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【日経平均:東芝除外】レギュラー脱落を下された電器産業の雄

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8月1日から東芝(6502)が日経225構成銘柄から外され、入れ替わりでセイコーエプソン(6724)が組み入れられる事が正式に決まった。

もともと東芝は、2017年3月時点で債務超過状態が確認された事により東証2部への鞍替えが決まっていたが、この度、日本の株式市場の指標が公表された昭和25年9月から72年続いた株価指数構成銘柄というポジションに終止符を打つ事となる。
その交代要員であるエプソンは当初から筆頭候補であったため、今回の決定は予想どおりの結果に収まったという事になる。

上昇の切っ掛けを得たエプソンの見通し

この報道がされた時は、やはりエプソンの株価は跳ね上がり年初来高値である2657円を突破している。これにより直近高値が2014年12月に付けた2985円となり、そこを基準とすると76.4%の戻りラインを突破した事となる。

さらに2014年12月を基準とすると、年初来高値を付けた2017年2月が26ヶ月目となるが、今回の上昇でその水準を上抜けたため、2985円の水準まで目立ったポイントが無くなった事になる。
これらを鑑みると、最短で9月に2985円の水準まで到達すると見受けられる。
実際に日経225組み入れ銘柄としての稼動開始は8月1日であるため、ご祝儀買いが入ってくる可能性も考えられる。

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ただ、世間でのエプソンの理論株価は概ね2700円と見込まれており、2017年度の決算予想を増収増益としているものの、株価水準は今回の上昇により既に割高感が出てきている。
現に2700円上は売りが厚くなってきており、報道時の上昇以降は頭を抑えられている現状だ。

jp.reuters.com

有価証券報告書提出における東芝の窮地

現在東芝には、8月10日までの有価証券報告書の提出と、2018年3月までの債務超過状態の脱却という二点に迫られている。
しかし有価証券報告書については、今期も監査法人は監査表明を出さない方向でいると報道されている。

巨額損失の存在を、東芝がどのタイミングで認識していたかのさらなる調査を、子会社の米ウエスティングハウス(以下WH)を分担している米国の監査法人から依頼されているという理由だ。こうなると、期限である8月10日までに監査法人のお墨付きをもらうという事が、一層現実から遠ざかってくる。

有価証券報告書が提出できないとなると、強制的に上場廃止という措置が取られる事になるため、東芝は昨年の10~12月期に「監査の意見不表明」という事で有価証券報告書を提出している。
有価証券報告書は内容に関わらず受理はされるが、今回もその様な有価証券報告書を提出されたとしたら、金融庁はどの様な判断をするか判らない。
加えて東証も2018年3月を待たずして、東芝の上場廃止を視野に入れなければならなくなる。東証側としても、市場に波風立てる事は極力避けたいところだろう。

半導体メモリ事業売却においての混迷

現在東芝の周辺は、半導体メモリ事業部の売却を巡って泥沼化としている。
現段階で東芝は、産業革新機構、日本政策投資銀行、米ベインキャピタル、韓SKハイニックスの日米韓連合に対し優先的に交渉を進めているが、一方で当事業の共同運営者であるウエスタンデジタル(以下WD)が「待った」をかけている。

理由としては、日米韓連合に半導体事業の競合相手である韓SKハイニックスが存在しているという事だ。
つまり韓国への技術流出を懸念しているという事である。これは当初経団連が懸念していた内容でもあるが、では何故今回の優先交渉先に韓国企業が入っているのか。

そもそも当初名乗りを挙げていたのは米国のブロードコムである。
産業革新機構、果ては経済産業省も了承の上でこの話は進むはずであった。しかし共同運営者のWDが強固に反対措置を採ってきたため、ブロードコムは止む無く撤退する事となった。
当然、見出していた資金の着地点が急に無くなったため、東芝やその周辺は大慌てとなる。
このままでは東芝は、来年3月に債務超過状態を回避出来ないという事態に陥ってしまうため、何としても資金を調達する必要があった。
いわゆる「カネを出してくれるならどこでも良い」という事で、名乗りを挙げてきた韓国企業のSKハイニックスを含む日米韓連合に肩を寄せようという事になったわけだ。

この件に対し東芝は、WDが半導体子会社の売却を妨害しているという事で、損害賠償を求め提訴。
同時に東芝は、製品開発に関する機密情報を「WDが不正に取得している」として、情報に接触できないよう通信を遮断する措置を採った。
しかしこれは後ほど、カリフォルニアの裁判所から仮差し止めを命じられる事となる。

eetimes.jp


対してWDは、自身の共同運営者の権利をおざなりにして売却協議を進めようとする東芝に対し、売却の手続きについて「予備的差し止め」を求める申し立てを行っている。
東芝は「予備的差し止め」に付随する緊急性に対して反論し、「もし言い渡されたとしても日米韓連合との交渉は進めていく」と徹底抗戦の姿勢を採っている。

WDが提訴した結果が出るのが7月14日、もし「売却の差し止め」という事になれば、東芝は巨体を維持出来ず資金ショートを起しかねない。
現実には日米韓連合との交渉も契約段階で難航している模様で、対立しているWDやシャープを買収した鴻海精密工業とも売却の交渉を始めているという。

東芝を支援しているとされる主要7行も、東芝メモリの株式を担保とし6800億円の融資枠を用意し、2018年3月までの債務超過脱却を求めている。ただ銀行団は東芝の再建など二の次で、今や巨額となった融資金を不良債権化させない事に躍起になっている感がある。
そのためには何としても、東芝がメモリ事業の売却にこぎ着ける必要があり、融資はそれまでの延命措置と言えるだろう。

現に東芝は、既に銀行管理下となっているのに出向役員も派遣せず、とにかく今ある不動産や設備等の資産を片っ端から担保設定する事に注力している。つまり銀行にとってはメモリ事業売却がゴールで、その後も東芝と密に付き合っていくつもりは無いのかもしれない。

だがそれは無理もないと言える。
メモリ事業を売却してしまうと、東芝は主幹事業をほぼ手放した事になるからだ。それどころか、残存事業であるLNG(液化天然ガス)は、1兆円もの損失発生の可能性が示唆されている。
それならば、担保資産を設定しながらメモリ事業売却まで融資をつなぎ、どちらの結果となってもリスクを軽減出来る段階で逃げ切る方が得策だ。
ただ銀行側もメモリ事業売却が混迷している現状に危険を感じている模様で、6月に約1000億円の追加融資を実行するも、期日を週間毎に設定するというシビアな条件を付けている。

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withnews.jp

意外と人気な東芝株

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この様な状態にも関わらず、一部の投資家は東芝の株式が「買い」だとしている。
たしかに2016年に原発事業による損失発覚後に株価は急落したものの、その後は値頃感から随所で買いが入っている。

現時点では、2月17日に付けた178円が最安値となっており、3月15日にほぼ同水準の二番底を形成してからは、上値、下値とも切り上げている。
もし現水準を下値と仮定するなら、N波動の計算値424円まで延伸すると試算出来る。


現在の東芝の財務状態では、理論値の値など算出できる筈もないが、たった7ヶ月前に475円という水準にいた事を鑑みると、上昇余地は十分にある舞柄であると言えよう。
ただし東芝は、2部降格によるインデックスファンドの売りや悪いファンダメンタルがいつ出てもおかしくない状況にあるため、見立ても随時変わる可能性がある。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170621163127j:plain 神川 龍人
大手邦系証券会社にて国際事務部門、FXブローカーにてフロント業務及びカバーディーリング業務に従事し、邦系ファンドにて運用業務に携わる経歴を持つ。 現在はプロップハウスにてトレーダーとして従事しながら、マーケットに経済系セミナー等の講師も随時務める。