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在宅勤務、テレワークの未来はどうなる?

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日本にテレワーク利用の在宅勤務が普及し始めている。
これまでにも在宅勤務の形態はあったが、インターネットを含むIT技術の進化によりテレワーク利用の新しいかたちの在宅勤務割合が増加している。
こうした傾向から、今後の社会経済には様々な影響が出てくると予想されている。
最近のテレワーク勤務形態や導入企業の実例などを通じて、テレワーク普及の未来を考えてみたい。

在宅勤務・テレワークの普及

政府は「テレワークは働き方改革を推進するに当たっての強力なツールの一つ であり、より具体的かつ効果的な形で普及が進むようにすることが課題。【中略】サテライトオフィスの整備等を通じて、平成32 年までに“雇用型テレワーカーの割合28年度8%”倍増する」と2017年5月30日付で発表した。(導入企業目標は24年度12%の3倍)
世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画について

在宅勤務は、2000年以降急増したテレワーク利用を中心に年々普及が進んでいる。
国土交通省調査によると、テレワーク制度がある勤務先割合は雇用者全体の約14%で、そのうちのテレワーカーは約55%(制度のない雇用者でも、7%弱がテレワーカー)に達した。
業種別の上位は、情報通信業35%弱、金融と製造業が約20%、建設業、不動産業が約16%となっている。
上記2032年の政府目標が実現可能ではないかと思えるような普及状況だ。

www.sankei.com

テレワークとは

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在宅勤務には、企業に雇用されず自宅で勤務するSOHOの様な形態とテレワークに代表される企業雇用型に大別される。
日本テレワーク協会は、テレワークの定義として「テレワークとは情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」としている。

www.japan-telework.or.jp


テレワークを実現する技術は従来、電話や専用回線等様々だった。現在のテレワークは、ほとんどがインターネット利用の様だ。
テレワークは働く場所によって、自宅型(勤務先自宅を通信でつなぐ在宅勤務)、移動型(客先や移動中に勤務先と連携するモバイルワーク)、施設利用型(専用LAN設置のスポットオフィスや専用・共同サテライトオフィス勤務等)に分けられる。
小規模のベンチャー企業も、サテライトオフィスでテレワーク機能を有効に利用している。本稿では、急増中の在宅勤務型テレワークについて考えたい。

働き方改革との関係

テレワークのメリットはいくつかある。同じく日本テレワーク協会のホームページでは、そのメリットを下記7項目に集約している。

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www.japan-telework.or.jp


この中で、政府主導で進められている働き方改革とも関連する「ワークライフバランスの実現」と社会問題化している日本の人手不足に関連する「雇用創出と労働力創造」「優秀な社員の確保」の3点に注目した。

テレワーク・在宅勤務が進む企業

ワークライフバランスの実現

仕事と生活の調和には、導入企業にも色々な考え方がある。
自宅などでのテレワークは勤怠管理が困難であることから、これまでは多くの企業が勤務時間管理の代わりに「成果の達成度合」で判断する方式を採用していた。
だが最近はインターネット経由で、利用端末の画面モニタリングやチャットやウェブ会議システム等の利用で、社員の行動記録を勤務時間把握に利用する方式が増加している。

こうした遠隔管理に対する心理的反応は「会社から監視されている」というマイナス面よりも、会社や同僚・上司と「つながっている」という意識によるプラス面の側面が大きいとの報告もある。こうした取り組みには、企業側の対応も欠かせない。

サントリーHDの事例

同社は、多様な人材が集まる「ダイバーシティ経営」の一環として、2008年に在宅勤務制度を見直し、現在在宅勤務利用者が年間2500人に達している。(従業員総数約4万人)
これは、同社が「(勤務する)時間や場所の制約をなくし、働き方を革新した」ことによる。
以下の取り組み等を導入したことで、働き方改革による生産性向上に加え、IT機器の有効利用などによってコスト削減も実現した。

  • 出社日は週の半分迄で良く、10分単位で在宅勤務可能、出退社時間も自由なフレキシブルタイムの設定
  • 上司に提出する勤務計画のIT化(社外からの社内ネットワークログイン等)
  • 在宅勤務のモデルケースイメージ提示、有効活用モデルの紹介等
  • ノートパソコン、タブレット、ウルトラブック等、各社員のワークスタイルに適した多様な機器を社員ごとに打ち合わせて貸与
www.suntory.co.jp

雇用創出と労働力創造

リクルートHDの事例

リクルートHD(6098)は、生産性の向上を目指し、原則として週2日出社上限で、その他は職場以外の場所(自宅も含めた、カフェやコワーキングスペース等の任意の場所)で働くルールを2016年度に策定した。
出社回数に上限を設け、同意を得た派遣社員も含む全労働者を対象とし、リモートワークの日数には上限がない。

試験導入の結果、労働時間が減少した社員が4割以上だったことから全社導入が決定されたとのことだ。
こうした取り組みが成功すれば、家庭の事情等で勤務できなかった人材の雇用を生む可能性があり、企業としても限られた人材の利用効率化で、新たな労働時間を創造できることになる。

mydeskteam.com

優秀な社員の確保

日本マイクロソフトの事例

2016年5月に、日本マイクロソフトはそれまでの「在宅勤務制度」よりも制限を緩和した「テレワーク勤務制度」を導入した。
日本国内の「業務遂行に適切な場所」なら自宅外でも就業できる規則とし、介護中の実家での勤務などにも対応した。
制度利用日数の制限はなく、出勤義務がある「コアタイム」を廃止するなどそれまでのフレックス制度も見直し、時間や場所にとらわれない働き方で業務効率と生産性の向上を目指すとのことだ。
マイクロソフト テレワーク - Microsoft for business

こうした柔軟な勤務制度は、前掲のリクルートHDの場合同様、出産や介護離職、配偶者の転勤などによる離職を防止し、優秀な経験者の雇用を継続することにもつながるとして注目を集めている。これらの事例には今後も改良が加えられるだろう。

筆者は、ある企業の社員が友人の休暇(別会社勤務)にあわせて避暑地で一週間テレワーク勤務する様子を観察したことがある。
正規の勤務時間内で期待された業務成果(この場合は住宅関連設備の設計)を、進行状況をモニタリングされながらテレワークを行っていたが、通常と異なる自宅以外の執務で、周囲の環境が日常と隔絶したことがかえって業務効率を落とした。(平たく言えば、快適なのんびりと寛ぎたい環境のため、仕事をやる気が減少したようだ)

皮肉なことに折角の涼しい好環境だったが、3G回線の通信レスポンス低下もあって、通常より業務効率を落とし、かえってストレスを加重させてしまったようだ。
人にもよるだろうが、自宅以外のテレワーク環境が業務のやりやすい環境だとは限らない。
前掲のサントリーHDの様なテレワークに適したモデル執務環境の提示等も含め、企業のサポートや制度設計は今後も様々な検討が行われ、変化してゆくだろう。

テレワークの経済影響

国土交通省の調査によると、テレワークによる企業のオフィススペース削減によるコスト削減はモバイル勤務の場合に特に大きな効果が期待できることが、モバイル勤務企業で実証されている。(外勤営業社員専用スペースの共有化によってオフィススペースを縮小し、コスト削減)

また、各地の拠点オフィスに代え、従業員の自宅を拠点として営業活動を行う事例もコスト削減となる。
こうした企業環境や従来の広域組織等の抜本的な見直しが大幅なコスト削減に結び付き、テレワーク導入による収益向上が期待できる。

公共交通機関への影響はどうだろう。
都市部の鉄道運賃収入に占める定期券収入の割合は、15~30%程度とみられており、テレワーク普及で通勤客が少なくなれば、営業収入に一定の減収要因となる可能性がある。
しかし、通勤ラッシュ特に朝の通勤時間帯に対応するコストは鉄道経営の課題であり、テレワーク普及にはラッシュ緩和のメリットもある。

またテレワーク勤務でも大半の企業は、オフィスでのミーティングを一定程度行っており、一定量の出社日は必要であるため影響は限定的かもしれない。
一方、労働効率が同じであれば、企業にとっては通勤費用・オフィス維持負担が大幅に減少し、コスト削減・収支改善要素だ。

経済変化の要素としては、人々のライフスタイルの変化にも注意したい。
テレワークが一定量以上の規模で普及するようになれば、前述の通勤だけではなく、自宅勤務等による消費行動の変化、例えば住宅地の外食産業、ファッション産業や食品小売り業などにも影響がありそうだ。
働き方改革との関連も含め、テレワーク社会の暮らし方の変化が経済に及ぼす影響にも注目が必要だろう。

テレワークの未来

テレワークが本格的に普及すれば、色々な変化が起きそうだ。
企業における会議の在り方、社員間のコミュニケーション、勤怠管理、評価システム等々、これまであるのが当然だった企業のいろいろなスタイルが変わるとともに、社員のワークスタイル自体が激変する可能性がある。

最終的には、各人が多様でフレキシブルな働き方が出来、その勤務形態が社員だけでなく企業自体にもメリットのあるようになれば、テレワーク利用のワークスタイル変革はさらに加速するかも知れない。
その前提はテレワーク推進が生産性向上に寄与し続けることだが、最近の導入実例から、その可能性は高いと思われる。
この場合、経済面からみれば導入速度が速い企業は収益向上が期待されることとなり、そうした側面も企業分析の一面として重要かも知れない。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。