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PB(プライベートブランド)商品はなぜ売れる?安さだけではないその魅力を探る

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スーパーやドラッグストア等のプライベートブランド(以下「PB」と略記)商品の販売推進戦略が成功し、売り上げを伸ばしている。
最近の好調なPB商品の背景には、定番ブランド品に比べて低価格という魅力だけではなく、独自の消費者へのアピール力もあるようだ。
こうしたPB商品の現状と消費者ニーズに合わせた各企業のPB戦略を探ってみたい。

PB商品の最大の魅力は低価格

PB商品好調の理由は、なんといってもPBの価格競争力だ。
PB商品の安さは、主に広告宣伝費・流通コストの抑制やメーカーからの同一製品大量仕入れによるコストダウンで実現している。
例えば代表的な製品として「カップ麺」の価格構造を比較すると下記の通りである。

カップ麺価格構造 (単位:円)
内訳費目
メーカー製品
PB製品
差額
原材料費
40
32
▲8
メーカー粗利益
12
14
2
卸売粗利益
12
0
▲12
人件費等固定費
8
8
0
物流費,広告費
10
6
▲4
拡販費用
30
0
▲30
小売粗利益
12
20
2
合計
132
80
▲52
(日経MJ社推計値)


メーカーと小売り販売者の粗利益を一般ブランド品より多めに設定しても、4割近く低い価格設定が可能な仕組みだ。
これまで食品分野のPB商品は、大手スーパー等の主導で品目が拡大してきた。
デフレマインドの続く状況下で、大手小売りチェーンは食品メーカーのブランド商品より高い粗利益を生むPB販売で、不景気への対抗手段としてPB商品の開発・販売を積極的に推進している。
逆にPB普及により、食品メーカーは「低価格のPB」と競合し、販売数量減や販売価格低下圧力を受けているのだが、特に品質に差の出にくい調味料や食用油等は価格競争力の強いPB商品の販売額が伸び続けている。

以前のPB生産は、大手メーカー以外への受託も目立っていたが、最近は一般のブランド(ナショナルブランド:NB)製品を製造する大手メーカーの生産品も多い。
メーカーとしては自社ブランド品の売り上げ圧縮要因になりPB生産は避けたいのが本音であるが、安定した大量の受注が保証され設備効率等を考えると、引き受けざるを得ないのが実情らしい。
これに加えて最近のPB商品では、例えばコンビニチェーンのPBパンなどの加工技術や品質に大きな差の出にくい商品を、包装やネーミングの工夫を加えて売り上げを伸ばしており、必ずしも低価格商品だけが伸びているわけではない。
忍び寄るインフレの気配と若者とシニア層を中心に広がる高品質商品への嗜好も相まって、PB商品の進化が見え始めている。

スーパーのユニークなPB

スーパーのユニークなPB商品をいくつか紹介したい。
私鉄系のスーパー八社が共同開発した「Vマーク(VALUE PLUS)」の5食パックご飯「富山県産コシヒカリ100%ごはん」は、1食100円以下の価格で販売しているが、ブランド米100%のネーミングとコンペ方式で決めたという選定銘柄米の味で購入者から好評を得ており、炊飯に時間や手間をかけたくない共稼ぎ家庭や高齢世帯を中心に売り上げが伸びている。

www.v-mark.jp


また、主として東海地方に展開するスーパーマーケット「バロー」の「Vセレクト鮭フレーク」は特売価格98円という低価格だが、国内(北海道産)鮭を原料として、いくら採取後の水分や旨味の少なくなった鮭に熟成鮭を1割程度加えることで、油を加えずにパサつき感を保つ工夫があり、そのコストパフォーマンスの良さから、ネット販売での人気も加え売り上げを伸ばしている。

valor.jp

セブン&アイ VS イオン 両グループの人気PB商品

こうした低価格・高品質のスーパー開発PB商品の中でも、業界トップのセブン&アイHD(3382)系列で発売するワイン「ヨセミテロード」は、コンビニ販売と系列スーパー双方で高い支持を得ており、最近では米国や中国での販売も開始した。

iyec.omni7.jp

好評の理由は、低価格でありながら味が良いという売れ筋PBの典型的な特徴だ。
特に赤ワインは、契約農園のカルフォニア産のカベルネ・ソーヴィニヨン種を使用しており、品質を保つため大容量のバルク輸入で、ボトル詰めを国内で行う。
フルボトルで600円以下、250mlでも300円で販売され、コンビニでの販売量は計画を大幅に上回る売れ行きとなったのは、やはり価格よりも飲みやすさと本格的な味わいが支持されているからだろう。値段からは考えられない品質から、古くからのワイン通にも日常の飲用利用に愛用者が増加中だ。

style.nikkei.com


一方、小売り大手でセブン系と双璧を担うイオン(8267)系列では、トップバリュブランドで国内最大級のPB商品種を有するが、かつては低価格路線の変換などいくつかの戦略変遷があった。

business.nikkeibp.co.jp


しかし最近では2000年から展開していた「グリーンアイ」シリーズを、2016年から3シリーズの「グリーンアイ」ブランドに区分した戦略に見られるように、低価格品に限定しない独自のPB戦略を開始している。
内から体をきれいにする「オーガニック」、自然にやさしい「ナチュラル」、気になるものは入れない「フリーフロム」という分かりやすいコンセプトの3系列のPB商品群は、食品に対する消費者の最近の嗜好を狙ったものだろう。
それ以前から好評のPBブランド「トップバリュの米」(地域別販売米)のトレーサビリティを重視した取り組みとも通じる、食の安全・安心をサポートする姿勢重視の戦略が、安いだけではないというPB商品の分かりやすいセールスポイントとなっているようだ。

ドラッグストアのPB

最近、急速に伸びているのが、ドラッグストアチェーンが開発したPB商品だ。
業界最大手のマツモトキヨシHD(3088)は、最近「MKカスタマー」というPBブランドに健康食品等を加え、今後も拡大をしていく予定だ。

www.matsukiyo.co.jp


NB(ナショナルブランド)化を目指すという戦略で発売地域外も含めた全国のTVCMや雑誌などで周知を図り、化粧品・医薬品や雑貨に加え食品もラインアップに加え、総品数は増加中だ。
これは、比較的食品扱いの多い地方中小スーパーの自社チェーンへの取り込みにも寄与している様だ。
売上で業界3位のツルハHD(3391)も、食品を含むPBブランド「M’s one」で、業界平均を大きく上回るPB商品関連売り上げを達成している。
好評を受けて同社はブランドの内容強化と売り場拡大テンポの増加を計画中だ。

ドラッグストアが販売するPB商品のうち食品が占める割合は、多いところでもまだ1割程度である理由は、スーパーとのコスト競争や薬品に比べての食品の利益率の低さもある。
だが、大手メーカーと同一ブランド品のサイズ・容量違い商品、いわゆる「ダブルブランド」商品(慣れ親しんだブランドで消費者の安心感がある)や薬剤師が常駐する店舗での健康食品販売などに、安心・安全志向の消費者ニーズを狙う傾向が読み取れる。

実際に地方の店舗などでは、常駐薬剤師の作成したPOP等の販促グッズや声かけがPB食品の売上に繋がるケースも良く見かける。
ドラッグストアは国の地域包括ケアシステム構築への参画を模索しており、今後こうした健康食品を含めた食の安心・安全販売への取り組みも地域関係機関との連携も併せて、地域の医療を含むトータルケアのニーズを取り込むことで、薬剤師設置ストアの食品販売の優位性が狙えるだろう。

これから伸びるPB商品と企業の課題

PB商品の今後の課題は、こうした価格だけではない魅力の認知度向上だろう。
何らかのPB銘柄を知っているかどうかは、100%に近い認知度で購入経験も9割近い(公財流通経済研究所調査)が、最近の傾向として「味や品質」「安全性」「メ ーカーの信頼性」「メーカー名の明示」等価格だけではないPB商品の内容を吟味する消費者が増加している。
代表的スーパー等(イオン、セブン、CO-OP、CGC)のPB商品取扱高は金額ベースでは市場の約6割を占めるまでになっており、スーパー全体の市場規模も3兆円を越え、この10年で2倍近い伸びを見せているようだ。(富士経済「PB 食品市場の実態総調査」より推計)
だが、PB商品の先行きにはまだ不透明要素が残っている。

日本の食品小売りにおけるPB比率は10%以下で、英独の3割程度の水準とまだ低いのは、消費者のブランド志向、保守性(これは高齢者のPB利用度の低さにも表れている)、そして安全安心志向(原材料も含めた国産志向)があるようだ。
とはいえ、このようなニーズに合わせた高品質化をさらに進めていくのは、他のNB商品との競合もあるため、本来のウリである“低価格”を維持し続けながら全PB商品に適用するのは難しいだろう。やはり、市場動向を見据えた選択と集中がここでも求められそうだ。
PB商品を販売する企業の取り組みは、年々拡大とともに変化し続けている。
コンビニやスーパー等の店頭で今後登場するPB新商品のコンセプトに、そういった取り組みの一端が見えるのかも知れない。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。