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バイオ銘柄の未来を考える

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ライフサイエンス分野は、1996年から開始された政府の科学技術基本計画内等で成長産業の位置付けを得ており、将来の成長が期待される分野だ。
こうした時代を背景に、2002年のアンジェスMG(4563)の上場(マザーズ)の頃から、医薬品を中心に「バイオベンチャー」とも呼ばれるライフサイエンス分野で起業した会社のマザーズ市場等への上場が続いている。
こうした現状を、いくつかの企業事例を例にとり、企業や分野の成長可能性探ってみたい。

創薬系のバイオ銘柄とは

マザーズをはじめとした新興市場には、いわゆる「創薬系」のバイオ企業の上場が多い。
ではこの創薬企業とはどのような特徴があるのか?
一般に医薬品は、研究開始から治験を経て、医薬品としての承認取得まで最短でも10年程度の期間が必要で、中には20年近い開発期間のケースもある。
しかも、研究から実用に至る確率は非常に低く(3万分の1程度とも言われる)、試薬あたりの開発費用は(失敗した研究費用も含めると)1000億円規模と言われる。

この様に創薬には多額の費用と長期間が必要で、結果として十分な収益計上開始までの期間も相当長期にわたる。そのため、創薬ベンチャー企業には上場時点では販売製品が無く(大半が開発途上)売り上げがないかゼロに近い場合も多い。
この様な事情から、創薬系企業は、開発中の新薬の独占販売権を他社(大手製薬会社等)と売却契約締結し、一時金や以降の研究費用(開発資金=マイルストーン)を得て、収益計上しているケースもある。(マイルストーン収入は開発の進捗度合いにより大きく変動し、会計年度によっての大きな業績変動を生むこともある)

この様な新薬開発期間の長さと研究継続に高額投資が必要な創薬ベンチャー(成功保証がない開発段階の製造ラインを事業の主とする企業)は「リスクが高い」投資対象企業の範疇に入っているが、その開発過程によって、そのリスク度合いは多様だ。

創薬企業のリスク(リスクの解釈について)

まず、リスクについて少し触れたい。
一般に「リスク」は「危険」と訳され、リスクをとる=投機に似た危険性と理解されやすいが、本来的な英語のニュアンスは、リスクは危険というよりも警戒度あるいは用心深さの必要性を意味する。
本稿の「リスク」とは、投資対象の選別にあたって、どのような要因に注意し、警戒・用心することを指す。

前述した様に、創薬プロセスは非常に長いので、企業の創薬プロジェクト(パイプラインと呼ばれる)の開始から販売開始までは、成功見込の高い医薬品開発でも、これらの企業は外資を含む大手製薬会社と契約し、一定の開発進捗が見込まれた段階で収入(マイルストーン)計上するケースと開発成果を売却し、販売開始後の収入(ロイヤリティ)を得るビジネスモデルが一般的なので、この取り組みに注目すれば、ベンチャー企業のリスク(注意度)がある程度予測できる。
こうした注意点を充分に“警戒・用心”しながら(できる限りの分散投資で)投資を行えば、損失を抑制しつつ、一定のリターンを期待できるだろう。

注目バイオ企業

末尾にあげたように、2000年代に入り数多くのバイオ関連企業が新規上場している。
その中のいくつかの注目企業について創薬に関する企業の取り組みや将来可能性も含め、いくつか創薬系バイ オベンチャー企業を紹介したい。

1. テラ(2191)

最近がんの治療法として、患部切除・放射線・抗がん剤に続く免疫療法が注目されている。
テラは、この免疫療法による樹状細胞ワクチンの開発を行っている。

樹状細胞はがん細胞を認識し、リンパ球のT細胞へ伝達する役割があり、攻撃すべきがんの目印を免疫細胞に伝えて、がん細胞への攻撃を効率的に進める樹状細胞ワクチンの「バクセル」が、薬事承認取得後の速やかな保険適用を目指し、提携する和歌山県立医科大学と治験を開始している。(すい臓がんの標準治療が出来ない患者に対する有効性や安全性を確認する臨床試験)

2022年の承認を目指すバクセル(ワクチン)は患者本人の細胞で作製するため、抗がん剤のような副作用が少ないことが期待されている。
治験中の現状では、治療実例が少なく治験終了時期や有効性が十分に確認できていないが、仮に難治性膵臓がんへの高い有効性が実証できれば、テラの株価は大きく反応すると思われる。
さらに、その実証過程において免疫治療自体の広範な有用性が確認できた場合、技術応用可能な治療対象が急拡大する可能性があり注目される。

www.tella.jp

2. 免疫生物研究所(4570)

免疫生物研究所は、研究用試薬の開発・製造・販売等に加え、カイコを用いたタンパク質生産の開発・製造及び販売を行い、化粧品販売も行っている。最近、アステラス製薬等との共同研究開発で、この遺伝子組み換えカイコ需要が急増し、こうした疾病研究用診断薬・原料の遺伝子組み換えカイコも伸びている。

安全性が問題とされる遺伝子組み換え技術だが、その中でも最も問題視されているのが実施場所外への伝搬による組み換え作物等による環境汚染だ。
だが、同社によると主力商品のカイコは、工場内の特定の桑でなければ繁殖が不可能で域外への生物汚染伝搬の心配がないという。
このカイコの様に域外汚染の心配のない生態系が他の遺伝子組み換え技術に展開出来れば、医療目的以外の多くの遺伝子組み換え製品の収益性向上や製品展開が広がることになり、現状ではその可能性は未知数だが医薬以外にも期待したい技術である。

ibl-japan.co.jp/

3. ヘリオス(4593)

IPS細胞利用技術で注目されるのが、ヘリオスだ。
ヘリオスは、2014年に世界で初めて人口多能性幹細胞(IPS細胞)利用の再生医療手術を行った理化学研究所(理研)の髙橋博士が主導した日本網膜研究所から、理研初のベンチャー認定を受けて社名変更し、東証マザーズに上場した会社だ。

ヘリオスの社長は、もと大学病院の眼科臨床医で眼科手術用補助剤製造の創薬系ベンチャー起業家だったが、加齢黄斑変性の根治療法開発も大きな目標としていた。
そのため、髙橋博士との開発会社設立や大日本住友製薬との共同開発契約を結んだ。

ヘリオスが作成を進める加齢黄斑変性治療薬は、一般に臨床研究で使用する様なシート化は不要で、生成したIPS細胞のまま注射液と混ぜて患部に直接注入する懸濁液(浮遊液)という形態でIPS細胞は他人の細胞由来のものが利用できる。
この方法により、製造技術やコストのハードルが大幅に下がるため実用性が高い。(類似した方法は、心臓病治療等でも開発が進められ技術的な開発速度の加速が期待できる。これまでのIPS細胞の治療応用には、自己細胞からの培養と正常細胞生産性の低さに起因する莫大な治療コストが問題だったが、こうした製造方法が確立された場合には世界各地の多方面で進められているIPS細胞利用の治療法が、一段と実用化に近づきそうだ)

この加齢黄斑変性は希少疾病の対象なので、大規模臨床試験が不要で製造コストが低いので投資規模が比較的小さい。
また、横浜市立大学との共同研究では、網膜色素上皮の様なバラバラの細胞から立体的な臓器(肺、肝臓、腎臓、膵臓等)細胞の数がケタ違いに多い再生医療実現技術の開発を始めている。成功までは、まだかなりの時日がかかりそうだが、こうした技術開発のめどがついた場合のヘリオスの評価は非常に高くなるものと思われる。(内容の一部は「会社四季報ONLINE」を参照)

www.healios.co.jp

4. ソレイジア・ファーマ

ソレイジア・ファーマは、がん化学療法および放射線治療法によるがん治療薬等の開発・販売を行う企業だが、その技術を生かし、2017年7月に癌化学療法による口内炎疼痛緩和剤の「エピシル口腔溶液」の国内承認を取得し、事業化のプロセスに入った。

同社は中国での事業展開等アジアにおいて他社から導入した開発品を受け継ぎ、自社で承認を取得し、販売を行う他のバイオベンチャーには珍しいユニークなビジネスモデルを持つ。
この「エピシル」もスウェーデンのカミュラス社の技術を利用し、ソレイジア・ファーマが日本と中国での独占開発販売権を取得したものだ。

がん治療による口内炎に伴う疼痛緩和には有効な対処法がなく、新たな対処法が求められていた。(抗がん剤による口内炎の発現頻度は、治療法により30~100%)
画期的な新薬が、こうしたビジネスモデルにより成功することは、同社の業績の飛躍的な発展につながる可能性を秘めている。

www.solasia.co.jp


紹介したバイオ企業の事業取り組みには、開発中の新技術や新製品に、その製品とは異なる分野等への発展可能性を持ち、内容も実現可能性も未定だが、未来の成長企業となる期待を感じさせる。
紹介した企業以外にも、炎症性疾患の治療薬の開発で共同開発を行う「そーせい」と「ペプチドリーム」等多くの注目企業があるのだが、既にいくつかの材料には注目度が高くなっており、株価にもかなり織り込まれている企業も多いので、ここでは割愛したい。

だが、下表にあげた多くの上場企業のほとんどに、何らかの未確定の期待材料があり、開発等が成功した場合の収益反映はある程度見込まれるだろう。
ただし、見込まれた事業進展が失速や失敗すれば逆の結果になる危険性もあるので、一般的なベンチャー企業以上にそのリスクには注意が必要だろう。
創薬ベンチャーやバイオ企業に限らないことだが、投資対象企業の中長期的な成長性を予測することが最も重要だと思われる。

参考:最近のバイオ関係上場銘柄

2002年~2009年上場:10社

アンジェスMG(4563)メディネット(2370)オンコセラピー・サイエンス(4564)そーせいグループ(4565)ジーエヌアイG(2160)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(7774)ナノキャリア(4571)カルナバイオサイエンス(4572)キャンバス(4575)デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(4576)

2010年~2013年上場:11社

セルシード(7776)ラクオリア創薬(4579)シンバイオ製薬(4582)スリー・ディー・マトリックス(7777)カイオム・バイオサイエンス(4583)ジーンテクノサイエンス(4584)UMNファーマ(4585)メドレックス(4586)ペプチドリーム(4587)オンコリスバイオファーマ(4588)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(6090)

2015年~2017年上場:4社

サンバイオ(4592)ヘリオス(4593)グリーンペプタイド(4594)ソレイジア・ファーマ(4597)

 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。