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人件費ロボット化のイノベーションに関連する業界は?

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出典:roboteer-tokyo.com

慢性的な人手不足の解消が、日本経済の最重要課題として意識されつつある。
省力化手段として利用拡大が進むロボット利用の背景は、急速に進化する人工知能(AI)の組み込みから、ロボットによるこれまでの単純作業用という製造業務の労働代替よりも、人間には不可能な付加価値や生産やサービスのイノベーションまで期待されている時代に突入したからだろう。
今後ロボット化が進むことで人件費の節約(代替手段)を越え、事業の本質的な革新・イノベーションを期待できる業界はどこだろう。

ロボット化の現状

最近話題の運送業の人出不足や、従来から人員不足が問題視されていた介護関連業等では部分的なロボット導入が始まっている。
建設業では少子化傾向による定年退職者の補充困難だけではなく、業務量拡大も人手不足の原因となっており、一部職種には既にロボット導入が進んでいる。
業界別に主なロボット化の動きを下記にまとめてみた。

1.旅行サービス業界

ハウステンボスはエイチ・アイ・エス(9603)よる買収後、2015年夏からホテル業務にロボットを導入した。
フロント業務、接客や清掃作業の一部をロボット代替として大幅な人件費節約を図った「変なホテル」は、その話題性も相まって順調な出足だ。2017年に、舞浜の系列ホテルにも採用する。

www.h-n-h.jp

IBMの人工知能(AI)「Watson」は、外国人対応などのフロント業務や接客への利用提案を検討している。AIの英語以外の語学力(中国語韓国語含む)も、飛躍的な進歩を続けており、人間の通訳に対する競争力を強めつつあることもその背景となっている。また、ホテル業に限らないが、ソフトバンク(9984)の「Pepper」も同様の取り組みが検討されている。

www.ibm.com

2.小売業

三菱商事(8058)傘下となったローソン(2651)は、パナソニック(6752)と連携し、2016年12月にレジロボットの試験導入を発表した。
小売業を支える一般消費者の目に直接触れない物流分野では、さらに先進的なロボット導入が進んでいる。
Amazonや楽天(4755)など大手ネット通販やニトリ(9843)等の取り組みに加え、倉庫火災で話題になったアスクル(2678)は既に倉庫の自動化配備計画を発表しており、日立物流(9086)も2017年内に、倉庫内の棚移動ロボットを、日立製作所(6501)の協力により100台規模で大幅増設予定だ。

gigazine.net

3.医療・介護分野

医療・介護の現場では、法定の夜間巡回を念頭においた技術開発として、豊橋技術科学大が介護施設や病院での夜間巡回に対応できるロボットの「Lucia」を発表した。リハビリの必要な人たちの歩行等支援の機能もあるという。
この他にも知名度の高い介護ロボットに、移乗介助の「RIBA」やメンタルコミットの「パロ」などがある。
厚労省が重点認定しているロボットは下表の通りだ。

介護ロボット機器一覧

重点分野
機器の名称
企業名
移乗介助(装着型) 腰部負荷軽減用HAL CYBERDYNE
介護用マッスルスーツ 菊池製作所
移乗介助(非装着型) 移乗サポートロボットHug T1 富士機械製造
離床アシストベッド パナソニック
屋外移動 歩行アシストカート RT.ワークス
排泄支援 居室設置型移動式水洗便器 TOTO
介護施設見守り 3次元電子マット式見守りシステム NKワークス
シルエット見守りセンサ キング通信工業
非接触無拘束ベッド見守りシステム イデアクエスト
出典:robotcare.jp

4.建設業

建設業界では、慢性的な人手不足、職人の高齢化、若手への技術継承・後継者難の三重苦が深刻だ。震災復興と東京五輪特需にもかかわらず、建設業の就業者数はピ-ク時から300万人近く減少し、高齢化率も早晩5割に達するだろうと言われている。
建設現場へのロボット採用は、大和ハウス(1925)サイバーダイン(7779)の「ロボットスーツHAL」導入により、大林組(1802)フジタ(3370)等の協力で、作業負荷の大幅軽減を検討している。
例えば、コンクリート打ち現場のセメントを持ち上げて運搬トラックから現場に運ぶ作業は、一つのマンションでも数百袋分発生し、これを繰り返し運搬する負担はかなりの重労働だ。

さらに、リフォーム作業用の狭小空間点検ロボット「moogle(モーグル)」なども開発中されている。
高齢者の傷害発生や、若年層を現場作業から遠ざける原因を、元々医療介護用に開発されたロボットスーツHALで負荷軽減し、減少させようという試みだ。

www.cyberdyne.jp

toyokeizai.net

人手不足業界の現状

こうしたロボット化の取り組みは、事業の効率化に加え人材不足が大きな要因と思われるが、一口に求人難と言っても業界によって少しずつ事情が異なるようだ。
非正規労働者が不足しているのは、飲食業、旅行・ホテル業、飲食料小売業が上位3位だが、正規労働者については情報サービス業、建設業、医薬品等小売業がトップ3で、人員不足率は5割を越えているという。
これは、パート・アルバイトで対応できる職種に人手不足が顕在化している業界と、熟練労働者が足りない業界の違いを示す数値だろう。

ロボット化で業容革新出来る業界は?

こうした業界等で、不可避的に進むロボット化に付随して人件費のロボット化が業務のイノベーションや業容拡大に結び付く可能性を考えてみたい。

1.自動運転と運送業

物流の現場は、現状ではロボット化は工場内物流に限られている。
最近社会問題化している宅配業務の運転者不足は、特区などでのドローン利用トライアル等の試みはあるが、実用化までは進んでいない。もう少し大胆な規制緩和、例えば一定レベルの人口密度以下地域で、指定ルート内での貨物輸送車自動運転が可能になれば、現在の自動運転技術でも対応可能だと言われている。
交通事故対策や共同運送の取り組みなど規制緩和の前に解決すべき問題は多いが、自動運転へのAI組み込みなどの動静も含め、運送業界全体の革新のために既に急速に進みつつある各方面の取り組みの推移と今後の展開を注目したい。

2.建設ロボットの進化と建設業

建設業の現状は、ロボット対応可能な工事種類は限られているが、例えば一部の基礎工事や足場組み立て、解体工事などにロボットの導入が考えられる。
熟練と多くの人手を要する布基礎コンクリート等の敷設作業も、自動掃除機に似たロボット開発で可能ではないかと検討されている。

また解体ロボットについては、既にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)主導で実証実験が行われており、高所や特殊環境での利用が期待されている。
今後「建設リサイクル法」等関連法規の整備が進めば、通常の建設現場への導入が進む可能性は高い。
こうしたロボット活用により、人手不足の解消に加え、建設工事のコスト低減や工期の大幅短縮が期待出来る。

3.ホテル業とAIロボットの可能性

ホテル・旅館等で深刻な人手不足となっているのが、清掃を含む客室整備だ。ライフスタイルの変化で、需要の時間帯が広がり(チェックイン、チェックアウトタイムの柔軟化)、従来以上に客室整備の時間短縮が求められているが、整備作業にはある程度の熟練が必要で、一定以上のサービスレベルを維持するコストは、客室料金に比べ低くはない。(シティホテルではシングル料金の10%~15%)

地方のホテルや旅館でも、若年層の不足により肉体への負担が多い客室整備業務が業務運営上の重荷となりつつある。
この作業のロボット化は清掃ロボットに加え、ベッドメイキング等の自動化、アメニティ等のセルフサービス化等いくつかのステップが必要だが、技術的には解決可能な部分が多い。従来不可能と思われていたシーツの取り換え・ベッドメイキングも自動折り畳みクリーニング機械の登場で可能性が見えてきた。

作業のロボット化と対応客室の設計・整備等により、サービスが可能になれば、客室提供コスト低減だけでなく、多様なニーズに合わせた利用時間(チェックイン等の時間を設定しない等による)で客室回転率の上昇と、新たなニーズ(フロント自動化と組み合わせたコアタイム以外の宿泊・休憩対応等)の開拓に広がる可能性があり、既にキャパシティの上限に近い都市部のホテル経営に革新が生まれるかも知れない。

4.ロボット店舗が作る夢の飲食店舗の可能性

人件費の問題と言えば、飲食店のロボットニーズも無視できない。
特に、人手不足と過重労働が話題となった牛丼チェーンでは、一部店舗でのセルフサービス化が試行されているが、未来の飲食店では調理分野の自動化も視野に置くことになるだろう。

多品目を提供する一般飲食店の料理自体は、多様なオーダーに応じたシェフの状況判断が調理に重要な役割を果たし、その能力の成長が飲食店の品質向上に欠かせない。
しかし牛丼チェーンに限って言えば、メニュー数は多いが調理のバリエーションは食品の組み合わせやサイズ違いで構成されているものが多く、品質均一化がしやすいので、ロボットへの機械的・自動的な作業移転が生産性の飛躍的な向上に結び付きそうだ。(東大松尾教授など複数提唱者在り)

現状は、食器洗いへの利用程度にロボット導入は限定されているが、将来的にはAIの能力成長と必要な資本投下により、清掃作業も含めた完全自動化店舗も不可能ではなささそうだ。
未来の飲食店はSFの世界のように、高級有人(サービス・調理)店舗と低価格の無人店舗に分かれるのかも知れない。

www.itmedia.co.jp

IOTからEDIの流れが早めるシンギュラリティ

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こうしたロボット化の実用にあたっての課題は、各所で触れた関連法規、各種規制の緩和に加え、ロボット自体の質的向上も必要となってくる。
最大の注目点はAIの進化だろう。

やや本題から離れるが、ヒトを越える人工知性が生まれるシンギュラリティ(技術的特異点)は、2040年代半ばとも言われている。
人手不足対策としてのAI組み込みロボットへのニーズと、高度化ロボット間のEDI(コンピュータ相互のデータ交換)協働は、今後増々広がるだろう。
例えば「Pepper」ロボットの様々なシーンへの急速な普及やブルドーザー等のIOT対応産業機械流通から、収集可能なビッグデータ利用による色々な可能性が考えられており、データの共有化・公共利用に向けた法整備の検討も始まっている。場合によっては、業界の垣根を変えるような取り組みも期待出来そうだ。

www.sbbit.jp


こうした従来とは比較にならない膨大なデータの収集と相互ネットワーク化、そしてAIによる関連付けによって囲碁・将棋ソフトがプロ棋士並みに進化した様に、意外に早く人間を補完できる新たな知性(例えば将棋ソフトの指し手は従来の発想にない斬新な構想を生み出すなど、必ずしも人間を越える知能を意味するのではなく、別種の知性の誕生を示唆しているという見方もある)が誕生するかも知れない。
未来が人とロボットそしてAIの調和により、さらに明るいものになることを期待したい。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。