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【コンビニ業界の戦略】ファミリーマートの攻めの経営は成功するか

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大手コンビニの競争が激烈だ。
最大手「セブン‐イレブン・ジャパン」(以下「セブンイレブン」と略記)は、沖縄県への出店で、遅れていた全国展開完了となり、2万店近い国内1位の店舗数となっている。
三菱グループ傘下の「ローソン」は巨大グループの支援も受け「ナチュラルローソン」等の多彩な店舗形態を展開し、セブンイレブンを追撃の構えだ。そして、サンクスと統合して店舗・売上規模で国内2位が見込まれる「ファミリーマート」は、この統合を新戦略の決め手にやはりコンビニトップを目指している。
競争が激化するコンビニ業界の今後を考えてみた。

小売業界でコンビニの占める位置

コンビニ業界は小売業全体でも主要な業態となっている。
昨年度2016年の既存店ベースでの主要コンビニエンスストア売上高は2年連続で拡大して、9兆6千億円超となり、スーパーマーケット業に次ぐ規模の小売業界となっている。(全店ベースでは10兆6千億円弱。百貨店は6兆円割れ)

年間来店客数自体は160億人弱と微減だったが、客当たりの平均購入額が1%近く増加したことが売り上げ増につながった。 
スーパー等に比べ、ニーズ把握が早く商品展開の早い独自商品の開発・販売や機敏な立地戦略実施による更なる利便性向上が利用者の支持を得ており、コンビニの小売業における位置は増々重要性を増している。

東日本大震災以降、震災時の早い復旧と災害対策は、結果としてコンビニによる被災地の支援活動となり地域におけるコンビニの役割が一層高まった。
地域に不可欠な業態としてのコンビニの価値の認識が、その後全国的にも広まっているようだ。
今後は災害支援に加え、人口減少社会、高齢化への対応、ネット中心の社会におけるコミュニティセンター等をコンビニが主導し、社会的貢献も含む地域活動も期待されている。
〔ファミリーマートの場合、約300店が被災店舗となった東北、北関東地域で、スタッフ不足補充等のため2ヶ月半で延べ約1千人の本部社員を派遣し、宿泊旅費は1億円を超えたという〕

国内5万店時代のコンビニ戦略

国内コンビニ業界は1974年のセブンイレブン1号店開店以来、24時間等の長時間営業、多彩な品ぞろえ(ワンストップ・ショッピング)に高利便性、消費者ニーズを意識した新製品開発、そしてフランチャイズ・システムによる大量出店と高効率の人件費率により、成長を続けている。

2009年に初めて販売額で百貨店を上回り、その後も百貨店との差を広げてスーパーに次ぐ小売業の枢要業態となっている。
コンビニ業界は、この「国内5万店舗の時代」をどう乗り切ろうとしているのだろうか。

1. セブンイレブン

セブンイレブンは、改めて「近くて便利」を打ち出し、新規客層の開拓で競争激化の国内5万店時代を乗り切ろうとしている。
セブン&アイグループの共通PB商品「セブンプレミアム」は人気が高く、特に“金の~”を商品名にした独自開発のセブンゴールドシリーズは、女性・中高年層のニーズに応じた惣菜として売り上げも好調であり、これにコーヒーやドーナッツ等やはり独自開発の店内調理商品等の充実が好調な業績を支えている。(2010年以降、セブンイレブンの惣菜等デイリー商品は前年比プラス)
「地域社会に信頼される」企業理念の下、高い1店舗当たり売り上げを武器に、今後も積極的で、独自色のある商品開発が続きそうだ。

2. ローソン

業界2位の売上規模(2016年度)のローソンも、女性や中高年層の取り込みが成長に必要と考える点では同様だ。
20を越える多彩なローソンブランドの店舗展開に加え、PB商品開発では中高年層、女性層取り込みのために「野菜」を差別化の柱としている。
スーパー代わりのコンビニ店舗利用転換を狙い、そのための必需品である「野菜」を、従来の袋詰めカット野菜だけでなく、全国のローソンファーム栽培生野菜の販売を一部店舗で開始している。

さらに独自取組みとして、従来の店員が手作業で入力するデータを会員システム「ポンタ」(利用者はローソン全体の売上比率で5割弱に達している)利用に代え、住所・年齢等のデータにより、どのような客層が買ったのか、その場所・時間・商品傾向の素早い分析が可能になり、店舗レイアウトや新規出店立地等設計、顧客に受け入れられるPB製品に絞った開発するなどに利用されている。新製品がロングセラーヒットとなりうるかも、ポンタデータで判断できる。
ローソンは、三菱商事等のグループ会社の総合力も生かしながら、さらに効率的な商品開発を進めるだろう。

ファミリーマートは統合後、どう変わるか

こうした売上高上位2社(2016年度)の戦略に対し、ファミリーマートは国内コンビニ売上4位のサンクス等を傘下に持つユニーグループ・HD(小売業で国内3位)と昨年9月に合併し、コンビニの屋号はファミリーマートに統一された。(統合後の社名はユニー・ファミリーマートHD)
この結果、ファミリーマートのコンビニ店数は東海中心の「ココストア」、九州の「エブリワン」との統合も含め、国内2位の規模となり統合後のコンビニ売上高もローソンを越え、セブンイレブンに迫る見込みだ。

ファミリーマートは、経営統合半年後に中食商品をはじめとする、サンクス商品との統合を完了した。
サンクス店のブランド転換も2017年5月末時点で約1600店の転換を完了し、同年6月には物流拠点の統合完了などかなりのスピードで統合が進んでおり、効率配送による物流コストの削減も期待される。
また、総合工場から米飯専門工場、チルド専門工場など温度帯別工場生産へ順次移行し、製造アイテム総数の削減を図る等、サプライチェーン全体の構造改革によって、中食商品等の品質向上と製造効率上昇を図っている。

www.fu-hd.com

ファミリーマートの社長巡回

ファミリーマートの澤田貴司社長は、就任時に「お客様や加盟店のオーナーの為なら何でもやります」と表明し注目を集め、その後実際に各店舗を訪問する様子が複数のメディアで紹介された。
社長自らレジ打ちや接客研修や筆記試験を受け、精力的に各店舗を回りながらスタッフとの交流風景も放映された。「レジ打ちが下手で・・・、難しかった」との自らの感想を基に、複雑化したレジ業務の簡素化・改善が実施された。

ファミリーマートに限らず一般にコンビニ本部と加盟店の関係は、フランチャイズ(FC)契約が大半だ。
キャンペーンなどでは、売り上げのレイアウト変更等の作業も伴うため、巡回指導員は店舗の売場変更を手伝うこともあり、考えている以上に本部サポートによるとこうしたFC店舗との関係は重要なファクターとなっている。
社長自ら率先して取り組むFC店舗重視の姿勢も統合後の新しい動きかも知れない。

ファミリーマートのイートイン戦略

さらに注目したい戦略が、イートインコーナーの充実だ。
売り場面積の拡張が限定されたる中での販売効率化を競ってきたコンビニだが、大手3社の中でファミリーマートは現場の要請等もあり、積極的に集客ツールとしてのイートインスペースを重視した店づくりを展開し始めた。
同社は、購入した弁当や飲料を店内で飲食する「イートイン」スペースを3年で2倍の6000店に増やし、昼はシニアや家族客、夜は外食店代わりに使う会社員の需要を見込むと発表している。

コンビニエンスストアは、これまで限られた売り場で売れ筋商品をどう効率よく扱うかを競ってきたが、「ファミリーマートは一定の場所を取っても集客機能を重視した店づくりにビジネスモデルの軸足を移す」と報道された。(日本経済新聞)
東京等の大都市部では、2階建て等で別フロアを造り、専用イートインスペースの店舗も強化、「地域のコミュニティスペースとして利用いただきたい」とファミリー層からシニア層まで幅広い年代の集客や地域のつながりや一体感をサポートするという目的を公表している。

同社は従来から高齢、女性の社会進出・単身世帯の増等の時代を背景に、幅広い世代利用可能な休憩スペース需要が生まれると予想していたが、イートインコーナーの設置展開には予想を超える反響があり、地域のカルチャースクールや行政からの情報発信スペース等に利用される店舗も増加傾向だ。
広さや内装、コンセントの設置等工夫を凝らしたイートインコーナーは好評で、「ついで買い」の売り上げ相乗効果が期待されている。

上述のサンクスからの店舗転換には、1店舗当たり1000万円規模の異例な高額改装費用を投入し、転換対象全店舗にイートインコーナーを設置するといった積極的な取り組みが見える「攻めの姿勢」だ。

www.asahi.com

コンビニの未来はどこに向かうか?

コンビニは将来どんな方向に進化するのだろうか?
各社ともに、独自開発品の高品質化と品揃え強化に取り組みながら、セブンイレブンは「セブンイレブンKIOSK」等、鉄道内売店との連携で一層の経営店舗増を図るとともに、定評のある商品開発による差別化を進めようとしている。

ローソンは、会員データの顧客囲い込みとデータ活用と多彩な店舗展開で、多様なニーズへの対応に注力する。
これらに対し、ファミリーマートの中心戦略は顧客満足度向上の様な気がする。
イートインコーナー増設は既に一定の成果を上げている様だが、今後の展開によってコンビニ本来の持ち味である利便性の向上をさらに進め、売り上げ競争での優位性を狙っているのではないだろうか?

チェーン店系列の再編も一段落し、国内人口減少下の出店増には限界がある中、これからのコンビニ業界は独自商品開発の継続、海外展開拡大、営業時間の見直し・人件費抑制に加え、フィットネスジムやガソリンスタンド併設など業態の拡大も話題になっている。
このような状況下で、コンビニ各社の今後の戦略がどのように業績向上に結び付くか、非常に興味深い。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。