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コト消費とIOT利用の未来

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豪華寝台列車や長期間のクルーズなどの豪華旅行が人気だ。
高級レストラン等の会員権販売も好調で、利用システムも多様化している。
こうした傾向の中で、旅行業界の一部で進んでいるIOT組込み機器によるコト消費の進展から、進化するIOTとコト消費の未来を予測する。

IOTとは何か

IOTという言葉は、1999年に米MIT大の商品識別技術の研究から生まれ、英ケンブリッジ大と慶應大学との3大学共同の研究で、RFIDという電磁タグの標準化が行われた。
その後、いわゆる「スマート家電」に代表される通信接続器機能を持つ製品が登場したが、この段階では単に外出先からの問い合わせやレシピのダウンロードなど、いわばスマートフォンで可能な機能を家電製品に組込んだデバイスに過ぎなかった。

だがIOT製品本来の概念は、こうしたサービスにとどまらない双方向通信の有効利用による製品自体のコンセプト変化だ。
製品の部品交換時期や故障情報やメンテナンスの要不要等の情報のやり取りで、機器の寿命を延ばしたり、自動車等の消耗品交換時期通知で故障頻度を減らしたりもできる。
また、例えば冷蔵庫では食品の利用状況により、買い替えサイクルや家庭の好みなどをビッグデータとして食品製造企業にフィードバックすることも考えられる。
さらに全く新しい製品、例えば液晶画面等の数値表示部のない血圧計などが考えられている。

測定データをリアルタイムでかかりつけ医療機関に通知し、医療データとして利用可能で、もちろんスマホ等を経由して自己管理にも利用できる。(自分で記録する必要がない)
こうした改善は部品点数の減少にもなり、コスト低減や故障減少にもつながると期待されている。このIOTの商品への浸透は「コト消費」にも関連がありそうだ。

it.impressbm.co.jp

コト消費の人気

コト消費について、一般社団法人「コトマーケティング協会」では

【モノ消費】
「個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。
価値の客観化(定量化)が原則可能」
【コト消費】
「製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受したりするのみでなく、 個別の事象が連なった総体である【一連の体験】を対象とした消費活動のこと(平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書」からの引用文)」と示し、さらにコト消費は「モノへの欲求よりも、心を満たすことが大切になってくる。【モノよりココロ】が、コト消費の原点」と消費者の心の満足を強調している。


実際に、コト消費の傾向は物品の所有目的だけではない。
コンサートや行楽、趣味への没頭等で得た特別な体験あるいは時間に重点を置いて消費することが消費を行う基準になる。これは、高所得の単身者や団塊世代を中心とするシニア世代等の消費行動において顕著に表れている。

登山用具では、例えば1個1万円を越える軽量マグカップなど機能性だけではなく、快適さやデザインを含めた特別の価値を持つ用品がかなりの高額商品であっても中高年登山者を中心に良く売れている。
デパートでは、100万円以上の女性用高級ウォッチが女性管理職層に売れているという。

2000年代に設立された「六本木ヒルズクラブ」は、入会金等で約180万円、年会費約20万円でも、高級グルメを志向するIT系企業の若手幹部やクリエーター等で3千を越える会員数という。
同じく六本木近くの紹介制カラオケボックス「THE HOTEL JUBAN」は、優雅にカラオケを楽しめる様に、高級シャンパンなども揃えて人気だ。

豪華旅行やこれらのレジャー等に参加するために必要な安全や環境に係る支出、マイカーで旅行する際の省エネ重視の車種購入など、安心安全や環境・省エネ等には十分な支出をする傾向には、快適さだけではない価値観や満足感を重視するコト消費の特徴が良く現れている。

IOT実用化とコト消費の三要素

コト消費へのIOT組み込みが進む三条件として、5G通信の実現とAIの組み込み、そして半導体等のIOTコストの低下があげられている。

5G通信規格は現在標準化作業中で、早ければ2019年初めにも実現すると言われおり、高速・大容量で同時多端末接続機能に優れた規格が期待されている。

そして高品質のIOTに欠かせないのがAIの組み込みだ。過去のスマート家電とは全く違う、ユーザーフレンドリーな高機能実現には、高度なAIのコントロールが欠かせない。
これらを可能にしながら買い替え需要が進むためには、コストダウン特に大量に必要な半導体の価格低下が必須だ。
特に、IOT家電では2009年から行われたエコポイント制度で購入した家電の買い替え需要に向けて、IOT家電に誘導するための前提条件と言われる。この3条件が達成出来れば、デフレマインドを払拭する消費ブームが起こるかも知れない。

IOTの課題と旅行業界の取り組み

経済産業省は、外国人観光客が生体認証による本人確認をして、現金不要で買い物などができるシステム「おもてなしプラットフォーム」の実証実験を2016年10月から開始している。
こうしたIOTの実用化が特に進んでいるのはコト消費で注目の旅行業界だ。

空港では旅客や荷物の追跡に、航空会社では航空機メンテナンスやリアルタイムの状態確認に利用され、さらに実証実験の段階だがウェアラブル端末を活用した利用実験も行われている。

ホテルや旅館といった宿泊業界でもIOT化が進んでいる。
高齢経営者の旅館等では、IOT化による省力化が課題とされ、IOT導入による業務効率向上が期待されている。
これまでの宿泊業での利用は、宿泊客個々へのコンテンツ提供やキーレス・エント等の部分的なIOT活用が多く、システムとしてIOTの本来機能を利用できないホテルが多かった。
だが、老舗旅館「元湯陣屋」(大正7年創業。神奈川)は、独自開発のアプリ「陣屋コネクト」で、予約情報から顧客情報の管理・会計処理・勤怠管理・社内SNSまで旅館経営に必要なデータを一元管理している。
経営を引き継いだ旅館経験のない自動車技術者だった現社長が、技術経験を活かしてこのクラウド型ホテルシステムを導入し、他の事業者へも展開中だ。(既に全国180の旅館等で導入)

さらに先進的かつ包括的なホテル業のIOT取り組み事例もある。
「&AND HOSTEL」グループでは、博多店のIOT機器導入成功を受けて、「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH(浅草)」が、IOT統制・制御プラットフォームを改良し、IOT客室だけでなく、共有スペースにも多数のIOTデバイスを設置して開業した。
制御アプリでのデバイス操作に加え、浴室や洗濯機の利用状況をフロントで確認できるようにした。(主な機能は下記の通り)

  • スマートフォン客室キー、
  • TV、エアコン等の家電を制御
  • シャワールームや共用洗濯機の空き確認、予約
  • 日の出連動カーテン開閉機能
  • 快適入眠用ナイトモード機能
  • 客室内の温度/湿度を感知したアラート


ホテルのコンセプトは「ちょっと先のIOTのある暮らし」がテーマで、IOT体験を売りにしている。
デバイスとして、ネットワーク接続型高機能学習リモコン、SONY製タグ端末やカーテン操作機器等を導入し、利用データのフィードバックの仕組みを細かく組み込んだ。

それでも各室に導入したIOT機材費用が10万円以下で収まったのは、専用開発機器ではなく既存の機器を活用したからだそうだ。
これらの機能を個別のサービスとして設置したホテルはあったが、すべてを専用アプリで統合したのがこのホテルの特徴だ。(世界的にも類例が少ない)

こうした近未来の高品質デジタルライフが堪能できると、一部ユーザーには新しい体験のできるホテルとして人気が高い。
顧客サービスと共に、IOTの重要な機能である各デバイスのユーザーデータを集め、マーケティング機能を担う拠点としてホテルを活用できる試みとしても注目される。

最近、企業やメディアから多くの問い合わせも増え、今後システムを他社にも提供の方針だという。(すでに、カプセルホテル「安心お宿プレミア新橋汐留店」へのカスタマイズ提供実績がある)

andhostel.jp


このホテルでは、今後「量的な拡大や施設の差別化」より「体験のアップデート」が重要と考え、今後も新製品を積極的に導入する予定計画で、九州大学・東北大学とのコンソーシアムで未開発の技術要素も視野に入れている。
将来構想では、「おもてなし」に「バイリンガルスタッフ+コミニュケーションラウンジでの出会い」「未知との体験」等の側面を加えるため、開発予定の先進IOT機器がさらに重視されそうだ。

IOT利用の旅館業での「おもてなし」の例としては、「Touch&Pay」も注目されている。
「Touch&Pay」は実証事業として、2020年までに訪日外国人の属性情報・行動履歴等の活用を可能にするプラットフォームを構築し、旅行サービス事業者が入手した情報を活用した高度なサービスを提供する環境を整備するものだ。

具体的には、訪日外国人の生体認証による本人確認や決済等に加え、日本人旅行者や観光客をもてなす側の事業者と観光政策を立案する行政・観光関連団体などの関係者が抱える問題点の解消を可能とする。
生体認証サービスでは、日本円での買い物を指タッチで済ませるストレスフリーな買い物が楽しめる。

一方で、事業者は訪日外国人の属性情報・行動履歴などのデータを貯蓄し、ビッグデータとしてマーケティングに活用できる。
実証実験は、箱根など神奈川県や三重県の4地域で試験運用を開始しており、今後は大阪や九州での実証も進め、順次全国への普及を進める予定という。(2020年本格稼働予定)
この「Touch&Pay」技術は国内のテーマパークや大手ホテル等でもすでに導入されており、より快適で上質な旅行サービスの進化に向けてシステムの改善も進行している。

今後のIOT機器の方向性

IOT化は様々な分野でも進み始めている。
NTTコミュニケーションズでは、着衣型デバイス「hitoe」を使用した体調管理を目的とした実験で、野外作業員の熱中症対策を研究している。

IOTデバイスで取得した心拍数や心拍間隔のデータを収集・分析の結果、作業ごとの身体的ストレスや気候が体に与える影響、心拍数と熱中症の関連性が判明した。
また、空港スタッフへ遅延や欠航情報をリアルタイムで伝達する、スマートウォッチで位置情報を受信できる「Beacon」の活用実験も行われている。
スタッフの現在地をコントロールデスクで把握し、適切に必要な人員配置ができるという実験内容だ。
これまでは、スタッフの位置確認はトランシーバーで行っており、IOT化でより短時間で的確な指示が出せるという。

IOTがつくる未来のコト消費

IOT対応機器は、2020年に世界で500億台になると予想されている。
実は、5G回線があっても世界全体のインターネット通信の処理能力から、これが上限台数だとも言われている。特に、旅行先等の通信環境によっては、トラフィック障害等で折角のIOT機器の能力が十分発揮出来ない可能性もありそうだ。

これを解決する方法の一つが、AIの進化だと思われる。
要求されたタスク内容によっては、AIが機器に蓄えたルーチン処理で対応出来ればクラウドにアクセスする必要はない。
AIが旅行先の通信状況等を勘案して、観光案内関連データを事前ダウンロードしたり、認証や決済情報等を事前に取得し実行したりするには、高度なAIと対応ソフトウェアが必要になりそうだ。(IOTの課題とされる個人データの利用認証も、個人AIの事前登録や承認等が突破口になるかも知れない)

コト消費に結びつきそうな多くのIOT利用の多くが未だ実験段階だが、今後数年のうちに飛躍的に進み、2020年には多くの試みが実現しそうな状況になっている。
増加傾向の外国人旅行者需要も含め、旅行業での快適で高品質のコト消費がIOTの利用によりさらに進展する状況になれば、同様な取り組みが他の様々な分野で進んでいく可能性も高いだろう。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。