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Money Clip

お金に関するニュースをクリップ!

金価格が上昇を続ける理由を探る

経済 資産運用
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出典:birchgold.com

「有事の金」「インフレの金」等の言葉をよく耳にする。
実際、国際情勢の不安・金利の低下・インフレ傾向など、様々な事由による資産価値のリスクヘッジとして金購入が話題になり、そのような時期には金の国際価格も高騰することが多い。

昨年11月からの金価格推移には、これまでの経験則からは理由が説明しきれない価格変動が見られる。アメリカ大統領選後以降の従来の相場常識を裏切る金価格変動原因と、今後の展開を考えてみた。

金相場価格の形成要因

金価格は他の商品同様に、基本的には需要と供給により決定する。
従って理論的には、装飾品や工業需要が増加すれば価格が上昇し、金鉱山の生産量が増加すれば価格は低下する。

しかし実際には、その他の金特有の価格形成要因が金相場を動かすことが多く、その動向は予測が難しい。
※例えば、採掘技術の革新等により金生産コストが下れば価格は下がりそうだが、供給過剰を警戒した減産により金供給が減り、金価格が上昇することもある。

インフレ時には通貨価値が低下するため、一般に商品価格が急騰し、特に金は物価高騰に過敏に反応し値上がりする特性が顕著だ。
一方、利息を生まない金は長期金利とは逆相関関係にあり、金利上昇局面では金価格は低下することが多い。
また、大規模テロや国際紛争、戦争等に際しては「有事の金」としてリスクヘッジ対策として金が買われる。
表面的な統計からは読み取りにくいが、資金難の金保有国が保有する金を売却すれば、金価格は下落する。またその逆の場合もある。

最近の金相場

最近の金国際価格は、10年前の2倍だが、5年前の2/3という水準になっている。(ドルベース)
注目されるのは、米大統領選挙結果判明以降の動きだ。
トランプ大統領決定以来の金価格は、NY株高と金利上昇傾向を受けて12月まで下落したが、その後は株式市場の上昇と金利高止まりにもかかわらず、上昇トレンドを保っている。
※ドルベース金先物25日移動平均は年初の1160ドル割れを底として上昇に転じ、1220ドル近辺で推移。これに対し2017年の米国金利は2.4%近辺で高止まりしており、75日移動線は上昇傾向だ。

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出典:globalmacroresearch.org


過去を振り返ると、リーマンショック(2008年)後の暴落から3年間は金バブルとも称され、2011年から2012年の天井で1800ドル台に達したが、以降は下落基調となり、2013年、2014年と価格を切り下げ、2015年には1000ドル台まで下落した。
セオリーからいえば、最近の債券安・ドル高傾向により、金価格は下落するはずだが、テロ等も含め国際情勢は比較的落ち着いているにも関わらず、相場は反対方向への動意を見せている。さらに、金価格とプラチナ価格のかい離拡大も注目点だ。何が起こっているのだろうか?

金相場を動かしているもの

様々な要因が金価格を形成しているが、最近の金相場の動きの理由はまだ分かっていない。どうやら、これまでの大幅な金価格変動時のような要因は今のところ明確ではない。(文末に金価格形成の主な要因を掲載)
当コラム筆者は、金価格や商品相場の専門家ではない為あくまで素人の感想に過ぎないが、最近の金価格変動について、専門家による説明や分析は意外に少ない。
外貨準備の積み増しやロシアや中国の様に政策的な金保有を除けば、実需の金購入国は装飾需要の大きいインドがトップだが、実需動向や生産量変動等は最近の金価格上昇の理由ではないように思える。
レンジ内の動きを繰り返す債券や円/ドル相場などを考えると、昨年からのリスク回避の動きが金市場に影響を与えているのかも知れない。

昨年初から、ロシアや中国が国内外の不安要因から金の買い増しに動いていた。こうしたことも考えると、金上昇の背景には欧州の政治リスクや中東等の国際情勢が不透明という点もあるからではないだろうか。
金とプラチナ(供給量が少なく市場が小さい)の価格逆転と価格差拡大傾向も、理由を公にはしたくない動きの表れかも知れない。

例えば欧州では、フランスに極右政権誕生の懸念があり、イタリアのEU離脱やギリシャ危機再燃なども噂されており、相変わらず不透明要素を残す米トランプ政権の政策、イラン、IS、北朝鮮等の不安要素と併せると、国単位でのリスクヘッジ金投資が生じている可能性がある。
この場合株式市場でも、リスクファクターについては「噂で売って事実で買い戻す」という格言があるが、現在の金相場の動きが近い将来のリスクを先取りした動きであれば、昨年のBrexit(ブレグジット)や米大統領選挙後の株式相場の様に政治不安要素が現実化した際、金価格の一時的急上昇した後の大幅反落するケースにも留意したい。

zuuonline.com

今後の金価格はどうなるか

分からない部分も多く残る現在の金相場の動きだが、今後年内に大半の結果が出るヨーロッパの政治要因判明とトランプ政権の政策決定後に金価格がどう動くかを観察し、急変後に従来の理論的傾向内に収まるようであれば相場の方向感が定まり、とるべき金への投資スタンスもはっきりするだろう。

逆に当面の政治要因が明確になり、大きな国際リスクが消滅した後にも金価格の上昇が続くようであれば、表面に出てこない大口金保有国(国民)の内部要因が残っている証拠となるかも知れない。
いずれにしても、米国の経済政策と確実に行われる欧州の政治日程、その結果には注目したい。

金投資の位置づけについて

最後に、保有資産のリスク分散と金投資について少し触れたい。
よく言われる財産三分割の原則は、特にリスク分散という観点からこれまでは、「預金」「有価証券」「不動産」の三つとされている。だが、日本の現状を考えると、国内不動産は、将来にわたって財産価値を維持できるのか疑問が残る。

2020年東京オリンピック以降、不動産の財産価値は長期低迷期に入るのではないだろうか。特に、少子化傾向の進展と団塊の世代からの財産移行が徐々に進む2030年代以降、既に地方ではその傾向を見せているように国内の住宅用不動産は過剰になり、例えインフレがあっても不動産価値は上昇せず低下するのではないだろうか。
もし、この不動産価値減少リスクを考慮するのなら、財産分割の一手段として実物資産としての金(貴金属)投資も有力な選択肢になるかも知れない。

【参考】金価格を形成する要因

金市場独自の動き、金実需(装飾品等)の動向、他の貴金属相場、生産コスト、新規鉱山開発動向など。

国際的なリスク要因(順不同)

中国の経済成長減速等、人民元、金取引自由化、債務不履行懸念。
インド(世界2位、20%の装飾品需要)の金輸入抑制策(高率関税)、ルピー動向。
ロシアのインフレ進行、経済不安、資源・エネルギー戦略等。
アジア・中東の政情不安、北朝鮮、シリア等中東諸国の政情不安、OPEC・オイルマネーの動向。
南アフリカの鉱山政策、ランド(通貨)、鉱山ストライキ等。ウクライナ及び欧州政治不安、ギリシャ危機、マネタリーベース(ユーロ供給量)増加、EU中央銀行の政策。
日本の円相場、株価、経済動向(アベノミクス)、財政赤字、マネタリーベース(円供給量)増減。
米国の株式・債券市場、トランプ大統領の政策、FMOC金利政策、貿易赤字、財政赤字
大口金保有国の動向 米、独、伊、仏、中、露、スイス、IMF

※中露二国は国としての公的保有も大きな価格形成ファクターだ。2016年の金買越国1位ロシアが16%増、2位中国が5%。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2015年12月時の最大保有国は米国の8133トン。以下、ドイツ、IMF、イタリア、フランス、中国と続く。日本は9位で、この順位は昨年も変動がない模様。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。