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じゃがいも不作でポテトチップス業界に大ブレーキ、カルビー&湖池屋の戦略

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出典:calbee.co.jp  koikeya.co.jp

菓子製造・販売大手のカルビー(2229)は2017年4月にポテトチップスの一部商品を販売終了や休止を発表した。昨夏の台風の影響によるものだ。
同じく業界大手の湖池屋(2226)も、高級ブランドのポテトチップス販売休止、出荷停止を発表した。
影響の長引くじゃがいも不作による主力商品の販売縮小が、スナック業界の今後の業績や株価にどう影響するのだろうか?
主要スナックメーカーの決算発表と業績予想から、今後のスナックメーカーの戦略と業績推移を占う。

日本のじゃがいも栽培

小麦、トウモロコシ、米に次ぐ世界4位の栽培面積のじゃがいもは、世界中のほぼ全域で栽培されている。野生種の起源は南米大陸だが、18世紀初めから日本での栽培が始まり、気候風土が適応する北海道が最大の産地となった。
明治以降、カレー・コロッケ人気でじゃがいも栽培量は飛躍的に増加し、全国に栽培が広がったが、戦後はコメの生産拡大により、再び国内生産の主力は北海道に戻った。

北海道の年間じゃがいも生産量は、全国生産約250万トンの8割程度を占めている。
だが2016年の台風被害などで、このじゃがいも生産は大きな打撃を受けた。
北海道内への台風・大雨の影響により、ポテトチップス用じゃがいもをはじめ農産物に大きな被害が出ている。

kaigyou-turezure.hatenablog.jp


農水省によると、昨年9月までに集計されたじゃがいも生産の被害面積は24,000ha(道内総作付面積約63,000haの約4割)に上った。前年の国内調達じゃがいもの約7割が道内産で、湖池屋も生産委託工場の浸水被害により操業を停止した。(毎日新聞報道)

単純計算では、年間のじゃがいも生産が約40%落ち込むことになる。
カルビー社は、2016年下期に不作の影響を海外からのスポット購入等でカバーしても、なお1割近い原材料不足が発生したと見込んでいる。
2017年度も一定の原料不足が継続するという見通しにより、後述の製品販売制限という結果になったものと見られる。

原料不足でも、なぜ輸入で解決できないのか?

不足分を輸入で補いきれないのは何故だろうか?
過去の病虫害被害発生地である米国等からは全量検疫が困難等の理由で、日本では原則として生食用じゃがいも輸入は禁止されているのだ。例外的に国内の供給量が不足する不作期数か月間に限り、ポテトチップス加工用じゃがいも限定で輸入している。
〔中国には病虫害報告はなく規制対象外だが、生産のほぼ全量が遺伝子組み換えじゃがいもであるため、日本への輸入量はゼロに近い〕

www.maff.go.jp


だが、米国からの加工用じゃがいも輸入量は国内生産量のごく一部で、国内不作対策としてのポテトチップス用じゃがいも輸入は現状では拡大困難だ。
〔過度な疫病への警戒継続は、米産農産物への非関税障壁とも言われている。米生産農家の要望もあり、今後日米貿易協議の議題となる可能性は高い〕

ポテトチップスとは

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生産危機に陥ったポテトチップスとは、どんな食品だろう?
18世紀に考案されたフランス料理である “油で揚げたじゃがいも料理”(フレンチフライドポテト)の変形として、同世紀末にアメリカにて “油で揚げた薄切りポテト”「ポテトチップス」が登場した。

faq.calbee.co.jp


当初は料理の付け合わせだったが、真空包装技術の進展と、第二次世界大戦下の肉類・甘味菓子不足で、スナックとしての「ポテトチップス」利用が拡大したのが普及のきっかけらしい。
今では、世界の半分である約60億ドル分のポテトチップスを米国で消費している。
米国は、若者の野菜消費の3割以上がポテトチップス(フライドポテトを含む)という大消費国だ。日本ではスナック菓子の人気トップがポテトチップスで、日本独自の多種フレーバー戦略が功を奏し、年々消費が拡大している。

国内のポテトチップスの生産と販売

1. ポテトチップスとじゃがいも消費

加工食品用じゃがいもは、輸入を含む全生産量(約380万トン)の3割程度(約125万トン)で、最近は冷凍用加工品が増加しており、ポテトチップス用には30万トン程度の利用だ。
ポテトチップスやフライドポテト用のじゃがいもは、生産者から農協等が集荷する契約栽培方式が主流で、栽培面積は計画的にメーカーとの契約数量から決めた範囲での生産を行っている。
国内生産の加工用じゃがいものうち、ポテトチップス用については特に品質基準が高く、でん粉価に比例した高価格が設定される。

結果としてポテトチップス用は、ほぼ全量がトヨシロ種(加工用専用品種)という高品質製品であり、こうした品質優先も輸入じゃがいもの利用が少ない理由のようだ。(加工用輸入じゃがいもは、冷凍ポテトフライ等の使用が多い)
このため、青果としての国内じゃがいも価格は海外とほぼ同等だが、ポテトチップス製品は欧米や東南アジアに比べ5割近く高く、ポテトチップスの利益率はスナック類の中でも比較的高いとみられている。

2. ポテトチップス販売制限の状況と経営への影響

カルビー(株)の前四半期決算では、スナック菓子の売上高約1507億円のうち、ポテト系スナックの売上高は946億円(前年同期比0.3%減)となった。
特にポテトチップスは、馬鈴薯(じゃがいも)調達不足による新製品発売延期等で、572億円(前年同期比2.1%減)と減少した。

www.calbee.co.jp


一方で、同社のじゃがりこ等のポテト系スナックや小麦粉系スナックの売り上げは増加しており、じゃがいも不作が販売制限や売り上げ減少に大きな影響を上げるのは、前述したポテトチップス原料じゃがいもの特殊性が関係していそうだ。

なお、ポテトチップス売り上げ減による利益への直接影響は公表されていないが、利益率等から推計すると、販売減は数%程度の利益下押し要因ではないかと思われる。
業界1位のカルビー社の減産による直近の販売制限等の製品名は下記の通りだ。

今年度の販売中止

BIGBAGうすしお味、コンソメパンチ、LサイズBAG うすしお味・コンソメパンチ、ピザポテト、堅あげポテトBIG(うすしお味・ブラックペッパー・プッチ4)しあわせバター等。

前年度

厚切りホットチリ味、フレンチサラダ、しょうゆマヨ、梅味、こんぶしょうゆ、瀬戸内レモン味、博多めんたいこ味、九州しょうゆ、堅あげポテト北海道バターしょうゆ味、関東・関西だししょうゆ、九州しょうゆ等。(この他、多くの販売休止製品がある)


業界2位の湖池屋も不作に加え北海道内の工場が水害の被害を受け、同様の販売制限を行った。
メーカーは四半期毎に製品入れ替えを行い、限定品発売等を加えることで高シェアを維持しているため、原料不足による製品品目制限が新年度になって特に目立つ結果となったようだ。

しかし、カルビー社の通年業績については、シリアル食品の「フルグラ」が大幅に売上を伸ばした結果、売上高全体は前年同期を上回り、増収・増益となっている。
2017年3月期の連結決算は、純利益は10%増(期初計画通り)で過去最高だったが、売上高・営業利益が期初見込に到達しなかった。
これは、じゃがいも不足の影響と思われる。(ポテトチップ販売2.6%減)
また、今年度(2018年3月期)についても、不作の影響が残りポテト系スナックについては減収の見込みだ。
これは、昨夏の被害で、北海道馬鈴薯の収穫量が減少し、ポテトチップスの売上高が、第1四半期は大幅に減少する見込みだからだ。(第2四半期以降も前年を下回る見込)

今後の見通し

昨年は、史上初めてとなる4個の台風上陸と集中豪雨などにより、50年ぶりの農産物被害に見舞われた北海道だが、2017年度のじゃがいも生産は今のところ平年並みの見込みだ。
昨年の水害頻発は、エルニーニョの変動等による前例のない台風の北上が主な原因で、現段階では特別な不順は観測されていないことから、平年並みのじゃがいも生産が期待され、中長期的にはじゃがいも生産は安定するものと思われる。

しかし品薄の状態は5月以降も継続し、じゃがいも価格は当面平年の2割高程度の見通しで、ポテトチップス材料のトヨシロ種手当や緊急輸入の拡大等は難しく、当面は原材料の品薄が続くかも知れない。
〔カルビー社ではポテトチップス等の当年度生産材料には、主に前年度生産馬鈴薯を利用するため、今年度6.4%の売上減を見込んでいる〕
このため、4月に大々的に発表された新製品の発売停止や既製品の品揃え減少への影響が続きそうだ。

一方で、一部商品の販売中止や休止は、昨年度に関してはポテト系スナック全体の売り上げの大幅な減少には直結せず、前年度決算についてはメーカーの原料確保努力や関連商品の販売努力が功を奏した様子だ。

ただ、2017年度の “ポテチ危機” がもたらす影響は小さくない。
じゃがいも不足による販売休止製品の復活は、早くても夏以降になりそうだ。
カルビー社のポテチ休売による影響は、人気の「ピザポテト」がTwitterのトレンドワードになり、一部での「闇ポテチ」発生やネット上の買い占め等も起こるなど、需要増加状態が加速しており、改めてポテチ販売休止ニュースの影響の大きさを感じさせている。

kabumatome.doorblog.jp


もちろん早急に極端な原料馬鈴薯不足が解消するか、緊急輸入や他生産地の高品質製品手当等で原材料不足ができた場合には、今回の販売停止等で消費者の新フレーバー(新商品)訴求度が増していることもあり、通年では売り上げが回復し、じゃがいも不作が大幅減収要素とはならない可能性もあるかも知れない。
ポテト系スナックの最大手カルビーの4月以降の株価は戻り基調だが、水害被害判明による急落前の高値水準回復までは至っていないのは、原材料不足を不安視しているからだろう。

しかし、ポテト系スナックの原材料不足は影響が長引きそうだが、じゃがいも生産の回復次第で好調な他製品の売り上げや海外展開の状況次第では、さらに業績が上昇し株価が新高値を狙う可能性もあるだろう。

ポテトチップス不足への対応

日本人の好むスナックメーカーの1位がカルビー社で約63%、2位の湖池屋の約19%との合計で、二社で人気の8割を越える寡占状態で、ポテトチップス販売は、大手の動向が市場の傾向を左右している。(ネットリサーチMyVoice調べ)

戦略的な独自フレーバー開発やご当地製品の拡充等で、新たな購入意向をかきたてているポテトチップスだが、今後も消費サイドからの多品種・新製品生産の要請は継続するだろう。
こうしたニーズに応え続けるためには、異常気象の続く昨今でもあり、メーカーとしては、原材料の過半を北海道に頼る生産体制の見直しも早晩必要である。

外国からの原材料輸入には様々な課題もあるが、中長期的には輸入拡大も重要な選択肢に入るだろう。
その場合、米国等の大生産地からの輸入には付随的にコストダウンが期待出来るため、消費者にはうれしい結果になるかも知れない。
逆に、原材料不足の影響が予想外に長期化するか不作が頻発する場合、輸入等の対応策が不調であれば、生産調整対象品目以外の商品やポテトチップス以外のじゃがいも系スナックなどへの影響も考えられる。

メーカーの対応「明日のポテトスナックは・・・」

湖池屋は、5月29日から販売を一時休止(同社出荷停止)中の「KOIKEYA PRIDE POTATO 魅惑の炙り和牛」について販売再開の発表を行った。
同商品は2017年2月発売の新シリーズで、湖池屋を象徴する基幹商品であり、消費者ニーズが高かったことを理由にあげている。
このニュースや直近のじゃがいも価格安定などを受け、同社の株価は高値をうかがう勢いだ。

一方、カルビーは前年度決算を支えた「フルグラ」の動きが引き続き好調の模様で、海外展開の端緒として、越境ECサイト「天猫国際」(ソフトバンク(9984)とアリババGの合弁)において「フルグラ」を8月から先行販売すると発表した。
さらにサントリーの「BOSS (ボス ラテベース スイートメープル)」は、濃縮タイプの新ラインナップで「フルグラ」にかけて “フルグラ・テ” を楽しめるコラボアイテム等の発表もあった。
カルビーは同商品の売り上げ目標を国内の500億円に加え、初の本格販売を始めた海外でも1000億円を目指し、人気商品を柱とした攻めの経営姿勢をみせている。

ただ、皮肉にもじゃがいも不足でにわかに高まったポテトスナック人気だが、菓子大手企業全体に順風が吹いているわけではない。
明治製菓(2269)のロングセラー「カール」の販売大幅縮小の報道にもみられるように、菓子販売全体での消費者の選好は目まぐるしく変わりつつあるようだ。

this.kiji.is


カルビー、湖池屋等関連メーカーは、ポテトチップス出荷が回復しても例えばフルグラのように新しい提案を持った魅力的な製品開発を継続することが、持続的な業績拡大、株価の維持には欠かせないファクターだろう。
カルビー社はポテトチップスの販売アイテムの選択と集中を進めるとともに、原料供給の安定後は順次販売再開を図ると発表している。

また、ポテトチップス以外での販売強化として「じゃがりこ」「Jagabee」等の新規スナックでの販売強化(特にポテトチップスクリスプの拡大)を進める。
さらに前述の海外展開を含むフルグラ拡大や販売管理費見直しなどで、売り上げ3%増、経常利益5%程度の増加を予測している。
中期的には収穫量の拡大に向け、加工用じゃがいも産地の新規開拓や他目的使用からの転換に加え、生産・収穫プロセスの省力化・支援等と輸入原料使用可能な国内生産ライン拡充も検討するとしている。

そして生の原料を使用しない製品の開発・拡大と素材を生かす製法技術による素材スナックの展開等も検討している。
また湖池屋も健康を意識した、おいしさ+機能性+αの要素を加えた商品として第3の食物繊維レジスタントスターチを含む、スーパー大麦バーリーマックスにポリンキーの美味しさを掛け合わせた「スーパー大麦ポリンキー BLT味」を新発売する。
これらスナック各社の新商品等の開発傾向が、消費者の嗜好や高い健康志向にマッチし、さらなる売り上げ増・収益率の向上に結び付くことになるのか今後の展開を注視してゆきたい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。