普遍化、関連インターネット情報と日本のコンテンツ流出で、海外のマニア層が拡大したこと等が原因だそうだ。(海外サークルからの参加者も急増し、海外からのアクセス比率も約8%とここ数年で急増している)
〔コミックマーケットとは、まんが・アニメ・ゲーム・周辺ジャンルの自費出版同人誌等の展示即売会で、約150企業出展のブースもある巨大イベントだ。コミケット・コミケの愛称を持ち、毎年、夏・冬に3日間開催し、今年暮れに第93回開催予定〕

コト消費の進化

これらの他にも、山梨県下吉田の五重塔と富士山が同時に鑑賞できる「新倉浅間山公園」はタイのSNSで人気が高まり、タイ人観光客が増加した。
行政サイドでは埼玉県秩父市の先進的なFacebook・Wi-Fi対応など様々なインバウンド誘致策による外国人観光客の取り組みも注目されているが、北海道ニセコ町のインバウンドは、外国人コト消費の未来的な形とも言われている。

ニセコ町では、パウダースノウを求める外国人スキー客が以前から多かったが、町の自然に魅せられたからリピーターが、付近のラフティング(尻別川)や周辺観光等に通年で来訪するようになり、ついには通年居住等の移住者が増加し、ニセコ町の外国人居住者は2%へ増大している。
こうした傾向は究極のインバウンド・外国人コト消費かも知れない。将来的に移民の増大・内需拡大にまでつながれば、新たな潮流にも言えよう。

この他にも、インドのアーユルヴェーダ体験の山岳リゾートや音楽ライブへの外国人来場者受け入れ拡大等、外国人観光客の新たなコト消費事例が多数ある。
こうした動きはインバウンドに限らず、日本の観光・旅行そのものに変革が生まれる兆しなのかも知れない。

これからのコト消費誘導と統合リゾート法に絡む観光立国

今後の外国人コト消費で忘れてはならないのが、統合リゾート法で可能になる新設カジノへの訪日客だ。
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」いわゆる統合リゾート法では、カジノ開設ばかりが話題になりカジノ法とまで言われたが、その本質は名称通り統合リゾート(IR)の推進にある。新法は、事業者が中核施設を一体的に運営し、カジノ収益を併設施設運営に還元することを想定している。

www.asahi.com


国際会議や展示会等の大規模イベント誘致や大規模ホテルでの滞在型観光も進め、観光地案内から交通や宿泊手配までワンストップの「日本型IR」をインバウンド拠点として消費効果を全国に波及させようという考えだ。
新法の目玉がカジノ解禁にあることは間違いないが、IRは外国人観光客の増加にも寄与するだろう。

カジノについても上述した外国人コト消費のトレンドを見ると、花札や壺振り、多様な伝統的富籤抽選など日本文化特有の賭博遊戯を上手に海外へアピールすれば、既存のカジノにはない魅力をもつユニークなカジノとして想定外の新たな観光ニーズが誕生するかもしれない。こうした特定複合観光施設の整備からは、観光産業などの国際競争⼒強化だけでなく、関連事業の就業増⼤や地域経済活性化も期待されている。

IRが成功すれば、拡大する外国人観光客のキャパシティに併せて、本稿で紹介してきたコト消費も量的・質的に拡大傾向を強めるだろう。この動きに関連する産業の裾野は広い。
ホテル、⼩売業、飲⾷店、旅⾏業はもちろん、建設・不動産、ゲーム・エンタ-テイメント業界等々、東京オリンピック後の新規事業として各種取り組みが活発化する可能性が高い。
株式市場でもオリンピック後の次期投資テーマに加え、統合リゾート法制定が関連法も含め各種規制緩和の動きにつながれば、海外投資家もその動きに注目することになるかも知れない。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。