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米国対外防衛戦略の主役「第3オフセット戦略」国内企業の新戦略への対応は?

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出典:jp.sputniknews.com

米国防総省は、軍事技術のイノベーション、革新的作戦構想、兵器調達と兵站共通の全面改革が必要と提唱し、これらを「第3オフセット(相殺)戦略」と命名し最新防衛戦略の中心と考えている。

具体的には無人機による軍事作戦、海中・長距離攻撃能力、高ステルス兵器、新世代の統合エンジニアリング技法などが提唱されている。
この新世代の防衛戦略は、軍事同盟を締結する日本の防衛と防衛産業はどのような対応を必要とされるのだろうか?新しく生まれる技術等へのニーズと対応する国内企業について考えてみたい。

日本の防衛及び防衛装備に関する共同開発

1.防衛装備品等に関する共同開発

防衛装備品に関する研究開発等については、現在米国との共同研究3件(ハイブリッド電気駆動、高速多胴船の最適化、ジェット燃料等)と弾道ミサイル防衛・迎撃の共同開発や、イージス艦ソフトウェア等の相互ライセンス供与を行っており、英仏等との同様な取り組みもある。

防衛装備庁 : 防衛装備・技術協力について

2.防衛装備の調達

民生技術活用も進んでいる。
防衛装備品には、その特殊な用途の為、市場価格が存在しない製品が存在するため、従来、契約後に調達原価を査定し清算する方法だった。
最近はこれに代え、長期契約・複数年度の契約も行い、効率的調達を実施し防衛装備における民生分野の採算が向上している。

3.研究開発費

日本の研究開発予算は防衛予算全体の3.5%に過ぎない。
米国の12%はもちろん欧米や韓国等東アジア諸国に比べて低い水準2016『防衛白書』より)で、米国からの製品・技術供与の恩恵はあるが、防衛装備の先進性、防衛費支出絶対額等から考えると、研究開発費率の低さは中長期的な技術水準の維持に問題があると関係者から指摘されている。

第3オフセット戦略が要求する革新的技術開発

こうした状況において第3オフセット戦略を遂行するために必要な技術には、従来レベルを越える革新的飛躍が期待されており、素材品質・部品精度に大きな強みを持つ日本の役割は、米国の防衛産業関係者からも期待されているようだ。

また、統合エンジニアリングに関連するソフトウェア開発の一部には、VR等のゲーム関連のノウハウが参照されているのかも知れない。
更に耐摩耗性等の耐久性能の向上などに、日本の伝統的な工業技術に着目される可能性もある。

日米軍事同盟と国内防衛産業

三菱重工業(7011)のF2以上のステルス性能の先端技術実証機試作や、大学・研究機関以外で研究課題取り組みを行っている企業として、高性能高周波トランジスタ技術研究の富士通(6702)、海中ワイヤレス電力伝送(非接触で海中給電可能な技術)のパナソニック(6752)が公表されている。2016『防衛白書』より)

またエンジン等のフィルターで圧倒的な世界シェアを持っているヤマシンフィルタ(6240)は既に米墨国境の壁建設で話題になっているが、無舗装路や荒れ地走行性能が重視される戦車等にも必要不可欠な高品質・高耐久性能のフィルター生産を行っている。
こうした高度な国内産業の能力は、米国など同盟国に様々な形で展開可能との見方もあるが、機密保護法により具体的情報の漏洩は厳しく規制されるため、詳細は明らかではない。

防衛産業の世界展開の現状

1.防衛装備品対外輸出姿勢

新規防衛装備の予算は防衛費全体の2割程度と言われている。維持費に加え、基地関連経費及び人件費割合が大きい。
防衛装備品の輸出(米国との協力含む)については国内世論の反発等もあり、積極的展開が控えられているのが現状だ。
またオーストラリアへの潜水艦や、英仏、トルコやインドなどからの協力要請等があるが、一般に国内企業は防衛関連の高度技術流出(第3国への移転等のリスクあり)には慎重な姿勢だ。

2.軍事関連製品の輸出

米国連邦兵站情報システムには、NSNと言う単位で識別し、防衛装備品を登録する「グローバル・ロジスティクス」などが取り入れられ、互いに部品等の情報の共有と取得ができるNATO等TIER2国相互では、製品を利用した防衛装備事業が実施できるが、TIER1国である日本は製品購入しかできない。

一方で、数万点に上る日本製品が他国の企業製品の部品として売買されている。
〔外国企業の製品内部品化という位置づけで、製品に部品が組み込まれている。このため「日本は武器禁輸と言いつつ部品を通じて軍事技術の垂れ流しを行っている」という極端な批判の根拠ともなっている〕

これからの日本へのニーズ「第3オフセット戦略」への対応は?

日本の米戦闘機等のライセンス生産や装備品輸入には、当然両国で厳密な情報保全協定等を締結しているようだ。(協定の詳細自体が機密保持事項)

こうした現状から、新たな防衛装備品に関する法体系が施行された現状においても、第3オフセット関連の新たなニーズへの国内対応の詳細は、当面表面化しないと思われる。
しかし飛躍的に高度化する防衛技術の進展に対応し、米国(及びNATO諸国)の軍事予算は増大し、質的向上志向もかなりあるのは間違いなさそうだ。

jp.wsj.com


日本の産業・企業が軍事技術に限らず、世界全体の技術革新にこれまでどのような役割を担ってきたかを見究め、将来どのような分担を求められるかは、日本の経済にとっても大きなファクターになるかも知れない。
また、技術輸出・移転等について、軍事技術の第3国移転防止を確実にするTIER2の装備品登録システム等の検討も含めた、より戦略的な思考も併せて考えることが今後さらに強く求められそうだ。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。