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送電技術イノベーションで将来業績が伸びる企業はどこか

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山間部や海岸沿いに多く設置されている発電所から大消費地まで電気を届けるために、数百キロもの送電線が日本中に張り巡らされている。こうした長大な送電線を経由する間に、年間で原発5~6基分とも言われる「送電ロス」が発生している。
将来的に、発電コストの上昇とピーク時のひっ迫化が予想される電力事情から、こうした電力の無駄を少なくする方法が研究されている。その一つが、早期実用化が期待される超電導送電、そして将来の実現可能性が高くなってきた無線送電技術だ。
これらの技術進展の様子を紹介し、実用化で業績上昇が期待されそうな企業を探ってみた。

送電の仕組

発電所作られた電気は数千V(ボルト)から数万Vの電圧だが、電圧の二乗に反比例する送電ロスを考慮して、送電線では最大で50万V程度の高電圧に変圧所で昇圧して長距離送電し、工場や家庭向けに幾つかの変圧所で減圧して配電される仕組みだ。

停電回避のため、「同時同量の原則」という電力需要に合わせたリアルタイムの発電と送電の為、各電力会社は複雑な送電システムを運営しており、効率化のためのスマートグリッドや需要地での発電に特化したマイクログリッドなどの取り組みも進められている。

一方、電力ロスの解消に向け、財団法人電力中央研究所(電中研)では以前から超伝導ケーブルによる送電技術を研究していた。
ケーブルの構造は、導電線の周りを、外は常温で内部はマイナス200度の液体窒素で包み込み、曲がりやすいように加工した二本のステンレス管の中間を宇宙服と同じコーティングレベルで真空にし、熱遮断をする。
このケーブル内では抵抗のある銅線自体には電気が流れず、電気抵抗ゼロの超伝導体に電流が流れる仕組であり、原理的には送電ロスがゼロとなり飛躍的に送電効率が上がる仕組みだ。(実用化されれば現在の交流送電システムに比べ約90%も送電ロスが減少すると期待されている)

設置コストの問題もあって、現実には長距離送電を超電導送電に代替することはまだ難しいが、都市部の変電所から大口需要先までの送電に超電導送電を利用する方法は既に実証実験段階で、住友電工(5802)と電中研との共同実験が進んでおり、2020年の実用化を目指している。(この方法でも4割程度の送電ロス減少が可能と言われる)

長距離送電の課題

しかし、送電ロスの大きな割合を占める発電所から都市部への長距離送電には様々な課題がある。
全国の送電ネットワークは9電力会社に分散しており、東西の周波数違いもあって非効率な送電システムになっている。(東日本大震災の計画停電を機会に東西の周波数変換所の増設等の改善は進んでいる)
さらに、送電施設で利用する電力用ケーブルの設置に多大なコストがかかり、変圧施設では本体以外の冷却用放熱機器設備等も含め、経年劣化に伴う多額の設備更新費用が問題となっている。

また、都市部の送電網は大半が地中埋設であり、寿命は30年程度と言われている送電ケーブルだが、その外皮はポリエチレン製で水には強い反面、傷などの劣化が進むとケーブルが破損し最悪の場合には爆発する危険性もある。
このため、耐用年数に応じた逐次更新作業が必要だ。これには日本全体で毎年数千億円を費やしている。(以前は1兆円を越えていた)

これらの老朽設備を逐次更新しながら、その機会に効率向上も進めることが日本の送電システムの大きな課題と言われている。

無線送電の仕組み

これらの課題を一気に解決する方式として、無線送電が脚光を浴びている。
無線送電技術は既にモバイル機器のワイヤレス給電等で実用化済だ。

無線送電方式には「電磁誘導方式」「磁気共鳴方式」「マイクロ波方式」の3つがあり、このうち電磁誘導方式は可能伝送距離が短いので、スマートフォンや電動歯ブラシ等の充電には利用可能だが、大電力の送電には適さない。

磁気共鳴方式は、伝送距離が数メートルと電磁誘導よりは長いので、現在電気自動車への充電システム用の研究開発が推進されているが、やはり伝送距離の制約から長距離送電の代替手段にはならない。

唯一可能性を秘めているのが、電子レンジにも使われているマイクロ波を使う方式だ。
電気をマイクロ波に変換して送電するもので、ギガワットクラスの大電力の長距離送電が理論的には可能で、未来の大規模送電システムとして注目されている。
マイクロ波は、10㎝~0.1㎜波長の電磁波で、通信用電波として既に利用されている。その高い指向性と雨や雲を透過出来る特性から、遠隔地間の送受電にも適している。
ただし、マイクロ波方式による大電力の無線送電には、マイクロ波と電力の変換効率の向上や長距離送電の際のビーム制御技術の精度向上などが課題も残されている。

無線送電実現の可能性

JAXA(宇宙航空研究開発機構)等は、未来の発電システムとして軌道衛星に設置した太陽光発電所からの無線送電計画を研究している。

三菱重工業(7011)は2015年、宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System)の中核技術となる無線送電技術の地上実証試験を実施した。
海岸堤防に設置したパネル型送電ユニットから10kwのマイクロ波での無線送電で、500m先の受電ユニット側のLEDライト点灯に成功し、併せて送電ビームが受電ユニット外に放射されない制御システムの適用試験にでも、問題のないことが確認された。
この実験は、経済産業省の「平成24年度太陽光発電無線送受電技術の研究開発事業」の一環として実施したものだ。

しかし、宇宙太陽光発電には後述する莫大な衛星作成、打ち上げ費用だけでなく制御を含めた技術的課題や地上受電施設の建設やビーム制御等の課題が多く、実現は早くても30年程度先ではないかと言われている。

だが、この宇宙送電に先駆けて送電線敷設困難な地域への応用が検討されている。
無線電力伝送技術自体は、宇宙太陽光発電システム向けに限らず、地上の長距離無線送電にも利用可能な技術なため、これまで送電線の敷設が困難であった場所への送電や洋上風力発電から陸上への送電、電動車両の無線充電が期待されている。

例えば、最近発電実験が成功した海中発電や洋上風力発電に、海底ケーブル敷設の代わりに送電できるシステムが検討されている。陸地まで無線で送電すれば海底ケーブルが不要になり、大幅なコスト削減が期待できるので、無線送電の実用化が一歩近づく。
さらに、高圧線鉄塔の上部に設置されている赤い航空障害灯は高圧線を使えない為、別途低圧線を設置しているが、必要電力は10kw程度なので、数年以内に無線送電への代替が可能な見込みであり、設置コストや維持補修コストの削減が期待されている。

今後、無線送電性能の向上を見込んで災害等で送電線が切れた孤立集落に、無線送受電機器を搬入し、工事無しで電力復旧が可能なシステムも検討中だ。
ただし、現在の電波法には無線送電の規定がなく、実用化には対応する法整備も必要となる。

japanese.engadget.com

無線送電関連銘柄はどこか

ダイヘン(6622)は変圧器に強みを持ち、自動車や電車等への無線送電技術に関連した開発も行っている。〔同様な観点で、東芝(6502)TDK(6762)IHI(7013)昭和飛行機工業(7404)も注目企業〕
宇宙太陽光発電では、宇宙技術に強みを持つ三菱重工業(7011)が注目される。
また、愛知県での大口利用企業向け単距離超電導送電実証実験に参加した、保温鋼管のJFEスチール(5411)や高温超電導ケーブルを提供した住友電気工業、冷却装置のアイシン精機(7259)等も超電導送電実用化にあたっては注目を集めそうだ。

宇宙の夢が紡ぐエネルギー新時代

宇宙空間で太陽光から作り出した電力を電波で地球に送り届ける「宇宙太陽光発電」は、夢の新技術だが、実用化はかなり先だろう。
宇宙太陽光発電は、赤道上の静止軌道に2.5km四方の太陽電池パネルを持つ発電衛星を打ち上げ、100万kw(原発1基分相当)の発電計画が進んでいる。

発電衛星の太陽電池パネルは表裏両方を利用し、地上の太陽光発電と異なり24時間発電可能でもちろん天候の影響もない。
ただ、重量2万5千トンと想定される発電衛星の打ち上げコスト等が最大の課題だ。
部品を40トン程度に細分化して打ち上げる計画だが、40トンの打ち上げ能力を持つロケット自体がまだ開発されていない。

さらにこの場合の電力供給価格は、現状の打ち上げコストから試算すると1kwで1千円を越えるので、打ち上げコストの大幅削減も必要だ。
将来的には、天候に左右されない安定的な電源供給と無線送電による合理的な送電技術は、未来のエネルギー事情を根本から変える可能性があり、廃棄方法等の課題を抱える原子力発電所や景観を壊す送電線、送電鉄塔が不要になる時代も期待されている。

fanfun.jaxa.jp
参考:ワイヤレス給電普及まで関連銘柄の範囲拡大

日本ライトン(2703)戸田工業(4100)サイバネットシステム(4312)ダイフク(6383)日本精工(6471)日本精工(6471)東洋電機製造(6505)田淵電機(6624)ルネサスエレクトニクス(6723)エネエフ回路設計ブロック(6864)北川工業(6896)岡谷電機産業(6926)ローム(6963)ニチコン(6996)

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。