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GDP算入は難しいか?ネットビジネス統計

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ネット小売り利用額の総計は年間15兆円規模に達したとの報道がある。
年々増加するネット販売は年間約140兆円の見込み額で、全国小売業の売上額から考えても無視できない規模だろう。<H28政府サービス動態統計室調査>

消費の一角を占める規模となったネット販売額だが、GDP算出等の統計数値(家計消費支出)に正確に算入されていない模様だ。
現行の統計算定の問題点である、ネット経済を含めた実体経済の把握について考える。

政府の統計戦略

2017年2月3日に、政府の「統計改革推進会議」が開催された。
この統計会議は「抜本的な統計改革及び一体的な統計システムの整備等を政府が一体となって強力に推進する」ための検討会議と言われている。
その背後には、拡大を続けるネット経済の計量化の難しさに加え、少子高齢化の社会構造変化もあるようだ。

最近、算定方法変更により注目されたGDP統計の正確性だが、各省庁の統計手法が間違っていたとは言えない。
ただ、各省庁の算定数値の食い違いや従来の方法ではとらえきれない数値の漏れが認められるということも、統計改革推進会議が統計手法を見直す理由の一つだ。

この会議では「政府全休におけるEBPM(証拠に基づく政策立案)の定看、国民のニーズへ対応する統計改革の行政部門を超えた見地から推進するため統計改革推進会議を設け、改革の方向性をとりまとめ、進捗情報をチェックする」と公表された。
現在の統計における問題点は何だろうか。

家計調査の問題点

消費に関する統計のうち、家計消費分析は総務省実施調査のデータによっている。
しかし、こうした統計調査の基礎数値は、後述する家計調査の偏りや企業の協力度の低下等により統計精度の低下が指摘されている。

家計調査の代表的指標である「二人以上世帯」の消費性向は最近大幅なマイナス支出となり、同時期の供給サイド(小売業)の調査結果との矛盾が明らかになった。
考えられる理由として、国がサンプル世帯を抽出し、品目ごとに数量・価格等を記入する煩雑な調査票を元にする現在の家計調査方法にありそうだ。

詳細項目記入の依頼を受けた世帯には、日常的に家計簿記入が可能な専業主婦世帯が多く、中心世代は高齢層となっている。これらの世帯消費支出データは、消費が活発な若年層世帯よりは少なめになる。
小売企業は全世帯の消費に加え、爆買い需要や越境EC等のデータまで含めているため、家計調査とは逆の傾向となった模様だ。

分配側GDP算定とのかい離

一方、捕捉率が高い所得に関する税務データ(個人所得や法人税等)で「分配側GDP」と称する独立推計を行い、分析したGDPの数値がある。

1994年以降、従来型GDPとほぼ同じ水準だった分配型GDPのかい離が広がり始め、直近では30兆円近く公表GDPより多く、マイナス1%だった日本のGDP成長率が逆に年率2%近いプラスになるという試算が出された。
税務データは基本的に正確性が高い全数調査であり補足率も高いため、統計調査より数値の信頼性が高いので、公表GDPが実態から離れている可能性が考えられる。

www.rieti.go.jp

ネット利用の統計数値


ネット利用実態の統計算入にも問題がありそうだ。
総務省統計局の2017年1月分家計調査公表数値示されたネット消費は下記の通りだ。

  • ネットショッピングの支出額10,534 円/月(前年同月比33.3%増加)
  • ネット利用世帯支出額 33,544 円(前年同月比11.9%の増加)
  • ネット利用世帯割合31.4%(前年同月差 5.0ポイント上昇)


この数値が、フリーマーケットやオークションサイトの個人間の取引実態や諸外国への越境ECの規模をどこまでつかんでいるだろうか?
経済産業省の調査等では、アマゾン等ネット専業販社の公表資料や業績、フリーマーケットスマートフォンアプリの「メルカリ」等の現況まで参照して収集データの正確性補強に利用している。
フリマやオークションの統計数値を統計算入外のデータとしているのは、全体の正確な数値をつかむのが困難なためと思われる。

C to C経済統計の不算入部分


個人対個人の取引(C to C)はスマートフォンの普及により、飛躍的な拡大を続けている。
即決と購入手数料無料を武器に、登録人数が急増しているメルカリは、トップブランドのヤフオクを越える数千万人規模の会員数に達したとみられる。
出品者から徴収した手数料額も100億円を越えたが、正確な売上(取引)金額は分からない。

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kanpo-kanpo.blog.jp


同社のホームページには、月間流通量が100億円を越えると記されており、年間の取引規模は既に1000億円を越えているのだろう。メルカリ1社で、既にネット取引の1%近くを占めている計算になるので、全体ではかなりのボリュームになるだろう。
この金額は前述の消費支出統計には数値としては算入されていない。
メルカリの直近決算公告では、2016年6月期に売上高122億円超(営業利益約33億円)で、2013年設立後初の黒字達成だった。

www.itmedia.co.jp


また、例えば楽天(4755)の購入の際利用したポイント充当部分は、企業経理上は販売経費とされ、ポイント利用分は販売額としての売上計上はされない。
このようなポイント利用や旅行等に利用する金券等は、前述の家計調査対象世帯での利用割合は一般より低いと思われ、このかい離部分も消費金額の下振れとなっている筈だ。

ネット消費の進展と実態把握の遅れ

ネット取引に関する消費支出が正確にGDPに反映されず、算定金額が少なくなっている問題は、以前から関連省庁でも認識されており、前述の統計会議では具体的改善方法が検討される予定だ。しかし、ネット経済の進化スピードは速い。

現在、消費者のスマホ搭載アプリ(家計簿アプリ等)と連動した統計利用なども検討されている。だが、公的統計の改革スピードでは進化し続けるネット経済の実情を遅滞なく把握するのは難しいかも知れない。
少なくともこれまでの政府統計発表数値よりは、実際の消費実態がある程度上振れしている可能性を否定できないだろう。
こうした、かい離がどんな影響を経済に与えているのか十分注意して推移を見守りたい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。