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Money Clip

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ソニー本格復活のカギとなるか?Fate/Grand Order大ヒットと新映像戦略

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ソニー(6758)の業績は、長期低迷を経てようやく回復基調にある。
しかし株価は2000年の最高値は勿論、リーマンショック前の高値もまだ遠い。
このソニー株式会社が、最近発売した人気ゲーム関連の新戦略から新たな映像戦略・継続収益確保への狙い、事業別収益構造の変化から本格的な構造改革の成功に結び付く可能性を考える。

21世紀を迎えたソニーの業績

ソニーショックという言葉が株式市場に流れたのは、2003年4月にソニーの3月期連結決算(2002年度)を発表した時だ。

営業利益こそ1854億余(前期比38%増)だが、従来予想を1000億円以上越える下ぶれとなり、特に最終四半期(2003年1-3月期)の大幅な赤字が衝撃的だった。
さらに次年度業績予想も、前期比30%減、1300億円の見通しで、多くの投資家の予想を裏切る結果だった。

businesswords.blog.jp


以降、株価は高値から8割以上まで下落し、ソニーの業績は長期間低迷を続けていた。(最安値では最高値の5%以下まで下落)
そのソニー復活のカギの一つではないかと噂されるゲームが話題になっている。

Fate/ Grand Orderとはどんなゲーム?

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出典:typemoon.com


TVCM等への露出も少なく一般周知はまだ低いが、最近スマートフォンゲームで大幅に売り上げが伸びているのが、「Fate/Grand Order」 (以下「Fate/GO」略記)いうロールプレイングゲームだ。

www.fate-go.jp


スマホゲームでのヒット商品で知名度が高いのは「パズドラ」や任天堂(7974)の「ポケモンGO」などだが、この「Fate/GO」は、正統派ロールプレイングゲームであり、「Fate」シリーズの最新作としてファンの間で人気が高い。

Fateシリーズは、奈須きのこ脚本による2004年発売の「Fate/stay night」を起点とするアニメ・漫画・小説などの派生作品で、持ち主の願い全てを叶える「聖杯」をかけ、魔術師(マスター)達が使い魔(サーヴァント)と契約し生き残りをかけたバトルロイヤル「聖杯探索(Grand Order)戦争」を描くのがFate/GOの物語だ。

例えば、ゲーム内でジャンヌダルクを登場させれば、彼女の歴史上の性格や活躍がキャラクターの能力に組み込まれ、ゲームのリアリティと発展性を生む構造となっている。
Fateシリーズ全体の背景には、歴史改変SF系統の設定として「人理継続保障機関」と、人類歴史の『特異点』の存在、歴史修正マスター達、マスター候補生らの活躍が多くの物語に共通しているが、シリーズの各作品は原則として個別に成立しており、相互の連続性はない。

www.4gamer.net

Fate/GO の人気

Fate/GOについてブルームバーグは、昨年に下記の記事を掲載した。
「任天堂ポケモンGO」は今年爆発的なヒットを記録したが、そのホームグランドにソニーがFate/GOというモバイルのゲームでライバル(ポケモンGO)を急追している。

このゲームは人間史を災害から救う為、ゲームプレーヤーがシーザーやダ・ビンチ等の歴史人物と時間旅行し、登場人物などの要素を追加する場合に料金を支払う。
このゲームは日本のスマホアプリ収益トップで、デビュー以来700万回以上のダウンロードがあり、研究者のApp Annieによると「同じ期間の、iOS機器・アンドロイド合算のポケモンGOより多額の収入を得た」とみなしている。〈抄訳〉

www.bloomberg.com


同記事内において、ソニーの吉田副社長の「Fate/GOはソニーミュージックの収益を23%向上させ、連結決算収益1500億円の8%を占めた。今後も、モバイルゲームの収益拡大に注力したい」との発言が紹介されている。

このゲームの利用基本料金は無料だが、ゲームをスピーディに個性的に進めるために様々なキャラクターを利用する際などに課金される仕組みで、この課金分が関連売り上げとなる。
Fate/GOは、2017年2月の日本のiOSスマホゲーム売り上げで、それまで1位だった「モンスターストライク」を抜いて1位となり、全体でも2位となっている。課金利用者の割合が高いことが推測される。

ソニーピクチャーの映像資産減損処理と最近の決算見込み

ソニーは2017年1月30日、映画事業の減損損失1121億円を営業損失として計上すると発表した。
この減損処理は、映画市場(DVD等)の縮小加速に対応した、「将来の収益見通し修正」だという。(1989年に買収のコロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメント営業権等の減損)

一見悪材料と見える減損処理だが、これは次代戦略への布石とも見える。
昨年11月の発表では、ソニーの28年3月期の連結業績見通しでは売上高7兆4000億円、営業利益2700億円だったが、本年4月21日発表の見込では、連結業績見通しで売上高7兆6000億円、営業利益2850億円の上方修正となり、銃利益は730億円(約500億円増加)となっている。(映画事業の営業利益はこのうちの1割程度と思われる)

この収益上方修正の理由は、現時点では費用減少が主なものだが、ソニーは、100%子会社のソニーピクチャーズの映像戦略を、収益の柱の一つとして考えている。

柱となる収益事業を、下記の4つに分類
  1. ゲーム&ネットワーク
  2. ホームエンターメント&サウンド
  3. モバイルソリューション
  4. 金融事業
  5. その他


それぞれの事業収益は、ゲーム&ネットワーク事業がトップだが、4事業とも1兆円を超える売り上げで、利益も、それぞれが1割以上の比率を占めるというバランスのとれたものだ。(過去最大の営業利益5250億円超を記録した1998年3月期は、エレクロニクスが約7割で、ゲーム・音楽・映画それぞれ7%程度であった)

toyokeizai.net

ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの映像戦略

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(以下「SPE」と略記)は、ハリウッドのメジャー(コロンビア)を買収し、映画のヒット等により業績のぶれも大きかった。
しかし、2015年に映画のトップマネジメント体制が変わり「インターナショナル志向(北米以外の販路)」と「ローカルプロダクションへの注力」という経営方針となっており、邦画製作も始めている。

最近は、映像デジタル配信サービスの普及による車内のスマホ・タブレット利用など広範囲な利用が可能となり、映画鑑賞機会が一気に広がった。
映画業界はこの状況を好機と捉え、デジタル配信領域とデジタルマーケティングに注力しているのが現状だ。

特にソニーは、2008年からアニメ制作に本格参入し、SPE出身者がスカパー(9412)で人気の高いアニメ専門チャンネルのANIMAXやアクションのAXNを手掛け、アジア各国への進出も果たした。
〔テレビ放送事業は、映画大国のインド等でトップシェアを占めている。また、ANIMAXはFate/GOの画像製作にも協力している〕
今後は、メディアミックスによるゲームや音楽との融合をさらに高め、よりスピード感のある事業展開がソニーならではの技術蓄積で可能になりそうだ。

ソニーのアニメ戦略とFate/GO

Fate/GOは、原作者奈須きのこが、「空の境界」でデビューした小説家でもあり、ビジュアル系音楽にも造詣が深い作者による奥行きの広いゲーム世界である。
Fateワールドのゲームは、SFファンでもある奈須きのこの複雑なSF的設定に加え、魔術と歴史上のキャラクターも独特な面白味のポイントだ。
一方、日本の一般ユーザーへ特に歴史上のキャラクターの訴求度や複雑なゲーム感の認知度が低かったのが、ダウロード数の伸びが売り上げに比べ低い原因のようだ。

Fateシリーズの二本目のアニメ作品「Fate/EXTRA Last Encore」の放映が決定し、シリーズの映像・音楽も含めた多層的な展開が成功すれば、Fateシリーズ全体の人気が高まり、映像・音楽以外の様々な商品がゲーム本体の売り上げにフィードバックすることも考えられそうだ。
時代の先駆者でありながら収益機会を逸するソニーの体質を一変する展開が期待できるかも知れない。

今後の展開と可能性

ソニーの株価は、今回の連結決算の上方修正発表前から上昇傾向を示していたが、修正発表後は大幅高となった。
ゲーム関連、映像関係の売り上げ・営業利益の詳細は、今後の決算で詳細に発表される予定であり、2018年度の予想収益等の内容が注目される。

部門別予想売り上げと実績値を比較すれば、今後のソニーの収益向上戦略が見えてくるだろう。
Fate/GO関連の売り上げは、派生商品等を考慮すれば前述の「柱となる収益事業」の1,2,3すべてに関連する可能性がある。
2017年の第一四半期売上げで、世界全体でのスマホゲーム第2位となったFate/GOは、この夏から全米での取り扱いを開始予定だ。

実の所、現在のFate/GO関連収益は、大半が日本国内発生のものと考えられており、米国での前評判は上々であるので、発売後には収益の上振れも考えられる。
もちろん、今後の世界的な売り上げ推移等の展開は未知数であり、大きな期待の半面、予想外の伸び悩み・期待外れの結果となる不安もある。モバイルゲーム関連の人気・売り上げは非常に変化が速いからだ。
いずれにせよ、Fate/GOと関連商品のこれからの動向は、ソニーの新戦略の方向性にも重要な影響を与える要素だと考えており、ぜひ注目したい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。