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中国株投資の魅力と見えないリスク

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中国の景気減速懸念が薄れ、高値圏にある欧米市場に比べた中国株投資の上昇余地も注目されている。
最近の発表でも四半期のGDP成長率で6.9%という中国の高い経済成長等から、一昨年の急落以降、やや落ち着きを取り戻した感のある中国株式市場の、これからの成長持続に期待する投資家も多い様だ。
ここでは中国株特有の魅力と、様々な投資リスクを考えて見たい。

中国証券市場の推移と市場の仕組み

1990年に始まった中国本土の証券市場は、日本に次ぐアジア第2の市場規模に達している。(世界でも第7位)
開始以来10年で1000社を越えた上場会社は、2016年末には3000社程度となり、時価総額も800兆円近くと香港市場を大きく上回る規模に達し、長期的には上昇トレンドと言えそうな値動きを示している。

上海証券取引所の公表情報では、上海A株の保有構成は一般法人が6割以上だが、売買は個人が主役で、85%以上の高率となっている。(一般法人は3%)
このため市場の変動には、信用買いに関する個人投資家動向の影響が大きい。
2014年に信用買い残の急拡大で株価急騰となり、2015年の急落では、信用買い残高が大幅に減少した。

また、国(政府)が大株主として上場企業株を保有しており、仮に何らかの理由で政府が保有株式を売却すれば、その意向表明だけでも市場は大きく動揺(下落)するだろう。(2016年当初の急落は、「大株主等の保有株の売却禁止措置」の期限到来が原因と言われた)
また、現在数%程度の保有にとどまる海外投資家や年金基金等の資金が、今後市場へ流入するかどうかが大きな注目点だ。

参考:上海総合株価指数の推移
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中国株式市場の上場基準と中国政府の証券市場振興策

株式市場上場基準
A株
B株
資本金総額が5千万元以上であること。 発起人の出資総額(純資産)が1.5億元以上であること。
開業後3年以上経過し、直近3年間継続して利益を上げていること。 開業後3年以上経過し、直近3年間継続して利益を上げていること。
所有する株券の額面金額が1千元以上で、株主の人数が1千人を下回らず、公開発行した株式が企業株式総数の25%以上であること。(企業の資本金総額は4億元を越えている時は、その公開した株式の比率が15%であること) 公開発行した株式が企業株式総数の25%以上であること(企業の資本金総額は4億人民元を越えている時は、その公開した株式の比率が15%であること)。
社員持株数は、公開発行株式数の10%以下であること。  
発起人持株比率が、総発行株式数の35%以上であること。 発起人持株比率が、総発行株式数の35%以上であること。
会社に最近3年以内に重大な違法行為がなく、財務会計報告書に虚偽の記載がないこと。 会社に最近3年以内に重大な違法行為がなく、財務会計報告書に虚偽の記載がないこと。
参考:meti.go.jp


中国には香港以外に深センと上海の二つの証券取引所が設立され、両市場にはA株市場、B株市場と呼ばれる取引形態の異なる2種類の株式市場が存する。

このA株とB株には株主権利での差はないが、A株市場は人民元で取引され、原則として中国本土投資家のみが投資できる市場だったが、2002年から適格海外機関投資家(QFII)制度導入により、部分的な外国資本のA株取引が解禁されている。(一方で、合法的に所持している外貨でのB株取引を国内投資家にも開放)

B株(上海は米ドル、深センは香港ドルの取引)は、「人民元を自由化しない条件下でも外資導入可能に」という政府の意図から創設された市場で、海外資本導入を狙ったことから、上場企業数は少なく(両市場で100社程度)その8割程度がA株でも発行している。
このため、最近は証券会社経由でのA株取引の取扱量が増加している。

今後、中国政府は外資系企業の上場基準緩和や深セン市場をナスダックの様なベンチャー向け市場に特化させるという方針を打ち出しており、海外の機関投資家の増加で市場安定化を進めたいという狙いと国内企業の資金調達を容易にしたいという狙いを打ち出している。

中国株投資の魅力

中国株の最大の魅力は、その高い経済成長率と言われる。
かつての2桁成長だったころに比べると、最近は減速気味だとはいっても依然GDP成長6%台を維持しており、この成長率が今後も継続すれば他の先進国市場に比べ高いパフォーマンスが期待できそうだ。

次に、配当性向も高いことも魅力だ。
特に香港市場や深センB株には高配当銘柄が多い。(香港ハンセン指数銘柄の平均利回りは3.5%程度で、日本株の2倍以上)
また、人民元相場は実質的に固定相場に近い管理相場で、適正レートよりはかなり割安(人民元安)のレートが維持されているという見方が一般的だ。
そのため後述するような将来リスクはあるが、現状のままなら外国証券市場の様な為替リスクが少ない。(元高メリットも期待できる)

また、小額投資が可能などの取引メリットもあり、欧米とは異なる値動きの多い市場への国際分散投資対象としても考えられそうだ。
原則、海外販売規制市場のA株についても、内藤証券等の証券会社を通じて購入するなど、日本でも中国株投資方法が多様化している。

www.naito-sec.co.jp

中国株投資のリスク

1. 人民元相場の行方

公定の人民元レートは前述した様に管理変動相場下にあり、値動きは少ないが、将来的な相場見通しの不透明さは残っている。
2016年2月からは、「前日終値+通貨バスケット調整」方式が実施され、人民元レートは市場実勢(需給と主要通貨間変動レート)を反映(ある程度)した当局発表の中間レートの2%以内になっている。

だが、人民元が強い変動圧力を受けた場合は、上下2%という制限幅に収まるように、適宜、当局の為替介入が行われるとみられている。
もちろん、その操作には外貨準備の変動(元安是正には外貨準備減少)があり、さらに貨幣供給自体変動することになる。(元安是正時には貨幣供給量が拡大、元高抑制では供給量減少)

こうした不自然な為替介入、貨幣供給を停止し、先進国並みの独立した金融政策を行うためには、中国当局が中間レートの発表を廃止し、原則として為替介入を行なわない「完全変動相場制」への移行が求められるだろう。
現在のいわゆる「前日終値+通貨バスケット調整」方式は、そうした動きに向け、やや前進だとみる向きもあるが、将来的な金融政策がどのように変更されるかについては、意見が分かれている。
そのため、元相場上昇による為替差益も期待できる半面、何らかの理由による突然で急激な元安による株式価値の喪失(為替変動プラス元安による株式相場の下落)リスクの想定も必要だ。

www.rieti.go.jp

2. 国営企業の破たんや地方政府の負債

2016年10月、国有鉄鋼の大手企業である「東北特殊鋼集団」が経営破綻した。同社は鉄鋼需要の減少やリストラの遅れから経営難に陥り、この企業は地方政府(遼寧省)が大株主の国有会社で、負債総額は500億元(約8300億円)を超えていた。
中国企業のデフォルトは急増しており、鉄鋼や石炭、セメント等多くの産業で過剰設備問題により経営難に陥った多くの「ゾンビ企業」が、今後も破綻に追い込まれる可能性は高い。(IMFは中国の企業債務がGDPの1.5倍水準という危険水域レベルだと警告している)
すでに1割を越える企業が実質破綻状態とも言われている。
こうした破綻が実際にどの程度発生し、これらの企業の多くの実質的な経営者である地方政府が、どのように対処するかは不明だが、中期的な相場かく乱要因であることは間違いなさそうだ。

3. 世界経済における中国経済の位置

筆者が中国経済の将来について大きな問題と考えているのが、他のアジア新興国とりわけインド経済との関連だ。
中国経済成長の大きな要因は、資本ストックの増大(国営企業の民営化と人口の増加が主な要因)であると言われる。

地方政府を介した企業民営化による急速な資本形成と多数の企業による激烈な競争は、増加する人口と相まって、中国の経済高成長を促してきた。
だが、その反面過剰投資による負債の増加などの負の側面に加え、価格競争力が失われた場合に予想される各企業の急激な採算性悪化が懸念される。
現在、経済改革進行中の経済大国インドの存在は将来的な中国の成長継続のリスク要因かも知れない。

第1に、一人っ子政策による人口抑制策が人口増加をストップさせ、ついに生産年齢人口減少に転じた中国から、インドへの人口トップの座が移る逆転現象が起こるだろう。
生産年齢人口の逆転から、これまで中国の高い経済成長を支えてきた大きな要因が、他の国に移る可能性がある。
第2に、モディ政権の積極的な経済政策が、インドの伝統的な内需重視政策転換の傾向を見せている。

インフラ整備の困難さやカースト制度など、中国にはない問題を多く抱えるインドだが、現在の経済改革が成功すれば、将来的に世界の製造工場である中国の地位が、インドを含む東南アジア諸国に脅かされる可能性も指摘されている。
もし、こうした傾向が明らかになった場合には、(中国各企業の収益に影響が表れない段階でも)中国株市場には大きな下落の危険性がありそうだ。

diamond.jp

中国株の魅力とリスク

中国株には先進諸国にはない高成長持続への期待があり、大きな魅力を持っていることは間違いない。
だが、いくつかの不透明要因があることも間違いなさそうだ。
投資に当たっては、先進国市場にはない想定外のリスクがあることを充分注意したうえでポジション考えるべきだろう。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。