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ドル安、円安、ユーロ高傾向の先にあるもの

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ドル弱含みの中、ユーロは各通貨に対しで強い動きを示しているが、日本円については国内政治情勢も絡んだ、やや方向感のつかみづらい動きが続いている。
様々な要因で変動する、これら主軸3通貨の今後の動きと相場を左右する要因について、ユーロ圏の現状と今後のユーロ相場動向を中心に探ってみた。

最近の為替動向

2017年8月第1週発表の米雇用統計は久々に連続での改善傾向を示した。
失業率、平均賃金も堅調な動きを示し、ドル安傾向が続いていた為替相場に短期的な巻き戻しの動きがありそうだ。

しかし、ドル弱含みの大きな原因となっているトランプ政権の混乱には一層拍車がかかっている。
ロシア疑惑をめぐる特別検察官は事実関係を審理する大陪審を選定し、捜査が進んでいる。
トランプ政権内部では広報部長を巡る混乱で、政権の亀裂が改めて浮き彫りにされた。
「週替わりで大統領への影響力を持つ人物が変わる」と言われるトランプ政権の揺らぎと、議会との調和困難が中期的な為替相場にも引き続き影響を与えるものと思われる。

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日本国内は、安倍一強政権に陰りが見え始めたとはいえ、政治的混乱が直ちに起きる状況ではなく、好調な企業決算と金融緩和路線も(いずれ出口議論は開始されるとはいえ)継続中で、経済の大きな波乱要因には当面なりそうもない。

一方、いよいよ開始されるECBの出口戦略議論と独仏の連携と政治的安定が期待されてユーロ先高観が根強い。
しかし上図に見られるように、リーマンショック以降の2009年からはほぼ同傾向で推移している3通貨のバランス自体は、米政権等の不透明要素消化までは地政学リスクによる波乱要素をはらみつつ、大勢としては大きく変わらない状況が当面は続きそうだ。
ただし、海外投資家は日本の政治リスクをかなり警戒している模様で、円相場に今後も予想外の急激な変動がある可能性は残っているが、今回の円高局面は結局110円割れが一時的であったこととチャート的にも下値が切りあがる傾向があることから、110円を大幅に下回る更なる円高には一定の抵抗力がありそうだ。

ユーロ経済の今後

ユーロすなわちEU経済最大の不安材料は、これからもブレグジットに続く国が続々と出ることだろう。
既に英国経済は悪化の兆しが出ているが、ブレグジット前に予想されたほどの悪化ではなく、一見EU離脱の経済的デメリットは小さく見える。

これを見て、EU単一市場から離れても移民流入を抑制したい離脱派が力を得て、英国に続くEU離脱の動きが強まる国が生じる可能性は否定できない。とは言うものの、こうした動きがそのままEU解体の始まりにつながるとは言えないだろう。
EUの中心を担ってきた独仏2カ国が、統合の理念を共有して個々の問題では対立しながらも協調してEUを支えている構図が続きそうだからだ。
仮に、独仏以外のいくつかの国がEU離脱を決めたとしても、EU経済圏にとどまる経済的メリットも少なくなく、影響の大きな国を含む大規模な離脱ドミノは起こらず、引き続きEU経済圏とユーロの基本的な価値は維持されそうだ。

仏大統領選後のフランスの動きは、国民議会選挙でマクロン大統領が率いる新党「共和国前進」が圧勝し、欧州統合推進論者の大統領の政治体制は確立されたことで、EU支持勢力が力を得ている。
また、どうやらドイツでも反EU勢力は以前ほどの勢いを失い、極右政党の勢力拡大は止まってメルケル首相率の基盤は当面安定するとみられる。

もう一大きな要素が、経済の「ドイツ一人勝ち」経済的な加盟国とドイツとの格差について、ようやくドイツ国内でも警戒感が浮上していることだ。輸出主導から、内需成長と貿易黒の圧縮をドイツが進めれば、EU域内の格差も縮小の方向に向かいそうだ。
マクロン大統領は、EUを主導した伝統的なフランスの理念を継承し、EU改革を進める意思を持っている。

EU予算と執行、EU債などによるEU統合の深化構想などで、一貫して経済政策でフランスと対立していたドイツだが、今後EU分裂危機の瀬戸際を体感したメルケル首相が若く政治経験の少ないマクロン大統領の主張にどこまで同調するかが、将来的なEUとユーロの動向を読み解くカギになりそうだ。今後の関連する動きには注目したい。

www.newsweekjapan.jp

ユーロ高ドル安(円安)の背景

現在のユーロ高には、背景に欧州全体の景気回復と失業率の改善傾向がある。
もちろん今回のユーロ高の契機は、ECB(欧州中央銀行)のテーパリング(量的緩和縮小)の開始議論だったが、ユーロ/ドルで為替レートの推移をみると、2008年の1.6ドル台から2012年には100ドル割れまで下落し、反転上昇後も2015年戻り高値から再び下落し、2016年には一時1ドル割れ寸前までのユーロ安となった。

ただ、この時点を直近の底値として、1.1ドル台のもみ合いから上昇に向かい、半値戻しの水準である1.3ドルへ向かうユーロ高予想も最近出てきた。
どうやら、ドイツの大幅な貿易黒字を演出してきたユーロ安はすでに終わったようだ。

ユ-ロ/ドルレートの推移(1999年1月-2017年1月)
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外国為替市場の取引高では、このユーロ/ドル通貨ペアの売買シェアは最大のシェアを持ち、ユーロ高が進むとドルの全面安傾向を生みやすい。
しかも、現状ではトランプ大統領のインフラ投資政策や減税等の政策期待が急速に低下し、オバマケア法案を含む議会との対立や政権内部の亀裂で米国経済の将来への期待にブレーキをかけている。

おそらく、この米国政治リスクが公定レートの引き上げにも関わらず、長期債金利が低水準で低迷を続ける一つの理由だろう。
しかし、こうした流れが、ドル/円相場にはそのまま反映されていない。
これは、上述した様に日本政治の混乱、アベノミクスの崩壊を警戒する動きとの関連だという分析が多い。

www.bloomberg.co.jp

今後のユーロ相場の見通し

ユーロ圏の経済は、開始こそ日米に遅れたが2013年から5年間、GDP値ベースでの景気拡大が続いている。それまでのユーロ危機を招いた銀行不安等は、いわゆる「ドラギマジック」によって収束傾向にある。
特に大きな効果を上げたのが銀行等への長期資金提供である「LTRO」期間を3年間に延ばし、大量の資金供給により銀行破綻懸念を払拭したことだろう。

さらにドラギ総裁のECBは、ギリシャ等信用度の低い国家のデフォルト防止策として、「OMT(無制限国債購入措置)」制度を有名な「ユーロを守るためには何でもする」という発言とともに導入し、市場の不安感を一掃した。
現在のユーロ圏経済は、金融政策の成功と順当な雇用回復を受け、消費拡大効果による景気拡大期にある様だ。

雇用改善は幅広い分野に及んでおり、ヘルスケア分野や流通など新たな需要に伴う雇用、英国からの工場移転に伴う新規雇用等もあり、当面は堅調に推移するとみられている。
ユーロ圏のインフレ率は、高くはないものの資源価格の上昇を受けて、1%台前半で推移しており、一時2%に迫る場面もあった。
ただし、先進諸国共通の「雇用堅調でも賃金が伸びない」悩みはユーロも同様だ。
ドイツ以外の諸国は、雇用自体はまだ完全雇用には程遠く、その結果圏内の実質賃金の伸びが低いため、インフレ率の上昇圧力は低い。
しかし上述したようなその他の要素から、いずれECBの超金融緩和政策は早晩出口に向かうとみられている。

ゼロ金利政策の見直しはまだ少し先と思われるが、2017年秋口予定のテーパリング方針検討開始とその結果の「実施開始予定」の発表は、一段のユーロ押上げ要因となる見込みだ。
ユーロの不安要素として残るのは政治問題だが、やはり秋口のドイツ総選挙時点になっても極右政党「AFD(ドイツのための選択肢)」の支持率低下傾向が続いていれば、メルケル首相の政権与党は安泰で、比較安定で選好されるユーロの人気は継続しそうだ。

世界的な資金余剰が一部新興国通貨に向かう動きはあるが、最近のスイスフラン/ユーロの動き(スイスフラン安)を見ても、相対的に取引シェアの高い通貨であるユーロは当分の間、ドル及び円に対し相対的優位を保つ可能性が高いと思っている。
その場合、米国経済の極端な落ち込みがない限り、輸出中心の日本経済については2018年以降も日欧EPA締結の追い風も受けて、引き続き拡大傾向が続くと(期待も込めてだが)予想したい。

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。