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電子チラシとニュースサイト。急激に変わる新聞購読の明日

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出典:ccc.co.jp

世界最大の宅配新聞大国である日本の宅配新聞契約数が落ち込んでいる。
その理由は色々挙げられているが、意外な理由の一つにインターネット上の電子ちらしが、世帯によって折り込み広告に勝るケースもあるようだ。
社会の変化と折り込み広告の課題と併せ、急激に変わりつつある新聞購読の明日を考えてみた。

新聞宅配の現状

宅配新聞契約の落ち込みの大きな理由は、若年層の新聞離れだ。
日本新聞協会広告委員会の資料によると、紙媒体の新聞購読率は全体で78%に対し、30歳未満は5割程度で高齢者の高い購読率(70代は95%)に比べるとかなり低い。
一般紙の発行部数は2000年の約4700万部に対し、2016年は4000万部にまで低下し(朝夕刊セットは4割減)、世帯当たりの購読数は同じ期間で1.13部から0.78部までと約30%も下がっている。(日本新聞協会調査)

しかし、世界全体でみると日本の紙媒体の新聞発行部数は群を抜いており、世界トップ50の1位から3位を日本の朝日・毎日・読売の三大紙が占め、日本の新聞全体では総発行部数も全体の3割近くを占めている。

factboxglobal.com


これは、日本特有の再販システムによる宅配制度が維持されているからだ。
国内全新聞収入のうち、2015年の購読料は10466億円、広告掲載費は3983億円(全広告費の約9%。全国新聞協会調べ)

新聞社の総売上高の推移 |調査データ|日本新聞協会


これに対し、新聞販売店の収入となる折り込みチラシの収入は、全体で広告掲載費に相当すると言われ(販売店売上の4割程度)販売店の大きな収入源だが、最近は特に都市部において戸別ポスティングの増加により、広告主との競合があり販売店経営上の問題の一つだ。
新聞広告と折り込みチラシの収入は、宅配新聞発行制度を支える大きな役割を持っている。

高齢者のネット利用に潜む意外な理由

若年層の新聞離れは統計からも明らかで、新聞のニュースソースやテレビ番組等生活情報源としての役割は大きくない。
この傾向が、高い年齢層にも広がり始めた。

新聞戸別宅配制度(宅配制度)の販売店には、特定新聞のみ宅配する「専売店」、特定新聞社系統だが、他紙宅配も取り扱う「複合店」、そして地域全ての新聞宅配対応の「合売店」という3種がある。
大都会ではあまり見かけない「合売店」だが、地方ではこれが普通の形態になっている。
そして、さらに過疎の村や交通が不便な地域では、コストと人手の問題から宅配すら行わず、新聞販売店に購読者が日々新聞を取りに行く仕組みであることも多い。(郵便配達人依頼のケースもある)

これまでマイカー利用で新聞購読していた高齢化世帯が、日々の新聞受け取りが難しくなり、やむなく新聞購読を中止しているケースもある。
このような地方の高齢化世帯で、新聞宅配利用が減少している
一方、高年齢層のスマートフォンを含むインターネット利用普及が進んでおり、予想以上に多くの世帯で電子チラシを利用している。
近隣のスーパーまで車で30分以上かかる地域も多く、そのため一週間に買い物に出る回数が少ないので、まとめ買い・効率化のため折り込みチラシの特売情報は必須だ。
これらの理由でインターネット(スマートフォン)を始めたのだと、地方の高齢者は言う。

新聞宅配と折り込みちらしの今後

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出典:sendenkaigi.com


もちろん、こうした一部地域限定の理由だけではなく、高齢者の宅配新聞からネット利用へ移る流れは続きそうだ。もう少し理由をあげてみたい。

  • 細かい字が読めなくなった。その点ネット画面は簡単に拡大できるので老眼鏡が要らない。
  • 以前は新聞やチラシを資源回収に回していたが、集積所への運搬が腰に負担がかかり対応できないので購読を止めた。
  • 新聞を取りにゆく朝夕の階段昇降がつらい。(エレバーターの無いビル居住者)
  • 年金生活に入り、新聞購読料負担が重い。スマホ代はかかるが電話代+新聞代と考えれば高くはない。


こうした高齢者の新聞離れに加え、従来から続く若年層の新聞離れもあり、今後も紙媒体の新聞利用、特に宅配利用は減少を続けそうだ。
一般的な分析とは逆に、筆者周辺の年配者からは、電子チラシやテレビ番組表の利用からネット利用を始め、最近はニュースサイトも見るようになった(新聞が要らなくなった)という話も聞く。

電子チラシの普及とネット通販、ニュースサイトの融合

現在の電子チラシには、まだ進化の余地がかなりある。
現在の閲覧サイトは、紙媒体のチラシを単純にPDFにあげただけのものが多く、検索機能や商品リクエスト機能などはない。地域によりお勧めのチラシが表示される等の機能はあるが、使い勝手が良いとは言えないものが多い。

将来的には、ネットスーパーやネット通販ともリンクした、高機能なチラシが登場し、スマートフォンアプリとの連携で、ニュースやSNSの利用と融合した新しいチラシサービスが登場するかも知れない。
折り込みやポスティング等の紙チラシ媒体に比べると、一覧性や使いやすさで劣る部分もある電子チラシには、まだ改善の余地がありそうだ。

新聞販売店の経営問題、部数減少と宅配人材の枯渇

一方でこうした新聞宅配利用の減少傾向が続くと、日本の新聞宅配制度の将来が心配だ。
すでに、新聞販売店経営は購読部数減少と景気後退による折り込みチラシの減少(ポスティングちらしの増加)そして、宅配を支える配達人の人手不足が深刻な経営問題となっている。
地方の新聞販売店は、若年層の急激な減少により、経営者による配達に切り替えたが、それも経営者の高齢化で厳しくなり、廃業を選択するケースも出ている。

新聞の戸別宅配制度は維持できるか?

新聞自体の電子化も進んではいるが、紙媒体に代わって新聞社経営の支えになるボリュームには程遠く、新聞宅配制度の維持は現段階では新聞社経営の生命線だ。
だが長期的な発行部数、販売部数低落傾向は続きそうで、早晩、新聞再販制度や紙新聞発行自体もあり方を問われそうだ。

しかし、これまで見てきたように新聞戸別宅配や折り込みチラシのニーズ自体は、少なくとも高年齢層には、あまり減少していないような気がする。
新聞販売店そして個別宅配に未来があるとすれば、地域の特性やきめ細かい配達サービス網を利用した、宅配に付加価値を加えるあるいは既存資源やノウハウを利用した新しい分野への展開ではないだろうか。

例えば、折り込みチラシの受注を通じて培った地元企業とのパイプを利用した電子チラシにオンライン情報提供と通販、商品配達まで一貫したサービス提供を新聞販売店が行うことも考えられる。
免許や法規制の問題もあるのだが、日本の新聞宅配制度の持つ価値を維持するためにも、早晩何らかの新展開が個別宅配に必要になってくるだろう。

日本特有の新聞宅配制度は毎日、自宅まで新鮮な情報が届くという利点があり、他国にない便利なサービスだ。
最近話題の宅配便以上に、時間限定の人手確保という点で、難しさがある新聞宅配制度だが、関係者の工夫で今後も維持できることを期待したい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。